コラム(中華芸能)

大館の御成座で『捜査官X』を観る

 今回は久々に映画の話題です。

 シネコンの都心進出と対比して、シネマート六本木やシネマライズの閉館、新宿武蔵野館の休館など、都心では単館系映画館の寂しい話題が続き、地方の映画ファンでも残念に思うこの頃。
 北とーほぐの我が街にはメインストリートに交差する「映画館通り」がありますが、実際は5館14スクリーン。年間上映本数が1000本を超えるここ数年ですが、どうしてもシネコンではメジャー作品が上映の中心になるので、香港映画や台湾映画の上映本数は悲しいほど減りました。まあそれでも、今月末には実に18年ぶりのホウちゃん作品上映になる『黒衣の刺客』やピーター・チャンの新作『最愛の子』が地元上映されるので、ちょっとはホッとしてます。あ、当然(笑)『ドラゴン・ブレイド』は上映されますけどね。

 それは置いといて、先日、秋田県大館市にある御成座に行ってきました。
我が街から大館は高速バスで2時間20分位で行けます。

 御成座は1952年に開館した洋画専門のロードショー館で、老朽化により2005年閉館。駅から徒歩3分という地の利の良さのため、常設館としての再建も試みられたようですが、2014年7月より平日はイベントホール、週末に映画上映という形で利用されることになったそうです。上映はフィルムとBDの併用で、ドルビーSRDも導入されているとか。そしてなんといっても幅9メートルの大画面が魅力的!

 これまでの上映はとーほぐではなかなか観られないミニシアター上映作品や国内外の往年の名作など。香港映画は成龍さんの『ファースト・ミッション』が昨年上映されています。SNSでの情報発信も積極的に取り組んでいて、飛ば…じゃなくてユーモアと情熱あふれるtweetが楽しいです。

 で、ここで観たのは…

『捜査官X』でした。初映時に関東で観たものの、結局地元盛岡では上映されずに終わり、同年のもりおか映画祭でも「せっかく谷垣さんがるろけん上映で来盛されているのに、なんで出演作品を上映してくれないのー!」と一人勝手にブーたれていたという、例の件のアレです。まあ、個人的な想いなのでこれはこのへんで。

 さて、ここで久々の劇場上映を盛り上げるために、御成座さんが用意した数々のアイテムをご紹介いたしましょう!

 オサレなカフェ風ブラックボードにキメキメのロゴデザインとキュートでファンキーな似顔絵!※意見には個人差があります。

 上映のために地元の看板屋さんに描き下ろしていただいたというイラスト看板!
これは盛岡名物ピカデリーの絵看板と双璧をなすぞ!

4月までの上映ラインナップ。ピアノ伴奏付きサイレント映画上映会なども行われているそうです。
そしてとーほぐ、雪国秋田といえばこれだ!どや! 

金城徐百九だるま&ド兄劉金喜だるま!いやー、似てるなあ。
今年は暖冬で雪が少ないので、もっと積もってたら面白かったんだけどなあ…。

 昔の映画館ゆえ、建物が古いのはまあ仕方がないのだけど、場内にはブルーヒーターがあったので(!)、ストーブに当たりながら久々の大スクリーンでド兄さんと王羽さんの激烈な闘いを堪能いたしました。フィルム上映だったのもまた良し。

ちなみに↓は、ロビーにあった旧型の映写機。

ロビーには市内の映画サークルでアジア映画ファンの方の愛蔵書(だいたい持ってたわ…あは)やパンフも展示。そしてこんなポスターもね。

このように往年の映画館の雰囲気を漂わせているけど、実は結構フリーダムな館内。
そのフリーダムさを象徴するのが、この子。

御成座さんのアイドル、うさぎのてっぴー。
普段はストーブの前が指定席らしいのですが、一度椅子の下に潜るとなかなか出てこないとのこと。当日がそうでした(笑)。
むくむくしてかいらしいんだけど、うまく撮れなくてすみませぬ。

 こんな感じの映画館で楽しんできました。
 東北の映画館も郊外のシネコンが多く、県庁所在地ではミニシアター作品が上映されても、仙台や山形で上映されても盛岡や他の小都市まで来なかったり、名画上映ももっと選択肢があってもいいよなと思うのだけど、御成座さんのように、小さな都市の映画館として往年の作品と癖のあるミニシアター作品をうまい具合に上映していけるのは面白いと思うし、東北各地の小さな単館でも楽しくできるという可能性を示してくれるような気がしました。岩手にも盛岡以外で小さな映画館がいくつかありますが、そこでもなにか面白い映画がかかれば観に行きたいですよ。できればアジア映画を…成龍さんの以外の(ごめん、贅沢言って)。

 とまれ、御成座さんは今後も応援いたします。またアジア映画が上映されたら観に行きますね。今度は夏に行って、夕方まで楽しみたいわ。
 そんなわけで、全国の映画ファンの皆様、とーほぐを旅するときには、是非大館の御成座へ!そのついででもいいから、盛岡にも来てねー(と一応地元アピールもしようっと)

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2015 funkin'for HONGKONG的十大電影

 えー、今年はここ数年の傾向(リンク先に書いてるので参考として)から元に戻しました。というか、農暦晦日までに中華電影を観る予定がないからです。そんなわけで、blog開設12年の記念日のタイミングでアップいたします。

 昨年我が地元で上映された中華電影は数えてみたら6作品(旧作再映含む)。香港映画に至っては1本も上映がありませんでした。そんな状況なので、仙台に行ったり映画祭で稼いだのがほとんどです。今年は3月に『最愛の子』『ドラゴン・ブレイド』が上映されますが、その後はどうなることやら。まあ、足りない分はWOWOW放映で補ったりしてみます。…ずんぬくまんじうとかな(こらこら)

 また、昨年は台湾映画をたくさん観ました。春先に台湾に行ったこともあるのでしょうが、そんなこともあって、ちょっといつもと違う趣の十大電影になったと思います。
 では、例年通りのカウントダウンで十大電影いってみましょうか。

10 戯夢人生

 昨年は旧作上映もいいものが来てよかったです。特にこれは初上映時にみのがしていて、ずっと観たかった作品。どうかデジタル・リマスタリングされて、悲情城市と一緒に午前十時の映画祭に選ばれますように。

9 九月に降る風

 昨年春のシネマート六本木の閉館上映時の再映で拝見。これを観て「トムさんいいなぁー」と改めて思った次第。その約半年後に新作が観られたのだけど…。

8 レクイエム 最後の銃弾

 昨年春の仙台の特集上映でやっと観られた映画。そうそう、香港映画における男たちの絆ってーのはこーゆーのなんだよ!これが観たかったんだよ!とついつい力こぶが入ってしまったのは言うまでもない。

7 全力スマッシュ

 香港映画の希望の星(半分マジで言っている)デレクさんの新作。ワールドプレミアは日本だったし、もっともっと盛り上げたかったなあ。そして今年の奥運會では、当然バドミントンも応援しますよ。

6 破風

 スポーツ映画が続きます。両岸三地だけにとどまらず、東アジア全体に目を向けて作られたのはヘリオスと同じ。こういう可能性もあるんだよなと思いつつ、日本がこの枠に入らない、もとい入れないのは中華びいきでもほんとうに残念。アミューズさんあたり、今年はどうですか?こんな東アジアコラボにかんでみるのは。

5 KANO 1931 海の向こうの甲子園

 はは、これもスポーツ映画だわ。 
 厳密には中華電影とは言えないんだろうな。でも、魏導&馬導には「これを作ってくれてありがとう!」と感謝したくなった。野球もまじめに観るようになったしね(笑)。

4 カンフー・ジャングル

 自分でも意外なんだけど、思ったよりも上位に来ました。もちろん洋画ベストの中にもランクイン。こっちで書いてるのでお暇があればどうぞー。
 ストーリーもよかったし、アクションもエモーショナルで感情移入しやすかったもんなあ。だからやっぱりド兄さんは宇宙最強なんだよなあ。《葉問3》は是非とも全国公開でお願いしまーす。

3 レイジー・ヘイジー・クレイジー

 今回はこれが最上位の香港映画。パンちゃんももう中堅として安定した地位を得たんだなと思いつつ、新星の登場にはいろいろある香港映画(&香港)の中でも、ひときわ眩しさを感じるのでした。今年の金像奨では、どこまで賞レースに絡めるかしら? 

2 黒衣の刺客

 思った以上に静かで、美しくスリリングな映画であった。古希を目前にして作り上げたのがこんな武侠電影なのだから、ホウちゃんってやっぱりすごいやー、これからもついていかなきゃ、と思った次第。しかし、これが地元で上映されなかったのはつくづく(強制終了)。

1 百日草

 はい、実は12年やってきて、今回初めて台湾映画が№1になりました。自分でもびっくりぽん>流行り言葉
とふざけるのはこのへんにして、観て本当によかったです。トムさん自身の悲しみももちろん感じるのだけど、大切な人を亡くす喪失はだれにでもあることだから、その描き方に強く胸を掴まれたのでした。是非とも日本公開してほしい作品。

お次は部門賞。

主演男優賞 ドニー・イェン『カンフー・ジャングル』『スペシャルID 特殊身分』

 やっぱり宇宙最強だし。『百日草』の石頭もよかったんだけど、比べちゃうと、ねえ(苦笑)。

主演女優賞 カリーナ・ラム『百日草』

 祝!復活。しかもとても印象的な役どころなのがよかった。
今年は久々に學友さんとの共演作もあるとのことで(旦那さんが監督らしい)、今後の活躍も楽しみ。

助演男優賞 アンドリュー・ラム『全力スマッシュ』
助演女優賞 スーザン・ショウ『全力スマッシュ』『レイジー・ヘイジー・クレイジー』

 ここはまとめてコメントしますか。いやー、このコンビは夫婦漫才みたいで最高でした!
デレクさんたちから鬼才のスカッド監督までカバーする、スーザン姐の香港映画界のゴッドマザーっぷりもすごいしね。

監督賞 ホウ・シャオシェン『黒衣の刺客』『風櫃の少年』『戯夢人生』
      トム・リン『百日草』『九月に降る風』

 台湾映画豊作の年ということもあり、ベテランと中堅コンビをチョイス。
両者とも、今後の作品が楽しみなんだけど、そういえば寡作でもあるのよね(汗)。

新人賞 ジョディ・ロック&アシーナ・クォック&フィッシュ・リウ&コーイー・マック『レイジー・ヘイジー・クレイジー』

 なかなかにセンセーショナルな作品でデビューした監督&三人娘。
いろいろある(とまた言っちゃうけど)香港映画界を大いに引っ掻き回してほしいなあ。

 今年はどんな映画に出会えるだろうか。日本での上映状況も厳しくなってきてるけど、それにもめげずに観ていきたいものです。
 では、ラストにこれを。今年は申年だし、葉問3と共に日本公開を期待したい作品。

 

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さらば、シネマート六本木

 2015年6月14日、9年3か月にわたって六本木で営業されてきたアジア映画専門シネマコンプレックス、シネマート六本木が閉館した。

 思えば、映画館のスタイルがシネコンへと大きく変わり始めた頃に誕生したが、日本での映画興行収入は洋画から邦画が売れるようになり、全国各地にシネコンが誕生した。それに伴うように都内の名画座やミニシアターの閉館も相次ぎ、ついには新宿や有楽町といった大劇場メインだった地域もついにシネコン化したのが、この9年間だった。

 5月の台湾映画特集の時に飾られていたKANO関連小道具。

 言わずともわかるように、ワタシはとーほぐ在住なので、この映画館には最初から熱心に通っていたわけではない。折しも開館当初はまだ韓流ブーム。だから上映も韓国映画が圧倒的に多かったし、わざわざ観ることもないか、とあまり行かなかった。でも地元では絶対やらなさそうな映画がかかった時は観に行った。
 そんなわけで初シネマートは、今や世界のアサノとなった、浅野忠信くん主演のタイ映画『インビジブル・ウェーブ』…と思ったら違った、『ディバージェンス』だった(笑)。『ドラゴン・プロジェクト』『エンター・ザ・フェニックス』はその後くらいに上映していたのね。
 だいたいその頃は、我が街モリーオにもそこそこ香港映画も来ていたのだが、それでもトーさんの映画は何本か来ていないし(特に『エグザイル/絆』!)、さらに台湾映画はそれ以上に来なかったという状況だった。それを見越して帰省時や映画祭の時に武蔵野館等に観に行ったこともあったけどね…。

 通うようになったのは、特集上映が行われるようになった頃。イー・トンシン特集の『プロテージ』を観に行ったなあ。旧作上映が増えていったのもこのあたりから。震災直後で心がささくれだっていた頃、5月に1週間の帰省をして久々に挽歌二部作をスクリーンで観られた時にはなんとも嬉しかったものである。

「香港電影天堂最終章」で上映されたインファナル・アフェア三部作日本版ポスター。
ディパーテッドよりダブルフェイスよりやっぱりこれだよ、若者よ!(笑)

旧作特集上映時にはすっかりお馴染となったウォール。
あまりに作品が多すぎてどれを観たのだかと数えることすらできなかった(笑)。

 また、『燃えよ!じじぃドラゴン』上映初日は、年明け早々TVで紹介されたこともあり、満員スタートだったところに居合わせることができたのも面白かった。ソフト発売を前にした映画の特集上映も帰省時と重なったらできるだけ観に行ったので、まさに上映してもらえるだけありがたいと感じたものだったし、5月の劇終特集上映のあいまに開催された支配人のトークショーからも、香港映画にかける情熱と、全勤務地だったキネカ大森時代からのアジア映画専門館の歴史に触れ、日本のアジア映画上映はこういう努力あってこそのものだったのかと改めて胸を熱くしたものだった。

 しかし!ここから暗い話になるが、そんな熱も田舎までは届かず、アジア映画上映は全国的に見れば完全に厳冬期。実際、シネマートに足を運んで観てみても、毎回満員御礼…というわけではなかった。まあ、韓国映画はそんなことはなかったのかもしれないけどね。よくわからないけど。
 もちろん関西にはシネマート心斎橋があるし、名古屋にも熱心なミニシアターもある。我が東北にはフォーラム仙台がアジア映画を上映してくれ、これから感想を書く幾つかの作品も実はそこで観たものだったりする。(実は仙台の支配人さんがかつて盛岡に勤務していた時、香港映画上映サークルを立ち上げてもらって参加していたので、香港映画に関しては大恩人なのです)
 ただ、とーほぐはあまりにも広すぎる。山形-仙台間はバスで1時間位らしいけど、盛岡-仙台間はバスでも2時間半かかる。新幹線だと最速40分だけど、往復1万円は超えるわけだから…。
 そして映画館も拡大上映作を優先し、ミニシアター作品の上映は遅くなる。それも欧米作品のシェアが圧倒的に大きいから、必然的にアジア映画の上映は減る。だって、一時期当地でも熱狂的に支持された韓国映画も恐ろしい勢いで上映が減っているのだよ。それなら香港映画なんて…(と、いつもながらの愚痴になるので強制終了)。

 本当はメジャー作品の悪口なんか言いたくない。でも、観たい作品、みんなで観たいと思う作品が劇場で観られなくなるのはほんとうに残念だ。家でソフト鑑賞しても、一人だと寂しい。
 映画上映でSNSで関東方面の人たちが盛り上がっても、話題に置いていかれるのがすごく悲しかった。
 昨年の日本における映画館での上映本数は、なんとかつての映画館全盛期の本数(約600本くらいらしい)を上回り、1000本越えてしまったと聞いたのだが、それでも全国でくまなく公開されたのは300本もないんじゃないだろうか。これほど本数が多いと売れる作品と売れないものが極端に分かれているということらしいが、もうこれはどうにもならないのだろうか。

 それよりも、今後のアジア映画の上映はどうなっていくのか。
 多様性があるのが映画文化だ。乱発でもなく、じっくり観られて、新しい観客に繋げられるような上映があればいい。それは東京だけでなく地方も同じ。映画館で観たいけど、いくらリクエストしてもスルーされるのなら、いっそどこかで自主上映できればいい。でも著作権法云々とかもあるのか。でもでも、あまりにももったいないんだよなあ。

 ああ、案の定いつもながらの愚痴になったので、ここで終わります。
 さようなら、シネマート六本木。そして日本の映画興行界よ、どうかアジア映画上映の灯を消さぬように。

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2014funkin' for HONGKONG的十大電影

      新年快樂  恭喜發財
      萬事如意  想去香港!

↑ただいま香港禁断症状発症中。自分来月台湾に行くくせに(笑)

 

説明不要なくらいの田舎で電影迷やってきて約20年、いまさらここで中華電影を含む映画上映についての愚痴は言わないけど、それでも映画は好きです。だから地元の映画館が某邦画メジャーのハイバジェット作品をどんなに優遇しようとも、観たい映画をやってくれーと叫び続けます。だからウザいと思わず、お付き合い下さいませ。

 ここで改めて、この個人的ベストの選択基準を提示。

1.昨年の農歴初一から農歴晦日までに初めて観た映画を対象とする
2.初見であれば、映画祭鑑賞からCS鑑賞も、旧作も新作も問わない

 では、いってみよーう♪

10 西遊記 はじまりのはじまり

 これまでの星仔映画とは全く違う、だけどしっかり星仔印の映画。
すーちーを始めとした人気も実力も備えた俳優たちの競演に、斜め上を行く古典アレンジが楽しかった。今回残念ながら外してしまったド兄さん西遊記『モンキー・マジック 孫悟空誕生』の邦題でこの春東京公開決定)と公開時期はかぶったものの、テイストも物語もかぶらなかったのはお見事。でもね、肝心の監督が出なかったのが欠点であり、このランクなのでした。続編には出なさいねー。

 ファイアー・レスキュー

 『西遊記』で共同監督を務め、最新作『全力スマッシュ』が今年の大阪アジアン映画祭でワールドプレミアとなるデレク・クォック監督初の大作。全体的には大味だし、主人公2人より脇のオッサン2人が大活躍しちゃうんだけど、発電所事故というネタが人ごととは思えないし、久々の消防ドラマで大いに楽しんだのを評価。

8 極限探偵三部作

 パン兄弟の近作『コンスピレーター』を含めて三部作まとめてのランクインですいません。
警察が舞台になることが多い香港では探偵映画はあまり見かけないと思っていたのだが、タイのような猥雑さがまだ生きているような街だからこそ成り立ったのかもしれない作品。三部作の中では面白い要素とパン兄弟の得意技がごった煮になってる『影なきリベンジャー』が一番好き。

 天空からの招待状

 全編空撮ロケで台湾を上から見ることにより、自然の美しさから開発が引き起こす悲劇までを同じ視点で描き、それによって考えさせられる作品。ああすみませんすみません、現状を知らなくてすみません…っていつまで謝れば気が済むのか(笑)。

 黄金時代

 毎度の新作が楽しみなアン・ホイ姐さんの意欲的かつ文字通りの「文芸映画」。
民国時代を描く映画にありがちな抗日戦などの描写が客観的で、長尺で語る民国を代表する女性文学者の生涯を飽きさせずに描いたのがいい。そして専門のくせにちゃんと中国文学史を勉強していなかった自分を反省(笑)。

 ドラッグ・ウォー 毒戦

 トーさんが初めて中国で撮った映画。国が国だから制限もいろいろありそうなんだが、それでも麻薬捜査を壮絶に撮り上げたのはお見事。しかしいまだに信じられん、古天楽と孫紅雷が同い年だなんて…。

  セデック・バレ

 一昨年見逃して悔しかった作品ナンバーワン。
WOWOWの夜中の一挙放映でリアルタイムに観たのだけど、やっぱり大変な思いをしてでも劇場の大きなスクリーンで観たかったわ…。そして、これがあってこその『KANO』というのが重要。ネチョウヒョにはあれこれ言わせません。

  ヒーロー・ネバー・ダイ

 はい、これが昨年観た中で一番古い作品でしかもリバイバルなんですが、ついついこの位置に来ちゃいました。ゼロ年代香港映画におけるトーさんの進撃はまさにこの映画から始まった!と断言してしまう。語られない行間に思いを読み取ることができるので、1時間30分台の上映時間がなんとも濃厚。そしてりよん&ラウちんという対照的な二人の主演の相性の良さ!ああ、なんでこれ本上映の時に観ておかなかったのかしら?

  GF*BF

 ここ数年、香港よりも台湾に行っちゃってるのは、決して円安や大陸旅行客の影響というわけではなく、個人的だったり地元的だったりの理由なんですが、その中で昨年3月に起こった立法院占拠から、東アジアにおける台湾の位置も改めて見えてきた。そんなタイミングでやって来た、時代と連動するこの辛口の青春映画が心をつかまないはずがない。しかし、セデック同様地元で上映がなかったのが本当に残念だった。いつか台湾映画特集をやるのなら、ラインナップに入れて欲しいんですけどねー?と誰にともなく言ってみる

  ミッドナイト・アフター

 久々に映画祭上映作品を1位にしちゃいました。だって、ほんとうに久々に陳果(フルーツ)さんが香港で映画を撮ってくれたのだもの。そりゃ嬉しいわけだよ。
 だけど、それより大きかったのは、9月から12月まで香港中心街で起こったアンフェアな普通選挙法に対する占拠運動、通称雨傘運動がこの映画で描かれたような少し先の香港の未来を想起させてしまい、思わぬところで湧き上がった現実の厳しさが映画にシンクロしてしまったように見えたからなんだ。返還からまもなく20年、思った以上に一国二制度は揺るがされている。…まあ、そんなことは差し引いても、映画としても非常にローカルチックで楽しかったですよ。こういう映画が日本でなかなか公開されないから、なおさらね。

ではお次に部門賞を。

主演男優賞  ルイス・クー『ドラッグ・ウォー』

 いやー、もうすっかり香港映画の顔になってしまったなあ、古天楽…てか、もうルイスで定着しちゃってるわね。はあ。

主演女優賞  グイ・ルンメイ  『GF*BF』

 初めて観てからもう10年、彼女もすっかり台湾映画の顔になりました。昨年のベルリン映画祭金熊賞受賞の中国映画『薄氷の殺人』も観たいなあ。地元では…やっぱりどうかなあ?

助演男優賞  ラム・シュー『ミッドナイト・アフター』

 祝!香港電影金像奨助演男優賞ノミネート!まさかみんなのラムたん●~がここまで来るとは…ええ、感慨深いですわ。

助演女優賞  ハオ・レイ『黄金時代』

 彼女を観てロウ・イエ監督作品の常連女優だと全く気づかなかったのは、今東京で公開されている『二重生活』を始めとして、ロウ・イエ作品を全く観たことがなかったからです。マジです。だってこっちにこ(強制終了)とーほぐでは仙台と山形でやるらしいけどね。

監督賞  フルーツ・チャン 『ミッドナイト・アフター』

 いやー、好きなんですよフルーツさん。だって、返還前後からローカル香港の人間模様を描いてきた人だから。ここ10年間くらいは北京に行ったり、短編ばかりで出会える率が本当に低くて、寂しかったもんなあ。この映画は原作の前編部分だけということだから、残りの映画化も観たいです、マジで。

新人賞  リン・チンタイ  『セデック・バレ』

 もともと台湾映画はわりと非職業俳優を使うイメージあるんだけど、この映画は原住民の登場人物が多いので、キャスティングは大変だったんじゃないかなって思う。そんな中でカリスマ感と気迫が伝わるチンタイさんがとても素人、しかも牧師さんとは思えなかったわ。ちなみに先住民には神職の方が結構多いとどこかで聞いたな。天空での挿入歌もよかったです。

炎の復活賞   ツァイ・ミンリャン 『西遊』

 ははははは、去年は永年功労賞を勝手にあげてしみじみしてたんだけど、たった1年で復活しちゃいましたよ、ミンリャン!今年の香港国際電影節で上映される短編シリーズ《美好2015》も撮っていて、なんとシャオカンと安藤政信くんが共演して一緒に風呂に入っちゃったりするらしいですよ。いやあ、これもやっぱり映画祭でしか観られないのかしらねー。

 さて、毎度ながらの独断と偏見に満ちた十大電影を今年も選びましたが、それにしても昨年は『レクイエム 最期の銃弾』を見逃しちゃったのがつくづく惜しかったよなあ。地元での新作中華電影上映は今年もますます減りそうだし(と言っても今年は祝宴とKANOが上映されるのだが)、シネマート六本木は閉館しちゃうし、スクリーンで映画を観るのもキツくなってきそうだなあ。
 まあ、それでもやめられません。やっぱり劇場で観てこその映画ですから。とはいえ、WOWOWで放映されて録画した映画がかなりあるから、春に向けてせっせと消化して感想書きたいです。あとは春の台湾旅行もあるしね。

 ええ、今年もまた、アンディ先生のこの曲を歌って騒いでおりますよ。とこりもせずまた貼る↓


 でもいつもこれだけじゃ芸もないので、サム・ホイさんのこの歌も貼っておくわ。



そんなわけで、我恭喜你發財, 我恭喜你精彩!
うちにも来てくれないかしら、財神が(こらこら、商売やってないだろ自分)

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田舎者が考える、今年の中華電影上映のことなどあれこれ。

 2014年も間もなく終わりを迎えようとしております。

 今年は本業多忙等により、せっかく開設10年を迎えたというのにblogの更新が減ってしまい、申し訳ありませんでした。この場を借りてお詫びいたします。
 今年はblog開設10年記念としてここで書いてきた10年間の映画を簡単にまとめて紹介した本当にささやかなZINEを作成いたしました。おかげさまで全て完売しましたが、ご要望があれば改訂版を製作したいと考えております。今後も映画や旅等、中華圏をテーマにしたZINEは年に一度くらいの割合で制作する予定です。

 さて、この年末年始の中華電影といえば、全国公開作品としては行定勲監督による日中合作『真夜中の五分前』があるし、東京ではトーさんの傑作『ヒーロー・ネバー・ダイ』のリバイバル上映、台湾のドキュメンタリー『天空からの招待状』、そして昨年世界中の主要映画祭を席巻したシンガポール映画『イロイロ』と、様々なタイプの作品が上映されています。これらの作品は帰省時にできるだけ観て、真夜中も含めて年明けに感想をアップいたします。

 で、ここからが本題。
 今年、我が街(北東北地方の県庁所在地にして、一つの通りに映画館が複数ある『映画館通り』と呼ばれる地区がある街)で上映された中華電影を数えてみました。
 今年は合作も合わせて13作品上映されました。

『三姉妹・雲南の子』(キネマ旬報ベストテン記念で上映・スケジュールの都合で見逃す)
『危険な関係』
『ドラゴン怒りの鉄拳』(バック・イン・シネマ)
『ポリス・ストーリー』(バック・イン・シネマ)
『死亡遊戯』(バック・イン・シネマ)
『ポリス・ストーリー レジェンド』
『罪の手ざわり』
『南風』
『ドラゴンへの道』(バック・イン・シネマ)
『スパルタンX』(バック・イン・シネマ、スケジュールの都合で見逃す)
『西遊記 はじまりのはじまり』
『プロジェクトA』(バック・イン・シネマ)
『真夜中の五分前』

 新作は8作、しかも1作品を除いてほとんど中国映画。そして、愕然としたのは香港が主体となる広東語が主言語の映画が新作では1本もないこと。ちなみに昨年が5作、一昨年が6作。もちろん『グランドマスター』『桃さんのしあわせ』も入ってます。シネマート系公開作品はほぼ来ていません。

 こうして見ると、日本全体の香港映画の公開本数が以前よりは増加しても、上映形態がいかに小さくなってしまったのかというのがよく分かるんだよなあ。もっともシネマート系上映作品は、評判がよければ仙台までは何とか来るので、往復最低5,200円かければ観に行くことはできるんだけど、スケジュールが合わないと観られなくなるしね。
 そんなわけで、ここ数年は映画祭や帰省等の上京時にまとめて観て感想を書くというのが主流になってしまってます。

 「なんで劇場公開にこだわるの?ソフトやTV放映でフォローすればいいじゃないの?」と言われるのもわかってます。今年は多忙のためあまり出来ませんでしたが、香港で購入した未見のソフトや、WOWOWで録画した映画はたくさんあります。来年はこれらを閑散期に少しずつ観ていきたいもんです。
 で、話がずれちゃったけど、なぜ劇場公開にこだわるかといえば、やっぱり街に「映画館通り」があるからかな、ってことです。
 せっかくスクリーンがたくさんあるのなら、地方でもいろいろな映画が上映されてほしい。マンガ原作やアニメの日本映画ばかりじゃなく、小規模のアジア映画ももっと上映してほしいのです。

 長引く不況のために、娯楽にかける費用が減り、映画館に年に一度も行かない人がいたり、映画館の観客の多くが家族連れや若者となってしまったから、固定した観客層しかいないミニシアターやアジア映画がないがしろにされる理由もわからなくはありません。でも、大量宣伝される作品も、口コミでの宣伝を当てにする作品も、スクリーンにかかる映画としては平等だと思うし、うっかり観てしまった作品から興味が広がるってこともあるから、選択肢は多いほうがいいと思います。たくさんありすぎて選べないと言われるかもしれないが、選ぶことで映画に対して受け身にならずにすみます。

  あ、一応書いておきますが、当地では韓国映画の上映も減っております。ここ数年話題になった作品では『サニー』『建築学概論』『十人の泥棒たち』『新しき世界』が未上映ですし、最近人気のインド映画も『オーム・シャンティ・オーム』『ダバング』が未上映です。観客の年齢層もあるのでしょうが、ミニシアター作品の上映も少し偏りつつあるように感じます。行きつけの映画館にはミニシアター作品の上映リクエスト用紙があるので、毎月中華電影の名前を書いて箱に入れているのですが、一作も通ったことがありません。残念です。
 地方都市とはいえ、こういう現状はすっごく寂しいんですよ。特に今年は無間道三部作やトーさんの作品に影響を受けたという『新しき世界』や、香港アクション映画に多大なリスペクトを捧げたるろけん京都編二部作など、いい具合に香港映画の遺伝子を受け継いだ作品が多かっただけに、ここから興味関心を伸ばしてアジア映画方面まで来て欲しかったと思ってたのですが、やっぱりなかなか手が出せないジャンルになっちゃったのかなと思ったりもします。

 ワタシは開設以来、好きな香港映画を中心にした中華娯楽をネタに、このblogを書いてきましたが、その間、映画上映の状況というのは変わり続けてきました。地方在住ゆえのフラストレーションも度々書いてはきています。グランドマスター地元上映の際、宣伝や客の入りを見て「今後は地元で香港映画が上映されなくなるかも…」と危惧はしていたのですが、それが見事にあたってしまいました。残念です。
 来年は年始めから『祝宴!シェフ』『KANO』が来ます。これまで香港映画以上に上映の機会がなかった台湾映画の上映が続けて決まったり、ホウちゃんの新作が松竹の配給となるなど、少し変わるのかなという期待はあるのですが、まずは地元でお客さんが入ってほしいと思います。 
 そして、なんとかして中華電影の新しい観客を増やして、いろいろお話していきたいなと思うのが、来年の目標です。るろけんにハマった方とはド兄さんの映画の話もしたいし、『真夜中』を観て気に入ってくれた三浦春馬ファンには、ホウちゃんやヤンちゃんの映画をオススメしたいもんね。

 そんなこんなで、久々に愚痴めいた記事になってしまいましたが、これを今年の反省とし、来年も頑張って映画観て感想書いて、あれこれ皆さんとお話したいと思います。なお、近いうちに『プロジェクトA』の感想もアップしますので、次を持って今年最後のエントリーとします(予定)。

 では皆様、良き聖誕節を…。

Img_1896

このままささくれだったまま終わるのも何なので、澤東兄弟の聖誕節画像を貼り付けて終わることにするわ。

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2013funkin' for HONGKONG的十大電影

恭喜發財,萬事如意!

♪我恭喜你發財,我恭喜你精彩!…と○○の一つ覚えのように、今年もまたこれを貼るアルよ。


 というわけで、今回は旧正月に合わせての更新です。

 blog開設以来、この個人的な電影奨も10年欠かさず続けてこられました。と言っても最近は、どうしても地元の劇場公開が少ないので、年末年始に帰省した時に観た分まで入れないと成立しないし、一般公開での再見作品も入るようになってしまった。
 ここで、昨年の農歴初一から農歴晦日までに初めて観た映画を対象とする、としよう(笑)。
 さて、基準も確定したので、カウントダウン始めます。

10 恋はあせらず

 ちょうど20年前の作品で、今年劇場で観た作品としては一番古い(苦笑)。
 レスリーも家輝さんも今の自分より若くてかわいいのはもちろんのこと、香港映画黄金期の軽いコメディを久々に観られたのは嬉しかった。そして、返還を控えても明るくいようとする結末に、現在に至るまでのいろんな出来事を思い出して切なくなるのであった。

9 ピクニック

 現在の台湾映画全体の流れから見ると、ミンリャンの映画はあまりにも異端である。だけど彼も20年間全く変わらず、自分の個性と主張を全面的に出し、ぶれることなく10本の作品を輩出してきた。好きだ嫌いだとさんざん話題にしたが、この作品はやっぱり彼らしくあり、集大成への覚悟が見える。その潔しさを尊敬する。本当にお疲れ様でした。でもいつか復活してね。

8 太極二部作

 武侠+スチームパンク+ゲーム+バカ。これほど胸を躍らせる(個人的にはゲームであまり胸は躍らないが)要素がいっぱい詰まった作品なのに、大陸ではあまりヒットせず、日本でも地味に公開というのはあまりにもさびしすぎるんだが、これってどうよ。時間がかかってもいいから、3作目もいつか作ってほしいですよ、ステ監督よ。 

7 名探偵ゴッド・アイ

 どうやら一般的には、「ジョニー・トー=ノワール」とくくられているらしく、現在公開中の『ドラッグ・ウォー』は高評価な様子。でも、アンディとサミーという黄金カップルのクレイジーなラブコメもまたトーさん作品の醍醐味であるのよ。いや、ワイさんの醍醐味なのかもしれないが、久々なので多少のやりすぎ感には片目をつぶることにしましょうね。

6 モーターウェイ

 去年の初めからWOWOWに加入しているので、これは劇場よりも早く観ることができた。イニD再びというより、ショーンと秋生さんの師弟もの映画として観るとかなりハマる。ロケ地もいいチョイスで、観塘が出て嬉しかったわ。80年代っぽいが決してダサくは聴こえない音楽も印象的。でも、やっぱり最初は映画館で観たかったわ。

5 低俗喜劇

 映画をめぐる映画は面白いに決まってる、というのが我が持論(だから園子温の『地獄でなぜ悪い』も思いっきり楽しんだ)。日本ではなかなかわかりにくいプロデューサーの仕事にスポットを当てたこの作品は珍しいタイプなんだけど、なんといってもパンちゃんだから安定的にハチャメチャなのはお約束。これでスターダムに上ったダダ・チャンがどうかこれからもうまくお仕事できますように。

4 グランド・マスター

 …すみません、本当にすみません、別blogにアップした記事では洋画ベスト1にしているのですが、向こうはお行儀がよくて、こっちはそうでもないので、こんな位置です。だって言い訳したら長くなるけど、3位以上の作品があまりにも魅力的だったのだもの。ホントに許してくださいよー。てゆーか王家衛は今後短い期間で映画を作ることにもっと慣れさせた方がいいぞ。

3 激戦

 男くさい作品が多い香港映画において、格闘技ものはまさに究極の男くささ(※意見には個人差があります)。自分の身体一つで戦い、傷つきつつも立ち上がる男の姿は美しい。それを演じるのが、あまり格闘技イメージのない細身のニックさんだったらなおさらね。マカオロケも効果的だし、明日への活力にもなる映画だった。

2 総舗師―メインシェフへの道

 活力は食べることでも養われるのは当たり前。16年間長編劇映画を発表してこなかった陳玉勳の新作は「食」にスポットを当てた。しかも身近にあったのにいつの間にか埋もれてしまった食文化を。
 地方の隠れたお宝を掘り起こして楽しいエンターテインメントに仕上げたのは『あまちゃん』にも通ずるかなと思いつつ、笑いのツボは昔から変わってないのにホッとした。新作も近いうちによろしくねー。

1 コールド・ウォー

 一昨年の暮れの香港旅行ではうっかり見逃してしまい、金像奨の受賞でやっぱり観ておきたかったーと悔しく思ったが、意外と早く日本上陸してくれて嬉しかった(地方上映が少なかったのは残念だが )。映画界のキャリアは長い新人監督コンビと、香港市街地を有効に使ったロケとストーリーテリング、円熟の域に達したスターたちと期待の若手男優の共演、しかも社会派エンターテインメントと、香港映画の今後に大きな影響を及ぼす要素が多いこの映画を、やっぱり1位にしたい。続編ももちろんだけど、コンビの次回作も楽しみです。

主演男優賞  トニー・レオン『グランド・マスター』

 まーねー、賞レースでいくつ主演男優獲れるかとかは下衆な話だからしないけど、金像やAFAで獲れなくても、ワタシの心の中での最優秀主演男優賞ですから…って自分で言ってて超恥ずかしいぞおい(笑)。

主演女優賞   ダダ・チャン  『低俗喜劇』

 引退話やら行方不明やらいろいろあったけど、せっかく久々に香港から登場した若手女優さんなのだから、これからどう化けるのかを見守っていきたいよ。だからスキャンダルは横に置いときたい。今後の香港映画に大きくかかわる女優さんになってほしいしね。

助演男優賞   アンソニー・ウォン『モーターウェイ』

 師匠の秋生さんって結構好き。いぶし銀で思慮深いけど、昔は凄腕だった(やんちゃだった)ってイメージが漂ってくるもんね。

助演女優賞  クリスタル・リー 『激戦』

 ダンテさん作品に欠かせない子役ちゃん(マレーシア出身)だそうです。
子役ってどうも苦手なんだけど(特に邦画)、プロであってもこの子はよかったもんな。
やっぱりこれから本格的な女優さんを目指すのかな?

監督賞  チェン・ユーシュン 『総舗師』

 そりゃもう復活を祝して、賞状も商品も出さないけど。
早い時期での次回作も期待してますよー。

新人賞   リョン・ロクマン&サニー・ルク  『コールド・ウォー』

 先にも書いたけど、香港映画の未来を期待しての選出。将来、中国映画のローカル版という目で見られることが大きくなっても、香港で撮る香港映画の意義と価値を明確にするためにも、今後の活躍に期待したい。大陸で撮るのもありだけど、それでも香港映画ってどういうものかが示してもらえると嬉しい。

永年功労賞   ツァイ・ミンリャン  『ピクニック』

 作品的には好みで分かれるけど、やはりこの方が台湾で映画を作ってきたことの大きさを今頃しみじみとかみしめてる。未見も合わせて過去作品を見直したくなってるもんなあ。
そして台北に行ったら、蔡明亮珈琲走廊にも行かなきゃなあ。コーヒー飲めないけどさ。

 さて、長年勝手に実施してきたこの電影奨ですが…ええ、今後も続けますよ。
場末の個人blogの、全然権力も影響力もないアワードですけど、自分が何を評価するか明確に分かりますからね。
 でも今年はblog開設10年ということもあるので、これまでの電影奨を振り返って、ここ10年の香港映画の流れを自分なりにおさえつつ、香港映画への理解ももう少し高めたいなーという目的で、これをベースに久々にZINEを作って(もちろん以前作ったこのシリーズで)、地元ブックイベントに出そうかと計画しております。
 そんなわけで、この冬から春は、台北旅行をはさんでこれまでの振り返りを行います。
blog更新は再び不定期となりますが、何かありましたら記事を更新いたしますし、今後ともお付き合いいただければ幸いです。

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TIFF、フィルメックス、そして冬の特集上映に思ふ。

 お久しぶりの更新です。気がついたら東京国際映画祭が近づいてきました。

 今年のTIFFは平日始まり平日終わりなので、週末に行ければとあれこれ悩んだ結果、案の定週末に何も引っかからなかったので、平日に休みを取って行くことにした次第。
 中華圏では以下3作品を観ます。

 『激戦』(香港・10/22)
 『総舗師-メインシェフへの道』(台湾・10/22)
 『失魂』(台湾・10/23)

 今年は3年前に続いて台湾映画が特集され、『失魂』上映時には上映作品の監督が集まったシンポジウムが行われるというので、これを楽しみにしているのでした。考えたら、台湾映画は香港映画以上に一般公開されないからね。
 今年の一番の楽しみは『総舗師―メインシェフへの道』。これは1990年代に監督デビューし、『熱帯魚』『ラブゴーゴー』という当時としては珍しい台湾コメディ映画を生み出して話題になったものの、その後長い間沈黙していた(と言ってもTVCF等は撮っていたらしい)チェン・ユーシュン(陳玉勲)が実に16年ぶりに撮った長編第3作。すでに台湾では上映され、観てきた方の評判もよいので、かなり期待しております。
 『激戦』はフィルメックスにも出品されたことがあるダンテ・ラムの新作。ニック・チョンと最近香港映画でめきめきと頭角を現している台湾のエディ・ポンが格闘技に挑む作品らしい。しかし最近の香港映画の傾向は、必ず「戦」がつく二字タイトルなのよねえ。
 『失魂』は“戦慄のお父ちゃん(いま思いついた)”こと王羽さんが台湾で出演したホラーテイストの映画。出来も…らしいし、最初は観なくてもいいかと思ったのだけど、複数の方に薦められてチケット取りました。

 TIFFの1か月後にはフィルメックスが控えておりますが、今年はなんと香港映画の出品ゼロ。考えたら去年もトーさんやソイ・チェンさん、ダンテさんのようなエンタメ系作品はなかったので、これは後述する香港映画の日本公開決定を受けての判断なのかなと思った次第。
 でも、興味深いのは、今年の三大映画祭に出品されたり、来月台湾で行われる金馬奨にノミネートされている中華圏作品が多いこと。オープニングはジャ・ジャンクーの《天注定》、特別招待に蔡明亮の《郊遊》と、それぞれカンヌとヴェネチアで高い評価を受けた作品。コンペには台湾のチャン・ツォーチした『夏休みの宿題』、ジャンクーがプロデュースした中国映画『見知らぬあなた』、そしてカンヌでカメラドールを受賞したシンガポール映画『ILO ILO』があり、これも観る価値はあるかなーと思っている。
 今の時点ではまだスケジュールが決まってないので、ジャンクーとミンリャンのどちらを中心にとるかは他の作品のスケジュール次第かな。中華圏以外でも興味のある作品があるので、そっちとの兼ね合いもあるしね。

 で、最近両映画祭で香港映画の上映が減った原因としては、ここしばらく小規模の特集上映として新作の一般公開が増えたからだと考えている。  これは多分去年の夏からシネマート系で始まった香港映画祭り(最近は香港・中国エンターテインメント祭りと名乗ることが多い)が貢献しているのだろうが、新宿武蔵野館系列でも相変わらず上映が続いている。
 しかし、これらの作品の地方公開は、大阪や名古屋や福岡の大都市圏に限られており、仙台までくればまだいい方だ(実はシネマート系公開の『大魔術師』『じじぃドラゴン』は仙台では上映されている。でも仙台には観に行けなかった)。場合によっては大阪でも上映されないという事態になっているようだ。つまり、例によって例の如く、「一部地域のみ上映→地方順次上映せずにソフト化」といういつものパターンである。裏返せば、ソフト化先行で単館上映は実績作りのため、と言ってしまうのはきついだろうか。(映画館上映どころか先にWOWOWで放映されて後で劇場公開が決まった『モーターウェイ』のような例も最近あったしね)
 特に最近はWOWOWでまとめて放映してくれるので(11月にもシネマート系特集上映の作品が複数放映されるという話を聞いた)、わざわざレンタル店でアジア映画カテゴリの棚が消えて縮小された洋画スペースで目を皿のようにしなくても、契約さえしていれば気軽に観られるようになっていいとは思うのだが、それで満足はしたくない。毎回くどいほど言ってるけど、やっぱり大きい画面で観たいし、新しいファンも開拓しなきゃいけないと思うんだよ。ましてや香港映画はアクションやサスペンスだけじゃないからね。  まあ、そんな思いでblogを10年近く続けているんですけどね。

 と、相変わらず同じことばかり言っておりますが、TIFF作品も感想は早めに書きますし、WOWOWで観てない作品をカバーしていきますので。まあ、継続は力なりということで、香港映画の全国上映が増えることを願って、こちらはできることをコツコツやっていきますよ。

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わがるヤツだけ、わがればええ。―個人的一代宗師まとめ

 まず最初に、25日に白血病で亡くなられた劉家良師傳のご冥福をお祈りいたします。
この映画にもクレジットで名前が挙げられていました。

 さて、今回の記事の題名はこのところハマっている某朝ドラの、ある登場人物の名言から取りました。
 思い起こせば、『グランドマスター』だけでなく、9年前の『2046』も酷評されたよなあ。アレは日本から参加したメインキャストの人がいかにも主演の如く注目されてて、そもそもかの人があまり好きじゃないワタシはすっごく嫌な予感がしていたんだよな。あんなに派手に宣伝してるけど、こんなのいつもの王家衛節の映画にはそぐわないんじゃないの、とか思ってたら、案の定酷評されて、文春きいちご賞のワースト10にもランクインしてた。宣伝部も騒いでいた人も、王家衛がどういう映画を撮るのかわかってなかったんじゃないの?
 以前も書いた通り、重慶マンション二部作が王家衛を代表する作品ではない。だからあの路線は今後も期待できないんじゃないかなと思うんだけど。クエタラが持つバイオレントな様式美はわかりやすいから一般受けしやすい(だから彼の名前はブランドになったのだろう)けど、王家衛のそれはあくまでもアートだから、一般受けはしにくい。ただ、世界的な巨匠になってしまったので、価格が上がっちゃったのだろう。それゆえ9年前から長編作品の全国拡大公開が続いちゃっているのだろうな。
 でも、いくら売らなきゃいけないからって、これまでの王家衛作品のキャリアをスルーするようなカンフー推し、頂上決戦を捏造したかのようなプロモはどうなんだろう。あんな売り方をされると、日本の大手配給会社で仕事してる宣伝業者は王家衛を嫌ってるんじゃないかって邪推したくなるんだけど。

 全体的な感想としては、結構満足している。まあブルベリも2046もあんな作品だったからなあ(苦笑)。そして、香港映画を好きになってよかったとつくづく思わさせられる作品だった。いや、決して王家衛作品じゃなくてね。
 前から言っているが、香港映画は決してカンフーだけではない。もっと多様である。それがここ数年で、また昔に戻ってしまったかの状況。事実、ライジングドラゴン(これから感想書きます)は大ヒットしたそうだが、それ以外の香港映画は主要都市のみ公開。いつもながらのグチになるから繰り返さないけどね。
 王家衛なんて、ブレイクした90年代当時は成龍作品とは真逆の立ち位置だったから、香港映画に興味のない層に大ウケしたんだもんな。その頃のファンからすれば、まさか王家衛がカンフーを題材に取り上げるとは思いもよらなかっただろうな。まあ、カンフーも決して成龍さんのモノだけじゃなくて、リンチェイもド兄さんもいる。そういう広がりがあるのだけど、コアじゃない観客(というかライトなプロジェクトA世代?)には広がらないのが残念。いや、広がっているのかもしれないけど、それがよく見えないから、どうしても憶測でものを言うことになっちゃう。もーすわげねー。

 この映画もそうだけど、香港映画では「感情と連動したアクション」の需要が高まってきているし、それと同じことを試みる香港以外の映画もある。最初の感想でるろ剣の名を出したけど、両作品ともテイストが全然違うのに、なぜか同じ志を持つように思えちゃったのだ。まあ、これは両方ともひいきだから、あくまでも個人的意見だけどね。

 まあ、どうしても王家衛を擁護する立場に立っちゃうけど、欠点を挙げたら、製作に時間がかかりすぎるとか、やっぱり張震の出番が少なすぎるとか、葉問より宮二の方が出番が多いので、多くの人が宮二メインだと思わされる誤解をなんとかしてくれとか、いろいろある。だけど、どんなにあれこれ言っても期待以上のものを見せてもらったという点では、大いに満足している。とは言ってもマイベスト王家衛は『花様年華』であることは変わりないんだけどね。

 とはいえ、関東圏ではファーストランを終えても、なんとロングランが決定したそうだ。
これはある程度の支持があったからではないか、と思いたい。まあ、まさにわがるやつだけ、わがればええ。ってことで(笑)。
 我が街での上映はもう終わってしまったけど、香港版のBDも買ったし(番外として後日感想を記事にします)、夏の帰省の頃までやってくれたら王家衛スペシャルと一緒に観たいと思うし、まだお楽しみは終わらないと思うよ。

 そんなわけで、この4週間、映画館には8回、プレミア上映と合わせて9回、BD鑑賞も入れれば10回観ることができました。ああいう宣伝方法には目をつぶって、この映画を日本までもってきてくれたGAGAさんには大いに感謝しています。
 そして王家衛の新作は、今度はもうちょっと早く観たいです。もうトニーが主役じゃなくていいし、欧米で撮ってしまっても観ますよ。でも昔に戻るような作品は(強制終了)

 失礼いたしました。では、昨日51歳の誕生日を迎えた葉問師父ことトニーの画像を貼って、一代宗師祭りをお開きにしたいと思います。お付き合いいただき、誠にありがとうございましたm(__)m。

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この半ズボン(としか言いようがない)穿いた51歳、昨日のお誕生日は思い切ってこういう髪型にしたそうですよ。あははははは。ホントに51歳なのかこの人は。

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隠し玉はいつまで隠し玉なのだろう。張震飾一線天。

 SNSで回ってくる『グランドマスター』の感想で多く見かけたのは、「なぜ葉問と一線天(字幕ではカミソリ。本記事では原語名で通します)は戦わないんだ?」という不満。まあ、多くの人々がすれ違っていくのが王家衛作品だから、別に葉問と一線天が戦わなくてもこっちは全然構わないんだけど、あれだけアグレッシブなアクションを見せられちゃったら、そりゃあ期待もしたくなるわな。しかも八極拳を体得した張震自身が、八極拳の大会で優勝したとか言われちゃったらな。

Grandmaster3

   いや、ここではそんなことを言いたいんじゃない。
 ブエノスアイレス以来の王家衛作品の常連俳優となり、今や台湾を代表する中堅男優となった張震だが、なぜ彼は王家衛作品では出番を削られるのだろうか。名優を父に持ち、今は亡きエドワード・ヤンの2作で鮮烈なデビューを飾った彼は、映画3作目で王家衛に呼ばれてアルゼンチンに飛び、途中離脱したレスリーに代わって物語をなんとか支えたのに。
 ていうか、張震ってブエノスの他で王家衛とガッツリ組んだのって、DJ SHADOWの「SIX DAYS」と「若き仕立屋の恋」くらいなものか。2046ではカリーナを刺した男と未来世界のレジスタンス役だったのに、どっちも一瞬だったもんな。でも9年前のアレでは来日してたんだよね。


張震の魅力は何だろうなーと考えると、朴訥な青年から眼光鋭い刺客までなんでもこなせる役柄の幅の広さと軽やかさかな。ブエノスのチャンと今回の一線天を見てもよくわかる。
 いろいろな役どころの彼を観てきたけど、好きな役どころはなにかなあ、『地下鉄の恋』の鐘程に『ブラッド・ブラザーズ 天堂口』のマーク(物語自体はあーうーだが)に呉清源かな。どれもキャラが違うのがいい。
 しかし王家衛はなんでまた、長編で彼をうまく使わないんだろうねー。前にも書いたけど、そろそろ張震を主演に据えて撮ってもいいと思うぞ。

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張震近影(といっても1月の一代宗師プレミアだが。右の人の半ズボンについてはここで言うことではない。単に貼りたかっただけ)

 

 さて、一線天を観ていると思いだすのは、やっぱり八極拳使いということで、パンフにも寄稿されていた中国武術研究家・松田隆智さんが原作を担当した藤原芳秀さんのマンガ『拳児』。


文庫版は全12巻か…。マーケットプレイスで探してみるってのも手かな。

 中国武術をたしなむ祖父から拳法に誘われた少年・拳児が成長して八極拳を学び、高校を中退して香港から大陸へと渡っていくこの物語(うろ覚え)は、少年サンデー連載時に少しだけ読んだ覚えがある。この本筋と同時に、八極拳の発展に寄与した武術家・李書文の挿話も描かれていたような気がする。うーむ、当時はまさか自分が香港映画にハマったり、中国語を学ぶとは思ってなかったので、きちんと読んでないんだよな。この機会に読み直したくなったなあ。

 これまで香港(というか中国でもか?)で書かれてきた中国武術としては、代表的なものは少林拳(少林寺拳法は日本独自のものだそうであしからず)、そしてこの映画と葉問二部作で描かれた詠春拳しか思いつかないが、劇中で金楼の勇さん(劉家勇)が「雑多な拳法さ」と演武していた洪家拳も映画のネタになってたかもしれない。そのへんお詳しい人はたくさんいると思うので、後で調べておいてリンク貼りましょう。

 よく考えれば『グランドマスター』は葉問の詠春拳や一線天の八極拳だけでなく、宮二の八卦掌や馬三の形意拳が登場し、それぞれの拳法を丁寧に紹介していることから、中国内外の武術家たちには称えられたらしい。この映画を作るために数多くの武術家に取材を重ねたというのも納得である。だから王家衛作品を知らない誰もが期待した「中国武術の天下一武道会」ではなく、「激動の20世紀を生きぬいた中国武術家の群像」になったのはしょうがないと思うんだけどさ。だからと言って酷評すんなよとここで弁護しておく。

 それであっても、やっぱり一線天と葉問は、戦わなくてもいいからどこかで接点は欲しかったな。国民党の特務から離脱して香港に亡命し、理髪店を開業する傍ら道場を立ち上げて暗躍したんだろうな。そしたらなおさら一線天が主人公のスピンオフが見たくなったのである。
 どうかね王家衛よ、この映画は自作では香港及び大陸で最大のヒットを放ったのだから、ここは肩の力を抜いて、澤東公司&春光映畫でいっそのこと公式スピンオフで《白玫瑰理容廳》とか作ってみるってのはどうだろうか。監督はジェフ・ラウかしっかりした若手、主演はもちろん張震、ヒロインは台湾の若手女優、脇役は現役アクション俳優、そしてカメオでトニー登場!とかさあ。やってくれたらもちろんワタシは観るよ。
 …なんてこと言ったら、いろんな人に怒られるかなあ(^_^;)。

 さて、いよいよ日本上映も最終週なので、次回更新は今までに書き落としていたことやらなんやらを書いて、一代宗師祭りの締めとしたいと思います。
 そういえば今週の木曜日は、トニーの誕生日だねー…。

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気に食わない小娘が、実にいい女になって帰ってきた。章子怡飾宮二

  我が初ツーイーは『グリーン・デスティニー』だった。その印象が強かったので、ツーイーはいつまで経っても小娘だったし、順番は逆に観たのだが、殿方に評判が高いという『初恋のきた道』にもどーしてものめりこめなかった。
 特に張藝謀作品に顕著なのだが、ツーイーは小娘感がとにかく高い役ばかり振られ、それがどういうわけか高く評価される。『英雄』を例に取ればわかるのだが、全体を通したヒロインはマギー演じる飛雪であるのにも関わらず、物語の最初に持ってこられた劇場の赤のパートでの(あまりいい意味ではない)大活躍のせいで、主役であるリンチェイの次には、二番手のトニーでもなくてヒロインのマギーでもなく、彼女がクローズアップされるというなんとも複雑な状況に陥った。その後、ハリウッドにも進出してえらく活躍したわけなのだが、それでもやっぱり初見の小娘感が抜けきれなくて、どうも好きになれなかったんだよなあ。

 だけど王家衛は違った。彼の撮るツーイーはなぜか他の映画より魅力的に見えた。
それは『2046』の時から薄々と感じていた。あの映画(そういえばあれも拡大公開&日本のトップアイドルの出演ということもあって、やっぱり宣伝ではミスリードがあったよな)で彼女が演じた白玲は、北京語をしゃべり肌寒い香港からの脱出を夢見るホステスで、トニー演じる自称作家の周慕雲とは体だけの関係を結ぶ、かなり蓮っ葉なビッチではあったけど、そういう役どころを振られながらも、これまでの出演作に感じていた小娘っぷりはみじんもなく、かつて張藝謀が彼女を起用した映画に漂っていた“らぶらぶ邪念”というものが全くなかったことに気付いた。そうか、王家衛は彼女に対して余計な邪念を抱いてないのだ、とその時は思ったし、翌年の金像奨で主演女優賞を受賞したのにも大いに納得した。

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これが2005年の金像奨。ツーイーのドレスにはいつも感心しないのだが、これは個人的に好きだったりする。ドレスというよりセパレーツ?

 そうであっても以降の彼女は相変わらず小娘だった。しかも以前にもまして小娘だった。あまりの小娘っぷりに、英語由来の「ツィイー」という表記を見るだけで「この小娘め!日本語表記も早いとこ中国語由来にしろ(八つ当たり)」というようになった。まあ、大陸出身の女優がいくらたくさん出てきても、ヴィッキーや周迅やジンレイではまだまだ一般に知られることはなかったもんな…。

 そんなわけでツーイーが再び王家衛作品に参加し、しかも妻(ソン・ヘギョが演じると聞いた時も驚いたけど)ではなくて葉問と愛し合う女性武闘家の宮二こと宮若梅を演じる…と聞いたら、いくら前作での好演があっても、いろんな不安が起こるのは言うまでもないじゃないすか(笑)。そんなわけで2046でのことなんてすっかり忘れて、かなり身構えながら観てたんだよね、彼女のことを。まあ事前にあまり情報も入れず、キネ旬で葉問と宮二のラブストーリー的な含みを持たせた文章を見つけたらたちまちスルーしたくらいだからねえ。

そして挑んだグランドマスター1打目。…いやあ、いい役どころじゃないか宮二って!
まあファザコンで気が強くて女だてらに武術の継承者を目指していて、父が認めた葉問と拳を合わせて恋に落ちてしまったものの、父が兄弟子に殺されてしまったので恋や女の幸せよりも復讐を誓って戦い、内戦から逃れて香港に行って医院を開き、結局結婚もせず子供も作らず弟子も取らずに独り身のまま死んだと彼女の演じどころをネタバレ全開で書けば、宮二はなんだか不幸な女のように思えるけど、あの時代背景と武術家としての生き様を考えれば、決して彼女は不幸でもなんでもなかったんだよな。彼女もきっとそれをよく理解していて、中盤まではノーメイクと飾り気のない女性用の長衫(+ゴージャスなファー襟のコート)をまとい、抑えた演技と凛々しいアクションを決めていったのが好印象だった。
 以前の感想にも書いたが、宮二と葉問の手合せの間に芽生えた感情を男性はセクシュアルなものとしてとらえ、あるいは王家衛作品の中でも恋する惑星好きが「その時、二人の距離は5センチ(単位はテキトー)、一瞬、二人は恋に落ちた」とか言って語ってもらっても、彼らの間には性的な欲情でも、理由のいらない一目ぼれでもなく、志を同じくする者の魂の交錯と結び合いが生じたとワタシは考えており、そんじょそこらのありきたりな恋愛に展開するわけはないだろうな、と思ったら、さすがに北派の継承者の娘らしい誇りを貫き、香港で再開した葉問にそっと思いを告げての退場というのがとても好ましかった。

 twitterでフォロワーさんが言っていたのだが、葉問と宮二の間に芽生えたのは決して恋愛感情ではなく、ソウルメイトとしての結びつきではないかという説にワタシも強く共感する。同じ道を目指す者同士に芽生える絆というのは、これまでホモソーシャル的な展開のエンタメでは描かれてきたが、恐らく中国武術は男女の性差が能力に反映することは少ないので(そもそも詠春の発祥は女性の護身術からであり、始祖が女性であるということもあるし)、こういう方法で男女の恋愛を超える魂の結びつきを描けたというのは素晴らしいことではないか。

 王家衛作品の永遠のテーマは「愛の喪失」であるが(ここで書いてます)、この作品では珍しくこれが強調されない。それはなぜかと考えたら、おそらく鍵はこれまでに書いた宮二の生き方にあるような気がする。愛ではなく武術に生き、葉問との出会いと交流を自らの糧とし、自らの使命を成し遂げてこの世を去った彼女は何も喪失していない。ただ、跡を継がなかったことで彼女が父親から伝授された六十四手や葉底蔵花などの技は喪失してしまったが。

 そんなふうに考えると、ツーイーはホントにいい役をもらえて、そしていい面を見せてもらえてよかったねえと思うのだが、いくら出番が多いから、好演だったからといっても、この映画の主役は彼女ではなくて、あくまでもトニー演じる葉問であり、彼を中心とした武術家たちの彷徨を描いた作品なのだ。決してそれを忘れてはいけない。

 というわけで、次はもう一つの武術・八極拳の使い手である一線天と、彼を演じた張震のことについて書きます。そろそろファーストランも終わりそうなので、なんとか今月中にアップしないとね。

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