ウーさんはSF嫌い。
先日、この春公開の映画『ペイチェック・消された記憶』プロモのため、主演のベン・アフレック(祝!ラズベリー賞最低主演男優賞受賞!笑)とともに来日していた、我らがジョン・ウー(呉宇森、以下ウーさん)監督。スポーツ紙等の話題はもっぱらベンの別れた彼女ジェニロペとのことが中心になったようだけど、中華者もとはしにゃそんなこた興味ねぇ。あれこれウェブ記事を拾い読みしていたら、毎日新聞のインタビュー記事に注目。
ところで、もともとSFは、「悪いことばかりが起こり、暗くて落ちこむような内容ばかりだから好きではない」というウー監督だが、この『ペイチェック』は、SF作家の大家、フィリップ・K・ディックの短編「報酬」を映画化したものだ。つまり、コテコテのSF。にもかかわらず、なぜ今回は、敢えて嫌いなジャンルに挑戦したのか。「私が作品を選ぶうえで重視するのは、ストーリーの面白さです。『ペイチェック』は、ストーリーが面白かったし、シナリオも非常に良くできていた。登場人物は人間的だし、19個のアイテムにまつわるアイデアも素晴らしかった。そのうえ、この作品には、人間は、自分の考えによって生きる道を切り拓けるという、あらゆる人間を勇気づけるメッセージがある。そこにひかれたのです」
…引用長くなりました。失礼いたします。
ほ~、ウーさんってSF嫌いなんだぁ。確か以前、ウーさんはハリウッド映画の代表作『フェイス/オフ』について、「この映画の脚本、最初は全くのSFで、撮る気になれなかったから大幅に書き直してもらった」と言っていたことも思い出したから、ホントにSF嫌いらしい。でも『ペイチェック』の原作は『ブレードランナー』や『マイノリティ・レポート』の原作でもお馴染み、フィリップ・K・ディックの作品(映画と同名の小説はハヤカワ文庫SF)。ワタシ個人がディック好きだから擁護する訳じゃないけど、ディック作品はSF的小道具を使っていても、小説にこめられたテーマやメッセージにはかなり現代的に普遍なものがあると思う。(参考:『パープルストーム』のReview)だから、原作は実はそれほどコテコテのSFではないとわかった上で引き受けたのかもしれないね、ウーさんは。
このblogでは、中華明星出演映画なら国籍を問わずにReviewを書くと決めているので、全く中華明星が出てこないウーさんや李安(アン・リー)さんのハリウッド作品の感想は取り上げないつもりだったけど、ここで感想書こうかな、どーしようかなぁ…、と考え中。ああ、早いところユンファとニコラス・ケイジの主演で企画されているという《華工血涙史》の企画を実現させてくださいな、ウーさん。
これ以下はもとはしのどーでもいい独り言。↓
ディック作品はハリウッドで映画化されることが多いけど、フランスでも映画化されたから、舞台設定をいじれば香港でも映画化できそうな感じ。ディック好きのもとはしは『ブレードランナー』原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のほか、『流れよわが涙、と警官は言った』という、自分に関する一切の世間一般的評価や記録を消されてしまった有名人の話が好きなんだけど、この小説の舞台を香港に持ってきて、主人公を現代のフツーの明星にして映画化するってのも可能かも。アンディ主演でいかがなものか?あと、中華圏じゃないけどベトナムが舞台の『父祖の信仰』(短編集『時間飛行士へのささやかな贈り物』所収)という短編は結構中華テイストの漂う作品。毛沢東批判を匂わせているので映像化はやばいと思うけど、主人公のベトナム在住の中国人にはレスリー、彼を誘惑する女性にはカレン・モクがいいかな…と、とーってもアンニュイなレスリーの『紅』のPVを観て、思いついたことがある。
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