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戀之風景(2003/香港・日本合作)

 フルーツ・チャン監督の“返還三部作”のひとつ『リトル・チュン』がNHKが共同制作した港日合作と知ったとき、ワタシはちょっと驚き、「やるじゃんNHK!」と喜んだ。最近はTV局の映画制作が盛んだけど、民放局製作のほとんどは人気ドラマを映画化した安易な邦画作品ばかり。不況でお客を映画館に集めるにはそのほうが手っ取り早いのかもしれないけど、なんかそれも淋しい。だけどNHKは国営(?)の強みなのか、ハイビジョンなどの最先端設備をフルに生かしたり、ロバート・レッドフォード率いるサンダンス・インスティテュートと提携したりして、海外(特にアジア)の才能ある映画監督をサポートしていろんな作品を作っている。今年は初めてアフガニスタンと共同制作した『アフガン零年:OSAMA』がゴールデングローブの外国語映画賞を獲ってNHKさん大喜びだろうけど(^_^;)、昨年のベネチア映画祭に出品されたというこの『戀之風景』もすごいよ。香港じゃ珍しい若手女性映画監督(ヴェテランならアン・ホイ姐、メイベル・チャン姐、女優でもあるシルヴィア・チャン姐などいるけど。笑)キャロル・ライが、今香港で一番映画に出まくっているようなイーキンを迎えて撮った、香港でも珍しい文芸作品なのだから。
 合作だからというわけじゃないけど、スタッフもすごいぞ。プロデューサーに《藍宇》のスタンリー・クァン、撮影(兼プロデュース)はヴェテランのアーサー・ウォン、メインキャラクターヴィジュアルデザイン(これは単なる美術や衣裳とは違うらしい)はご存知ウィリアム・チャン。彼は《藍宇》にも参加してたのでスタンリーさんの口利きかな?そして音楽は、富田靖子主演の日港合作『南京の基督』にリー・チーガイ監督の邦画『不夜城』のほか、アーロン・クオックの《公元2000》や、『花様年華』のメインテーマ「夢二のテーマ」などで、香港映画に縁が深い日本の音楽家梅林茂氏。

 画家の恋人サム(イーキン)を亡くした香港女性マン(カリーナ)。サムが残した風景画を携えて彼の故郷・青島に渡る。サムが描いた思い出の場所を探すマンは、絵本作家志望の郵便配達人シャオリエ(リュウ・イエ)と出会う。恋人の日記を書き写し、幼い頃の彼の思い出をたどるマンの行動が、シャオリエにはいまいち理解できなかったが、彼女のことを助けてあげるうちに彼はマンに引かれていく。そしてマン自身も、サムへの想いが遠くなるのを恐れつつも、シャオリエに引かれていくことを自覚するのであった…。

floating.JPG


「死んだ恋人が忘れられずに、彼/彼女の思い出の街へ行く」とか「異郷で新たな恋を知り、人生に前向きになる」という展開は珍しいものではない。前者ならあの『星月童話』、後者なら名作『誰かがあなたを愛してる』や最近では『最後の恋、初めての恋』もそのパターンに近い。ラブストーリーは結末がどうなるか予想しやすい分、どこで泣かせるかがポイントになる。この映画では、サムとシャオリエに共通する才能-「絵」がポイントになる。サムの思い出の場所と、シャオリエがマンへの思いを託した絵に通じる「恋の風景」を見つけたら、心の中ではもちろん、ラストシーンにもじわっとこみ上げるものがあるような気がする。もちろん、泣けなくても全然オッケイだけど(おいおい)、シャオリエの絵として登場する台湾の絵本作家ジミーのイラストはシンプルでいて強烈な印象を残す。アニメとして動くのはこれが初めてなのかな?…よくわからないが。
 あまりにもオーソドックス(てゆーかベタ?)すぎる恋物語なので、香港映画にしては物足りないかなぁ…と思うところもあるけど、文芸作品だし、どことなくヨーロッパ的な冬の青島の光景や、マンの揺れる心情を表現するかのように不安定で哀愁漂うメロディを奏でる梅林氏のスコアで、その物足りなさをカバーしようかな。
 …ところで青島って私は行ったことがなくてあまりイメージがわかないんだけど、思ったよりヨーロピアンな建物が多いのはビール産業が盛んなドイツに倣っているから?ってわけじゃないか。青島といえば青島ビールしか思い浮かばない。すみません酒好きで(笑)。

 香港映画なのでタイトルロールの先頭はイーキンになっているけど、実際はカリーナが主人公。コメディとかアクションなど主流的香港映画の役者という印象が強いイーキンに、あえて「王子様」的役割を振るとは、キャロルさんも相当ロマンティックな人ですな(笑)。「不治の病にかかっている割には健康そうでガタイよすぎ~」というツッコミはなしにしてちょーだい。王子様だからいーんです!(いや、私もうっかりそう突っ込みそうに…大笑)カリーナちゃんは『カルマ』に続きまたしてもあまり笑わない役。まー、ギャハギャハ笑うタイプには見えないんだけどね。この作品の演技で香港電影金像奨主演女優賞候補。リュウ・イエ君はこれが初香港映画か?(…ところで《藍宇》って中国映画?それとも中国・香港合作?)中国人役なので全編中国語を喋る。代表作『山の郵便配達』に続いて「また郵便配達人かよキミぃ」というツッコミはさておき、『郵便配達』や『小さな中国のお針子』にて、リュウ・イエ君は控えめなヤツという印象を持ったワタシだったが、この作品では揺れる女心がイマイチよくわからないフツーの青年だったように思う。フツーの現代青年の役もできるのね、と思った次第(『郵便配達』での彼はフツーの現代青年じゃないというのか、といわれると困るが)
…しかし、青島にはこんなカッコいい郵便配達人がいるのか実際(笑)。

英題:floating landscape
監督:キャロル・ライ 製作:スタンリー・クァン ヴィジュアルデザイン:ウィリアム・チャン 音楽:梅林 茂 劇中イラスト:ジミー(幾米)
出演:カリーナ・ラム リュウ・イエ イーキン・チェン

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コメント

 どもども。
 あらすじを読んでいると、どうしても「LoveLetter(情書)」の中山美穂ちゃんとトヨエツ、柏原崇君がちらついてしまいました。
 ジミーのイラストは、アニメになって動くんでしょうか?
 見たいなあ…早くDVDにしてよ、NHK。

 ところで、NHKといえば…と、若かりしマギー・チャンが奥田瑛二と共演したNHKドラマを思い出してしまいました。古い話です(苦笑)
 「スージー・ウォンの世界」の翻案みたいなものでしたがね。
 なんでいっつも日本人男優と、"かわいそうな"アジア女優の組み合わせなわけえ? チョウ・ユンファと日本人ハンサム男優の、熱い友情の組み合わせはないの?と当時は憤っていたものですが。

 
 

投稿: nancix | 2004.03.01 19:47

 お元気ですかぁぁぁー!!もとはしです。
こんなワタシは『Love Letter』を観たことありません。この間TVで放映された時も見事に見逃しました(泣)。

 いま思ったのですが、この映画と同じシチュエーションで主人公が男子だったら、『ノルウェイの森』や今流行りの『世界の中心で、愛をさけぶ』みたいな、彼女との思い出ばっかり振り返ってしまうセンチメンタルな展開になるのに、こっちはおセンチになりながら思い出に浸るばかりでは終わらないんですわ。それは女性監督で主人公が女子だからかな?なーんて。

 ジミーのイラストはちゃーんと動くアニメーション化されていました。おそらくCGで動かしていると思います。(さすがにあのイラストをコマアニメにするのは大変じゃないかと思うけど…)

 マギーと奥田さんが共演したドラマって『ホンコン・ドリーム』ですね。実家にビデオがあったはずですが、行方不明になったので未見です…。これに限らず、日本人男性が主人公になると、アジア人女性は不幸な役回りが多いですよね、確かに…。逆に日本人女優が主人公になるとアジア人男優は、問答無用で“白馬の王子様”になっちゃうし。…恋人を亡くしても、同じ顔のオトコに恋するとかなぁ(爆)。安易だ。
 ここでなんか一発、おっと驚かせてくれるような日本人&アジア人の共演作が観たいもんですね。ではでは。

投稿: もとはし | 2004.03.01 21:41

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