中華圏以外の映画

名もなきならず者たち、銀河に新たなる希望をつなぐ。

 2016年もあともう少しで終わり。
 中華電影の上映が減ったり、個人的にもHP本館がなくなったりとここに書けないこともいろいろありすぎて、blog記事も例年になく書けませんでしたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。これが今年最後の記事ですが、予約投稿かけているので、それまでに目標だった今年観た映画の感想が全部書けているかどうかは果てしなく不安です(苦笑)。

 さて、映画界でのこの冬最大の話題といえば、一代宗師以来3年ぶりの出演となるトニー・レオン主演、共演に金城くん、イーソン、angelababyが揃い、王家衛がプロデュースした《擺渡人》!…と言いたいところなんだけど、残念ながらまだ観る機会に恵まれません(泣)。この冬香港や台湾に行くことができないからです。
 と言うのはあくまでも中華圏の話題で、全世界的な話題に目を向ければ、昨年より製作が再開した20世紀が誇る宇宙ファンタジー映画の金字塔、スター・ウォーズ(以下SW)シリーズの初スピンオフ、『ローグ・ワン』が全世界的にヒットしていること。これにアジア人初のSWメインキャストとして、ド兄さんことドニー・イェンと姜文が出演すると1年ちょっと前に発表されたときには、中華電影迷の間に大きな反響を呼んだのは言うまでもない。

 そんなわけで今年最後の記事は、ローグ・ワンについてです。
SWシリーズはエピソード4から6をTVで何度も観て、昨年公開された7(フォースの覚醒)を劇場で観ているけど、熱心なファンでもないし、まさかこのblogで書こうなんて昔の自分なら信じられなかっただろうな…^^;



 エピソード4『新たなる希望』(いわゆる第1作ですな)の開幕に流れる「反乱軍ゲリラが帝国軍から惑星破壊兵器デス・スターの設計図を入手し…」のエピソードを、2年前のハリウッド版ゴジラを手がけたギャレス・エドワーズ監督によって映画化。 

 デス・スター設計を手掛けた父親を持つ札付きのならず者ジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)を中心として結成された愚連隊(これが題名の由来)が敵陣に切り込む物語だけど、このローグ・ワンの中心メンバーとなっているのが、ド兄さん演じる盲目の僧兵チアルート・イムウェと、姜文演じる相棒のベイズ・マルバス。



 SWシリーズと言えば、35年以上昔からも全く変わらないクラシカルな宇宙空間に展開する激しいバトルがお約束だけど、今回はそれに加え、緑豊かな惑星を舞台にした激烈なゲリラ戦も繰り広げられる。その共存は実に現代的だし、見ごたえがある。
 そんな中でひと際目を引いたのが、やはりチアルート。
いやもうこっちがどーのこーの言わなくても、とにかく観ればわかるとしか言えないあのアクション。宇宙最強が決して伊達じゃないのがわかる(笑)。そもそもはクロサワリスペクトと言われるSWシリーズに初めて出演したアジア人俳優が日本人じゃないのが残念だとか、今や米国に次ぐ第2の市場となった中国狙いのキャスティングかとかの雑音が多少聞こえてきたけど、ドニーさんのインタビューを基にしたこの記事を読むと、そんなことは決してないことがわかる。ギャレスもまた、ド兄さんを起用したのはアクションだけでなく俳優として見込んだからというのも嬉しい。

 チアルートはただの強者ではない。人をつなぐ力として語られるフォースが消え去ってしまった時代に、その力は持てないものの、存在を信じて限りなくジェダイに近づこうとしている。加えてユーモアも持っていて、若きジンの可能性もフォースと同じくらい信じている。そういうキャラクターができていて、それでいてのあのアクションなのだから説得力があっていい。ホントに嬉しいものである。
 彼の相棒となる姜文のベイズも、思った以上にいいヤツだったのが嬉しい。アジア映画によく見られる(含む日本な)男同士の熱い絆で結ばれている二人なので、なんか一部がザワザワしちゃってるけど(笑)、とかく一匹狼タイプな姜文がこういう無骨な男を演じるわけだし、そーいえばこの二人は関羽の映画こと『三国志英雄伝 関羽』(すいません残念ながら未見です)でも共演しているし、ド兄さんも監督兼任したことがあるから、きっと気は合うんだろうなって思ったりして。

 そんな“ならず者”たちが果たすミッションとその運命は…ってのはここでは言えないけど、一つ言うとなれば、これが見事に『新たなる希望』につながっていくというのも素晴らしい。これが初SWなら、これからエピソード4がどう展開するかという楽しみが味わえるし、ヘヴィなファンもまた楽しめるのがいいよね。
 そして、この映画でド兄さんを初めて知った人もまた幸せだと思う。2月には再びのハリウッド出演作『トリプルX:再起動』もあるし、何と言っても4月には当たり役である『葉問3』がある!もちろん、過去作品もたくさんある。これがきっかけで、アジアンアクションにハマれる楽しさがあるからね。

 というわけで、来年は『葉問3』を始め、たくさんの香港映画が日本でも上映され、たくさん観られますように。
 そして皆様、どうか良いお年を…。May the force be with us! 

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見習い(2016/シンガポール・ドイツ・フランス・香港・カタール)

 映画祭の醍醐味は、世界の映画がたくさん観られること。ゆえに、アジア映画を多く紹介してくれるTIFFやフィルメックスの存在は本当にありがたい。
 さらに、ここ数年の世界の映画祭ではフィリピン映画が連続して受賞し、それに伴って東南アジア各地の映画が注目を集めているとのこと。今年のTIFFでも、コンペで観客賞と主演男優賞のダブル受賞となったのが、フィリピンの『ダイ・ビューティフル』だった。

  この『見習い』は今年のカンヌの「ある視点」部門にシンガポールから出品された作品。シンガポール映画といって思い出すのは、この作品で製作総指揮を手がけている『TATSUMI』のエリック・クー監督や、カンヌでカメラ・ドールを受賞した『イロイロ ぬくもりの記憶』など。だけど残念ながら両作とも観る機会に恵まれなかったので、これが初シンガポール映画となった。
 クー監督、イロイロのアンソニー・チェン監督、そして本作の監督のブー・ユンファン監督も名前からしていずれも華人なのだが、はたしてシンガポールは中華圏なのだろうか?と一瞬思った。しかし、そういうわけでもないらしい、とこの映画を観終えた後に思った。
 と言いつつも、この映画を観ようと思った一番の要因は、クー監督と共に我らがパンちゃんことパン・ホーチョンが製作総指揮に加わっていたからなのである。
すいませんそんな理由で本当にすんません。

 日本と同じく死刑制度を持つシンガポール。刑務官になった若いアイマンは、ベテラン死刑執行人ラヒムの元で執行人見習いとして働くことになる。アイマンの父は殺人を犯して死刑に処されたが、彼はラヒムが父を処刑していたことを知る。

 アイマンとラヒムはマレー系だが、彼らの同僚の刑務官や死刑囚には華人もいる。シンガポールには他にもインド系も多く住むということだが、華人がマジョリティであることを知ると主人公二人はマイノリティに位置するということか。このへんは監督も初映時のQ&Aで語ったようなのでそちらに譲るけど、映画の中盤で白人のBFと結婚してオーストラリア(だと思ったが)に移住するアイマンのお姉さんのエピソードもあるので、シンガポールがただ華人の多い国というわけではなく、多民族国家であることが明確にわかるように描かれていたのが興味深かった。

 世界的には制度廃止の方向に向かっている死刑だが、日本にももちろん死刑制度はある。そういう背景もあるので、いかに刑が執行されるのかという点でも興味深く観たけど、カンヌで上映されたときにはおそらく観客は衝撃を受けたかもしれないし、批判もあったんじゃないかと思う。現在の日本でもこういうタイプの作品は作れなさそうだ。
 もちろん、ブー監督もそのへんはわかっているようで、死刑制度の是非が主題ではなく、これを媒介にした人間関係を描きたかったということで、脚本の作成に3年(その間東京にも滞在したとか)、母国の多くの執行人や死刑囚の家族たちへのインタビューを重ねて作り上げ、若い刑務官からの視点を主にして死刑執行に新たな視点を当てたかったとのこと。

 死刑までの流れは非常に丁寧で複雑なプロセスを要し、それでいてあっさりと執行される。そこの描かれ方がリアルなので見入ってしまうが、父を死刑で失ったアイマンのようなケースはありうるのだろうか?それは映画ならではの面白さではあるのだけど、肉親を殺された者と殺した者が偶然にも出会ってしまった際の心の乱れは、どんな人間においても共通するものがあるのだなと思った。



 当日のQ&Aでは当然クー監督やパンちゃんとの関わりが質問で出たけど、クー監督はブー監督の長編第1作に引き続いてのプロデュースで、パンちゃんには脚本を読んでもらって資金面でのプロデュースを買って出てもらったそうだ。両者ともTIFFの常連であり、アジアを股にかけて活躍する映画人。特にパンちゃんは昨年のレイジーに引き続いてのプロデュースであると考えると、中国だけでなく東南アジアにも目に向けたよさと、今後の東南アジア映画の面白さは彼らが陰でサポートして発展していくのだろうな、と改めて思った次第。今年の大阪アジアン映画祭で上映されたマレーシア・シンガポール合作の『ご飯だ!』は、パンちゃんの盟友チャッピーの初監督作品であるしね。

中文題&英題:身後仕(Apprentice)
監督&脚本:ブー・ユンファン(巫俊鋒) 製作総指揮:エリック・クー パン・ホーチョン
出演:フィル・ラフマン ワン・ハナフィ・スー マストゥラ・アフマド

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真夜中の五分前(2014/日本・中国)

 昔から映画は国境を越えるものであり、欧米だけじゃなくて日本もアジアで多く合作を作ってきた。日本の映画会社が香港や台湾でロケしたり、日本の技術スタッフが現地で仕事したり中華圏の俳優を出演させたりと方法は様々だったらしく、そういえば李小龍作品は日本の西本正さんがカメラを回してるんだっけ、と過去記事から改めて気づく。このへんはお詳しい方に負けるので、詳細はググってもらえれば(^_^;)。
 ワタシが中華電影にハマった頃もこういうアジアンコラボは積極的に行われていたけど、当時は日本の俳優や音楽家が参加するくらいって感じだったと思う。それでも好きな俳優やスタッフが香港や台湾で仕事するなら嬉しいものだったけど、そんなに好きじゃないとどーでもよかった。☆月とかな(苦笑)。

 この『真夜中の五分前』は『GO』や『世界の中心で、愛をさけぶ』で知られる行定勲監督が、本多孝好による同名の小説を、上海を舞台に移して映画化したもの。すでに大陸などでは公開済み。驚いたのは完全に日中合作で作られたので、自国映画枠での公開ができたとのこと。そして主演が三浦春馬なので、アミューズ上海が製作に加わっていたことも知って、アミューズが昔香港で合作映画に取り組んでいたのを思い出してたりして。kitchenとかね。

 良(三浦春馬)は上海でアンティーク時計の修理工をして暮らしている。住み込みで働いているので、仕事が終わったら近所の屋内プールに泳ぎに行く。そこで彼は美しい女性若藍(劉詩詩)と出会い、贈り物を選んで欲しいと頼まれる。良が提案したのは、自分の店の時計だった。
 それから、良は若藍と瓜二つの一卵性双生児の妹如玫(劉詩詩)とも出逢う。如玫は女優をしていて、映画プロデューサーの天倫(ジョセフ)と婚約していた。控えめで聡明な若藍と華やかで妖艶な如玫と付き合っていくうちに、良は若藍にひかれていく。
しかし、若藍と如玫は旅行先のモーリシャスでクルーザーの事故に遭う。生き残ったのは如玫だった。間もなく如玫と天倫は結婚する。
 それから1年後、良は天倫から連絡をもらう。彼曰く「如玫はもしかして如玫じゃないかもしれない」と。良は久しぶりに如玫と出会うが、確かにすっかり変わってしまっていた…。

Yukisada
岩手日報2014年12月23日付。この記事、web化されてないのが残念。拡大できます。

 行定さんの作品は割とよく観ている。監督作がかなり多いので(これの前に撮った作品が昨年公開されてたし、ドラマや舞台演出もしている。最近はWOWOWのドラマ『平成猿蟹合戦図』や舞台『ブエノスアイレス午前零時』なども)全部は観てないけどね。『GO』『今度は愛妻家』『パレード』が好きかな。
 『南風』の感想にも書いたけど、行定さんはアジア映画のスタッフやキャストを積極的に作品に起用してきたので、いつかはアジアンコラボを手がけるのだろうと思っていた。フィルメックスでのQ&Aや上の新聞記事(写真)でもわかるように、台湾ニューウェーブや王家衛作品に影響を受けていると言われたら大いに納得する。
 今回は中華圏を代表する録音技術師・杜篤之さんを起用。それを先にわかっていたので、サウンドデザインに注意して聞いてみた。セリフは最小限で、がちゃがちゃしていそうな上海が舞台なのにかかわらず、背景の音はけたたましくはない。ジャンクーやホウちゃんの作品にも関わっている、半野喜弘さんの音楽も画面にすっと入り込むような感じでいい。行定さんの映画はあまりおしゃべりな感じではない(『GO』は例外だろうけど)ので、これがいい効果を上げていて、舞台を移してもちゃんと行定さんの映画だとわかるのがいい。

 幼い頃からお互いを交換して生きてきた双子の姉妹のアイデンティティの揺らぎ。如玫は素直に若藍に憧れ、若藍は無邪気な如玫に嫉妬する。そうやって生きてきたのがよくわかるので、事故で一人になってしまった「彼女」は果たして如玫なのか、それとも若藍なのか、と観ている方も混乱する。二人を演じた劉詩詩は姉妹の演じ分けを意識していたそうなので、生き残ったのがどちらなのかというのは何回か観ればきっと分かりそうなんだけど、そのへんはどちらかと決めずに、曖昧なまま観ても無問題だと思う。かつてはこういう余白を残した作りの映画も多かったし、行定さんの昔の作品も思い出してた。一番最初に観た『ひまわり』がこれと同じ感覚だった気がする。
 彼が朝日新聞のインタビューで言われているように、今はわかりやすい映画が求められているので、こういうのは冒険に思われて企画が避けられるのは残念だなーと思う。実際、感想も生き残ったのがどっちか描いて欲しい的なものもよく見かけたけど、そういう見方はちょっと残念。わかりやすいからいいってわけじゃない。もちろんこの良さもわかっている人もいるだろうからね。

 春馬はあまり好みじゃないんだけど、今回は中国語のセリフも頑張っていたし、控えめな役どころで正解。こういうナイーブな男子が中華圏女子にはどう受け入れられたかはわからないけど。劉詩詩はドラマ『宮廷女官若曦(步步驚心)』でブレイクしたのか、そうか。おしとやかな雰囲気がハマっておりました。この作品から名前を中国名に統一したジョセフ(今後もこう呼びます)も手堅かった。やっぱり短髪が似合うよな。

 今までも、越境する日本/アジア映画はあったけど、監督が越境して撮るというのは久しくなかった気がする。日本映画ならなおさらのこと。香港でも韓国の俳優がメインキャストに抜擢されることも増えてきたし、去年観た『危険な関係』もホ・ジノさんが越境した撮ったので、失敗を恐れることなく、日本の映画監督さんはどんどん外に出て行ってもいいと思う。

 面白いことに、同じ東映系で来月公開される永作博美主演の映画『さいはてにて』は、台湾の新人監督が日本で撮ったという作品。これは偶然なんだろうけど、もしかしたら東映もこういう流れでアジアンコラボの可能性を探っているのかな、なんて思ったりした。国同士のいざこざやら周りの雑音など気にせず、今年はどんどんアジアンコラボが進んでもらいたいなーと思ったのでした。

原題&英題:深夜前的五分鐘(Five minute to tomorrow)
監督:行定 勲 原作:本多孝好 脚本:堀泉 杏 音楽:半野喜弘 録音:トゥー・ドゥーチー
出演:三浦春馬 リウ・シーシー チャン・シャオチュアン(ジョセフ・チャン) チャン・イーバイ 

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ジャ・ジャンクー フェンヤンの子(2014/ブラジル)

 今年の東京フィルメックスのコンペ部門審査委員長は、ジャ・ジャンクーでした。
 この人です。

Jiazhangke_venice

 これは6年前のヴェネチアでのショットです。
 もうひとつ。

Jiazhangke

 ふざけているわけじゃありません。たまたまこういう写真しかありませんでした。
 agnes bがよく似合う44歳です。「フィルメックスの顔」ともいわれる西島秀俊くんとも同世代ですね。
 映画監督としては『一瞬の夢』で長編デビューし、1998年のベルリン映画祭フォーラム部門に招待されたというけど、その年に金熊賞を受賞したのが、ブラジルのウォルター・サレス監督作品『セントラル・ステーション』。これは確かNHKも製作に加わっていたんじゃないかな。そしてこの年の審査委員にはレスリーがいたはず…。
 そのサレス監督がジャンクーを撮ったドキュメンタリーが、フィルメックスのサプライズ上映としてやってきた。なお、まだワークプリント版とのことで、詳細なスタッフクレジットがなかったのが残念。

 

初映時の舞台挨拶によると、ジャンクーとサレスさんの縁はこのベルリンから続いており、7年前のサンパウロ映画祭で対談した時にドキュメンタリーの製作と本の執筆の構想を打ち明けられたとかで、待望のプロジェクトだったのねってことがわかる。サレスさんの作品は先の『セントラル』の他、ガエル・ガルシア・ベルナルが若き日の医学生ゲバラを演じた『モーターサイクル・ダイアリーズ』を観ているのだけど、生真面目でしっかりした作品を作るイメージがあって、信頼できる監督だと思っている。そんなわけで、しっかりして見やすいドキュメンタリーで飽きることはなかった。

 ジャンクーの旅は、生まれ故郷の山西省汾陽から始まる。親友でもある俳優王宏偉と、『一瞬の夢』のロケ地や生家を歩いて回る。
 彼の長編劇映画はこれと『青の稲妻』が未見。それでも劇中の場面を挿入してくれるので、その頃と現在の風景を比較して興味深く観た。しかし、愕然とするのは、やはり文革の真っ最中に生まれているからということもあって、同世代なのに全く違う少年時代を過ごし、観てきた映画も全く違うものだったことだ。初めて観た映画が50年代の作品と言われて、70~80年代の中国の市井の生活が全く自分の想像に及ばないものだったことに改めて気付かされた。亡くなられたお父様が学校の先生だったってのは、なんだかわかる気がするわ。お母さんとお姉さまがご健在とのことで、家族との場面は微笑ましかった。
 過去作品として最も言及されていたのが『プラットホーム』。これも汾陽を舞台とし、ジャンクーのミューズである趙濤がデビューした作品なので、取り上げられるのはわかるんだけど、観た当時は結構きっつい作品だった記憶が…(苦笑)。ジャンクーたち自身より年代的に上の世代を描いているので、時代背景は理解できても同時代の作品とは受け入れがたかったのが原因かもしれないけど、やっぱりこれと『世界』が彼の代表作なのかな、と思ったりした。まあ、ワタシはエンタメにやや偏った『長江哀歌』『罪の手ざわり』の方が好きだったりするのだが。

 ジャンクーの旅は汾陽から北京へ行き、『世界』の舞台となった世界公園や、いとこの韓三明との会話の合間に、趙濤や余力為のインタビューも挿入される。母校の大学での講義では賞をうけたばかりの『罪の手ざわり』の話題も出て、次回作として『プラットホーム』を再編集し、現代版を作ると決意したところに、『手ざわり』の国内上映禁止の報が伝えられる。その失望を経て、新作にとりかかろうとするところまでをこの映画では映している。
 ジャンクーの作品は、身近なところからテーマが出発して、それが中国全体の問題として発展したところが興味深く観られているのかな、という気もする。実力があるから、その気になればエンタメも撮れるんだろうけど、多分撮りたいテーマはたくさんあるんだろうなという気がする。中華電影やアート系作品がほとんど来なくなっても、なぜか彼の作品はこっちまで来るので(笑)、必然的に観る環境には恵まれている。だから、きっと今後も観ちゃうんだろうな。
 しかし、手ざわりの時にもビックリしたもんだが、ジャンクーがとっちゃん坊や(こらこら)からうまく中年になったのに比べ、王宏偉がかなり変わってものすごいオッサンになったのは驚かされた。趙濤は観るたびに洗練されてきているけど、韓三明が全く変わらないのに妙に安心した。

…こんな感想しか書けないけど、いいかしらん?

原題:賈樟柯 汾陽小子
監督:ウォルター・サレス
出演:ジャ・ジャンクー ワン・ホンウェイ チャオ・タオ ユー・リクウァイ ハン・サンミン 

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南風(2014/日本・台湾)

 現在、東北芸術工科大学映像学科で学科長を務めていらっしゃる映画監督の林海象さんが、台湾の映画人と強いつながりを持っていると知ったのは本当につい最近のこと。地元の劇場で海象さんの特集企画があり、濱マイクシリーズの『我が人生最悪の時』を初めて観たのだが、台湾がらみの話だったなんて、ホントに観るまで知らなかったのだよ。バカだよねーオレ。その流れで、1996年に唐十郎さんの脚本・主演で『海ほおずき』という日台合作も撮っているのは知っていたが、観るチャンスなかったのだもの(泣)。しかもヒロインが『ラブゴーゴー』のタン・ナ小姐だし。
 ああ、今度海象さんにお会いする時までに(っていつですか>自分)何とか観ておきたいですわ。ちなみに『KANO』では脚本顧問を務めているとか。

 んで濱マイクを観ていて「ほおー」と思ったのが、助監督にこの冬公開の日中合作『真夜中の五分前』を手がけた行定勲さんがいて、今作の監督の萩生田宏治さんも一緒に務められていたこと。行定さんといえば『GO』やセカチューの印象があるけど、『遠くの空に消えた』で張震をゲスト出演させたり、『春の雪』のカメラにリー・ピンビンさんを起用したりと台湾に縁が深かったわ、今思えば。真夜中では張孝全(今作から日本語表記が「チャン・シャオチュアン」となったジョセフ・チャン)も出演しているしね。
 萩生田さんは『神童』『コドモのコドモ』などが代表作かな。両方ともさそうあきらのマンガが原作。前者は観ているんだけど、小学生の妊娠を扱った後者は結構話題になったよなー。で、彼は先に挙げた『海ほおずき』でも助監督を務めていたそうです。

 そんなわけで『南風』。なんで突然合作?と思えても、こういう背景を見ると、その理由にはなんとなーく納得したのであった。


 風間藍子(黒川芽以)は26歳の編集者。でも、カメラマンの彼氏を年下のモデルに取られ、仕事も配置転換で単発企画に回されるで、早くも崖っぷち状態。そんな彼女が取材するのは、元プロサイクリストの植村豪(郭智博)が台湾・日月潭で主催するサイクリングミーティング。サイクリングが盛んな台湾を自転車で回ろうと企画を立て渡台したが、頼りにしていた在台の先輩は妊娠中。やむなく一人で回ることになる。
 松山で寄った自転車屋で、藍子は冬冬という少女(紀培慧)と出会う。16歳の彼女はファンションモデルを夢見ており、藍子が編集者とわかると、自分は20歳だと嘘をついて、ガイドを買って出る。彼氏を奪ったモデルに瓜二つで、自分をおばさん呼ばわりする冬冬をどうも気に入らない藍子だが、初めての台湾で右も左も分からないのでしょうがない。
 九份、基隆、富貴角と藍子はママチャリ、冬冬はクロスバイクで走る。しかし藍子のママチャはこのハードな道行で壊れてしまう。そこに通りかかったサイクリスト・ユウ(黄河)が助けてくれ、藍子は淡水でジャイアントのクロスバイクを借り直す。彼女も冬冬もユウにゾッコンになり、二人はユウを誘って共に日月潭を目指す。
 北西部の海沿いを走る三人は、時にケンカしたり(藍子と冬冬が)、時に酔っ払って絡んだり(藍子がユウに)、冬冬の幼なじみ健南(ザック・ヤン)が追いかけてきたりと大騒ぎ。目的地に近くなった鹿港の九曲巷で、藍子たちは豪と出会う。そして、豪とユウの思いがけない関係と、冬冬が家出してまで日月潭に行きたかった理由が明らかになる。


 えーと、まあね、物語はものすごーくツッコミどころ満載ですよ(苦笑)。いちいち言ってたらキリがないけど、とりあえず言っとくなら、台北から九份まで行くのに車でも1時間半かかるのに、なんでそんなすぐに自転車で行けちゃうんだよーってのと、藍子と冬冬が共にうざいキャラでイラッとするところか。
 中華電影における日本女子キャラのウザさは、まああれとかこれとか挙げなくても(あえてリンクは貼らない)今に始まった話じゃないが、藍子がアラサーの崖っぷち編集者ってーのはいかにも日本ドラマ的な影響があるのかな、って脚本家はドラマを書かれている人らしいけど。  彼女と冬冬との関係も、噛み合わなくてお互いに頑固だから、バディものには成り損なっちゃってるのが残念なんだよな。冬冬的なキャラも台湾の青春ドラマによくいる元気キャラではあるんだけど、この二人の掛け合いにイラッと来るのはもしかして自分がもう若くないからか>それを言うな。
 ただ、物語はつまらなくても、ロケの選び方は特に中盤が良かった。
 九份や淡水はもう紹介され尽くしている気もするが(鹿港もかな?)、サイクラーじゃなきゃ知らなかったんじゃないかと思われる北西部の沿岸の名所もよかったし、何よりも日台の歴史を無言で伝えてくれる龍騰断橋の風景がすごかった。中部の山間はこういう知られざる遺跡が多そう。機会があったら行ってみたいなあ。ジャイアントの自転車にも憧れるしね。私事ながら、通勤に自転車を使っているので、以前買い換えするときにジャイアントも検討したこともあったりします。

 藍子と冬冬にはイライラしたけど、藍子役の黒川芽以嬢は悪くないですよ。かわいいし、キャリアも長いから。テレサ・チーことチー・ペイホイ、『九月に降る風』も『台北に舞う雪』も未見だったのでこれが初見。ええ、美女度は断然彼女のほうが勝ってる(笑)彼女もルンメイ同様、『藍色夏恋』の易智言監督に見出されたとか。彼女と共演し、映画製作も学んだというのが黄河。リバー・ホアンという英語名があるのに、なぜ日本語表記なのか気になる。
 ドラマや映画では脇役でいい演技を見せている郭智博くん。朝ドラ『カーネーション』で高田賢三をモデルにした青森出身のデザイナー源太を演じたのが印象的だったな。名前からして華僑?と思ったら、父方が台湾系だとか。

 まあ、先に書いたとおり、スタッフもいいしキャストも悪くない。だけどやっぱり話がなあ…。ラストにしまなみ海道のサイクルレースにつなぎ、台湾の旅を経て自転車専門のフリージャーナリストになった藍子が、台湾を代表するサイクリストになったユウと日本で活躍するモデルになった冬冬と再会するといういいエピソードをもってきて、自転車と友情がつなぐ日台の絆というテーマを具現していたのに、そこに至るまでがねえ…。
   そんなこんなで文句ばっかり言ったけど、この試みはよかったとも思うし、ちゃんと映画作品として丁寧に作られていたし、今後の日台コラボでももっといい企画が登場してくれるだろうから、それへの希望として観た作品でした。


 あ、この映画は『山田太郎ものがたり』の原作者、森永あいさんによる連動コミックもあるそうです。これも読んだほうがええのかしらん?

監督:萩生田宏治 脚本:荻田美加 撮影:長田勇市 音楽:赤い靴
出演:黒川芽以 チー・ペイホイ(テレサ・チー) コウ・ガ ザック・ヤン 郭 智博

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・キョウト 浪客剣心續集

 いやあ、ほんとにすいません。この夏ならディー判事シリーズ第2弾『ライズ・オブ・シードラゴン』とか、仙台で上映されたパン兄弟祭りとか、先日新文芸坐で上映された『ドラッグ・ウォー』とか、お盆明けから東京で上映される台湾巨匠傑作選(しかし魏徳聖さんをこのカテゴリに入れるのは早過ぎるんじゃないの?)で大騒ぎしなければならない中華趣味なんですが、説明不要な諸事情につき、2年ぶりでこちらでも騒がせていただきます『るろうに剣心』


素朴な疑問。これ、公式チャンネルからの動画なんだけど、なんで中文字幕が簡体字なの?大陸での上映は確か(後略)

 監督の大友さんと我らがアクション監督谷垣さんが放つ京都編二部作(現在公開中の『京都大火編』、前作も含めた三部作の完結編『伝説の最期編』は来月公開)は、2年前に衝撃を与えた前作よりアクションが3割増し。初見ではもうニヤニヤしちゃってたまりませんでしたわ。
 この2年間、谷垣さんも日本と香港や大陸を行ったり来たりしながらド兄さんとのお仕事や『猿飛三世』や『宮本武蔵』などの日本のドラマでアクション指導をし、剣心を演じたタケルも主演ドラマでキレッキレのアクションを見せるなど、日本のエンタメにおけるアクションの重要性に改めて注目させてくれたのはいいことだなーと思う次第。
 とは言っても、中華古装片のファンタジックアクションと、フィクションではあるけど近代を舞台にした日本の時代劇は明らかに違う。ワイヤーバンバンというわけでなく、俳優たちが肉体を使ってほぼノースタントで限界に挑む、高速で力強いアクションはまさに黄金期の香港映画を彷彿とさせて観ていて楽しい。おかげで昔の香港映画を見直すと、李小龍さんや成龍さんやショウ・ブラザーズ作品がいかにあの映画に良き影響を及ぼしているかがよくわかるアルのよ。

 かつて人斬り抜刀斎として恐れられ、鳥羽・伏見の戦いを境に姿を消した流れ者の元剣客緋村剣心(タケル)が維新以 来10年ぶりに東京に舞い戻り、抜刀斎の名を名乗る剣客他を擁する実業家と対決した第1作から2年。剣心の後を継いで闇の刺客となりながらも、時代の流れ に取り残され、自らが仕えた者に裏切られて全身を焼かれた狂気の復讐者・志々雄真実(藤原竜也)が政府の転覆を狙う京都編二部作では、志々雄を始めとした 新キャラも多く登場すればアクションのバリエーションも広がって、もう観ているだけで狂喜乱舞(笑)。
 だってオープニングの志々雄と斎藤一(江口)率いる警察との対決がもうニューポリ序盤の陳國榮たちとイカれたジョーたちの「ゲーム」の場面そのものだったから(くれい響さん曰く、この場面は大友さんが最初からそれを意識してたと書かれていたのでおおやはり!と)、もうたまらんですわ。

 志々雄の企みを阻止するために剣心は京都へ旅立つのだが、彼がそこで出会う新たなるキャラたちも実に個性豊か。
 中でも京都御庭番を率いる旅籠の主・柏崎翁(田中泯)とその孫・巻町操(土屋太鳳。来年春からの朝ドラ『まれ』の主演に決定)がお気に入り。家族揃って香港アクション映画ファンで、好きな映画に『新少林寺』を挙げている太鳳ちゃん演じる操は、御庭番仲間でほのかな想いを寄せている四乃森蒼紫(伊勢谷友介、以下いせやん)を探す旅の最中に剣心と出会い、思いもよらない大乱闘を繰り広げる。もう身体はよく動くし、開脚キックも確実に決めるしで、キミはマジで谷垣さんにくっついて香港でアクション女優を目指すべきだよ太鳳ちゃん!って感心したもの。谷垣さんも話されていたけど、彼女は現場で自らアクションを提案して実践したというので、ホントに好きだし、この役やりたかったんだねー。まだ二十歳前のお嬢さんだけど、今後は大いに期待しますよ、太鳳ちゃん。
泯さんはもともと舞踏家で、俳優デビュー作こそ剣士を演じた『たそがれ清兵衛』だったけど、大友組作品では寡黙なレンズ研磨の特級技能士や土佐の怪物と言われる天才藩士を演じてきた。だけど、そんな常連でも同じ役どころは二度と回ってこない。しかも柏崎翁は元御庭番だから凄腕の武闘派!
 今年69歳という泯さんと、いせやん演じる蒼紫の対決が用意されているが、これもまさに驚愕もの!ダンサーとしてのキャリアがあるとはいっても、ここまですごいアクションを見せられるとは。いやあ、もう少しで鼻血が出そうでした。そういえばいせやんも、かつて高杉晋作を演じた時は、馬関の戦いのエピソードにてまるで『レッドクリフ』の趙雲のような敵陣突破を鮮やかに決めてくれていました。ただし抱えていたのは赤ん坊じゃなくて三味線だったけどね。

 京都に辿り着いた剣心を狙う志々雄の十本刀の一人、沢下条張を演じるのは、『仮面ライダーオーズ』で主人公の相棒にして元敵方の怪人・グリードのアンク(正確に言えば彼がとり憑いた人間だが)でお馴染みの三浦涼介。俳優の三浦浩一さんの息子さんでもあります。大友さん曰く「大火編の秘密兵器(ちなみに前作のそれは綾野)」だそうで、それゆえ大暴れします。そして剣心とはガチで戦います。しかも神社の境内の下で (笑)。ここは谷垣さん曰く「この境内の下が人が入れるよりもっと低かったら、『酔拳2』のパクリと言われたかも(詳細)」だそうですが…ほー、そうだったのか、と。 『酔拳2』観たのもずいぶん昔だったので、いつか観直したいもの。

 こんなふうにかなーり楽しみ、大喜びしてたので、前作に続いておかわり鑑賞しちゃいましたよ。完結編公開までに、できればあともう1回観たい。公開第1週でトップとったし、夏休み映画ではかなりのヒットだしね。香港映画が好きな方には前作同様楽しめる作品です。
 ただ、一部のガチな香港電影迷の方々の評価は相変わらず厳しいですね。カメラがアクションを撮れてない、編集が悪い、そして大友さんの演出と谷垣さんのアク ション演出が馴染んでないなど。(これは前出のくれい氏の批評にもあり)ええ、監督も好きだし、作品自体も好きなので、批判されたら素直に凹みます。『グランド・マスター』の時もそうだったしな!
 ワタシは大友さんのNHK時代からの熱烈なファンだし、どうしても贔屓が入っちゃうから冷静に観られないし、重箱の隅をつつけない性格です。すいません。でもいいじゃん、アタシが好きだったらそれでいいんだよ!
(こういう主観バリバリで長々と感想書くからダメなんだよなー)

 って、逆ギレはやめなさい自分よ。
気を取り直して。

 香港映画でもないこの映画の感想をここで書く理由は、上記の他にその逆も然りってことだったりします。つまり、るろけんを観てこの激烈アクションにハマった若い映画ファンには、ブルース・リーやジャッキー・チェン等の活躍する往年の名作の他、是非とも谷垣さんの師匠格であるド兄さんことドニー・イェンの出演 作品や昔のショウ・ブラザーズ作品、さらに余裕があればそれらをリメイクした現代の香港映画も観ていただきたいのですよ。ついでに京都編二部作の構成なら、 話の展開やキャラの出し方で『レッドクリフ』も参考になると思う。
 ちょうど前作公開と同じ年に、ド兄さんと金城くんの『捜査官X』も公開されているし(ただし我が街では悔しいことに未上映…) るろけんがきっかけで、ド兄さんの日本での知名度がアップしたらいいのにとか思ったけど、実際なかなか…なのがちと切ないもんで。
 でも、この映画がとっかかりになって、香港映画の広い世界に興味を持ってくれたら、約20年来の香港電影迷としては本当に嬉しいよ。だから自分もあまりマニアックにならないように心がけるよ。

 久々の記事ともあって、長くなって申し訳ない。
ただ、最後にこれを言わせてくれ。

 いっちばん最後に登場したあの「謎の男」、演じているご本人は人気があっても特に好きでもないし、今まで全くそう思ったことがないのに、あの場面でだけイーキン・チェンに見えてしまったのはなぜなんですか?えっ、気のせいだって?そうだったらスマン。あの人に愛がないとは、イーキンのファンの人には申し訳ないですね。
 まあ、おそらく大活躍であろう次作では決してそう見えないだろうね。あはははは。
てなわけでこれで終わりでござるよ。(^^;メ)

 あー、終わりにしたのに、これを忘れてた。
 『伝説の最期編』上映開始2週間後の9月26日(金)より、「バック・イン・シネマ」の企画上映として、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』が始まります。何度も言ってますが、るろけん三部作のお手本となったのがこのシリーズ。なんと初映時より上映館数が多いという奇跡が起こってます。るろけん後始めて触れる香港アクションとして強力お勧め。
 もちろん、ワタシも観に行きますよ。

  さらに蛇足。
 『ハゲタカ』以降大友組のほとんどの作品を手がけており、前作に続いて音楽を手がけているのは佐藤直紀さんですが、公開が待ち遠しい『KANO』も彼の担当です。

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死亡遊戯(1978/香港・アメリカ)

 この『死亡遊戯』、4年前にNHKBSの特集で一度観ていて、そのときにすでに感想を書いているんだけど、今回再び書いてるのは、ちゃんと劇場で(BD上映だけど)観たってことと、再見までの間にある程度だが李小龍さんの映画を多少なりとも理解できてきたってことがあるからだったりする。てーか、この映画にオマージュをささげたり、影響を受けた作品って結構あるんだよな、ってのもわかってきたので。


↑予告がなかったのでサントラで。

 ビリー・ロー(李小龍)は国際的なアクションスター。恋人であるアメリカ人の歌手アン・モリス(コリーン・キャンプ)と共に香港で活動している。ある日、ビリーにドクター・ランド(ディーン・ジャガー)がマーシャルアーツトーナメント出場の契約を迫りに来た。ランドがスポーツ選手や芸能人を強制的に契約して拒否した者に手痛い仕打ちをすることを知っていたビリーは当然断るが、それ以来ビリーはたびたび撮影中の事故に巻き込まれるようになる。アンと友人の新聞記者ジム・マーシャル(ギグ・ヤング)と共に策を講じるビリー。
 しかし、ビリーが映画のラストシーンを撮影している時、どこからか銃弾が飛んでくる。一命は取り留めるが、これを利用して自らを死んだことに見せかけ、ランドに直接対決を挑もうとする…。

 以前も書いたが、李小龍さんの英語映画はちょっと乗れないかなーと感じるところがあるかなーと思ったのだが、先にも書いた通り、今回は初見よりも案外楽しんで観られた。
最後のアクションシーンを残して亡くなってしまった(というか、これが本来なら『ドラゴンへの道』に続く監督第2作になるはずだったのか )ので、急遽監督と主演に代役を立てて(その一人がユン・ピョウさんというのもすでに有名か)作り上げたという経緯があるので、いくらなんでもそりゃ苦しいっしょ?とつっこみたくなる場面はいくつかある。序盤の不自然な合成とか、中盤で身を隠した時に顔を整形したって設定じゃないの?と思ったこととか。それも気にならない面白さだった。まあ、スクリーンで香港映画を観ることに飢えていたのも多分にあるかも。70年代香港やマカオの街の様子にはテンションが上がるし、マカオでの試合場面に登場した若きサモハン(アクション監督も兼任)には手を振ったし、序盤に登場した京劇俳優やってるビリーの叔父さんは、お馴染みのロイ・チャオさんだったもんな。

 あと、ラストのダンジョン決戦は今でこそもうあらゆるアクション映画に引用されているけど、あれを見て真っ先に思い出していたのは、もうすぐ続編二部作が公開される『るろうに剣心』(ついでに感想はこっち)での、観柳邸ダンジョンバトルだったな。これまた度々言っているけど、監督の大友啓史さんが黄金期の香港映画がお好きだということで、おそらく演出時にも意識したんだろうなあと思った次第。あっ、というかそれ以前に、映画版『ハゲタカ』でのコメンタリーで、すでに李小龍さんの名前を出されていたんじゃなかったっけなあ? 今度久々にDVD観て確認するか。

と、李小龍さんからいささか脱線したところで、この感想を終わります。
そうそう、るろ剣の名前が出たから忘れないうちに書いておくけど、そのるろ剣実写版が当初お手本にしたと言われている(ってワタシが勝手に言ってるんじゃないよもちろん)『ワンス・アポン・ア・イン・チャイナ』も、この「バック・イン・シネマ」で上映されます。しかもるろ剣三部作完結編「伝説の最期編」上映中の9月に!これはもういいチャンス。るろ剣を観て超絶アクションの虜になった若い観客にはこっちも自信を持ってオススメいたしますよ。

原題:Game of Death
監督&脚本:ロバート・クローズ  製作総指揮:レイモンド・チョウ 撮影:西本 正 音楽:ジョン・バリー アクション監督&出演:サモ・ハン・キンポー
出演:ブルース・リー ディーン・ジャガー ギグ・ヤング コリーン・キャンプ ロイ・チャオ カリーム・アブドゥル=ジャバー

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東京に来たばかり(2012/日本・中国)

 時々「あれー、この企画まだ生きてたの?」という映画が、「どうしてあの企画がこんなになっちゃうわけ?」と同じくらいの頻度で登場する。(例えば邦画でいえば、最近では小栗旬主演の『ルパン三世』実写版とか、監督交代で復活した『進撃の巨人』実写版とか…ってみんなマンガの実写版ばかりじゃないか)この映画はその前者である。最初に聞いたのも10年くらい前で、主役の留学生役もリウ・イエだったんだよな。
 この10年間の中国映画の変化…よりも日中関係の変化を考えると、よくぞ今これを作って一般上映するまでにこぎつけたよ、偉いねえと思ったものであった。まあ、評価はまた別としますが。
 そんなわけで『東京に来たばかり』を観た。

 囲碁の名手である中国人青年・吉流(チン・ハオ)が碁を学ぶために東京で暮らし始めてから2カ月。シャイで引っ込み思案な性格が災いしてアルバイトにも就けず、十分に囲碁も打てない。
 吉流はバスの中で、千葉から野菜を背負って行商にやってきた老女・五十嵐君江(倍賞千恵子)と知り合う。彼が仕事を探していることを知った君江は、小岩のカプセルホテルを紹介する。吉流は清掃係として働き出し、フロント係の内藤(田原)や囲碁好きの客たちともすぐに仲良くなる。
 君江は千葉の南部にある古い農家で一人暮らしをしていた。夫と息子夫婦はすでになく、東京で暮らす孫の翔一(中泉英雄)が唯一の血縁だが、時折帰ってくる孫を快く思わない。しかし吉流と翔一はなぜか仲良くなり、一緒に東京で遊ぶようになる。やがて吉流はCS囲碁チャンネル主催のアマチュア囲碁トーナメントに出場することになる。
 翔一には奈菜子(チャン・チュンニン)という名の、台湾人のガールフレンドがいた。彼女は美容師として独立していたが、借金取りに追われていた。翔一は彼女を助けようとして、重傷を負ってしまう…。

 観ていて気付いたのは、吉流が日本の生活で苦労している描写はあっても、人間関係で対立したり、日本人にいじめられて悪い印象を持つというネガティブなイメージで決して描かれないこと。合作という経緯を抜きにしても、中国人監督がこういう視点に立つことって、結構珍しい気がする。
 蒋欽民監督は北京電影学院で学んだ後、20年前に来日して日本映画学校と日大芸術学部映画学科で学び、修士を取得している(公式HPを参考のこと)。そしてデビュー作が緒形直人主演の日中合作『戦場に咲く花』(00)。その後、TIFFに出品したリウ・イエ&董潔の『天上の恋人』(02)を監督し、中国で活動する女優・小林桂子の企画を彼女自身の主演で撮った『JUN-AI 純愛』(07)に続く監督第4作とのことだが…う、全部未見だし、最後の作品は全然知らなかったよ。
 まあ、こういうフィルモグラフィで、留学時代の体験を元に、日中合作(しかもほとんど日本ロケ)ともなれば、日本人には(一応)優しい作りになるのは分かるなあ。そして苦労した思い出より、いい思い出の方がきっと多かったんだろうなあ。

 そんな監督の思いがよくわかるのが、当初から千恵子様の出演で企画を練られていたということ。リウ・イエ主演で発表があった時も、ヒロインにはすでに千恵子様の名前があったしね。多くの松竹映画作品に出演し、美しく心優しき日本女性を多く演じてきた千恵子様は、日本で映画を学んできた監督にとっては、まさにマドンナだったのだろうな。…ちなみにワタシは妹の美津子さんの方が好きですが(ってそんなこた誰も聞いてねーよ)。
 腰を丸めた行商のおばあちゃん姿で登場したときは、あれ、千恵子様ってこんなにお年を召されていたっけ?とかなりびっくりしたのだが、話が進むにつれてただの農家のおばちゃんではないということがわかる。そもそも吉流との出会いからして、彼が落とした碁を拾っていた時、中国式の碁であることを見抜いたのだが、何かしら碁に関わった人であるというのは容易に予想できる。そして、彼女が往年の碁の名手であると判明してからは、すっと背筋の伸びた凛々しさを見せてくれ、そうよねー、歳はとったけど千恵子様ってこういう人よねー、これを撮りたかったのね監督は、これも一種の千恵子様萌えアイドル映画よねーなどと思って惚れ惚れしながら見てた(多少ふざけが入ってますが、まじめにそう思ってます)。だけど、その正体はもう少し早く明かしてくれてもよかったかなー。

 出世作の『スプリング・フィーバー』を観ていないので、これが初見になるちんはお君(漢字が難しいし、SNSで使われるひらがな表記がかわいいのでこれを使用します)。当初予定されていたリウイエと似たタイプの役者だなーと見ていたけど、やっぱり若いので素朴さと初々しさがある。部屋着が半ズボン+靴下という垢抜けなさもかわいい。
 チュンニンと田原という華人女優二人組は、それぞれタイプも違うし、役どころに合ってたけど、各キャラの設定に説明不足感があったかな。奈菜子は翔一がちゃんと「台湾人の…」と紹介してたので、おそらく父親が台湾人か日本国籍を取得した台湾人とわかるんだけど、吉流と出会った時には英語で話しかけ、その後たどたどしい日本語で彼と会話する内藤は、きっと残留孤児子女って設定なんだろうけど、後半で「実は私は中国人なの」と中国語で告白する時に何らか説明してほしかった気がする。観客は察しが付く人ばかりじゃないからね。

 こんな感じで全体的に説明があってもいいんじゃないかというキャラが多少あるんだが、一番説明してほしかったのは、君江の孫の翔一が、ヤクザ屋さんに脇腹を刺されて(このへんのアクションシーンが妙に力入って本格的だなーと思ったら、我らが谷垣さんがアクション指導していたので、エンドクレジットで名前を見て思いっきり納得したわ)重傷を負っているのにもかかわらず、なんで治療を受けることをかたくなに拒否するのかということ。死亡フラグを立てるにしろあまりに強引だし、後半は観ていて心の中でひたすら、「翔一、オマエ早く病院に行け、死ぬぞ!」ってずーっと言っていた。香港映画ではどんな致命傷を負っても簡単に死なずに逆襲してくるけど、そんな荒唐無稽さはあり得ないからねー。
 翔一を演じる中泉英雄さんは、名前だけ見るとオッサンっぽいなーと思ったけど、意外にも若者だったのでビックリ。『南京!南京!』に出演し、日本での近作は『地獄でなぜ悪い』だそうだけど…ああ、確かにあの映画のヤクザ屋さんの中にこんなヤツいたな、と頭の中の引き出しを引っ張り出し中。
 その他、いろいろと無理があるところやら、その展開どうよってツッコみたいところはたくさんあるけど、そのへんはきりがないので置いておく。そういうところをつつき回す映画じゃないしね。

 主人公が囲碁棋士なので、クライマックスは当然棋戦である。
ここでやっと「ああ、これって囲碁映画だったのか」と気付いたのだが、同じ囲碁を扱いながらただの囲碁映画にはならなかった『呉清源』にガッカリした人は、これをどう見たのかなあ。まあ、ワタシも囲碁はよくわからないけど、映画としては呉清源の方がいいよなーと思っちゃってごめんなさい。

 今、日中関係がかなりきな臭くなっているのは、経済発展による内部格差で問題を多く抱えてる中国政府の焦りだったり、その挑発を真に受けてネガティブ記事をいっぱい発信するマスコミだったり、いろいろと原因は考えられる。もちろん、いくらワタシが中国語学習者だったからどいえども、仲良しこよしの日中関係を保つべきなんて主張なんかするわけはない(実際に自分も中国で嫌な目に遭ったことがあるのでね)。
 だけど、いくら政治や情報がきな臭く、ネガティブイメージがあっても、それは表に見える部分であって、全ての中国人が悪いわけではない。これは中国人にとっての日本人も同じ。対立はあっても国を超えた人の交流を描く映画はこれまでもあったし、これからも作られるべきだと考えている。だから映画に関してはブツができる前だったり、あるいは完成したとしてもろくに観も知りもしないであれこれ騒ぎ立てるのは本当にやめてほしいもんですよ。政治が文化に難癖つけるってのは野暮ですからね。
 …っとやや政治的に危険な主張をしてみて、この項を終わらせます。ちなみにこの部分だけを見ての批判コメントは、一切お断りいたします。よろしくねー(^_-)-☆。

中文題&英題:初到東京(Tokyo Newcomer)
脚本&監督&編集:ジャン・チンミン 音楽:ウォン・ミンツァン&ウォン・美音志 アクション指導:谷垣健治
出演:チン・ハオ 倍賞千恵子 中泉英雄 チャン・チュンニン ティエン・ユエン 窪塚俊介 風間トオル 

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谷垣さん&大友さん、モリーオで動作指導を大いに語る。

 いろんなごちゃごちゃしたことがありながらも、東京国際映画祭が無事に開幕しましたが、毎年TIFFと開催期間が重なって困っているのが、我が地元で行われるもりおか映画祭
 この映画祭の前身は、かつて香港からステことスティーブン・フォンロイ・チョンを招いたことでも知られるみちのく国際ミステリー映画祭ですが、7年前に終了してリニューアル。イベント名から「国際」と「ミステリー」が外れ、地名がぐっと小さくなったと同時に、規模も10分の1くらいに縮小されてしまいました(泣)。あと、このところは残念ながら中華電影の上映もなかったりします。(あ、でも2年前に『ラスト・ソルジャー』をやっていたか。そういえば中華じゃないけど、今年はなぜか3年遅れでマギーの『クリーン』が上映されてたなあ。観られなかったけど)。
 まあ、この映画祭全体のことは、後で別blogで書くことにしましょう。

 さて、そんななか巷では想定外の大ヒットを飛ばし、なんと盛岡での公開初週末の鑑賞者数が全国上位に行ったという映画『るろうに剣心』。この映画には香港映画へのリスペクトがこもっているということを以前ここでも書いたけど、なんと今年の映画祭では、2009年から毎年ゲスト参加してくれている監督の大友啓史さん(盛岡出身)だけでなく、我らがアクション健ちゃんこと谷垣健治さんが初来盛し、2日間にわたって盛岡を舞台にアクション談義を繰り広げてくれた。これまでも東京では各自でトークショーが行われてきたけど、このお二方がそろってライヴで対談されるのは、これが初めてなんじゃないのかな?なんとすごいことなんだろうか!

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小さくて申し訳ない。左が我らの谷垣さん、右が大友さん。

 ここでは、20日(土)のるろ剣上映時の舞台挨拶とトークショーを中心に、翌日の21日(日)に行われたアクションワークショップ(谷垣さんの指導で、実際に劇中でのアクションを体験する参加型イベント…とだけ、ここでは紹介いたします)でのトークを捕捉しながら、採録いたします。なお、大友さんと谷垣さんの発言を明確にしないままメモったので、ご両人の発言内容がかなり混じっています。そのへんをどうかご了承ください。いずれ公式に記録も出るでしょうから(^_^;)。
 本編ネタバレで説明する箇所も多少ありますので、ご了承ください。未見の方(ちなみに台湾は12月公開、香港は同時期かそれ以降かな?)、申し訳ございません。

 演出の分担としては、芝居場面は監督である大友さん、そしてアクション場面は谷垣さんという役割。だけどアクション監督はスペシャリストであり、監督はジェネラリストとして美術、衣装、小道具、照明、特殊効果など、他のスペシャリストがそろう各部署をまとめ上げる。るろ剣では、監督は各部署に好き勝手なことをやらせてみて、それを面白がってくれればオッケイという現場だったので、すごく大変だったのだけど、楽しい現場でもあった。
 アクションのある場面の撮影は、だいたい1場面につき香港では3~4日かかる。しかしるろ剣ではたった1日で撮影できた。なぜなら香港では、撮影直前にシナリオや演出プランが変更されることがしょっちゅうあり、その場で対応しながら撮影していくが、るろ剣では撮影場面への事前の準備が万端に整っていたので、素早く撮れたのであった。事前準備には俳優のトレーニングも含まれる。佐藤健(以下タケル)は撮影前に2か月トレーニングを重ね、撮影中は随時行っていた。本編撮影は54日かかったが、アクション部門としては、その間は結局一日も休みが取れなかった。

 両者の最初の打ち合わせでは、「時代劇ってどーよ?つばぜり合いっておかしくね?」という疑問から始まった。大友さんが谷垣さんに依頼を持ちかけたとき、「日本のワンチャイにしたい」と言った有名な逸話があるけど、この映画では現実にあり得ることを普通にやるという方向性でアクションが設計された。

 谷垣さんいわく、アクションのNGの理由は3つしかない。
 1)もう1テイク欲しいと思った時。
 2)拳を置きに行っている時(あらかじめ殴る場所を意識して拳を当てに行く動きをするこ  と。実は成龍さんの米国でのアクションは最初これが多かったらしい…。拳が空を切るとつい「打空氣!」と言われて撮りなおす)
 3)アクションにパワーがない時。
 香港ではアクションをスタイリッシュに撮ろうとは考えず、モンタージュをつないでファンタジーを作ることを意識しているとか。

 リアルなアクションという方向性が決まったので、本気で相手を斬るということを想定して、アクションや刀の軌道を考えていった。それに沿ってVコン(ビジュアルコンテ。アクションのプレゼンをするため、マジ当ての練習など、実際にスタントマンたちが動いてみた様子を映した映像)を製作し、監督に観てもらった。さまざまなアクションの型を試したが、あらかじめ素振りをやってもらっていたタケルに後に下がりながら斬るという動きを試してもらったら、彼の刀の振り方が大きくなった。「隙あらば斬る!」の心構えで演出していった。
 アクションには役者同士の信頼感が大切だ。『ドラゴン・キングダム』の成龍とリンチェイのアクションはすごいけど、あの二人は息合いすぎ(笑)。格闘ゲームっぽいアクションを実際やるのはとても難しい。

 タケルが刀なら、左之介(青木崇高、以下ムネムネ)は拳でのアクションがメインになる。各キャラの立ち回りには、それをしっかり染み込ませたいので、現場では積極的に関わっていく。
 見どころの一つにタケルと外印(綾野剛)、ムネムネと戌亥(須藤元気)の一騎打ちがあるが、前者は書斎、後者は厨房で戦闘を繰り広げる。これは、普段やらないところでアクションをやらせたいという意図がある。タケルと綾野は息の合った凄まじいバトルを見せてくれるが、実は二人とも事前に立ち回りを合わせることはなかった。
 厨房での戦いは美術スタッフが張り切って、でっかいテーブルや松脂でできた陶器(ちなみに香港ではアクションに使う陶器や便器!は蝋で作るとか)をたくさん仕込んで配置し、その中でアクションをさせたら、ムネムネがテーブルを持ち上げた場面で大友さんが大喜び。こういう仕込みが大切。

 今回はスタントチームの力が非常に大きかった。役者本人の能力と彼らがどこまでできるかをカウンセリングするように見ていった。普通なら剣心のキャラにタケルの能力を反映させるが、その逆で剣心の身体レベルにタケルの能力を持っていくようにした。左之助を演じるムネムネはあの体格とコワモテの割には意外と根の優しい男なのだが、いろいろ鍛えることで、肉体面からのアプローチを彼自身が試みていた。
 観柳邸庭園で剣心が見せる有名な斜め走りは、谷垣さんがカムイ外伝で考案したものの、結局本編では使わなかった。そこで《精武風雲》でドニーさんにやってもらったところ、うまく行ったので実践してみた。あの場面ではもちろんワイヤーも使っているが、何度かの失敗を経て美術スタッフが見つけてきたスパイク足袋を導入したところ、1テイク目でオッケイ。これはマネーショットだった。欲張ってもう一度撮ったが、ワイヤーに自力感がなかったのでNGだった。
 タケルのアクションはほとんど一発でオッケイ。でも「もっとなんかやって」というと、二度目ではもっとスゴイものが出てくる。2テイク目で外したとしても、3テイク目にはミラクルが起こる。

 先に述べたように、ホントに斬っているように見せるにはどうしたらいいのか、ありえることとは何か?ということを考えて、アクションを突き詰めていった。たとえば、10秒斬りがすごいと言われても、どうもピンとこない。速いということはすぐできるが、何をもって速いというのか?参考として見た勝新太郎の「座頭市」では、速いということは息の合わなさを追求する、つまり雰囲気をよむことである、と。そこから「勝新」がキーワードとなった。
 ドニーさんが香港で受け入れられたのは、それまでのアクションスターと違うアクションのリアルさが受け入れられたからである。

 そんなわけで京都でロケをしたのだが、スタントには京都のスタントマンの他、谷垣さんの仲間たちも多数東京から参戦。その中には「西遊記」や「ゴールデンスランバー」を担当した吉田浩之さんなど、現在の日本映画の第一線で活躍するアクション監督たちもこぞって馳せ参じた(!ちなみに吉田さんは2日目のワークショップに参加)。京都のスタントマンには癖があって、今までの時代劇の斬られ役みたいに、即死なのに苦しんでいるのはおかしいと感じた。昔ならそんなリアクションが受けたけど、今はしないことがリアルである。この映画では、斬られたり撃たれたりしたら即死だ、ということを冒頭の戊辰戦争の場面で見せて、観客に方向性を示した。この場面では美術が頑張って雪を降らせたのだが、真夏の撮影でも溶けないから後始末が大変だった。また、この場面のアクションはあまりにも激しいのでけが人も多く、肋骨を折ったスタントもいた。谷垣さんは作品ごとに熱演して負傷したスタントマンに対して「谷垣奨(あ、字はイメージです。笑)」を贈っているのだが、けが人の多い現場なので「るろ剣アクションアワード」ノミネート者が続出(笑)。

 重要文化財の仁風閣を観柳邸に見立てて撮影したが、ここはNHKにいた頃ではとても使えないところだった。この庭で前述の斜め走りを始めとして、剣心と左之助が多数の傭兵たちを相手に大乱闘を繰り広げるので、芝生を荒らしてもう大変だった。
 この後に続く剣心と外印の死闘は2日がかりで撮影。ここでのタケルと綾野の動きはあまりにも速く、スタッフも見えないと言っていたが、演じた両者は相手の動きがスローに見えたと証言して、周りを驚かせた。
 後半はアクションのつるべ打ちとなるので、飽きられないように心掛けた。タケルは刀の舞のアクションだが範囲が狭く、綾野は短刀使いなのでタケルよりずっと可動範囲が広い。彼らが戦う書斎は狭い場所なので綾野は最初拳銃(それも二挺だ!)で戦うが、タケルが刀を逆手に持って反撃し、その風で綾野の頬を切るので、ヤツが本気だということが観てとれる。アクションをデザインするのには意外と考える(どちらかといえば数学的な、と日曜に補足)のでインテリジェンスが必要なのだ。

 クライマックスでの刃衛(吉川晃司)との決戦。刃衛は「剛の男」で行こうと方針が決まっていた。ここでは最後の方なので、編集しながらアクションを作っていった。ロケ場所は三井寺だが、場所を生かした動きを心掛けた。剣心は可動範囲が狭く、彼に刃衛は大振りかつすごい勢いで襲いかかる。吉川さんはアクションのふりを忘れても、本能で動いてくれるので面白く、タケルが本気で危機感を抱いていた。まさにナチュラル・ボーン・キラー。彼のナチュラルさは、薫(武井咲)をなぜか「恵」と呼んでしまい、本番で「神谷薫さん」と声をかけるところを「神谷恵さーん」と何度も言うので、横でタケルが必死に「薫殿!薫どのー!!」と声をかけて修正したり、咲嬢とのアクションで「エミちゃんかかってきて」と言ったとたんにポテーンとやられるなどと炸裂しっぱなし(笑)

 撮影は比較的スムーズに行ったが、実はそれこそが一番難しい。「ジョーズ」ではせっかく用意した巨大サメのロボットが撮影序盤で壊れてしまったが、それをそのまま使っていたら、とても面白い画が撮れたという。実はここでは開き直るまで追い詰められていた。自分たちは抽象的に考えていたが、現場に行ってみると、美術部が舞台となる石段の両脇に大木を作って結界(!)を張り、これまた張るのが大変なワイヤーも完璧に張っていたので、アクション部が現場に着いたときはすでに出来上がっていた。こちらが要求する以上のことを準備するスタッフはみんなマゾだったよねー(笑)。
 この場面は5日かけて撮った。アクション部で丹念に準備を重ねても、衣装をまとった時と、フラットではないごつごつの石段では足場が不安定になる。そこでこの状況を逆手にとってやった。

 日数と言えば、ムネムネ対元気の決戦は撮った1日分をまるまるカットした。5分の場面を撮るためには、30分カメラを流してそれを濃縮していく。問題が10あれば、そのうち5個当たっていればいいのだ。
 とどめの場面は2テイク撮ったが、最初のテイクが少し切れ、技がきれいに決まっていたのにもったいなかった。でも最初のを使った。これは決めごとではなく、きれいに出ることを待ったので、それを使った。ことをやらなきゃルーティンになってしまう。アクションは常に危険と隣り合わせだけど、一期一会みたいなものである。

 香港の俳優はアクションをすることに慣れているので、即物的に考えて演じる。大部分の日本の俳優はそうではないけど、タケルや綾野のような若い俳優はアスリート的にアクションに向かい合っているので面白かった。香港では作りこまれたものが面白がられるけど、日本ではリアルなものが受ける。それは完全に文化の違いだけど、どちらともプロフェッショナルなのだ。その即物的な香港イズム、つまりはなんでも面白がってどんどんやっちゃえ的な精神は、現在の日本映画の現場にもちょっと必要なのかもしれない。

 ここからは、日曜の谷垣さんによる撮影裏話で拾い上げた印象的な部分をフラッシュで。
 ・今回は逆刃刀という枷があったので、当てていくところを逆手にとっていった。
 ・殺陣は自転車と同じもので、一度体で覚えれば一生忘れない。
 ・好きなアクションシーンは日によって変わる。今日なら刃衛戦がベストと答える。タケルが自身で二度目に観たときにどこが好きか聞いてみたら、牛鍋屋「赤べこ」で戦いになろうとするときに、敵の細かい動きに気付いたので好きだといった。
 ・香港のアクション指導者には、実は自分自身が動けるという人が少ない。それができるのは劉家良だけ。袁和平のアクションは観ただけで自分自身ができないということがわかるし、程小東や元奎は自分が動かなくてもアクションの見せ方がうまい。アクションを知らない人の方がうまく見せられる。

Workshop

 …と、こんな感じで話が進みながら、市内某所(上の写真の場所じゃありません)でアクションワークショップが展開され、我々参加者は(中略)、谷垣さん&吉田さんの指導に大友さんの演出のもと、劇中の場面に挑戦したのでした。つまりワイヤーで吊られたりなんだりしたわけですな…と半分嘘です。
 ワークショップの参加者は地元はもちろん、東京から来られた方、純粋るろ剣ファンから熱烈な谷垣さんファン(もちろん香港映画ファンもいるし、Vシネファンもいる)まで、年齢も小学生からあらほー(含む自分)まで、実に多種多彩でした。
 いやー、内容はあまりはっきりと紹介できないのですが(他言したらそれこそ雲南から王羽さんがやって来てぶち殺されちゃうので>これも嘘)、とにかく面白かったですよ。まさかド文化系イベントの映画祭で、こんな体育系なイベントが行われるとは思ってもおりませんでしたよ。いい汗かかせていただきました。

 大友さんがしゃべりだすと止まらない盛岡人らしからぬキャラなのは、とっくのとうにわかっているけど(大友さんすみません。単に自分の周りの盛岡人に比較的寡黙なキャラが多いので、ついそんな偏見を…苦笑)、それに輪をかけて谷垣さんもちょっとだけ広東語を交えて話してくれたので、進行役が全くいらない二人のトークバトルは実に楽しかったですよー。おかげでかなりの部分を書き落としちゃったりしましたが、そのへんは許してください(笑)。
 この映画については両者とも雑誌やセミナーであれこれ話してきたのだろうけど、大友さんのもとに集まった人々が谷垣さんを始めとしてみなスペシャリストだったこと、そのスペシャリストたちが、監督が面白がってくれるのなら何でもやろうと楽しんで現場を作っているし、なにより大友さん自身が、「どんなことを言われても、とにかく面白いものを作るんだ!」という勢いで現場に臨まれていたようので、過酷なアクションシーンの連続でも、重大な事故が起こることなく一気に作り上げられたのだろうとワタシは思った。

 ワタシはドラマ版ハゲタカから大友さんのファンをしているので、それもあってかなり過剰にこの映画には思い入れをしている。もちろんそれ以上にハマった人がいて、3週間で20回観たという人もいると聞く。
 評価も賛否両論だ。香港映画好きの方や玄人の映画ファンからは細かいところで厳しい意見があるし、それを目にするとどの批判も実に的確なものだから、たまらなく凹んでしまう。だけど、自分が好きだからそれでいい。好きじゃなかったら無理に評価してくれなくてもいい。
 確かにこの映画は決して香港映画的ではないだろうけど、谷垣さんが19年間香港で仕事をして鍛えてきた成果が見事に表れているし、ワンチャイが大好きだという大友さんの、アジアがハリウッドに迫れるとしたらウーさんや成龍さんがハリウッドで見せたようなアクションしかない、だから自分も撮ってみたいという、王道香港映画を作ったきた人々に敬意を払って作ったような思いを、この映画の中に明確に見たのだった。

 …そんなこんなで映画祭の2日間で二人を追っかけ、運よく宴会の末席でご一緒しちゃったりもしたけど、もう舞い上がっちゃって大変だったなあ。何か言いたかったけど、なんだか同じことばっかり繰り返したりなんだりで挙動不審ですみません。次回(っていつだ?)はもうちょっと冷静になります(笑)。大友さん、谷垣さん、イベントを企画してくださった〈映画の力〉プロジェクトの皆様、お疲れ様でした。そして多謝多謝、我表示非常感謝。
 ついでに宴会では遠方からの方や市内の同好の士の方にも出会いしましたが、これまた舞い上がってて挙動不審ですみませんでした。以上、私信終了。

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『捜査官X』(ちなみに盛岡未上映>強調)に谷垣さん、ハゲタカのパンフに大友さんのサインをいただいた。なお、なぜるろ剣じゃないのかというと、すでに先月サインをいただいていたからだったりする。

 そして、何度も何度もいって申し訳ありませんが、大友さん、東京でもぜひ、香港映画上映の際には、上映館のイベントで香港映画について話しまくちゃってください!お話を聞きたい方はワタシの他に絶対いるはずですよ!もちろんワタシも、実現の折には張り切って上京しちゃいますからねー(笑)。

 以上、結論部がかなり壊れ気味なまま、レポート記事を終了します。
 なお、今後の課題としては、ド兄さんの『導火線』をなんとか今年中にきちんと観ることを、自分に課します。あと、本も探して読まなくちゃなあ…。>実は谷垣さんの著書は全く持っていないことをここで告白します。…ホントにすみませぬ。

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《浪客剣心》是日本的武俠電影嗎?

 さて、そんなわけで書いてみちゃったりする『るろうに剣心』中華的感想。
この映画についての感想は、まず先に書いているので、こちらでは中華電影的エッセンスを感じさせる部分を中心にまとめてみる。
 何度も向こうで書いているから繰り返さないけど、ワタシは大友組作品に香港映画テイストを感じていることを始め、いろんな理由からどーしても盲目的に入れ込んでしまう。そんなわけでちょっと尋常じゃない力の入れようになってしまうけど、どうか許してくださいませ。
なお、基本的にネタバレで書かせていただきます。未見の方は下の中文字幕入り予告編をお楽しみ下さい(こらこら)。

 

 やっぱり、この映画はなんといってもアクションに尽きる。
 舞台は近代だとはいえ、カテゴリ的には時代劇なので剣戟が中心になるのだが、これが殺陣というよりも、もろに武侠テイスト。このあたり、邦画の時代劇を見慣れてきた人には違和感を覚えるのかもしれない。でも当然ワタシはかなり大喜びして観ちゃったんだよね。
 なにせ、監督の大友啓史さん自ら「この映画は日本のワンチャイを目指したい」なんて言われちゃったのだもの。なら長年の香港電影迷としては「それマジでいっとんのか?じゃあ見してみぃ(うわー口悪過ぎ。なお、この台詞はフィクションです)」と受けて立つしかない(笑)。その実現のために用意した切り札が谷垣さんというのなら、なおさらね。しかも香港と同じではなく、日本映画であることを前提として発展させたアクションを目指しているし、それが見事に成功していたから。

 剣心はその名の通りの剣使いなので(つい残剣@英雄…とか言いたくなっちゃうが、思い出したのは名前だけだ。彼とは全然違う)、ソードアクションが中心になるのだけど、基本的に刀を抜きたくないという性質なので、序盤では大人数を相手にした素手のアクションを披露してくれる。これがかなり楽しい。剣心を演じる佐藤健はこれまでの出演作でもアクションを何度かやってきたし、ブレイクダンスのダンサーでもあるので、まさに「ダンスのようなアクション」を体現してくれる。身長もそれほど大きくなく、華奢で敏捷なので、タイプとしてはド兄さんやリンチェイに近いのかもね。斜め走りとか走りながら宙返りなど、すげーなタケル、ド兄さんみたいなことやってくれるじゃんか!と惚れ惚れしてたら、どうも本気でド兄さんの向こうを張ったらしい。うーむ、これはいつかタケルとド兄さんを対決させたいもんだ。
もちろん剣心以外のキャラも香港映画的なアクションを見せてくれる。例えば、左之助(青木崇高)はでっかい刀を振り回す喧嘩屋なので、フィジカルな動きが多い。そんなわけで山場の戌亥(須藤元気)との闘いではやはり肉弾戦であった。しかも厨房での闘い。これは成龍作品か?と我が目を疑ったが、ムネムネも元気も大柄なので、すばしっこさよりパワフルさが先行する。鍋で応戦したり、ソーセージをヌンチャクにしてもいいんだぞ二人とも、遠慮すんなって(笑)。 それから剣心と死闘を繰り広げる外印(綾野剛)のトリッキーさも、ウーさんや徐克作品に登場して主人公と対決する殺し屋のような雰囲気をまとっていた。仮面姿なんて、『中華英雄』の鬼僕を思い出したもんな。

あ、そうか、中華英雄で気がついた。ポイントはマンガか。香港の超絶アクションはマンガと実に相性がいい。今でこそ『中華英雄』や『風雲』、そして『龍虎門』などローカルなマンガの映画化が多い香港映画だが、返還前は日本のマンガを原作、あるいはインスパイアされた作品を多く作っていたんだもんな。そもそも徐克さんや程小東さんは日本マンガ好きであるわけだしね。さらに谷垣さん情報によれば、かつて程小東はアニメ版るろ剣DVDを英雄の撮影現場に持ち込んでいたとか! …すると、こうなるのも運命だったってわけね。

 そして、何よりも一番嬉しいのが、「日本のワンチャイ」発言でわかるように、大友さんがかなりの香港電影迷であるということ。fbでご本人とやりとりした時に、黄金期の作品が好きとおっしゃられていたのですが、最近の作品もよくご覧になられているようで(笑)。このへんは谷垣さんのtweetやSWITCHFLIXやキネ旬の評論や対談からも伺えるので、詳しくは言わないようにしておきます。有名な話で、大友さんがNHKからハリウッドに留学していたのが、ちょうどウーさんが成功を収めていた時期と重なり、実際にウーさんにもお会いしていたということなので、その頃古典から日本未公開作品まで猛烈に観まくっていたとか。ワタシも観てない作品が多いもんなー。これは完全に負けているのは言うまでもない(だって《導火線》観てないんだぜーオレ)。
 そして、ワタシたち香港電影迷にとっても、大友さんは大きな味方になってくれたんじゃないかな、と思った次第。るろ剣がきっかけで、若い人が香港映画を観てくれるかといえばそうでないだろうけど(いや、ホントは観てほしいよー!若い人に面白がってもらわないと繋がらないもの)、日本映画のエンターテイメントのど真ん中を行く作品に香港映画テイストを投入してくれ、非常に満足の行くアクションを盛り込んでくれたことに、ワタシは大いに感謝しているのだ。

 だからねー、せっかく今、シネマート六本木新宿武蔵野館でガンガン香港映画かけてもらっているのだから、今後香港映画が上映される時には、トークイベントでぜひ大友さんを呼んで下さいな。そして心ゆくまで語り合いたいですよ、ホントに。ご両館にはぜひ企画を立てていただきたいです。ワタシも地元で企画立ててみたいけど、今絶望的に香港映画の地元上映がないのと、自分が観てない作品がまだまだ多いからなんともいかないんだもんねー(笑)。

 そんなわけで、日本には珍しい武侠映画となっている『るろうに剣心』。タケルが優男すぎて苦手だとか、ヒロインのゴリ押しっぷりがひどいからとついつい引いてしまいがちになっても、アクションの確実さはワタシからも保証します!ま、あまりゴリ押しもなんなので、これを読んで興味を持たれた方にはオススメいたしますってことで。

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