至福のとき(2000/中国)
2年前の秋、留学中の弟を訪ねて大連へ行った。街は北京や上海より小さいが、あちこちでビルが建設されていて、急激に発展していこうとしている印象があった。チャン・イーモウがあの『英雄』の前に撮ったこの作品の舞台が、この大連である。その街で繰り広げられるのは、失業中の中年独身男チャオ(趙本山)が、見合い相手から押し付けられた盲目の少女ウー・イン(童潔)の幸せのために元仕事仲間と東奔西走するハートウォーミングな物語だ。
いつかは産業分野で確実に日本を追い越すんじゃないかと見られている中国でも、日本と同じようにリストラや家族離散といった問題を抱えている。強いものが勝ち残る中、失業者のチャオや障害者のウー・インのような存在は切り捨てられる。しかしチャオは映画の冒頭、婚約者に対して見栄を張るために友人の助言で公園の廃バスをラブホテルに仕立てて小銭を稼ぐし(中国にラブホがないっていうのは知ってたけど、公園でそこまでしてヤリたいんか君ら、とつっこみたくなった。しょーがないってことは承知だけど)、ウー・インも父の再婚相手(が現在のチャオの婚約者)に虐げられても、自分を置いて出稼ぎに行った父親に再会したくて働きたいと思っている。貧しくても希望だけは捨てない。バスは処分され、婚約者に捨てられても、なんとかウー・インを失望させまいと、チャオは友人たちと廃工場にニセのホテルを仕立て上げ、マッサージが得意なウー・インを“就職”させる。お客は自分と仲間たち、チップは本物のお金と紙切れ、マッサージ室は工場の材料で作り、外の喧騒は録音(早朝録音されたらしく、体操の掛け声みたいな「イー、アル、サン、スー」のエンドレスに笑った)…。お金はないけどなんだか幸せも感じるが、嘘はいつかばれることがある。ひょんなことから事実を知るウー・インだけど、実は早い段階に気づいていたのかもしれない…。現代的な物語でちょっとビターな部分もあるけど、後味は悪くない。イーモウ作品としては『初恋のきた道』の後に作られた作品。『初恋~』を作ったからこそこういう作品をさくっと作れたのかもしれない。作品の幅が広がったのね、イーモウ(^o^)。
主演のトンジエちゃんは当時20歳とは思えないほどキュート!中国初のインターネットオーディションに合格したそうだけど、芸能界デビューのきっかけとなったのは、中央電視台の特別番組でニコの“花嫁”役に抜擢されたからだとか。いかにも人がよいおじさんって感じの趙本山おじさんはどっかで見たことある顔だなーと思ったら『始皇帝暗殺』に出ていたとか。
原題:幸福時光(happy times)
監督/張藝謀(チャン・イーモウ) 原作/莫 言(モー・イェン) 出演/童 潔(トン・ジエ) 趙本山(チャオ・ベンシャン)
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