台湾映画

《健忘村》(2017/台湾・中国)

3年前、『祝宴!シェフ』で16年ぶりに台湾映画界に復帰を果たした陳玉勳。もう面白くて大好きで、思えばこの映画があったから台南に通うようになったと言ってもいいくらいなんだが、大ヒットを飛ばした次は何年後?また10年開くの?と思ったら、さすがにそんなことはなかった。と言うかFBをチェックして驚いた。え、今やホウちゃんのミューズとして知られるすーちーが主演?そして時代劇?で、題名が健忘村?

時は清末民国初期。幼いころに父親とともにある村に移り住んだ秋蓉(すーちー)は王村長の息子丁遠(トニー・ヤン)と将来の約束を交わしたが、彼は3年待てと行って村を出てしまい、彼女が気に入らない村長は秋蓉と物売りの朱大餅を無理やり結婚させてしまう。
ある日、行商から帰ってきた大餅が死んでいるのが発見された。正確に言えばこれは、戻らない丁遠を待ち続けながら大餅にこき使われる生活に絶望した秋蓉が死のうとしてネズミ捕り薬を混ぜた包子を大餅が食べてしまったという事故であった。秋蓉に思いを寄せる萬大侠(ジョセフ)は彼女をかばうが、村長は秋容が殺したと疑う。
そんなギスギスした村に、天虹真人と名乗る怪しい男・田貴(王千減)がやってきて、周代から伝わる万能機器で、人々の悩みや煩悩を忘れさせる「忘憂神器」を村人に見せる。村長は彼を疑って幽閉するが、最悪の状態から脱したい秋容は迷いながらも彼を信じる。しかし、散々な目に遭わされた田貴は、忘憂機器を悪用して全ての村人の記憶を奪い、秋容を自分の妻に仕立てて村長に収まり、村を支配してしまう。
のんきで不自然なパラダイスと化した村。どうしてもここを支配下に置きたい隣村の実力者石剝皮(エリックとっつぁん)は郵便配達に身をやつした侠客集団の頭領・烏雲(林美秀)を村に送り込む。実はこの集団に丁遠が加わっており、先んじて村に帰るのだが、当然ながら村はすっかり変わっていて、これまた大騒ぎになり…。



すーちーが台湾語で語る予告編をどーぞ。しかしこのサムネイルだけ見ればなんかるろけんっぽい。ってなぜ侠女じゃなくるろけんを思い出す…。

予告にもある「村長好~♪」のポーズ付き挨拶は笑えるんだけど、中盤でまーさーかーそーゆー展開かあ!と驚愕>予告だけだとすーちーだけがそうなったのかと思ったので。
悲しいことは忘れたいけど、もしも誰もがみんな忘れてしまったら?というのがテーマかな、と思って観ていた。今回は初の中国との合作&初の時代劇でしかも賀歳片ということで、いつものようなひねりを加えずに割とストレートに行ったのかな、と思ったりして。とは言ってもちょっとブラックユーモアも効いている。小ネタの応酬も相変わらずだけど、祝宴よりは抑えめになっているのは、大陸向け対策?
でもねー、その大陸向きっていうのがあってなのかな、もちろん大笑いはできたんだけど、なにか物足りなかった。何が物足りなかったって、ユーシュン作品の魅力はやはり台湾ローカルのコテコテ感にあるのだから、それが大作になって出しづらくなったんだろうなってことなんだけど。コテコテにするなら、台詞を全編台湾語にしちゃうのも手だったか?(こらこら)
しかも大陸では上映前にこんなことになっちゃうし。あの映画には特に政治的メッセージは感じなかったけどなあ。多分ない…と思うんだが、深読みは…あまりするまい。

物足りない物足りないとは言うけど、それでもキャストの演技は楽しかったですよ。
この撮影が終わってからステと見事なゴールインを果たしたすーちーは、刺客の次にこれなので、いやあもうかわいいかわいい。大陸から呼ばれた王千源は『ブレイド・マスター』や近日感想を書く予定のアンディ主演『誘拐捜査』などでシリアスな演技を見せていたけど、何やっぱりコメディアンだったの?まあコメディアン顔だとは思っていたけどね。(それを言うたら王寶強もコメディアン顔か?)
前作の“台湾のビヨンセ”っぷりが未だに強烈な林美秀は、今回はうって変わって本編ではほとんど笑わない女刺客(!)。もちろん観てる分には笑えるんですけどね。彼女の部下たちのボイパ(ボイスパフォーマンスね)は楽しい。これで威嚇したりするもんだからなおさらね。
でも今回一番面白かったのがジョセフかなー。初見からどシリアスな役どころばかり続いてたからだろうけど、今回彼が演じた萬大侠はもう見事なまでの脳筋キャラで、件の立派な二の腕も見事にその威力を見せる。笑えるジョセフをほぼ初めて観たからってのもあるんだけど、クライマックスはホントに笑った笑った。

まあ、感想はこんな感じかなあ。結構さっくりしててすみません。もう一度観たら感想も変わるかも。
んじゃ、最後は楽しくこれで締めますか。

英題:The Village of No Return
製作:リー・リエ&イエ・ルーフェン 監督&脚本:チェン・ユーシュン
出演:スー・チー ジョセフ・チャン ワン・チエンユエン リン・メイシウ トニー・ヤン クー・ユールン エリック・ツァン  

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2016funkin'for HONGKONG的十大電影

恭喜發財 萬事如意!
というわけで、まずはお約束のこれを。
去年のヴァージョンなのは、去年の記事に載せ忘れたので…というよりも、事故に遭ったアンディ先生の快復を心から願っております。


 さて、昨年は中華電影を15本しか観てなかったのでした。うち地元鑑賞は昨年2位に選んだ刺客を含めてたったの4本、そのうち中国映画『見えない目撃者』を見逃しました。当然香港映画は昨年にひき続いて上映なし(成龍作品はすでに中国映画ですしね)はあ…。
 だから選ぶのは楽でしたね、というか、必然的に映画祭作品が上位に来るのは致し方無いですね。てなわけで、今年は久々に1位からご紹介しますよ。

1 侠女(デジタル修復版)

 ああすみませんすみません、今回クラシック作品を初めて1位にしちゃいました。もうこの本数だからしょうがないと思って下さい。これ観たおかげでるろけん観ても守り人観ても、「あーこれ侠女リスペクトじゃん!」という日々を送っています。それくらい重要です、はい。

2 大樹は風を招く

 昨年つくづく残念だったのは、香港で話題を呼んだ問題作《十年》を観る機会に恵まれなかったこと。一般公開があるとしてもあの映画をあまり政治的に捉えてほしくないなーと思っているんだけど、その《十年》のいい影響を受けていて、まさに今の時代だからこそ返還時を客観的に観ることができるとも言えた映画でした。

3 シェッド・スキン・パパ

 めでたく今年4月の香港公開が決まって何より。演劇と映画とジャンユーと古天楽の幸せな出会いが、香港のポップカルチャーに繁栄をもたらしますように。

4 ゴッドスピード

 サイト「銀幕閑話」では見事昨年のアジア映画第1位に選出。マイケル・ホイさんの好演もあいまって、ユーモアと過激さが共存するなんとも言えない不思議な味わいのロードムービーは、やはりインパクト大きかった。

5 山河ノスタルジア

 ジャンクーが初めて描いた愛についての物語。利便性や欲望を求める人々も、愛には心を掴まれているといった具合だけど、それに希望を託すのも悪くない。

6 メコン大作戦

 次回作もポンちゃん主演のオペレーションものになるという話。ますます過酷なシチュエーションを設定する鬼ダンテっぷりが加速するんでしょうねー。ああそれもまた楽しみである。

7 タイペイ・ストーリー

 やっとヤンちゃん再評価の時がきた。もうこの世にいらっしゃらないのが切ないけど、おかげで噂だけ聞いていて観られなかった作品がやっと観られる。ホウちゃん、かわいかったよなあ。

8 台湾新電影時代 

 ホウちゃんやヤンちゃんの旧作がリマスタリングされていま観られるのも、台湾ニューシネマの再評価があってこそなのだろう。映画が消費されてきている今だからこそ、アジア映画史の重要な位置にある映画たちは、日本の古い邦画と同じように観られる頻度が上がってくれたらいい。

9 私の少女時代

 近年の若者向けの壁ドン系邦画がどうも苦手で、お願いだからこういうのばっかで選択の幅を狭めないでーって思っているんだが、あの頃とかこれのような、中高生以上も楽しめるちょっと時代設定の古い青春映画がもっと増えてくれてもいいんだけどね。

10 最愛の子

 このところアクションものが多かったピーターさんが、久々に人間ドラマに戻ってきた。もともと国境を股にかけて活躍してきた人だけど、今後中国で活動するのなら、あまりドメスティックにならないで、過去作品のような洗練されたものが観たいかなと思う。勝手な意見ですが。

次は個人賞ですよ。いつものごとく、賞に決まっても特に何も与えられませんが。

主演俳優賞:ン・ジャンユー(シェッド・スキン・パパ)マイケル・ホイ(ゴッドスピード)
ジャンユーは久々に香港映画での主演と、何役も演じ分ける無双っぷりが楽しかった。ホイさんも久々の主演、そしてユーモアとペーソスをたたえた安心感が面白かったので両雄受賞。

主演女優賞:チャオ・タオ(山河ノスタルジア)
いつも幸薄い印象の涛さんだけど、今回が一番役としては幸せに見えた感がある。おばちゃんの役も演じたけど、まだそこそこ若いんだよね。ジャンクーとお幸せに。

助演男優賞:レオン・ダイ(ゴッドスピード)
踏んだり蹴ったりだったというか、まさに「ままならない人生」を体現したような雰囲気が面白かった。そういえばまだ監督作を観たことないので、いつかその機会に恵まれますように。

助演女優賞:シルヴィア・チャン(山河ノスタルジア)
孫ほどの年齢の少年も恋に落ちる程の魅力とは!美魔女とかアンチエイジングなどを超えて、こういう60代を目指したいものです。

新人監督賞:ロイ・シートウ(シェッド・スキン・パパ)
あの『夜半歌聲』のキモいボンボンが、今や香港演劇界の大御所とは…(微笑)。役者としてはまだまだスクリーンで観る機会があるけど(パンちゃん最新作《春嬌救志明》にも端役で出るみたいだし)、また監督作も近いうちに。

最優秀アクション賞:シュー・フェン(侠女)
本当は最優秀女優賞にしようかと思ったのだけど、今はプロデューサー専業だしなあ、というわけで(そんな理由でいいのか?)まさに歴史に残るあの鮮烈なアクションを体現した中華電影史の重要人物として、この特別賞を。

心から尊敬しますで賞:キン・フー(侠女)
20年近く中華電影迷やってきて、やっとこの歳になって侠女が観られたのは遅かったかも…とも思ったけど、香港のアキラ黒澤とも称される名匠の作品を大きなスクリーンで観られたのは本当にいい映画体験だったし、中華電影を好きで本当によかった。というわけで、敬意を込めての特別賞。

 自分の昨年の中華電影鑑賞の低調ぶりは、武蔵野館の改装や日記blogでも愚痴っているような事情があるにしろ、それでも旧作をTV放映やソフトでフォローできなかったので惜しかったよなーとも思います。仕事も忙しく、中華以外の映画もガンガン観ている中でも、今後もやっぱりどういう形ででもちゃんと観ていかなきゃならんなあ。
 そんなわけで、この旧正月で何作か録画を観たので、暇のあるときに感想をアップしていきますね。

 最後に、今後地元で観られる中華電影の話も。
この年明けに東京で大量の中華電影が公開され、なんでそんなにいっぺんに、とか、どうせこんな田舎には来ないんでしょ?とか相変わらずやさぐれていましたが、なんと『人魚姫』は3月に観られます。ありがとう中劇さん!
 後は、年末年始に観られなかった『湾生回家』が2月に、そして『牯嶺街少年殺人事件』が4月にルミエールで上映です。この機会に、多くの人達が中華電影に楽しみ、今後もいろんな作品が盛岡までやってきてくることを願うばかりです。

 では、今年も中華電影迷の皆様にとっても良い年でありますように…。

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侠女(1971/台湾)

 映画好き(シネフィルに非ず)と言っておきながら、実はワタシは意外なほどクラシックを押さえていない。学生時代に『ローマの休日』や『カサブランカ』や『用心棒』などは観ているにせよ、午前10時の映画祭は覇王別姫や宋家のように、かつて自分が好きで観ていた作品が来たくらいしか行ってないし(ちなみに年明けからは『山の郵便配達』と『初恋のきた道』が続けて上映されるが、繁忙期のためパス)BSやCSでの放映もチェックしていない。それ故に不勉強なところはたくさんある。
 それは中華電影でも然り。そもそも香港映画には90年代中盤からハマったのだから、第2次黄金期であるTVでしか観たことのない成龍作品も、李小龍作品も後から観直して感想を書いてきた。

 今年の東京フィルメックスでは、武侠映画の巨匠と言われたキン・フー(1932-1997)監督の2本の代表作『残酷ドラゴン 血斗龍門の宿』とこの『侠女』のデジタル修復版が上映された。キン・フー監督は1950年代から香港で映画製作に取り組み、60年代には台湾にも活動を広げ、これらの作品で両岸三地に名を轟かせ、第1次香港映画黄金期を築いたと言っても過言ではない、武侠映画のパイオニアとも言える人物。前者は時間の都合で観られなかったものの、後者はタイミングよく映画祭の最終上映作品になったので、それじゃ観に行かなきゃ!と多いに張り切ってチケットを取ったのであった。


なお、今回は『キン・フー武侠電影作法』(キン・フー/山田宏一/宇田川幸洋)を参考としました。この本全体の感想も、年明け以降にアップいたします。


 オリジナルは2部構成で台湾では1970年と71年に連続公開、香港では1本にまとめて公開された188分の大長編。
 東廠や錦衣衛など、この映画この映画でお馴染みの人たちが暗躍する明代が舞台。東廠の宦官に陥れられて処刑された父の敵を討つために武術を身につけた楊慧貞(徐楓)と、彼女にひかれた田舎町の30過ぎの書生顧省斎(石雋)を中心に繰り広げられる壮絶な復讐劇…と一応言えるのだが、3時間全編に渡って激しいアクションが展開するわけではない。
 初めは非常にゆっくりと田舎町の枯れた初冬(多分)の情景を見せ、そこから顧が登場してくる。頭はよさそうなのに科挙にはなかなか合格せず、書画を描いたり手紙の代筆や春聯の作成をする商売をしている顧は母親と2人暮らしで、一族が絶えるから嫁をとれと散々言われるトホホ君。石雋さんといえば、『楽日』で苗天さんと共に台北の映画館で『血斗竜門の宿』を観ていたり、3年前にNHK広島が製作したドキュメンタリードラマ『基町アパート』(リンクは出演されていた中村梅雀さんのblog記事)に出演されたり、『黒衣の刺客』にも出るはず…というか撮影はしたけどカットになったのか、とあれこれ思い出す。武侠映画のスターであるけど、顧はショウブラ作品の主人公のようなマッチョではなく、頭脳を使って楊をサポートするタイプ。彼のようなタイプは女性が主人公となる武侠映画では珍しくないけど、その原型なのかもしれない。
 その彼の村の廃寺に住み着いたのが楊。徐楓さんが演じる彼女は登場時からキリッとした表情を見せ、あまり表情を崩すことがない。彼女はデビュー2作目でこの作品の主演を果たしているのだけど、もともとアクション女優ではなかったというのが意外。デビューしたてでキャリアの浅さをカバーするためにセリフをあえて少なくしたとも聞くけど、新人であることを感じさせないアクションの凄さには驚かされた。

 そう、この映画について語るのに欠かせないのが、武侠映画の最高傑作ということ。それは本当であって、ここから香港のアクション映画にもつながっていったというのはまさにその通りだと感じた。『グリーン・デスティニー』がオマージュを捧げた(他の映画にも多少あるけど)第1部クライマックスでの竹林での激闘や、楊たちが逃亡中に敵と戦い、慧圓大師(ロイ・チャオ)に助けられる場面、第2部クライマックスの錦衣衛との対決など、見ごたえがある場面は次々と登場する。最初の場面から顧と楊が出会い、彼女たちの周囲に東廠の密偵・歐陽年(田鵬)が現れて暗躍するまでがえらくゆったりしているので、多少戸惑ったりもしたのだけど、物語が戦いへと向かうと一気にシフトチェンジして止まらなくなり、興奮すること限りなしであった。しかし、アクション以外の場面にも力が入っているから、ゆったり…というより、ここまで時間をかけて描いているのかな?とも一方で思った。第2部中盤で顧が立てた作戦で東廠をおびき出して全滅させるというくだりでは、戦いの虚しさまでも描いてしまっていて、普通はこういう描写しないよなーなんて思うところもあったので。
 そして、ついつい楊の強さに気を取られていたので、彼女と顧が一瞬の恋に落ちたのをうっかり見落としてしまい、一緒にはなれないけど彼の子孫を絶やすまいと一緒に寝て、産んだ子供を託したくだりに「えー、ヤッたのかキミたち!」と思わず言っちゃったこと(汗)。予習してなかったのがいけなかったんですね、すみません。

 てなかんじでダラダラ書きそうなのでこのへんで締めますが、先にも書いたようにこの映画が李小龍や成龍やショウブラ作品につながり、後の古装片ブームにもつながり、一代宗師や黒衣の刺客、さらにはるろけんにもつながっていくと思えば、大きなスクリーンで観られたことは嬉しかったし、今後も語り継いでいかれるだろうし、まだ知らない多くの人に観られてほしいと思ったのであった。
 この映画祭で上映された2本のキン・フー作品は、来年1月からの一般公開が決まっているそうで、これをいい機会に、ぜひとも全国津津浦浦で上映されてほしいものです。
 もちろん我が地元でも観たいなあ。せっせとリクエスト出さねば。


英題:A Touch of Zen
監督&脚本:キン・フー 撮影:ホア・ホイイン 音楽:ウー・ダーチアン 武術指導:ハン・インチエ
出演:シュー・フォン シー・チュン バイ・イン ティエン・ポン ハン・インチエ サモ・ハン・キンポー ミャオ・ティエン ロイ・チャオ

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タイペイ・ストーリー(1985/台湾)

 本題に入る前に、まずはこれを言わせて下さい。

祝!『牯嶺街少年殺人事件』日本再上映!

 ワタシ自身も1回しか観ていない4時間版の上映。配給がしっかりしたところなので、地元でも上映してくれるだろうと固く信じてます。

 閑話休題。長年日本再上映が望まれていた代表作がやっと決まった来年は、ヤンちゃんことエドワード・ヤン監督の生誕70年にして、没後10年。昨年は『恐怖分子』がリバイバル上映され、やっと再評価が始まったとホッとしている。
 それに先立つ1年前に、監督第2作として撮りあげた『タイペイ・ストーリー』がデジタル・リマスタリングされてフィルメックスで上映。主演はホウちゃんこと侯孝賢、相手役にヤンちゃんの奥方でもあった歌手の蔡琴さん、脇には柯一正さんに呉念眞さん(蒼蝿師と愚人師…とか今回は言っちゃいけない)と、なんとも豪華な面々が登場。

 米国帰りの阿隆(ホウちゃん)と建築事務所で秘書をしている阿貞(蔡琴)は恋人同士ではあるけど、どことなくそう見えない。時には兄妹のように濃密に見えるときもあれば、他人のようによそよそしく振る舞うこともある。題名の《青梅竹馬》は中国語で幼馴染の意味だけど、お互いを知り尽くし、かなり近い位置にいるから先に進めないでいるもどかしさを表しているみたいだ。
 かつては少年野球のエースだったが、輝かしい過去を思いながら米国行きに期待をかけたい阿隆。仕事を持ち自立していたが、勤めていた会社からリストラされてしまった阿貞。お互いにすれ違い、気持ちは離れていくけど、それでも相手を求めている。


もしかしたらすぐ消えちゃうかもしれないけど、今年の金馬からの動画を。

 上映前のインタビューでホウちゃんは「この映画は決して成功作とはいえない」というようなことを語っていた。脚本家としても参加していたこの映画のために彼は家を抵当に入れて出資したものの、公開期間はたった4日だったそうだ…ああ。まあ、確かに出演しているのは、有名な歌手の蔡琴だけど、ホウちゃんもルンルンパパ(柯一正さん)も念眞さんもあくまでも映画人だから、当時の観客はどう思ったのだろうかな。
 この次の『恐怖分子』で高い評価を得たそうだけど、テーマとしては実はほとんど変わっていない。急激に発展する台北で揺れ動き、一緒にいるのに幸せではない男女の孤独。それはミンリャンの描く孤独とは全く違うタイプのものだと思うけど、ウェットではなくとことんドライなのは、ヤンちゃん自身も一度台湾を出ていて、米国で学んだ影響もあるのかな、などと思ったりする。でも、やはり米国で暮らしてた李安さんとも全く違う個性でもあるし。一度ご本人にお会いして、そのへんを聞いてみたかったな。もう、叶えられないことなんだけど。
 幼馴染ならぬ、同い年だったホウちゃんとも個性は違うのはもちろんのこと。彼は一般的には郷土電影の名手と言われているらしいしね。

 そんなホウちゃんが参加した数少ない出演作というのも見もの。数えてみたら、38歳の頃に撮られていたそうで、あー、今の自分より若いんだホウちゃん、うわーかわいいなー、とか柄にもなく思ってしまった(笑)。若々しくて、髪が長くて、意外にも直情径行なキャラクター。時に暴力的で荒々しく、まだまだ青春の香りを残しているような好演を見せていた。
 蔡琴さんといえばなんといっても、我々にとっては馴染み深いこの歌の人。ワタシもそれ以外の曲は90年代台湾でよく耳にしていたけど、女優としての演技は知らなかったので、興味深く観た。この映画の後ヤンちゃんと恋に落ちて結婚し、ちょうど10年後に離婚したらしい。(その後ヤンちゃんはピアニストと再婚し、彼女も再婚)ルンルンパパも多少今の面影はあるかなとか思いつつ見たし、念眞さんもこの頃は若かったなー。

 まあ、そんなアホなことくらいしかかけてませんが、今はもうない町並みの中でも、後半に登場していた闇に時折照らし出される迪化街の場面には、あれだけ街が変わってしまっても、老街はあまり変わっていないことに、なんとも言えない不思議な気持ちになったのでした。
 また繰り返すけど、ヤンちゃんからはいろいろな話を聞きたかったなあ。
 それはかなわないことだから、他の作品もどんどん再上映してもらって、彼の思いを知りたいよ。

原題:青梅竹馬
監督&脚本:エドワード・ヤン 脚本:ホウ・シャオシェン&ジュー・ティエンウェン
出演:ホウ・シャオシェン ツァイ・チン クー・イーシェン ウー・ニエンジェン メイ・ファン ヤン・リーイン

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私の少女時代(2015/台湾)

 ここ15年ほど、台湾映画の代名詞は青春映画のようになっている。このblogで真っ先に感想を書いた『藍色夏恋』がまさにそうであるけど、その青春路線で一番稼いだのが『あの頃、君を追いかけた』ってことは言うまでもない。台湾だけでなく香港でも公開時に大ヒットし、今年『寒戦2』に抜かれるまで、香港公開の華語電影歴代興収1位の座に君臨していたわけだしね。

 で、昨年公開され、これまた台湾では大ヒットした『私の少女時代』も例に漏れず青春映画。監督は日本でも放映された多くの華流ドラマを手がけてきたフランキー・チェン(注:女性です)で、我らが大プロデューサーにしてスアーパースター(このネタいつまで通じるんだろう?)アンディ・ラウ先生が製作総指揮に名前を連ねている。その理由は後述。


 一流企業で働くお疲れ気味のアラフォー(ジョー・チェン)が振り返る、林真心(ヴィヴィアン・ソン)の女子高生時代は90年代前半。ボサボサ髪で冴えない真心が、学校一の不良で転校生の徐太宇(ダレン・ワン)と出会ったことから始まる、いかにーも少女マンガ的なスクールデイズ。真心がほのかな想いを寄せる学校一の優等生歐陽非凡(この名前どうよ!ディノ・リー)、真心のご近所で学校のマドンナ陶敏敏(デヴィ・チェン)、男勝りとふくよかちゃんという真心の親友2人など、これまたいかにもーなキャラが揃っている。学校一の嫌われ者太宇のパシリにされたり、敏敏に思いを寄せる太宇のために奔走したり、そしてやっと非凡に心が通じたかと思えば、自分のほんとうの思いを自覚してしまう真心など、もうものすごくベタで甘々で一体いつの時代の少女マンガだよ!とツッコミを入れずにはいられない。

日本初上映は今年の大阪アジアン映画祭だけど、配給会社が仙台で実施したこの映画祭で初見。

 しかし、このもろに少女マンガな演出はおそらく計算されたもの。監督の実体験も多分に含まれていて、しかも彼女と同じアラフォー女子なら思わず頷いてしまったり、懐かしさを呼び起こすような仕掛けがあちこちに施されていて、彼女たちより少し年長で、なおかつ90年代初頭に台湾にいた自分としては思わずにやりとしてしまった。
 特に芸能ネタに懐かしさを覚えた人は、香港映画&芸能好きなら少なくないはず。真心はアンディ先生と星仔の大ファンで、親友はアーロンと金城くんの大ファン。真心と太宇たちが遊びに繰り出すとき、流れるのは当時バリバリのアイドルだったグラスホッパーのこの曲。

 当時の香港芸能にハマった人なら、他にもニヤリとさせられるネタはたくさんあるらしいけど、ワタシにわかったのはこれくらい。そして、こういう素地があるからこそ、日本の少女マンガを原作に台湾に舞台を移した『流星花園』シリーズを始めとした華流ドラマの成功があるのだな、と思いっきり納得した。ほとんどのあらほー台湾女子が、こんな少女時代を過ごしていたのかなあ。

 まあ、少女マンガ的展開と書いたけど、それはいい意味でもあり悪い意味でもある。そんな点で引っかかりがある人もいそうだし、実際ワタシもものすごいムカつく不良として登場した太宇は実は…な設定があまりにもご都合っぽく感じてちょっとなって思ったりしたんだけど、まあそこまでひねっていたのもご愛嬌と思えばいいか(苦笑)。

 この映画を語る際には、どうしても『あの頃』を引き合いに出されてしまうし、二番煎じと言われちゃうのもわからなくはないけど、シモネタと妄想が前編を引っ張ったあの頃に対して、あえて女子の現実ではなく夢見る時代をそのまま映像にした潔さがこの映画の強みである。けして同じではないし、せめて映画の中だけでは夢を実現させてもいいよね?という目配せも感じられる。青春映画に厳しい態度をとっても、たまにはその目配せを尊重しないと、ね。それがあるから、少女時代の予想外の顛末から、現代に戻ってアンディの台北コンサートで起こるラストのミラクルが効いてくるのだろうから…。
 とか言いつつも、あの流れにはもう爆笑するしかなかったぞ。どうしてくれる(こらこら)



なお、この映画には単館系映画には珍しく日本語吹替版も作られております。
声優さんファンが多く観に来ているとのことです。それを受けたかどうかわからないけど、上の画像は映画祭で見かけたアニメ風アレンジポスター。でもごめんなさい、これを最初に見て思ったのは、今年めっちゃ流行ったあのアニメからのインスパイア?ってことでした。すいませんすいません本当にすいません。

原題&英題:我的少女時代(Our Times)
監督:フランキー・チェン 製作:イエ・ルーフェン 製作総指揮:アンディ・ラウ
出演:ヴィヴィアン・ソン ダレン・ワン ディノ・リー デヴィ・チェン ジェリー・イェン アンディ・ラウ

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ゴッドスピード(2016/台湾)

 旅立つ時に言われる「一路順風」という中国語の訳は、だいたいBon Voyageというフランス語を充てられることが多いのだが、この映画の英題は、その古い英語表現を使った「Godspeed」。
 3年前の『失魂』以来のTIFF登場となる鐘孟宏監督の新作『ゴッドスピード』は、説明不要のMr.Boo、許兄弟の長男マイケルさんを主演に迎えたことが公開前から話題になっていて、11月の台湾一般上映に先駆けたTIFF上映では、その話題性もあってかチケットも早々とソールドアウト。

 この作品でマイケルさんは香港から台湾に移住したタクシー運転手を演じ、兄貴の大寶(レオン・ダイ)に頼まれて麻薬を台南まで運ぶチンピラ(演じるは台湾のコメディアン納豆。ちなみに日本の納豆は食べられないとのこと)を乗せたことで、思わぬ事態に巻き込まれるというコメディ…のはずなのだが、前作の強烈な印象もあってか、なんとも言えぬ不思議な感覚を持つ、一筋縄ではいかない作品に仕上がっていたのであった。


 題名の一路順風は、日本ではよく「道中気をつけて」と訳されていることが多い。
この予告にも出てくるセリフにもあるのだが、冒頭、タイに旅立つ前の大寶が弟分にこう言われたことから、タイでひどい目に遭って帰国したのは「お気をつけて」と言われたからだ、と毒づく場面がある。そんな大寶と取引をするツォン(トゥオ・ツォンホア)ら台湾ヤクザたちが繰り広げる壮絶な修羅場と、途中でうっかり黒社会の葬儀に紛れ込んで大変な目にあったりするも、基本的にどこかのんびりしている許さんと納豆の珍道中とが並列して語られる。その両者はあまりにもトーンが違うのだが、やがてこの二つが交わり、ある意味で衝撃な上でさらに想定外なエンディングを迎える。許さんパートのオフビートな雰囲気にクスクスと笑っていたら、ヤクザパートの中盤に出てくる「タイ式拷問」には開いた口が塞がらなくなったりで、これはただのコメディと言って済ましちゃダメだなーと途中で気づいた。
ダメ押しの驚きはタクシーの旅が終盤に向かおうとする深夜の台南の場面で、カーラジオから流れてくる谷村新司の『昴』。台湾ではテレサ・テンのカヴァーも知られているというこの曲だけど、いきなりオリジナルが聴こえてきたのには驚いた。そう言えばこの歌、唐の高僧鑑真と遣唐使を描いた井上靖の小説『天平の甍』の映画化になんか縁があったんじゃなかったっけ?とググったら、当時はイメージソング的に使われていたらしい。詳細はこちらを。

 上映後のQ&Aによると、モンホンさん曰く「歌詞がままならぬ人生を描いた映画の内容にあっていると思った」からの起用とのことで、この「ままならぬ人生」がテーマであることに気づいたので膝を打ちたくなった(参考として初映時のQ&Aを)。登場人物が全て、思うままにいかぬ人生を抱えて切なく生きている印象を受けたからだ。無表情な納豆、崖っぷちの大寶だけでなく、台北の某小籠包店で奥さん(林美秀!)にやり込められる話なども挿入される許さんも、面白キャラに見えつつもどこかで切なさがある。となると、描き方は違っても、それが人間の持つ性であると思えば、前作とのつながりもどこかで感じられるのかな、などと思った。

 納豆くんはTVのバラエティ番組の司会などを担当しているそうだけど、主役級でシリアスな演技は今回が初めてとのこと。でもモンホン作品にはずっと脇で出演してきたそうだ。
そういえば、リーレンさんことレオン・ダイもツォンホアさんも前作に引き続いての出演。ベテランの常連が脇を固めるモンホン組、というわけだけど、やはり前作にも登場していたあの人、『祝宴!シェフ』の陳玉勳監督は今回はがっつり出演で大笑いしました。
 そんなユーシュンさん、来年旧正月に新作《健忘村》の公開を控えていることを記して、この感想を終わりにします>こらこら、またこういう締め方をするなよ



 左がモンホンさん、右が納豆くんのサイン。

原題:一路順風
監督&脚本:チョン・モンホン 製作:イエ・ルーフェン 撮影:中島長雄 美術:チャオ・スーハオ 音楽:ツォン・スーミン
出演:マイケル・ホイ ナードウ レオン・ダイ トゥオ・ツォンホア チェン・イーウェン チェン・ユーシュン リン・メイシウ

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台湾新電影時代(2014/台湾)

 2014年に続いて開催の「台湾巨匠傑作選2016」で上映されたドキュメンタリー『台湾新電影時代』。前回の特集上映は都合により観ることができなかったのだが、せめて新作くらいは観たいと思い、連休に新宿まで観に行った作品。

 1980年代、世界の映画祭で注目を集めた台湾ニューシネマ(新電影)。その中心にいた侯侯孝賢やエドワード・ヤンの旧作をはさみつつ、彼らの作品に衝撃と影響を受けた世界の映画人たちのインタビューで綴られたドキュメンタリー。タイのアピチャッポン・ウィーラセタクンから始まり、フランスのオリヴィエ・アサイヤス、『悲情城市』が金獅子賞を受賞したヴェネチア映画祭の元ディレクターのマルコ・ミュラー、欧米におけるアジア映画評論の第一人者&翻訳者トニー・レインズを経て、日本からはホウちゃんの『珈琲時光』で彼の撮影現場を経験した浅野忠信くん、東京フィルメックスディレクターの市山尚三さん、映画人からは是枝裕和さんと黒沢清さん、そして佐藤忠男さんが登場。さらに大陸からはジャ・ジャンクーと田壮壮、そしてアイ・ウェイウェイまで登場。そうそう、香港からはシュウ・ケイさんやアン・ホイさんもいたかな。台湾人だけどシルヴィアさんも香港サイドで見ちゃっていいだろうか?


 インタビューの間にMRTの高架や山あいを走る台鐵の景色、『恋恋風塵』劇中の列車の場面が挿入されるので、まるで電車で世界旅行をするような気分で観ることもできる。
 取材者がほんとうに様々なスタンスなのが面白い。同世代のアピチャッポンやジャンクーはいかに台湾ニューシネマから影響を受けたかを彼らなりの熱さで語り、台湾ニューシネマを発見し注目した欧米人たちはあの頃の衝撃を話し合う。香港や大陸の映画人たちは自分たちの作品と比べながら語る。特に大陸の評論家達による「中国映画には台湾映画のような人間が描かれていない作品が多い。『覇王別姫』なんかそうじゃん」みたいなクロストークには笑った。と言うか苦笑いしつつこのヤローって思ったのが本音かな。

 全体的にアジアの映画人の話に共感するのは、自分自身もアジア人だしねってのがあるのだけど、一番興味深かったのが日本の映画人たちの話だった。実際に現場に関わった人も多いし、佐藤さんのように80年代から多くの作品を観てきた方もいる。キヨシは「ボクはエドワード・ヤンが好き」と語っていたが、確かにヤンちゃんの旧作を見直しながらキヨシ作品を観てみると、どこか似たような雰囲気を覚える。
 そして、ホウちゃんとヤンちゃんをとりあげた『映画が時代を写す時―侯孝賢とエドワード・ヤン』(1993)をTVディレクター時代に演出していた是枝さん。このドキュメンタリー自体は観ていないけど、彼が早い時期から台湾映画に関心を寄せていたことは知っていたし、実際の作品にもホウちゃん的な味わいを見ることができるので、ワタシも好きな日本の他監督である。
 その彼の亡きお父上が台湾出身の湾生だと知ったのは実はつい最近だったりする。インタビューでもその件について語られているけど、昨年たまたまどこかで嘉義農林を出られたと聞いて、なんという偶然!と驚いたもので。『童年往事』に寄せて、嘉農を出てそのまま出征し、シベリアで敗戦を迎えて帰国したお父上が、パイナップルは台湾のほうが美味しかったと言っていたという思い出を語っていたのだけど、これもまた一つの童年往事のような、などと思ってしまったのだった。いつか台湾をモチーフに映画を撮ってほしいなあ。

 ところで「自分の作品はニューシネマとは思わない」と語っていたミンリャンを含め、台湾映画にはうっかりすると記憶が遠のいてしまう(つまりいつの間にか寝てしまう)ことが多少あって、こりゃまずいなーと思うことがたびたびあるのだが、最初のほうで確かアピチャッポンが「観ていると気持よくてついまどろんで寝てしまうことがあるのだが、それは決して惜しいと思わない」というようなことを言っていたので、そうか、それはあながち間違いではないのか、と思い直したのは調子良すぎるでしょうか?(笑)
 今は旧作のリマスター版上映も多いし、昔観て記憶がとぎれとぎれになっても再見してその良さを確認できる時代なので、やはり「午前十時の映画祭」で上映される作品と同じように、これらの台湾映画の秀作も定番のようにたくさん上映されてほしい。ええ、大都市圏だけじゃなくて、地方でもね!

 で、そろそろ日本で観られることを期待してもいいんですよね、『牯嶺街少年殺人事件』については?

原題&英題:光陰的故事―台湾新電影(Flowers of Taipei - Taiwan New Cinema)
監督:シエ・チンリン 製作総指揮:シャオ・イエ 製作:アンジェリカ・ワン
出演:ホウ・シャオシェン ツァイ・ミンリャン ジャ・ジャンクー アピチャッポン・ウィーラセタクン オリヴィエ・アサイヤス マルコ・ミュラー トニー・レインズ ワン・ビン ティエン・チュアンチュアン アイ・ウェイウェイ シュウ・ケイ アン・ホイ シルヴィア・チャン 浅野忠信 市山尚三 佐藤忠男 黒沢清 是枝裕和

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2015 funkin'for HONGKONG的十大電影

 えー、今年はここ数年の傾向(リンク先に書いてるので参考として)から元に戻しました。というか、農暦晦日までに中華電影を観る予定がないからです。そんなわけで、blog開設12年の記念日のタイミングでアップいたします。

 昨年我が地元で上映された中華電影は数えてみたら6作品(旧作再映含む)。香港映画に至っては1本も上映がありませんでした。そんな状況なので、仙台に行ったり映画祭で稼いだのがほとんどです。今年は3月に『最愛の子』『ドラゴン・ブレイド』が上映されますが、その後はどうなることやら。まあ、足りない分はWOWOW放映で補ったりしてみます。…ずんぬくまんじうとかな(こらこら)

 また、昨年は台湾映画をたくさん観ました。春先に台湾に行ったこともあるのでしょうが、そんなこともあって、ちょっといつもと違う趣の十大電影になったと思います。
 では、例年通りのカウントダウンで十大電影いってみましょうか。

10 戯夢人生

 昨年は旧作上映もいいものが来てよかったです。特にこれは初上映時にみのがしていて、ずっと観たかった作品。どうかデジタル・リマスタリングされて、悲情城市と一緒に午前十時の映画祭に選ばれますように。

9 九月に降る風

 昨年春のシネマート六本木の閉館上映時の再映で拝見。これを観て「トムさんいいなぁー」と改めて思った次第。その約半年後に新作が観られたのだけど…。

8 レクイエム 最後の銃弾

 昨年春の仙台の特集上映でやっと観られた映画。そうそう、香港映画における男たちの絆ってーのはこーゆーのなんだよ!これが観たかったんだよ!とついつい力こぶが入ってしまったのは言うまでもない。

7 全力スマッシュ

 香港映画の希望の星(半分マジで言っている)デレクさんの新作。ワールドプレミアは日本だったし、もっともっと盛り上げたかったなあ。そして今年の奥運會では、当然バドミントンも応援しますよ。

6 破風

 スポーツ映画が続きます。両岸三地だけにとどまらず、東アジア全体に目を向けて作られたのはヘリオスと同じ。こういう可能性もあるんだよなと思いつつ、日本がこの枠に入らない、もとい入れないのは中華びいきでもほんとうに残念。アミューズさんあたり、今年はどうですか?こんな東アジアコラボにかんでみるのは。

5 KANO 1931 海の向こうの甲子園

 はは、これもスポーツ映画だわ。 
 厳密には中華電影とは言えないんだろうな。でも、魏導&馬導には「これを作ってくれてありがとう!」と感謝したくなった。野球もまじめに観るようになったしね(笑)。

4 カンフー・ジャングル

 自分でも意外なんだけど、思ったよりも上位に来ました。もちろん洋画ベストの中にもランクイン。こっちで書いてるのでお暇があればどうぞー。
 ストーリーもよかったし、アクションもエモーショナルで感情移入しやすかったもんなあ。だからやっぱりド兄さんは宇宙最強なんだよなあ。《葉問3》は是非とも全国公開でお願いしまーす。

3 レイジー・ヘイジー・クレイジー

 今回はこれが最上位の香港映画。パンちゃんももう中堅として安定した地位を得たんだなと思いつつ、新星の登場にはいろいろある香港映画(&香港)の中でも、ひときわ眩しさを感じるのでした。今年の金像奨では、どこまで賞レースに絡めるかしら? 

2 黒衣の刺客

 思った以上に静かで、美しくスリリングな映画であった。古希を目前にして作り上げたのがこんな武侠電影なのだから、ホウちゃんってやっぱりすごいやー、これからもついていかなきゃ、と思った次第。しかし、これが地元で上映されなかったのはつくづく(強制終了)。

1 百日草

 はい、実は12年やってきて、今回初めて台湾映画が№1になりました。自分でもびっくりぽん>流行り言葉
とふざけるのはこのへんにして、観て本当によかったです。トムさん自身の悲しみももちろん感じるのだけど、大切な人を亡くす喪失はだれにでもあることだから、その描き方に強く胸を掴まれたのでした。是非とも日本公開してほしい作品。

お次は部門賞。

主演男優賞 ドニー・イェン『カンフー・ジャングル』『スペシャルID 特殊身分』

 やっぱり宇宙最強だし。『百日草』の石頭もよかったんだけど、比べちゃうと、ねえ(苦笑)。

主演女優賞 カリーナ・ラム『百日草』

 祝!復活。しかもとても印象的な役どころなのがよかった。
今年は久々に學友さんとの共演作もあるとのことで(旦那さんが監督らしい)、今後の活躍も楽しみ。

助演男優賞 アンドリュー・ラム『全力スマッシュ』
助演女優賞 スーザン・ショウ『全力スマッシュ』『レイジー・ヘイジー・クレイジー』

 ここはまとめてコメントしますか。いやー、このコンビは夫婦漫才みたいで最高でした!
デレクさんたちから鬼才のスカッド監督までカバーする、スーザン姐の香港映画界のゴッドマザーっぷりもすごいしね。

監督賞 ホウ・シャオシェン『黒衣の刺客』『風櫃の少年』『戯夢人生』
      トム・リン『百日草』『九月に降る風』

 台湾映画豊作の年ということもあり、ベテランと中堅コンビをチョイス。
両者とも、今後の作品が楽しみなんだけど、そういえば寡作でもあるのよね(汗)。

新人賞 ジョディ・ロック&アシーナ・クォック&フィッシュ・リウ&コーイー・マック『レイジー・ヘイジー・クレイジー』

 なかなかにセンセーショナルな作品でデビューした監督&三人娘。
いろいろある(とまた言っちゃうけど)香港映画界を大いに引っ掻き回してほしいなあ。

 今年はどんな映画に出会えるだろうか。日本での上映状況も厳しくなってきてるけど、それにもめげずに観ていきたいものです。
 では、ラストにこれを。今年は申年だし、葉問3と共に日本公開を期待したい作品。

 

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念念(2015/台湾)

 フィルメックス鑑賞記のラストは、今年の審査員であるシルヴィアさんの監督作品『念念』
 シルヴィアさんの監督作品は金城くんとジジとカレンの『君のいた永遠』は観ているのだが『少女シャオユー』(95)や『20、30、40の恋』(04)などの映画祭で高く評価された作品はなぜかスルーしちゃってる。つまり観る機会に恵まれなかった。だから実際は『君のいた永遠』以来15年以上ぶりの監督作品鑑賞ってことになる。

 台東の横に位置する緑島。ここは長年刑務所が多く設置されていて、台湾のアルカトラズ等と言われてきた歴史があるが、今や刑務所も一つしかなく、豊かな自然と美しい海が楽しめることで知られている。
 黄育美(イザベラ)と育男(ルンルン)の兄妹は、この島で食堂を営む両親に育てられたが、二人が小学生の時に離婚し、育美は母(アンジェリカ)に連れられて台北に移住し、育男は父(陳志朋)と共に島に残った。さらに育美は母が自分より兄を愛していて、自分を連れてきたことを後悔しているのではないかと思うようになる。そして母の死をきっかけにそれがトラウマとして残り、成人して画家となった現在においても彼女を苦しめることとなった。
 育美の恋人はボクサーの張永翔(ジョセフ)。スランプに陥った彼女は翔の合宿所を訪ね、彼と身体を重ねる。それでも彼女の心の傷は癒えなかったが、ある日自分が妊娠していることに気づく。翔は目の不調を感じ、試合で調子を上げることができなかった。眼科に行ったところ、網膜剥離の診断を受け、ボクサーとしてのキャリアを諦めることとなる。お互いに行き詰まってしまう二人。
 一方、台東の旅行代理店に勤務していた頃に父を亡くした育男は、緑島に戻ってフリーの旅行ガイドをしていたが、離婚後に消息を絶った育美の行方が気になってくる。自分にとっては大好きな家族だったのに、どうして別れてしまったのか…。それがきっかけで、育男も家族を持たずに一人で暮らしていた。
 そして、台北で暮らしていた頃に母親がやはり自分の弟か妹を妊娠していたことを思い出した育美。その記憶をたどることで、彼女は母の本当の想いを知ることになり…。

 この春に台北之家に行った時、ちょうど上映前だったことで(香港国際映画祭がプレミア上映だったそうだ)『小森食光(リトル・フォレスト)』や『D機関(ジョーカー・ゲーム)』と並んでポスターが貼ってあったのだが、お久しぶりのイザベラとジョセフを見て「ほー、ラブストーリーか…。TIFFで上映されそうだな」と思ったのだが、まさかフィルメックスでやるとは。まあ、監督が審査員だからってー理由なのでしょうが。
 ともあれ、日本では金城くんとジジの恋愛ものとして宣伝された『君のいた永遠』が、実はそれにカレンも交えた友情と恋愛が交じり合った関係と、一人が欠けて中年となった現在を対比して描かれた人間ドラマだったように、この映画もポスターではラブストーリーの顔をしているけど、実はこの二人にルンルンも加わった家族をめぐる苦悩と和解、そして再生の物語だった。
 
 母と娘の確執は、最近よくネットで話題になることが多い。幼少期に愛されなかったことや、虐待を受けたり親が叶えられなかった理想を押し付けられたりと様々なのだろうが、当人が捨てたいと思う気持ちは良くわかるし、それを悶々と一人で抱え込むのは確かに辛いことだ。だけど、それが解決できないものなのか、親を捨てるにしてもどこかに気持ちをちゃんとぶつけられるか、よければ和解できないものかと思うのは余計なお世話だろうか、まあそうだろうな(反語)。すいません。
 だけど、この物語が毒親と思えた母親への恨みと、故郷を捨てる話で終わらなかったのは、家族の崩壊が必ずしも一面的ではなかったことだ。それは育美の情緒不安定が母へのトラウマが原因だとしても、兄の育男にとってそんな思い出はなく、母が育美にありったけの愛を寄せていることはよくわかっていた。同じ家族でも全く違った視点で家族を捉えると、辛い思い出は意外にも思い込みが先行するものであるというように書かれていたからだ。そこに共感できた。だから、育美と育男が母に関する思い出を幻影として見たことで、育美が母を誤解していたことに気づいたり、育男が改めて別れた母と妹に思いを寄せる場面は素直に受け入れることができた。
 また、翔自身も漁師だった父親を海難事故で失っているというエピソードが挿入されているが、翔も父親と「出会う」ことで、次に進む勇気を持つ。育男・育美兄妹と共に、死者となった親が次の世代に家族をつなぎ、未来を見させるような作りになっているように見えた。そこにも好感を持てた。
 とは言うものの、実は同じフィルメックスのコンペに参加した、『夏休みの宿題』のチャン・ツォーチ監督の新作『酔・生夢死』とカブる部分が多いらしく、こっちの方が完成度が非常に高かった(金馬奨多数受賞)と聞いて、気になっている。これと比べてみると、また違うのかしらね。

 嬉しかったのは、かつて香港映画で活躍を見せていた二人の女優、イザベラとアンジェリカがいずれも健在だったこと。二人とも結婚しており、特にイザベラは2008年の『ハムナプトラ3』以来の本格的な銀幕復帰(!!)だったとは驚いた。『百日草』のカリーナが5年ぶりの復帰だったので、同じくらいのブランクかと思ったがとんでもなかったな(苦笑)。台湾映画も『刺青』で経験済みだったので、復帰作としてもよかったのだろうな。しかし、27歳で3児(双子含む)の母か…。アンジェリカは劇中で育美の描いた絵を手がけているとか(Q&Aより)。
 そういえば最近台湾人男優で顔を見るのってポンちゃんかジョセフだなってくらいの頻度で観てるんだが、どっちが好みだろう…ってそこで考えこむな(笑)。知的な役も肉体派もこなせるいい俳優になってたけど、そうね、シルヴィアさんがおっしゃった通り、ピンクの脇が深いタンクトップからのぞく立派な二の腕には目がいっちゃったわね。
 それでもワタシはどちらかと言えばルンルンの方が好き(こらこら)。今回はいつものような暗めの役じゃなくて、比較的明るい(でも寂しそうな)役どころだったのがよかった。幸せになってほしいなーと思った次第。後はちょっと特徴ある人が特徴的に出てくるなーと思ったら、台湾を代表する占い師の星星王子であると教えてもらった。

 あと、この映画の脚本を書いたのは、『海角七号』『KANO』でもお馴染みの蔭山征彦さんで、劇中にも出演しているらしいけど気がつかなくてすみません(追記:台北出張中に帰れなくなった育男と相乗りし、バー「藤」に案内する不思議な男性役だとか。教えてもらいました)。また、この夏岩手めんこいテレビで製作されたドキュメンタリー『新渡戸稲造の台湾』で紹介された日本人俳優・目代雄介さん『27℃-世界一のパン』 『恋するヴァンパイア』に出演…って両方観てなかったよ)も出演し、劇中で印象的に登場する「陰のない男」を演じたそうです。


英題:Murmur of the Hearts
監督&脚本:シルヴィア・チャン 脚本:蔭山征彦 撮影:リョン・ミンカイ 音楽:チェン・カイ 録音:トゥー・ドゥーチー
出演:イザベラ・リョン ジョセフ・チャン(チャン・シャオチュアン) クー・ユールン アンジェリカ・リー ジュリアン・チェン

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戯夢人生(1993/台湾)

 『恋恋風塵』で初登場し、ホウちゃんの名を広く知らしめた『悲情城市』にも出演した李天祿さん(1910-1998)。伝統的な人形劇・布袋戯の人間国宝的な人物である彼は、若い頃から公演で台湾中を回り歩いていたそうだ。生まれた時代は日本統治時代のど真ん中。そんな彼の前半生を映画にした『戯夢人生』は、悲情城市とは対をなす傑作として言えるのだろう。…しかし、恥ずかしながら未見でありました。実際日本でも長い間上映が途絶えていたそうで、今回がチャンスであり、貴重な機会だと思ったのは言うまでもなく。

 物語は幼少期から始まり、人形劇団で布袋戯使いとして才能を表す青年期(林強)、日中戦争の影響を受けた時代を経て終戦で幕が閉じられる。ポイントになる場面には李天祿さん自らが語り手として時を超えるように現れるのだが、そこで語られる当時の思い出もなかなか驚かされるものばかりで面白い。各時代についての背景は天祿さんのモノローグでも言及されるが、ドラマティックな盛り上げは一切ないし、感情過多になっていない。悲情城市でも歴史に翻弄される人々の姿はドラマティックであったが、それでも淡々としたものだったし、姉妹編として撮り上げたこの作品ではその淡々さがさらに一歩進んでいったのは言うまでもないんだろう。それ故にホウちゃんの作風にあまり親しみのない一般的な方々の感想に「名作と言われるけど、悲情城市はピンとこなかった」というのが多少あるのはわかる。

 興味深かったのは各時代に出てくる布袋戯の場面。手のひらにすっぽりとかぶせるサイズの可愛らしい人形が賑やかに物語を転がし、その時代で変化する様子もわかる。戦時下では日本の兵士の活躍まで日本語で上演されていたとは知らなかった。
 また、統治時代における日本人の見方も客観的だったのが意外だった。日本人と共に布袋戯を演じることになる後半で、やさぐれて悪態ばかりつき、天祿さんにも突っかかっていく日本人の同僚がいたが、それを咎め、天祿さんたちを気にかける上司もいるわけで、美化もしなければ批判もしない描き方はよかった。この描写について、当時はどう捉えられていたのだろうか?

 広角で大胆に遠景を捉えるショットや、自然光で室内を映し込む場面は昔も今も変わらなく、それだからこそスキな人間には安心できる。でも初心者に厳しいってわけじゃない。こういう映画こそ、大画面で時間を忘れるほどゆったりした気持ちで味わう価値がある。スヤッたらたらもう一度大画面で観ればいいのさ…って贅沢言ってすいません。

 日本統治時代に生まれ、日本語もわかれば漢文の教養もあったという天祿さん。なくなってもう15年以上が経ってしまったけど、一度お話が聞いてみたかったなあ。布袋戯の公演を日本でもしたことがあるらしいけど、気がつかなかったものなあ。

Q&Aも和やかに進行。この回では制作協力にお名前があった野上照代さんも参加されていて、ホウちゃんを「アナタは天才よりすごいよ!」と大絶賛。そして、かの黒澤明監督が日本公開時にこれを観て、黒澤プロの新年会で会う人ごとに「『戯夢人生』観たか?アレはすごいぞ!」と言っていたというエピソードを披露してくださってました。こういう話を聞くと、日本映画と台湾映画、ひいてはアジア映画のつながりの強さを再確認したくなるなあ。


 しかし、長らく上映機会が途絶えていたということがあって、フィルムがかなり古かったのが残念。風櫃同様にデジタル修復されてほしいと思うのだけど、権利関係の解決がかなり難しいらしい。悲情城市同様、映画史に残る作品だし、映画ファンだけじゃなく台湾やアジア史に興味の深い人に広く観られてほしいと思うので、デジタルリマスター化を希望します。クラウドファウンディングがあれば、もちろん参加しますよ。

英題:The Puppetmaster
監督:ホウ・シャオシェン 原案:リー・ティエンルー 脚本:ウー・ニエンジェン&ジュー・ティエンウェン 撮影:リー・ピンビン 
出演:リー・ティエンルー リン・チャン ツァイ・ジェンナン カオ・トンシウ 伊東史朗

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