海外の映画祭

いまさらながら、今年の金像奨の結果に思ふ。

 いやー、あっという間に6月ですねー。先月の連休は天気が悪かったけど、実家近くのシネコンで『捜査官X』、唯一の晴天だった先週の土曜に六本木に繰り出して『台北カフェ・ストーリー』を観てきました。余裕があれば『王朝の陰謀』も観たかったんだけど、都合により断念。あと『女ドラゴン(後略)』も…。
 2作品とも感想は書けたんだけど、3月に観た《川島芳子》と『運命の子』の感想も早いところ書かなきゃ。とかなんとか言いつつ、今日はこれまた遅いタイミングで金像奨をネタにするのでした(笑)。いや、毎年書いているからね。

 4月15日、今年も香港電影金像奨の授賞式が挙行されました。
この時期に合わせて渡港して、レッドカーペットやTVの生中継を現地で観られた方も多いようです。ああ、いと羨まし。
 受賞結果については、今年ももにかるさんのblogに掲載されていますので、こちらでは感想をはじめどーでもいいこと(笑)をあれこれ書きます。

 昨年のヴェネチア映画祭で最優秀女優賞に輝いたアン・ホイさんの最新作《桃姐》が本命視され、主要賞を独占したのは予想通り。普通はその予想が固いとつまらないのだけど、やはり主演女優賞に輝いたヴェテラン、ディニー・イップさんの熱演や作品の現地での反響を考えれば、今回は当然の結果だと思いましたよ。
 そして、今年の秋にはなんと日本公開も決定しているとかで、非常に喜ばしいものです。

 で、この作品に主演した我らがザ☆スター、アンディ先生が三度目の主演男優賞を得たわけだが、彼のこれまでの受賞作が『暗戦』そして『マッスルモンク』と、考えてみればトーさん作品での受賞ばかりだってことに気がついた。ここ数年は『王朝の陰謀』のようなアクション作品ばかりが目立ったので(もちろんそれ以外の作品もあるけどね)、今回の映画プロデューサー役はその点では異色に見えるのかもしれない。でも、こういう役どころで受賞できたのは本当に喜ばしいよなあ。
 実は本音を言えば、主演男優賞はラウちんに獲ってほしかった。すでに《我要成名》で受賞しているので、無冠の帝王は返上しているのだけど、『奪命金』の愚直なチンピラはよかったからね。でも前作とは全く違う役回りの『盗聴犯』(なんとこれも日本公開決定)こと《竊聽風雲2》でもノミネートされていたので、票が割れちゃったのだろうな。
『奪命金』といえば、この作品からは助演俳優がアベック受賞。「清楚明白!」のおばさんと、悲惨な運命をたどるあのおじさんです。…ってよくかんがえれば、今年の金像の俳優賞ってみんな高年齢なのな。香港も少子高齢化なのか…うーむ。

 技術系&アクション系は《龍門飛甲》対『捜査官X』かな?と思ったら、意外にも前者の圧勝だった。これは前作の『王朝の陰謀』から、本格的に徐克さんが復活しだしたってことだろうか?
 そして、新人監督賞は大阪アジアン映画祭で上映された『ビッグ・ブルー・レイク』のツァイ・ツイシャン監督。おめでとう!もちろん、今年から両岸製作作品を対象とした華語作品賞(後で訂正)の第1回受賞作に選ばれた『あの夏、君を追いかけた』の受賞だって喜ばしい。これも一般公開されないかなー、日本語字幕で観たいんだよなー。

《桃姐》や『盗聴犯』だけじゃなく、どうも《龍門飛甲》も日本公開が決まったらしく、金像で話題になった作品が例年より早く日本で観られることになるのはとっても嬉しい。
 さらに今年の前半は香港映画の一般公開が多いらしい。「らしい」というのは、どれもまだ地方まで来ないから、伝聞調で書くしかないのである。
 いや、好評だってのは分かっている。4月下旬から上映が始まった捜査官も観に行った限りではそんな感じだし、王朝も初日だった先週末は好発進だっていうからね。頼むよー、なんとかわが街で上映できるくらいに動員数を伸ばしてくれよ~。特に王朝!

 だけど…、最近とみに思うことがある。
捜査官にしろ王朝にしろ、最近日本にやってくる香港映画のプロモーションについてだ。
そのことを考えると、思わずこう言いたくなるのだ。

「そんなプロモで大丈夫か?」

 これで「大丈夫だ、問題ない。」なんて相手に言われたら、めちゃくちゃ毒を吐きそうになるけど、いくらアクション映画ばかりが輸入されているとはいえ、その日本向けのプロモーションが「ある層」だけに向けられているように感じるのだ。
 それについては、言いたいこともいっぱいあるので、日を改めてじっくり書きたいと思います。あまりいい気分になれないから、ホントは気が乗らないんだけど、スタンダードにされたくないから、アマチュアの立場でエラそうで生意気なことを言わせてくださいね。
 でもさあ、もっと堂々と売ればいいのに…。だって、この春東京で上映された上記の作品たち、未だに我が街での上映が決まっていないんだよー。このままDVD化されちゃうのかなあ。勘弁してほしいなあ…。

 とやっぱり愚痴っぽく終わってしまって、申し訳ない。
 今後の予告。なんとか『運命の子』の感想が書き上がりそうなので、これは近日中に。
 あと、この前上京した時に香港電影天堂2012で『プリズン・オン・ファイアー2』を観たので、これの感想もね。

 

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ゆくじょぉ、わっがっともよ!

 映画祭の秋ですねー。先週までは釜山国際映画祭が開催されていた。
…なーんか、ネットニュース等で伝わってくる報道を聞くと、あっちこそまさに「アジア最大の映画祭」なんじゃないかと思うのだが。ってこれは10年以上前からすでにそうだったか(汗)。
 ま、そんなことはどーでもよくて、今週末からいよいよTIFF
それと同時期に、毎年香港で開催されている香港亞洲電影節

 今年はオープニングがフィルメックスでも上映される『奪命金』、「セデック・バレ」を含めた台湾映画特集、日本でも話題の『ヒミズ』など、相変わらず豪華なラインナップ。先ごろ公開が始まった《鐡甲萬能侠》こと『電人ザボーガー』を含む、アジア各地のヒーローもの映画を集めた《亞洲超級英雄》なんて特集は楽しそう!さらにオールナイト上映もあって、まるで往年の東京ファンタのようではないですか!

 その映画祭でのクロージングがこれ。ちなみに《亞洲超級英雄》のラインナップの一つでもあります。


 これはTV用CMなんだけど、最初紹介してもらった時には、『ギャランツ』に次ぐ日本語CFか!と驚き、主題歌が80年代初頭のロボットアニメ『宇宙大帝ゴッドシグマ』のカバーで、しかもレスリーが歌っている!ってことにのけぞり、大爆笑した。

 これは、日本では『ベルベット・レイン』『姐御』が公開され、あの蒼井そら小姐を迎えて撮った《復仇者之死》がモスクワ映画祭で評判を呼んだ黄精甫(ウォン・ジンポー)監督の新作、《保衛戰隊 之 出動喇!朋友!》



 劇場版予告はえらいシリアスですが、どーも件のゴッドシグマが大好きな青年が主人公らしく、彼がその精神を胸に抱いて戦うって話でよろしいんでしょうかね?主演は《復仇者》に続いてのジュノ・マックで、王羽さんも登場なさるとか。紹介文を読むとマフィアのボスなのかな。まー、そーなんだろうな。

 しかし、ワタシはかつて先の2作の感想で「スカしてやがる」とか「同じことをやるのは二度も通用せん」とかなんとかいってウォン・ジンポーを貶したもんだったが、はたして今はどんな作風になってるもんだろうねえ。《復仇者》を観てないもんだから、なおさら気になっちゃう。それぞれ日本では…、やっぱり観られないか(苦笑)。

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電影節的秋天已經開始。

 今月は本業でかなり忙しく過ごしていたのだが、それでもネットサーフィンは欠かさず、先月下旬から始まっていたヴェネチア映画祭のレポートなどを楽しんでいた。
 日本では主演二人がマルチェロ・マストロヤンニ賞を受けた園子温監督の新作『ヒミズ』ののことばかりが話題になっていたが、中華趣味的には、アン・ホイ監督の新作《桃姐(Simple Life)》でベテラン、ディニー・イップさんが最優秀女優賞を受けたことが嬉しい。



 ヴェネチアでの記者会見。

 

 予告編。主演はアンディ。映画プロデューサー役なのね。

 で、このヴェネチアでは、『海角七号』の魏徳聖監督の新作『セデック・バレ』や、我らがトーさんの最新作《奪命金》がコンペに出品。そして、この《奪命金》がそのまんま日本でも観られるのである、もちろん東京フィルメックスで!しかもクロージング!



ヴェネチアでの記者会見。

 予告編。

 実は中華電影じゃないんだけど、フィルメックスでコンペ入りしている『東京プレイボーイクラブ』もなんとかして観ようかなーと思っている。一番の理由は自分が主演の人のファンだからってのがあるんだけど(大爆笑)、実はこれもひそかにトーさんつながり作品。この映画の監督さんは、昨年のゆうばりファンタのオフシアターコンペでグランプリを獲っている人なのだが、その時の審査委員長がトーさんだったのよ。そんなところでの注目だったりする。はい、マジで。

 そして、昨年は特集企画で中華電影の上映本数が多く、なぜか余計なトラブルもあった東京国際映画祭では、昨年の反動もあってか上映本数はガクッと減った。うむ、残念だがバランスを取るためにこれはしょうがないような気がする。
 このラインナップではオムニバスの『香港四重奏』2部作を観たい。


↑これはⅡの予告。ちなみにⅠの予告はyoukuで見られる

 そうそう、“伝説の字幕”でお馴染み、2011日本中国映画週間の作品も何か観ようと考え中。今年は平日鑑賞になりそうなので。

 チケット取りを思うとユーウツになりそうだけど、どの作品もなんとか頑張って取りたいものだよ。これまで本業がしんどかったけど、これに参加できることを思えば気も楽になるしね。

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どうもやる気が出ないでいたら、知らぬ間に《武侠》がカンヌでプレミアやってた。

 先週からカンヌ映画祭が始まっております。
  今年も昨年に続き、コンペに中華電影がないのでまたしてもやる気ナッシング気味。いや、確かに審査員には我らの親分、トーさんがいるのであるが、なにか面白いことしてくれるわけじゃないしねえ(こらこら)。

 そんな感じだったし、私的にも忙しかったのでまめにチェックすることなく過ごしていたら、Twitterの金城くん迷の皆さんがにぎやかになっていた。どうも、ピーターさんの監督最新作で、ド兄さん主演の《武侠》に彼が出ているかららしいとわかったのだが、実はこの作品が正式に出品されているとは全然気付かなかったのである。てっきり《赤壁》のようなフッテージ上映だと思っていたのだが…ちゃんとアウトオブコンペでエントリーされたと知ったのは、ワールドプレミア上映が終わってからであった。
 ええ、気がつかなくてすみませんでした。ホントにごめんなさいでした。

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 このメガネ&帽子の金城くんが味わい深い。ド兄さんは辮髪。

 物語はまだ上映前だからパスするとして、比較的詳しく紹介されているのが、毎年楽しみに読んでいる斎藤敦子さんのカンヌレポート@河北新報と、シネマカフェのレポートなのでこっちをリンク。

 先に上の予告編を観ていたので、「これってバイオレンス?確か王羽先生も久々に出てらっしゃるというから、そーゆー方面なのかね?」なんて思ってやや不安になってたのだが、どうもそういう話ではないらしい。アクションメインというより、謎解きの要素もあるというから、物語にも一工夫したのかな、と思った次第。まあ、ピーターさん4年ぶりの監督作だから、ただのバイオレンスでは終わらないはず。

 香港及び中華圏では8月公開。ってことはこの夏行けば観られるのかな?
  評判がよければ、TIFFで上映される可能性もあるし。
 ま、楽しみにしていよう。

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 ド兄さんの妻は湯唯ちゃん。ああ、麗しひ…。
 また大陸方面からいじわるされているの?(ソースはこれ
 どうせだから香港映画に頑張って出演して、ハチャメチャやってしまおう(笑)。

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ボンクラ勇者ども、頂点を極めり!-香港電影金像奨の結果に思ふ。

 昨日は、香港電影金像奨の授賞式でした。
結果は今年もまた、もにかるさんのblogをご覧くださいませ、と手を抜かせていただきます。
例によって、個人的な感想などを。
 今年はRTHKのラジオ放送を聴きながら、シナコムのネット中継を観てました。某ちうぶにも動画がアップされているはず。

 昨年『孫文の義士団』が作品賞を受賞した時、「あーもー、何が獲っても文句は言わないよー」って感じでいたのだけど、実は今年も同じ気分だった。だけど、技術系で《狄仁傑之通天帝國》(実は観てます。感想は後ほど)が、助演俳優賞を『ギャランツ』が獲り始めたあたりから、もしかして今年の金像は、「香港電影黄金期を支えて復活したベテラン監督の娯楽作」対「往年の香港功夫電影に愛とリスペクトを捧げまくった若手監督コンビの実験作」の対決か!と思うようになってきた。
 その結果、《狄仁傑》は監督賞と主演女優賞(カリーナ姐!)を始めとした6部門、『ギャランツ』が音楽、助演男女優賞(テディ・ロビン&シウ・ヤムヤム)、そして頂点の作品賞を極めて4部門を受賞。プロデューサーのカートン、ボンクラ勇者ども…もとい監督コンビを始め、製作陣が大騒ぎで登壇し、はしゃいでいたのが印象的。Twitterでのフォロワーさんも、ギャランツ好きが多かったので、みんなで大喜び。

 よく考えれば、今年ノノミネート作は、狄仁傑やギャランツの他は『密告者』も観ていたし、脚本賞を受賞した『恋の紫煙』、助演女優賞にダブルノミネートされていた《月満軒尼詩》、諸事情につき感想が書けない《分手説愛你》と、観ていた作品が多かった。

 今年の金像のキーワードは、やっぱり「新旧交替」かもしれない。
先に書いたように、ベテランの徐克さんが炎の復活を遂げ、同じく復活したテディさんと往年の名女優シウ・ヤムヤムさん(同じくデレクさん作品『野・良犬』で助演女優賞受賞のキャリアあり)が助演賞をアベック受賞はしたけれど、作品賞はギャランツ、新人監督賞に着実なキャリアを築いている無間道組のフェリックス・チョンさん、そして昨年の助演男優賞に続いて今度は主演男優賞を受賞したニコというメンツをみてみると、改めてそれを強く感じるのであった。
 昨年の孫文、一昨年は『イップ・マン 序章』、3年前は『ウォーロード』と、内容がやや中国寄りの作品がここ数年の作品賞の受賞傾向だったけど(それゆえ大陸では“香港電影結束”なんてよく言われていた)、久々に香港ローカルな作品が賞をとったというのは、コテコテな香港映画好きとしては嬉しい限り。去年《歳月神偸》が数多く部門賞をとった時、もしかしてローカル作品が力を取り戻すのかもと思っていたけど、まさにそれが続いていたようで嬉しかった。この傾向は当分続いてほしいものである。

 主演男女優賞はどちらも悲願の受賞といった感じで、非常に嬉しい。
ニコは新人賞を受賞しているわけだけど、デビュー当時の問題児っぷり、自分の道を行こうとしてトラブルを多く起こしてきたワルガキイメージが長く続いていて、当時はもったいないなあと少し思ったこともある。しかし、セシリアと結婚して父親になり、さらに例の事件を経て今の彼をみると、ここ十数年で大きく成長したものだと感慨深いものを感じる。
 キミは確実に現在の香港映画を背負う明星となったのね、ニコ…。

 カリーナ姐さんも初の主演女優賞。ノミネートは多かったんだけど、なかなか獲れなかったんだよね。女優業の傍らビジネスも手掛け、夫となった影帝トニーとともに人生を歩んでいる彼女だけど、これで夫婦ともに影帝&英后カップル。ちなみにニコ&セシも同じ。残念ながら相方と一緒の授賞式じゃなかったけど、豪快に笑いながら受賞のスピーチをし、「多謝、老公(ありがとね、ダンナ)」といった彼女の姿はすがすがしかった。
 よっ、武則天!アナタは見事な女帝だ。(笑)

 その他、ユンファがいい男になって帰ってきたり、名誉賞を受賞したウィリー・チャンさんが喧嘩別れしたと言われていた成龍さんと和解したかのような抱擁を見せたり、コンサート中の學友さんが生中継でウィリーさんに捧げて歌う『My Way』や、音楽賞プレゼンターのクリス・リーのロケンロールでラフすぎる衣裳や、主演男優賞のプレゼンターがらうちん&周迅の《大魔術師》(現在撮影中のトニー主演最新作!)コンビだったり、アジア映画賞のプレゼンターがホウちゃんとヴィッキーという珍しすぎるコンビだったりと、なかなか面白いものが見られて嬉しかった。 

 あ、そうそう、アジア映画賞なんだけど、てっきり『モンガに散る』が獲るもんだと思ってたんだよね。ちょうどこの日に観てきて、非常によかったので。でもねー、2年連続で日本映画が受賞したんだよ。それも『告白』だったんだよ…。
 なんか、そこが個人的にはちょっとアレだったなーと思った次第。といっても、意見には個人差があります(笑)。

 最後に思いっきし蛇足。
 ところでもし、《狄仁傑》の日本公開が決定したら、いったいどんな題名になるのだろうか?『則天武后の名探偵』とかどうだろうか?それで歴史ファンを思いっきし釣る(笑)。
 いかがでせうかね?是非ご検討を>配給会社の皆さま。

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ヴェネチア映画祭、香港電影とウーさんに愛を!

 酷暑お見舞い申し上げます。
こちらもかなり暑くて、しんどいです。
ついでに中華ネタも夏枯れ気味…。更新少なくて申し訳ない。
そろそろ関東に戻るけど、中国映画の全貌のラインナップもかなり渋いころだなあ…。

 さて、先週はヴェネチア映画祭のラインナップが発表されたけど、なんだか例年より発表が早い気がする…と思ったら、2年前も7月下旬に発表されてたか(笑)。
 今年は香港電影迷にも馴染みが深いトラン・アン・ユン監督の『ノルウェイの森』のコンペ入りが発表されて日本では話題になっているけど、それと金獅子を競うのが徐克さん&アンディ先生の《狄仁杰之通天帝国》だったりする。これ、探偵ものだと話は聞いているけど、それしかわからないのでどんな作品なんだかはわからない。ここしばらくは徐克さんも迷走気味だけど、ここでスカッと痛快な作品が観たいところ。楽しみにしてるよん。

 で、それ以上にすごいのがアウトオブコンペ
オープニングナイトには、先日のブルース・リー週間の特集番組でも取り上げられた、ド兄さん&アンドリューさんの功夫大作《精武風雲》が選ばれ、その他にはスタンリーさん久々の新作(胡軍さんが出ている♪)、パン兄弟の3Dの新作(これにはショーンが出演。お得意のホラーか?)、そして、日本でも数人受賞している終身金獅子賞に選ばれたウーさんの新作(といっても共同監督か)《剣雨江湖》の上映が決定している。
 さらに、カンヌで言うところの「ある視点」部門に当たるオリゾンティでは、今年の香港国際電影節で上映された短編集《香港四重奏》のうち、クララ・ロー監督&彦祖主演作品がエントリーされている。他の作品は8月下旬にソウルで開催されるデジタル映画祭に出品されるとか。
 あと、同じオリゾンティに出品されるISAAC JULIEN監督の英中合作中編『BETTER LIFE』のキャストにMaggie Cheung, Zhao Taoとあるのも気になる。これ、ホントにマギーと、ジャ・ジャンクーのところのチャオ・タオ?

 こうやってみると、マルコ・ミュラーのアジア趣味がいつもに増して爆発している感もあるんだけど、このところ日本と世界の映画業界の目がトロント映画祭モントリオール映画祭に向かっていることもあって、このところあまり注目されなくなっているのがちょっと残念。でも、昔からアジア映画には理解を示してくれている映画祭なので、開催時には出来る限りサイバー追っかけできればいいかな。

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これがゼロ年代香港映画の到達点か。今年の金像奨の結果に思ふ。

 昨日は、香港で第29回香港電影金像奨が行われた。
 結果は、もにかるさんのblogをご参照ください。
 と、今年は手を抜かせていただきます(笑)。

 今年はTwitterでハッシュタグを打ちながらの、リアルタイムの実況つぶやきを初体験。時間帯的には毎週観てつぶやいている某大河ドラマとがっつりかち合ってしまったため、一時期つぶやきのタイムラインがかなり混沌としていたので、非中華系のフォロワーさんはビックリしたに違いない(すみません、とこの場で謝るなよ)。RTHKを聴きながらつぶやいたので、中華趣味系フォロワーさんたちとその場にいて大騒ぎしたような楽しさを味わった次第。

 以前ノミネートについて記事を書いたとき、「今年は何が獲ってもいいよ」的なことを書いたけど、後で「いや、やっぱり《十月圍城》の圧勝じゃないの?」と言われ、ああそうかあれがあったか、こりゃ某アバターよりも受賞ラッシュは堅いわけだわね、と思い直した次第。
 そんなわけで結果は《十月圍城》が最優秀作品賞・監督賞(テディ・チャン)・助演男優賞(ニコ)を始めとして、とにかく圧勝であった。この映画は、昨年秋のNスペ「チャイナパワー」でも紹介されていたから、映画や香港に関心がなくても聞いたことがある人は多いんだろうな。
 香港でUFOを設立して90年代に秀作を連発し、その後ハリウッドデビューも果たし、タイや韓国の映画のプロデュースも行ったピーターさんが『ウォーロード』に続いて大陸と組んで作り上げたこの映画、きっとtiffの特別招待かアジアの風で観られるだろうと思って未見なのだけど、かのドキュメントを観る限り、ピーターさんがこの映画にかける意欲に並々ならぬものを感じ、「100年前の香港で、孫文を守るべく立ち上がった人々の群像劇(でいいのか?)」といった内容の映画を、大陸と香港キャストのコラボレーション&各国から集まったスタッフで作り上げるのならば、意地でもヒットさせないと大変だよなあと思ったからである。
 で、実際大陸ではヒットし、香港でもこれだけ高く評価されたのだから、心身的に大変だったテディさんはもちろん、サポートで入ったアンドリューさんやヴィンセントさん、ド兄さんやニコのような香港キャストたち、そして全てのスタッフも感慨深げだろう。

 一見すれば、この作品は赤壁二部作のように、香港映画界が大陸と合作して作り上げた典型的な中華電影大作だが、よく考えてみると、大陸の力をうまく利用しながら、香港映画としてのアイデンティティを失わせることなく仕立てあげた作品じゃないかと思える。ま、観てないから推測でしか書けないけど、もしこの推測が間違っていなければ、ピーターさんって実は相当したたかな人ではないだろうか。いやあ、さすがプロデューサー、流れをうまく読んでいるよってね。

 しかし、ここ数年大陸側のネットメディアでは金像の結果が出るたびに「香港映画の時代は終わった!」的な論議がでてくるんだけど、はたして今年も出たのかなあ。
 この大陸側の意見(もしかして香港側も同意見?)に対して、ワタシは「否」と言いたい。
それは、ここ数年細々とした流れでつながれてはいたけど、今年の電影節あたりから、久々にローカルな香港(広東語)映画が復調してきたと感じるところがあるからだ。それを象徴するのが、脚本賞(アレックス・ロー)・主演男優賞(ヤムヤム)・新人賞&主題歌賞(共にアーリフ・リー)を受賞した《歳月神偸》。近日中に感想をアップさせるけど、中心街に現存する古い街並みをロケに使い、再開発ラッシュの香港で古いものを見直そうという動きに同調するかのように作られた映画だと思ったけど(注・意見には個人差があります)、このような香港人のアイデンティティに訴えながらも、映画としてよく作られた作品が高く評価されたのは本当に喜ばしい。しかも香港だけでなく、ベルリンで未来の観客=子供たちにも支持されて賞を受けたという国際的なお墨付きがあればなおさらである…って、これこそこじつけかな(笑)。

 今年の金像奨の結果から考えたのは、《十月圍城》がここ10年ばかりの香港映画が目指してきた道の到達点といえるべき作品であるのに対し、《歳月神偸》は今後のローカル香港映画の未来を示すきっかけじゃないかということ。香港映画をこよなく愛する身としては、経済や産業の急成長でその存在を見せ付ける大陸に、娯楽面で呑み込まれることなく、ローカル作品を積極的に作っていくことでアイデンティティを保たせて、世界に打って出る可能性もないわけではないと思っているので(今回ノミネートが少なかった《復仇》なんてまさにそうだよね)、やっぱり香港電影迷はやめられないなあ、と思いを新たにしたのだった。というわけで、長文は以上。

 最後に、その他の受賞作に対して、二、三思うことがあるので言ってみる。

 ○主演女優賞のクララ・ウェイさんは久々の銀幕復帰だとか。しかも受賞作がマレーシア映画『心の魔』。…ああ、今後チェックすべき国の作品が増えたのはいうまでもないけど、やっぱり去年tiffに行っておくべきだったかしら(泣)。

 ○最優秀アジア映画賞を受賞した『おくりびと』、オスカー外国語映画賞を始めあらゆる映画賞を獲り尽くした感じで「へー、またかよ…」と最初は幾分醒めた目でみてたんだけど、よく考えれば大陸の《建国大業》と《南京!南京!》がもろドメスティックな愛国映画だったので、このへんを選ぶんだったらむしろ日本映画に、でもさかなのこはどうよって感じでノーチョイスだったのかもね。

 ○その映画の監督、滝田洋二郎監督のスピーチは日本語。この監督、最近の仕事があまり好きじゃないのだが、かつてはピンク映画で一世を風靡し、80年代から90年代初旬まで面白い作品を次々と作っていた人。それを思い出させてくれたのが、「ボクがかつて作った《Yen Family(木村家の人びと)》が香港で公開されて大ヒットで…」という言葉だった。そうだ、この方、決して万人受けの映画ばかりを作っているわけじゃなかったんだ。今度ちゃんと木村家観なきゃ!と思わせてくれた。
 で、件の受賞作。うーん、いい映画だってのはわかるんだけど、それでもやっぱり…とモニョモニョ言いたいことはあるんだけど、中華とは全然関係ないのでここは閉じる(苦笑)。

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聞くところによると、ベルリンっ子は奥運會より電影節らしい(嘘)。

 …なんかこの週末、全世界的にものすごいことになっているんですけど。
まずは温哥華奥運會。大陸は相変わらずの大選手団だからどーでもいいとして(笑)、本日、開会式で確認したところ、香港からはショートトラックの選手が一人、台湾からはリュージュとスノボに参加とのこと。みんなで応援しよう!
 そんな中華圏では、旧正月で忙しいため、開会式の放映がないらしい。しかし今年の奥運會はタイミングが悪いねー。さらに情人節も初一にあたっているわけだから、なんとも。

 で、そんな時期にもかかわらず、11日から始まっているベルリン映画祭
毎年この時期開催なので、四年に一度は冬の奥運會とかぶるのはいうまでもないのだが、前回のかぶりでは、コンペに出品されていた『イザベラ』音楽賞を受賞
 今年は香港映画のコンペ出品作はないけど、張藝謀がコーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』をリメイクしたクライム時代劇コメディ《三槍拍案驚奇》が入っているので、これをフォローするってことで。…これ、香港&中国合作なのな。
 しかしこの名前、言いにくそう。とりあえず「やりび(ザ・ミッション/鎗火)」にならって、「さんやり」でいい?

 この他、香港&中国合作映画としてのエントリーはアレックス・ロー監督の《歳月神偸》がジェネレーション部門、旧正月映画の《蘇乞兒》がスペシャル部門、そして成龍さん&宏くんの《大兵小将》が特別招待と、探すといろいろあったりする。

 しかし、驚いたのがこれ!王家衛の『天使の涙』レトロスペクティブ上映っすよ!ああ、そうか、これって14年前にベルリンに出品されていたんだ。でも、出品されていたからといって、なんでこれ…なんて言ったら顰蹙ですかねー(笑)。

 あとは台湾からもフォーラム部門に出品されているけど、それは後ほど確認かな。ホウちゃんの『憂鬱な楽園』も上映されるのね。
 奥運會や旧正月の大騒ぎにまぎれないように、しっかりサイバー追っかけしようと思った次第(笑)。中華電影以外にも気になる映画がいくつかあるもんでね。

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いったい何が獲るんだか?香港電影金像奨ノミネート発表

 もにかるさんKumiさんのblogですでに記事にされていますが、先日、4月18日に行われる香港電影金像奨のノミネートが発表されました。
 …んー、まあ、ノミネートは意外性もなくて順当ってところかな。今年の日本アカデミー賞みたいなノミネートだ、なんて思ったりして(笑。あれのノミネートも順当だと思った)。 

 しかし、ピーターさん&テディさんの渾身の大作《十月圍城》のノミネート数がすごい。19部門ノミネートだって。他の映画賞はまだ出ていないんだっけか。これで決まるのだろうか。これじゃアバター祭りならぬ十月圍城祭りになりかねないのか?なんちって。

 俳優賞では、ヤムヤムが主演で2作品ノミネート、ヴィッキーが主演と助演でやはりダブルノミネート。ここはヤムヤムに獲っていただきたい気がするな。主演女優賞は案外大穴でクララ・ウェイさんが行くかも。ありえそう。
 しかし、不思議に思ったのは音楽賞。富田恵一って富田ラボの富田さんだよね、キリンジや中島美嘉やCHEMISTRYにステキな曲を提供しているあの方だよね。…でも、いくら香港人のリー・チーガイが監督しているからって、いくらビル・コンがプロデュースしているからって、『昴』は日本語台詞の日本映画じゃんかよー。ここでノミネートしちゃっていいの?
 最優秀アジア映画賞…。なんか気分的には《南京!南京!》と『建国大業』には獲ってもらいたくない(涙)。でも日本映画のノミネートもどこかで聞いたようなラインナップ。

 こんな感じでややテンション低めですが(それは決してトニーがノミネートされてないからじゃないぞ)、主要賞は何がとっても文句はないわけで、自分が好きだった映画が獲ってくれれば嬉しいに越したことはない、という結論で落ち着きませう、はい。

 最優秀作品賞
  《十月圍城》
  『赤壁 決戦天下(レッドクリフpart2)』
  《音樂人生》
  『新宿事件(新宿インシデント)』
  《竊聴風雲》
     
 最優秀監督賞 
  テディ・チャン(十月圍城)
  アン・ホイ『夜と霧』
  ジョン・ウー(赤壁 決戦天下)
  イー・トンシン(新宿事件)
  アラン・マック&フェリックス・チョン(竊聴風雲)

 最優秀脚本賞
  郭俊立、秦天南、陳嘉儀、陳銅民(十月圍城)
  ワイ・カーファイ&アウ・キンイー《再生號》
  スエト・カムユン他『意外』
  アレックス・ロー《歳月神偸》
  アラン・マック&フェリックス・チョン(竊聴風雲)

 最優秀主演男優賞
  ワン・シュエチー(十月圍城)
  サイモン・ヤム(夜と霧)
  アーロン・クォック『殺人犯』
  サイモン・ヤム(歳月神偸)
  ラウ・チンワン(竊聴風雲)

 最優秀主演女優賞
  チャン・ジンチュー(夜と霧)
  クララ・ウェイ『心の魔』
  ヴィッキー・チャオ《花木蘭》
  スー・チー《游龍戯鳳》
  サンドラ・ン(歳月神偸)

 最優秀助演男優賞
  レオン・カーファイ(十月圍城)
  ニコラス・ツェー(十月圍城)
  チャン・チェン(赤壁 決戦天下)
  スタンリー・フォン(意外)
  アレックス・フォン(竊聴風雲)

 最優秀助演女優賞
  李宇春(十月圍城)
  ファン・ビンビン(十月圍城)
  ヴィッキー・チャオ(赤壁 決戦天下)
  デニス・ホー(游龍戯鳳)
  ミッシェル・イエ(意外)

 最優秀新人賞
  李宇春(十月圍城)
  朱[王旋]《涙王子》
  李治廷(歳月神偸)
  鍾紹圖(歳月神偸)
  陳法拉《Laughing Gor之變節》

 最優秀撮影賞
  アーサー・ウォン(十月圍城)
  潘耀明《白銀帝國》
  ロイ・ルー&チャン・レイ(赤壁 決戦天下)
  秦鼎昌(涙王子)
  北 信康(新宿事件)

 最優秀編集賞
  許宏宇、黄海(十月圍城)
  デヴィッド・ウー&アンジー・ラム他(赤壁 決戦天下)
  張経緯(音楽人生)
  デヴィッド・リチャードソン(意外)
  コー・チーリョン他(竊聴風雲)

 最優秀美術賞
  麥國強(十月圍城)
  ハイ・チョンマン[美術指導]他(白銀帝國)
  ティン・イップ(赤壁 決戦天下)
  ハイ・チョンマン他《風雲2》
  ヨン・ファン他(涙王子)

 最優秀衣装デザイン賞
  ドーラ・ン(十月圍城)
  ハイ・チョンマン他(白銀帝國)
  ティン・イップ(赤壁 決戦天下)
  ハイ・チョンマン&ドーラ・ン(風雲2)
  ヨン・ファン(涙王子)

 最優秀アクション指導賞
  スティーブン・トン・ワイ他(十月圍城)
  コーリー・ユン(赤壁 決戦天下)
  馬玉成(風雲2)
  チン・カーロッ(新宿事件)
  谷軒昭《錦衣衛》

 最優秀音楽賞
  チャン・クォンウィン&ピーター・カム(十月圍城)
  岩代太郎(赤壁 決戦天下)
  于逸堯(涙王子)
  ロー・ターヨウ『復仇(冷たい雨に撃て、約束の銃弾を)』
  富田恵一『昴ースバルー』

 最優秀主題歌賞
  「粉末(十月圍城)」 李宇春
  「久遠の河(赤壁 決戦天下)」alan
  「木蘭情(花木蘭)」孫燕姿
  「麥兜[口向][口當][口當](麥兜[口向][口當][口當])」The Pancakes
  「歳月軽狂(歳月神偸)」李治廷

 最優秀音響効果賞
  《十月圍城》
  『赤壁 決戦天下』
  『音楽人生』
  《風雲2》
  《錦衣衛》

 最優秀視覚効果賞
  《十月圍城》
  《再生號》
  『赤壁 決戦天下』
  《風雲2》
  『カンフーサイボーグ』

 最優秀新人監督賞
  翁子光《明媚時光》
  張経緯(音楽人生)
  周顯揚(殺人犯)

 最優秀アジア映画賞
  《南京!南京!》
  『建國大業』
  《風聲》
  『崖の上のポニョ』
  『おくりびと』

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クリーン(2004/フランス・イギリス・カナダ)

 マギーと彼女の元ダンこと、オリヴィエ・アサイヤスの出会いとなった(そして二人の運命を決めた)映画『イルマ・ヴェップ』を観たとき、いったいなんなんだこれは!と唖然茫然としたことを今でも覚えている。

 人気女優マギーが香港からフランスに招かれ、ベテラン監督のもとで女盗賊を演じる映画の撮影をするけれど、監督はイカレてるし、そのせいで撮影は全然進まないし、英語は通じないし、彼女についたフランス人スタイリスト(だったと思ったな)はレズビアンで当然の如く迫られるし、取材に来た新聞記者は香港映画を誤解(!)してるし、その状況に戸惑った彼女もお気に入りのロックを聞きまくってハイになった挙句、映画の衣装を着込んで、ホテルの別室から宿泊客のものを盗み出してしまうの至るなどと、なんともカオスな展開が繰り広げられた。そして出来上がった作品がまぁ、ノイズにあふれたアヴァンギャルド丸出しのもので、この後マギーがアサイヤスと結婚したと聞いたときには、アサイヤスはこのときにすでにマギーらぶらぶだったんだなーと思ったものであった。それを思えば、件の映画がああなったのには、大いに納得したもんだったわよ。

 さて、97年の終わりごろに彼らの結婚が伝えられ、それから『花様年華』を経て'03年ごろに、この二人の離婚を知ったわけだったのだが、当時は何のかのいいつつ愛は醒めるもんなのね、とありきたりのことをつぶやいてみた記憶がある。しかし、翌年のカンヌにこの『クリーン』が出品され、そこで彼が別れてもマギーを起用して映画を撮ったことを知って、さらに何だかわけがわからなくなった。え、それってどーゆーこと?別れてもまだ好きなんかい、アサイヤスよ!とつっこんだっけなぁ。
 この映画も日本では特別上映&テレビでしか観ることができず、今後見る機会はないのね、なんて思っていたら、以前も書いた通り今年の春にアサイヤスの新作『夏時間の庭』が評判を呼んだことから公開が決まったことを知った。ちょうど上京する機会があったので、このチャンスを逃がすわけにはいかんと観に行った次第。

 エミリー・ワン(マギー)はパリのケーブルTV局で人気を博した歌手志望のビデオジョッキーだったが、ロンドンでカナダ人ロックスターのリー・ハウザーと出会い結婚した。二人の間にできた息子ジェイ(ジェームズ・デニス)をバンクーバーのリーの実家に預けて、各地のライヴハウスを転々としていたが、行き詰まった二人はドラッグで身を持ち崩していた。
 カナダ・ハミルトン。メトリックがステージに立つライヴで、彼らはレコード会社と交渉にでるが、話がこじれてしまう。この件で怒ったエミリーはリーと激しく口論し、泊まっていたホテルを飛び出してしまうが、翌朝戻ってみると、リーがホテルで死んでいた。死因はドラッグの過剰摂取。彼女もまたヘロインを摂取していたため、すぐさま警察に逮捕されてしまい、半年間服役することになる。
 出所後、エミリーはリーの代理人となっている父親のアルブレヒト(ニック・ノルティ)と会う。彼の妻ローズも含め、世間では「エミリーがリーを殺した」と非難する人間が多かったが、アルブレヒトは彼女の立場を思いやり、その思いを受け止めてくれていた。しかし、エミリーがジェイに会うことを願うと、彼はそれを拒むのであった。

 ジェイと再会するには、今までの自堕落な生活を改め、働かなくてはいけない。そう思ったエミリーは、青春を過ごしたパリへと渡る。叔父に紹介してもらった中華料理店で働きながら、服役中に出会ったミュージシャンと共同で作った作品で歌手デビューをつかもうと試みる。しかし、頼りにしていたリーの友人は当てにならず、元マッシブ・アタックのトリッキーに自分のデモを聴いてもらうチャンスを逸する。薬物治療の副作用に苦しみながら働く彼女を、中華料理店の従業員は「こいつヤク中だしな」と蔑む。その仕事もやめてしまった彼女は、旧友たちとつるむ自堕落な生活に逆戻りするが、かつての仲間がやはりオーバードーズで命を落とした姿を見てはっと我に返る。

 エミリーはVJ時代の彼女に憧れていたというイレーヌ(ジャンヌ・パリバール)のもとに行き、仕事を紹介してもらう。それはプランタンのブティックで東洋人観光客の相手をするという、彼女にとっては苦手なものであったが、ジェイに会うには仕方がないと考え、引き受けることにする。さらにもう一人の旧友エレナ(ベアトリス・ダル)の家に住むことにもなり、彼女は生まれ変わろうと努力する。
 そんな時、妻の治療のために、アルブレヒトがジェイを連れてロンドンにやってきた。彼はエミリーとジェイを会わせることにする。エミリーがロンドンに行くことを拒んだため、週末を使って二人でパリに行くことになるが、ローズは未だにエミリーを憎んでおり、彼女に「ママがパパを殺した」と教えられたジェイもまた、エミリーに憎しみを抱いていた…。
 
 観た後にまず一言。
「ああ、観てよかった。意外とまともな話だった…(苦笑)」
 いくらこのコンビの前作が、あんだけひどい(こらこら)話だったり、アサイヤスがここ数年で撮ってきた作品に日本のアングラカルチャーやら香港ノワール的モチーフやらを取り入れたりしてきても(ちなみにまだ両作品とも観れていない。てか観る機会あるのか?)彼は決して自分の趣味に走りまくって語る物語を置き去りにする“フランスのクエタラ”ではないというわけよね。『夏時間』みたいな作品も撮れるわけだし。
 ええ、まぁ、それでいても、いくら夫婦関係をやめたにしては、これはやっぱり彼のマギーらぶらぶっぷりが相変わらず前面に出ている映画ではあるし、あまりにもらぶらぶっぷりがすごくて、物語がよくわからんっていう批判(これは藤原帰一さんがAERAで書いていたっけ)もよくわかる。さらにいろんなところでツッコミたくもなるし、つっこんでいけばきりがなくなる。

 でも、これが何だか捨てがたいなぁと感じたのは、彼女演じるエミリーがどん底に落ちようとも生きることに必死であることに共感を持ったことと、現代の人間がまっとうに生きるには、やっぱり働かなきゃダメであるという、どうにもこの映画のテーマにそぐわない(苦笑)ことを感じてしまったことだったりするのである。前者はとりあえずおいといて、この後者の考えをちょっとだけ。
 冒頭、リーと暮らしてヘロインでデロデロになっている彼女は、夫を成功させたい一心で、周りに噛みついていく。これは彼を愛しながらも、一方で依存心が強いんじゃないかと思わせられないこともない。そういうように見られるから、エミリーがリーを堕落させたと誤解されるのも納得できる。だけど、彼女は決してそういうつもりだったわけじゃない。堕落してしまったからこそ、依存心も高まるんじゃないかな。これって某○りPのことにも微妙に通じるものがある。やっぱりダンナは当てにしちゃいけないのよ(怒られそうなことを平気で書いてすんません)。
 リーを失ってジェイを手元に置きたい、なんてエミリーは例によって調子のいいことを考えるけど、それを拒まれたらやはり全力で自分がまっとうになるしかない。そして、まっとうになるために、自分の失ったものを取り戻すには、やっぱり自分のために働かなきゃいけない。だから、彼女はどんなに嫌なことでやろうとする。

 だけど…、それでいても、ジェイとともに自分の願いであった歌うことも諦められない。ジェイと会うため、そして自分の生活の安定のために、サンフランシスコでのレコーディングを諦める彼女だが、ジェイと出会い、SFで彼を産んだということがきっかけで、歌への渇望も高まる。それが成功に結びつけるかどうかはわからないけど、結局彼女は働くことよりも、歌うことに自分を賭ける。
 これやっぱり失敗に終わってしまう可能性だって、もちろんあるのだろう。それでも、彼女はもう昔の自堕落な彼女じゃない。もしデビューできなくても、きっと諦めずに何度も挑戦するかもしれない。その間には働いて、夢に賭ける準備期間にすることだってできる。そんなふうにも読み取れる。子供も夢も、なんていう欲望は、ホントに都合のいいことかもしれないけど、SFで迎えるラストシーンで、すっきりと額を出したエミリーがスタジオのテラスから、ベイエリアの遠景を見つめる姿には、そんな欲望も飛び越しちゃって、自分のやりたいことをやりきって未来を見つめるような思いがあるようで、何だか神々しさまで感じてしまった…ってこんなことを書いてるアタシもまた、マギーに感情移入しすぎ?でも、カンヌで女優賞を獲ったのは、案外こんなふうな理由があったのかもね(笑)。

 たとえステロタイプな役柄をふられたとしても、そこからもはみ出してしまうのがマギーの魅力だと思うことがある。中華圏から欧米に出た女優の中でも、マギーは突出したものを持っていて、いくらツーイーやコン・リーがハリウッドで頑張っても、やっぱり彼女にはかなわない。あ、ミシェル姐もまた別格。
 それゆえに、監督たちは彼女をミューズとして崇め、彼女をイマジネーションの源とするのかしら。思えば、アサイヤスだけじゃなく、楊凡も『ストーリー・ローズ』で彼女の複雑さを引き出していたわけだし、王家衛作品での彼女は言わずもがな。最近のマギーはそんな作品ばかりにでているので、もーちょっと出てほしいとは思うけど、彼女もマイペースにやってるからね。ま、しょうがないといえばしょうがないか。
 そして、アサイヤスの次にマギーにやられた監督は…、そうか、オマエか、クエタラか!この秋公開のイングローリアスなんとか(題名長すぎ!)では泣く泣く出番がカットされたというけど、転んでもただで起きなさそうなクエタラだから、次回作で絶対マギーを大フューチャーしてくるかもね(嘘)。

 と、アサイヤスに負けじおとらじのマギーらぶらぶ状態であれこれ書いてきたが、最後にこれだけ言わせてくれ。 
 いくらマギーにらぶらぶだとはいえ、アサイヤスよ、彼女に歌わせるってーのはもーちょっと考え(以下略)。

監督&脚本:オリヴィエ・アサイヤス 撮影:エリック・ゴーティエ 編集:リュック・バルニエ 音楽:ブライアン・イーノ他
出演:マギー・チャン ニック・ノルティ ベアトリス・ダル ジャンヌ・バリバール ジェームズ・デニス

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