『最後の恋、初めての恋』(2003・日中合作)
当サイトのMovie Reviewは、中華系映画限定で最近観た映画から以前観たものまで幅広く書いていきますが、まずは先週末に観た『最後の恋、初めての恋』から。
恋人に裏切られ、事故で先に死なれてしまったショックから立ち直れないまま自動車メーカーの上海支社に赴任した若きビジネスマン早瀬(渡部篤郎)。赴任当日、滞在先のホテルにて酔った勢いで睡眠薬自殺を図るが、その場に居合わせたフロント係のファン・ミン(シュー・ジンレイ)に救われる。一方、日本語を学んでいる女子大生ファン・リン(トン・ジエ)は教授にだまされて企業向け中国語研修を受け持つことになり、そこで早瀬と出会う。彼にひとめぼれしたリンは自分の家に招待し、そこで早瀬はミンとリンが姉妹であることを知る。この二人との出会いで、仕事にも人生にも前向きになれなかった早瀬の心に変化が訪れる。姉妹はそれぞれ早瀬に思いを寄せるが、彼は姉のミンにひかれていく。しかし、ミンは不治の病に冒されていた…。
SARSに揺れた昨年前半、オール上海ロケで撮られたこの映画。監督さんが日本人、スタッフも日本人メインなのでやはり日中合作でも日本映画の色合いが強いかな。恋人の死、異郷での新たな恋というシチュエーションは日港合作『星月童話』を思い出させるし、不治の病に冒されたヒロインは90年代香港映画の名作のひとつ『つきせぬ想い』を彷彿とさせるので(おそらく後者の映画や韓国の『八月のクリスマス』の影響を受けているのかな?)、非常にオーソドックスで古典的なラブストーリーだったな、というのが観終わってすぐの印象。一人の男の心の再生と恋愛にスポットがあたっているけど、ロケでは上海の新旧名所が登場し、ビル街から古いアパート群に至るまで発展途上中の上海の様々な顔が見える。さらに日中ビジネスの駆け引き(交渉先のディーラーの社長さん、どこかで見た顔だと思ったら日本在住の京胡演奏家ウー・ルーチンだった!)も盛り込まれているので、かなりお腹いっぱいになる。満腹になるけど、ここまで詰め込むならもうちょっと話の焦点を絞っていいかな、と思うこともあり。
苦悩する姿がはまっている篤郎さんは適役かと思うけど、苦悩に満ち満ちていて演技がちょっとへヴィかな?という感じ(篤郎さんという俳優自身、私は好きですが)。彼に思いを寄せるシュー・ジンレイは『スパイシー・ラブスープ』以来の日本登場かな?なんでも彼女は中国四大女優の一人だとか。清潔感にあふれて、落ち着きのある女優さん。これから日本公開作が増えてくれるといいね。妹役のトンジエは『英雄』の張藝謀監督作品『至福のとき』でデビューした若手。『至福の~』での目の見えない少女役から一転して恋にときめくキュートな女子大生。成長したってこともあるけど、すっかりあかぬけたなぁ…。案外日本受けしそうな女優さんじゃないかなって思ったのだけどどうでせうか?
とりあえず、こんな感じでした。しかし、日中合作というと歴史ものあたりのイメージがこれまで強かったんだけど、こういう映画も撮れるようになったんだ…。ああ、時代は変わったわ、と思うもとはしであった。
中国題:最后的愛、最初的愛 監督/当摩寿史 主演/渡部篤郎 徐静雷(シュー・ジンレイ) 董 潔(トン・ジエ) 陳柏霖(チェン・ポーリン) 石橋 凌 筧 利夫他
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