中国映画

レイン・オブ・アサシン(2010/中国・香港・台湾)

「えー、またしても安直な英題そのまんまの邦題かよー(泣)」と最初に思ったこの『レイン・オブ・アサシン』というタイトル。しかし、よく見たら「Reign of assassins(刺客たちの時代)」となっており、原題は《剣雨》。ああ、なるほどね、RainもReignも発音は同じか。それなら、このタイトルしかありえないよな、と納得した次第。


 明朝の時代、犯罪組織「黒石」が、インドから渡ってきた達磨大師のミイラを狙い、時の宰相張海端を暗殺した。黒石で最強の刺客細雨(ケリー)は海端の息子人鳳(郭暁冬)と戦って彼を倒したが、首領である転輪王(王學圻)の元には戻らず、奪ったミイラを持ったまま行方をくらます。
 細雨は、少林寺で修業した武芸家陸竹(李宗翰)と出会い、彼に武芸を学びながらやがて愛するようになる。しかし、二人はある日対立して戦うことになり、細雨は陸竹を殺してしまう。彼を失ったことで刺客の道から足を洗おうと決意した細雨は、腕利きの李医師を訪ね、顔を整形する。
 過去を捨て、名前も曾静(ミシェル)と変えた彼女は都へ行き、蔡夫人(鮑起静)から部屋を借り、布雑貨を売って生計を立て始める。過去は誰にも明かさず、質素で穏やかな生活を過ごす曾静。そんな彼女の前に、配達人の阿生(ウソン)という男が現れる。ハンサムだけどどうも不器用な阿生は曾静に恋をして、なんとか思いを伝えようとするが、どうもうまくいかない。そんな彼のアプローチに気付いた曾静は、自分から阿生に告白し、めでたく結婚することになる。ボンクラだが気のいい阿生との夫婦生活に、これまで得られなかった幸せを感じる曾静。
 しかし、彼女の知らないところでは、ミイラを奪われた転輪王が激しく怒っていた。彼は部下である“彩戯師”(レオン・ダイ)、うどん屋を営む雷彬(ショーン)、そして新郎一家を暗殺した“血まみれの花嫁”綻青(大S)という3人の刺客を放ち、曾静の首と彼女の持つミイラを狙うのであった…。

 赤壁2部作に続くウーさんの最新作として伝えられ、2年前のヴェネチア映画祭でも特別招待作品として上映されているが、実際にはプロデューサーであり、演出はほとんど台湾のスー・チャオピン(『愛情霊薬BTS』『シルク』)が務めているらしいので、ウーさんらしさってのは作品からはあまり感じない。ま、宣伝には偽りありだけど、こういう呼び込みは伝統的なものだからね(笑)。
 でも、ウーさんが手がける武侠モノって考えれば、これはかなり珍しい作品なのではないだろうか。赤壁は武侠モノじゃないし、助監督時代には張徹監督の下でいくつか関わってきているのだろうから、全く初めてじゃないんだろうけどね。

 武侠ものは物語が荒唐無稽であるってのは覚悟しているので、どーゆー展開になってもいいぞと思ってた。ミシェル姐がアクションも恋愛ものもこなせるのは、『臥虎蔵龍』でわかっていたので別にいい。久々に観たウソンがハンサムなのに途中までボンクラなのも構わない。大Sがせっかくのお色気要員なのに、脱ぎが中途半端だったり、妙に鉄輪王に迫りまくるのにも違和感は覚えない。だけど鉄輪王…。あんなに仰々しい犯罪組織を作っておきながら、オマエの願望がそんなのかよ!とツッコミたくなったのは、きっとワタシだけではないだろーなー。あ、阿生の正体はちょっと読めた感があったから、そこはつっこまないようにしていた(笑)。

 でも、なかなか良いお年頃のミシェル姐に恋物語を持っていくのも悪くはないよなあ。相手役がウソンなので若すぎるんちゃう?と思ったけど、意外と釣り合っていたもんね。
 ところで最近、ウォンビンやドンゴンなど、キャリアを重ねた大韓明星を再評価している。ウソンもその一人。ボンクラボンクラいいながらも、やっぱええ男だなーって思ったよ。昔の韓流ブームの時の彼らの扱われ方は、言い方は悪いけどひどかったと思うもの。今のブームも好きじゃないけど、歳を重ねるとさすがにいい男になるもんね。…それでも、惚れることは絶対ない。断言する。
 そうそう、それでもウソン以上によかったのはショーン&立忍さん。特に立忍さんのキレっぷりは最高だった。よっ、台湾の大魔術師!

 なんのかの言いつつも、ごっちゃ混ぜ感たっぷりな武侠電影が公開されたのも、ひとえにウーさんプロデュースのおかげかもね。今後は彼に本格的にキレまくった武侠電影の監督を期待してもいいかなー…とか言っちゃうのは、やっぱり危険かなー(苦笑)。 

原題:剣雨
製作:ジョン・ウー&テレンス・チャン 監督&脚本:スー・チャオピン アクション監督:スティーブン・トン・ワイ 衣装:ワダエミ 撮影:ホーレス・ウォン 音楽:ピーター・カム
出演:ミシェル・ヨー チョン・ウソン ワン・シュエチー バービー・スー ショーン・ユー レオン・ダイ パウ・ヘイチン グオ・シャオドン 

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サンザシの樹の下で(2010/中国)

 『奪命金』の時に書いたが、ある個人(だいたい監督)をブランド化したり、得意ジャンルで決めつけるのがどーもダメになってきている。トーさんだったら「ノワール」、ウーさんだったら「バイオレンス」、王家衛だったら「遅筆」…じゃなかった「オサレ」って感じで。
 で、これがイーモウだったら「初恋」とか「純真」とか「美少女」。…そう、代表としてあげられるのが『初恋のきた道』。…えーと、すいません、いい映画だと思うけど、好きじゃありません、イーモウ作品としては。それよりも、2000年代の大味な大作乱発でかえって親近感増したんだけど、こんなワタシはやっぱおかしいかね。早いところ『女と銃と荒野の麺屋』を観たいんだけど、やっぱり来ないかなあ…。

 で、『サンザシの樹の下で』である。
 この路線は、もう言うまでもなく初恋路線ですよねえ。もうそれ自体で構えちゃってすいません。そんな気分で観ちゃってたので邪念ありまくりな感想になりそうですいません、と先に謝っておきますよ。

 文革中期、1970年代初頭の中国。下放された高校生静秋(周冬雨)は、住み込んだ村長(李雪健)宅で「老三」と呼ばれて家族同然に扱われている孫(ショーン・ドウ)と出会う。二人はお互いに惹かれあうようになり、静秋の下放期間が終わっても、孫は彼女の住む町まで会いに来ていた。
 しかし、静秋の両親は反革命分子として扱われ、父親は投獄され、母親(シー・メイチュアン)は労働改造を受けていた。高校卒業後、静秋も高校を卒業して、やっとのことで教職を得て、母親や弟達を支えるために働いていたのだが、母親に迷惑をかけたくないので、こっそりと逢い引きをしていた。それもつかの間、やがては母親にその恋を知られることとなる。母親は孫に娘と付き合わないでほしいと頼み、彼はそれを受け入れる。しかし、静秋の思いは募るばかり。思い切って下放先の村に行ったのであるが、そこで孫が入院したことを知る…。

 観終わって思った。「これは中国のセカチューか?」と思ったら、公式サイトのイントロダクションにそう書いてあった。…いずこも同じなのね、若者が好むのは。いや、アジア人だからこそのメンタリティなのかもしれないけど。

 なんかねー、文革がバックグラウンドにあるので、必然的に重くなるのはわかるのだけど、昔のイーモウならもっとへヴィにやるんじゃないかなって思ったので、その頃と比べて文革の扱いが軽くないか?というのが。いや、重くても困るんだけどね。文革の扱いは大陸でもデリケートになってしまうから、どうしてもこうなってしまうのかしら。気になったのはそんなところ。

 ヒロインの周冬雨ちゃんは、わりと癖のある感じの少女。というか薄倖顔ですね。※意見には個人差があります。イーモウ映画のヒロインはみんな癖があるけど、その中で一番好きなのは童潔だったりする…あ、でもイーモウと組んだのはこれ1作だけだったか。
 ところでイーモウ映画で起用されるスター以外の男どもは、若ければ若いほどええ男度が下がっていくような気がするのだが(オッサンなら姜文や孫紅雷など、ええ味出した系がわんさかおるのに)、今回のショーン・ドウくん(大陸生まれだがカナダ育ちなので英語名を持っているらしい)が珍しくあかぬけてて、それなりにええ男でビックリした。しかし、ええ男なのであんな仕打ちを受け…って以下強制終了だな。

 ま、久々に観たイーモウ映画だけど、先に書いたような大味で好き勝手やってる彼が好きな身としては、誰にでも(特に良心的な映画ファン?)好まれそうなこの路線は、はっきりいっても言わなくても物足りないのであった。さて、次回作は初の欧米人主演、そして南京事件をテーマにした作品だけど、はたしてどういう出来になるもんだろうか。楽しみ半分不安半分。

原題(&英題):山楂樹之戀(Under the hawthorn tree)
監督:チャン・イーモウ 製作:ビル・コン 脚本:イン・リーチュアン 撮影:チャオ・シャオティン
出演:チョウ・ドンユイ ショーン・ドウ シー・メイチュアン リー・シュエチエン 

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1911(2011/中国)

 混沌とした現代日本はよく幕末に例えられる。決してそんなわけないじゃんとは思うのだが、TVドラマで龍馬や坂の上の雲を観ると、幕末から明治まで、すなわち19世紀後半から20世紀初頭までの日本と世界の情勢とはこんなに興味深いものなのだと再認識することができる。
 その坂の上の時代からひと息おくと、清朝の落日と近代中国の混沌が始まる。もちろん、同じくNHKで放映されていた『蒼穹の昴』も面白く観た次第。原作とはひと味違うところもあったしね。

 その清朝末期から民国成立までの激動の歴史の中核にあるのは、もちろん辛亥革命。
この『1911』の原題は、そのものズバリ《辛亥革命》。ちょうど100年にして中華民国暦100年でもある今年だから、中国からこういう映画が出てくるのは予想できた。しかし成龍さんが作るとはなあ…。ここ10年でますます大陸向きにシフトしてきたわけだから、不思議ではないか。

 成龍さんが演じた黄興はこんな人(とWikipediaを引いてみる)。最初は孫文でもやるのか?と思ったけど、今やすっかり孫文俳優と化したウィンストン・チャオがいるので、この役になるのはこれまた当然といえば当然か。しかしワタシは中国語学科卒で、ちゃんと中国史を受講しているのに、黄興のことなんか全然知らなかったという大馬鹿者である。
 ワタシでさえそーなんだから、一般ピーポーなんてもっとわからんのかもしれない。それを見越してか、赤壁二部作にならってか、オープニングの前にオリジナルの解説が流されたのだが…当たり前すぎることばかりで意味がなかったような。
 最初に登場したのは秋瑾(寧静)。女性革命家として彼女が処刑されたところから物語は始まるのだが、このネタでも充分映画にはなるよなあ。そこから海外と清国内と別れて行動する孫文と黄興へとつながってくる。マレーシアで若き闘士たちと決意を固める二人、そして徐宗漢(李冰冰)との出会い、そして黄花崗の蜂起と失敗へと進んでいく。このエピソードはかなり力を入れて描かれるのだが、前途ある若者の死が悼まれるというより、どー考えても黄興の負けまくり戦歴の序章としか思えないのは気のせいか?戦闘シーンもアクションシーンもふんだんってわけじゃないし、ジェイシーも杜宇航もちょっとしか出ないし、焦点がボケたまんま革命を迎える。
 それであっても、孫文の苦悩と決意の描き方はさすがと思ったし、滅び行く運命にある清朝を支える皇太后(陳冲)のそれも印象的だったなあ。歴史ドラマの部分も悪くなかったけど、やっぱり盛り込みすぎて中途半端な印象をうけた。やっぱり『孫文の義士団』はいい出来の作品だったんだなあ、とこれまた最確認したよ。

 うちの方では残念ながら吹替版でしか上映がなく、選択の余地がないのでそれを観た。石丸さん始め、ほとんどがベテラン声優で構成されたのはよかったのだが、やっぱり李冰冰の声の某女優が浮いてる…。一緒に観た朋友曰く、某女優は代表作ドラマでのスーパーウーマンっぷりが印象深いから、そのイメージで起用されたんじゃないの?とのことだけど、そもそもなぜ彼女を起用?というのが大いなる謎。一方、李小龍先生と同じくらい成龍さんを崇拝するしょこたんだけど、彼女はもともとポケモン映画版などでよく声優しているし、演技もイケるから心配しなくても無問題だったわ。

 日本では「ジャッキー・チェン出演100作記念」とか喧伝されていたけど、実際は100作じゃないんだっけ。確かに辛亥革命ものとして売るよりはこっちのほうが派手だけど、それでよかったのかな?現在主要都市で上映中の『新少林寺』(我が地元では来年1月公開予定)はアンディ&ニコの映画だけど、…これも成龍さん推しなんだっけ。なんだかそ(強制終了)。

 あー、早いところ観たいのお、アンディ&ニコの『新少林寺』。時代はこの映画のラストの頃から始まるというし。

 (蛇足)そうそう、実は夏から『ラスト・エンペラー』(エドワード・ベア)を読んでました。いろんな邪魔が入って読破できてないんだけど、できればこれを読み終わってから観に行きたかったもんだ。もちろん、それを底本としたあの映画も再見したい気分だったし。清朝末期~民国成立ものは、いずれいい機会にまとめて観たいものだ。

原題&英題:辛亥革命(1911 Revolution)
監督:チャン・リー 総監督&出演:ジャッキー・チェン
出演:ウィンストン・チャオ リー・ビンビン フー・ゴー ジェイシー・チェン トー・ユーハン チアン・ウー ニン・チン ジョアン・チェン

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海洋天堂(2010/中国)

 長くて暑かった2011年の夏が終わろうとしている。
8月最後の週末、『海洋天堂』を観た。


 古い欧米風の建物が並ぶ海浜都市、青島。
その海辺にある水族館で設備技師をしている王心誠(リンチェイ)は妻に先立たれ、自閉症の息子大福(文章)を一人で育てていたが、ある日、大福と無理心中を図ろうとする。しかし、泳ぎの得意な大福は自分と父をつないだロープをほどいてしまい、それは失敗に終わる。彼らの向かいに住んで駄菓子屋を営んでいる柴さん(朱媛媛)はびしょぬれの二人を見て驚く。
 実は心誠は末期の肝臓ガンに冒されていた。彼は21歳になった大福を預かってくれる施設を必死に探しながら、大福に一人でも生きられる術を授けていく。感情の発露に乏しく、時々トラブルを起こしてしまう大福だが、心誠は根気強く教えていった。父と共に水族館に通う大福は、巡業サーカス団の一員でクラウンをしている鈴鈴(ルンメイ)と出会い、仲良くなるが、別れはある日突然にやってくる。 
 やがて、かつて大福が世話になっていた養護施設の元校長先生の紹介で、成人した障害者が共同生活を送っている民間施設が見つかり、心誠は彼を入所させるが、一人ぼっちになった大福は激しく暴れ出す。自分の死期を悟った心誠はアパートを引き払い、後々のことを柴さんと水族館の館長(董勇)に託し、残りの時間を大福と共に生きていく…。

 ストーリーはあまりにもシンプルだ。そして淡々としている。人によっては、あまりにもきれいごとすぎるという意見もあるだろう。だけど、この映画はリンチェイがノーギャラでも出演したいと切望したこと、そして中国の障害者福祉のことを思えば、十分意義のある作品だと思う。
 薛曉路監督自身が実際に自閉症支援施設でボランティアをしていたこともあって、劇中には様々な施設が登場する。おそらく、実在の施設でロケをしているとは思うのだが、子供の施設は多くても、大人の障害者を受け入れる施設が少ないこと、では大人向けは?と見ると精神病棟のようになってしまうと、中国の障害者施設の現状が垣間見られるような場面も見受けられる。大人を受け入れられないと、その家族が面倒を見なければいけない。(そういえば『こころの湯』でも、障害を持つ阿明は父親が面倒みていた)もし親が老齢になり、亡くなってしまったら?となると、その後の問題は大きい。パンフレットの監督インタビューを読むと、日本では多く存在する民間福祉団体も中国ではまだまだ少なく、劇中で施設の職員が饅頭を売って資金を稼いでいることはないとのことだけど、今後の中国の障害者福祉に対する問題提起もしているのかな、と思ったりして。
 じ、実は障害者福祉は専門外なので、ちょっと未確認なところや誤解しちゃっているところもあるかもです。何かあったらご指摘くださいませ<(_ _)>。

 リンチェイはアクションがなくても、エモーショナルな演技は得意なところ。エクスペンダブルズやってる人とは同一人物とは思えない…と書こうとして、件の映画を観ていないことに気づいた(笑)。
 大福役の文章くん。映画よりもドラマや演劇への出演が多い俳優さんなのね。かわいい顔の俳優さんなので、今後どんな路線に行くかが気になるところだけど、もっと作品を観てみたいね。ルンメイちゃんもかわいらしい。ちょっと悲しげな顔のクラウンのメイクもあうし。これまた初めて見た朱媛媛さん、久々の高圓圓ちゃん、そしてフォーフォーの親友コンビ再びの董勇さんと、他のキャストもいい。

 そして、スタッフもいいっすねー。これの後の仕事が日本で3Dホラーとポルノミュージカルで驚かされた(前置き長いって)ドイル兄さんの流麗なカメラ、ウィリアムさんの適切な編集、チョンマンさんのシンプルな美術、エンディングに流れるジェイの優しいバラード、そしてフレーズを聴いただけでうるっときちゃう久石譲さんの音楽。すごく恵まれて、祝福されるべき作品で、いろんな人に観てもらいたい作品。この映画が日本で公開されて、本当によかった。

英題:Oceanheaven
製作:ビル・コン 脚本&監督:シュエ・シャオルー 撮影:クリストファー・ドイル 音楽:久石 譲 美術:ハイ・チョンマン 編集:ウィリアム・チャン 主題歌:ジェイ・チョウ
出演:リー・リンチェイ(ジェット・リー) ウェン・ジャン グイ・ルンメイ ジュー・ユアンユアン トン・ヨン カオ・ユアンユアン

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プラスティック・シティ(2008/中国・日本・ブラジル)

 アジアンコラボ。それは見果てぬ夢である。
 ってなにをいきなり言いだしているんだ、ワタシは(笑)。

 香港だけじゃなく、日本や台湾や大陸、そして韓国が資本や製作に入って作品を作り上げるアジアンコラボは、一時期盛んに作られていた。香港返還後、2000年前後が一番盛んに作られていたような気がする。これ、近年のアジアンコラボでは比較的成功した作品である『墨攻』の感想でも詳しく書いているんだけど。あ、赤壁もアジアンコラボだったか(笑)。
 今やアジアといえば真っ先に韓国!と言われてしまうのが、中華趣味にはなんとも歯がゆいところなんだけど、やはり映画は香港をメインとした中華圏+日本のコラボが観たい。いや、日本は黙って原作と金だけ出してくれれば(そして韓国も金だけ。あくまでも金だけ)いいんだけどって気もするんだけど、この不況&震災の大変な状況下だもんねえ…。


 この『プラスティック・シティ』は、長年ジャ・ジャンクー作品で撮影を務め、梁家輝出演で『天上の恋人』という作品も撮った余力為が、ジョーと秋生さんという、ある意味驚くべき二人を主演に迎え、全編をブラジルで撮影したブラジリアン・ノワール。ジャンクー、秋生さん、そしてジョーと名前を並べると、なんとなくフィルメックスなかほりがする。いや、フィルメックスでは上映されなかったんだけど、さすがにね。

 1984年、突然のゴールドラッシュに沸くブラジル国境付近のアマゾン川。中国人のユダ(秋生さん)は、川岸の森の中で銃声を聞く。そこでは日本人旅行客が殺されており、一人の子どもがうずくまっていた。ユダは少年を引き取って育てることにした。
 2008年、サンパウロ。成長した少年―キリン(ジョー)は、ユダと共に偽物の販売で財をなし、地下マーケットを仕切るまでにのし上がっていた。ユダは若い嫁をもらい、ショッピングモールの地主となって、アジア人コミュニティの顔役になっていた。そんな彼らに「ミスター台湾」と名乗る男(陳昭榮)が近づき、手を組もうと画策するが、その裏に胡散臭いものを感じた彼らは用心を深める。
 ある日、サンパウロ市政府がユダを逮捕する。これまで友好関係を築いてきた市が掌を返したのだ。裏にはミスター台湾がいた。キリンはユダを救うため、あれこれと奔走するが…。

 日本よりも台湾よりも湿り気を帯びたようなブラジルの空気の色彩。
暖色の色味が強く、影の部分とのコントラストがくっきりしている。もちろん、大陸でもこんな色はだせない。その色彩の中をキリンとユダの親子がさまよう。
 物語はこの親子の絆と葛藤を軸にして、ブラジルの黑社會とマジックリアリズムをミックスして感覚に訴えるように作ってみました的なものを感じたけど、んー、こういう作りは90年代末には通じても、今の観客に見せるのは厳しくないか?雰囲気に身をまかせるのも悪くないけど、ちょっとねえ…。

 製作された年は日本とブラジルが修好100年を迎えた年だったと聞いたけど、それはあんまり関係ないかな。ジョーはたしかに日本人役だけど、全編を北京語とポルトガル語で話す。彼のポルトガル語の発音がいいかどうかはわからないけど、北京語は…。まあ、発音は難しいからね。
 でも、せっかく秋生さんを起用したのだから、無理に北京語にせず、広東語でもよかったんじゃないの?北京語を話す秋生さんはもう珍しくないのかもしれないけど、やっぱり広東語でしゃべりまくってこそ秋生さんって気もするもんだし。

 そんなふうに文句を言ってみても、やっぱり秋生さんとジョーが並んで見られるのは嬉しい。余力為はカメラマンだからか、ジョーの広い肩幅も、秋生さんの白シャツ&スーツ姿もとっても魅力的に写してくれている。そして、やっぱり秋生さんってセクスィーだわ、と改めて思ったよ。

 以上のように、《狼災記》に続いていろいろ厳しいことは言いたいけど、ジョーにはまだまだ中華電影とのアジアンコラボを続けてもらいたい気がする。まあ、初の海外電影がキム・ギドクの『悲夢』で、最新作がチャン・ドンゴンと共演で、いくら韓国で人気だからといっても、そっちばっかじゃなくて、中華圏にもせっせと顔売って欲しいんですよ、彼には。
 だからジョーよ、これからも頑張れよ。となんか迷だとは思えないくらい投げやりな状態で、この記事を締めたりする(苦笑)。

原題:蕩寇
製作:ジャ・ジャンクー 監督&脚本:ユー・リクウァイ 撮影:ライ・イウファイ 音楽:半野喜弘 編集:ウェンダース・リー
出演:オダギリジョー アンソニー・ウォン ホアン・イー チェン・シャオロン テイナ・ミューラー 

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《狼災記》(2009/中国・日本)

 『青い凧』を観ていないワタシは、簡単に田壮壮を語っちゃいけないと思う。
ええ、まあ、肝心な作品を見逃している割に、『呉清源』とか『春の惑い』を観ているわけなんすけど(笑)。

 その田壮壮(漢語発音が読みにくいのでついつい「でんそーそー」と呼びたくなるのだが)が、『呉清源』に続けて手掛けたのもまたまた日本がらみのこの作品。
『敦煌』や『天平の甍』等、西域を舞台にした歴史小説を多く書いてきた井上靖の短編集『楼蘭』におさめられた『狼災記』を原作に、中華電影は2作目になるジョーを主演に迎えて撮りあげた作品。
 …えー、ここで先にお詫びいたします。ワタクシ、中国文化専攻でありながら、井上靖氏の中華小説は一切読んだことがありませんでした。しかも読んでいるのも『氷壁』だけ(苦笑。参考までにリンクを)。ホントに不勉強な輩で申し訳ない。これから勉強する>おいおい。

 

 この映画、トロント映画祭に出品されていたらしいのだが、映画化を勧めたのはホウちゃんだったのね。古い付き合いのはずだから特に驚かないんだけどね。

 戦国時代の中原。ある国の兵士団に加わった陸沈康(ジョー)は、なれない戦場で戸惑っていた。陸は戦場で幼い狼を拾い、殺さずに生かしてかわいがっていた。将軍(トゥオ・ツォンホア)はそんな彼を気にかけ、生きるために戦うことを説く。彼らの軍隊は敵軍の激しい攻撃だけでなく、厳しい寒さにも追い込まれる。その寒さに陸の大事な狼も死んでしまい、彼は絶望する。
 部隊はハラン村という寒村に駐留することになる。陸が訪れた家には一人の女(マギーQ)が住んでおり、彼は衝動的に彼女を犯す。それがきっかけで陸は毎晩彼女を訪ねるようになり、やがては互いに離れられない存在になっていくのだが…。

 異種族の女と7日の契りを交わした後に、男は狼に変わるという呪いをかけられる。
 中華的な変身譚といえば、真っ先に思い出すのはなんといっても中島敦の『山月記』。高校の現代文の授業で読んだ時にはあまりにも難解に感じたけど、後で読んだときには、獣へと「酔う」男のこれまでの人生の愚かさへの後悔や悲しみを感じ取ったものだった。それに相通じるものがあった。まあ、原作を読めばまた違うのかもしれないけどね。

 自然光のみで撮られたかのような画面。合戦場面もあるけど、むしろそれは背景にすぎない。映画は終始、若き兵士の孤独と絶望、そして愛を描きだす。それも田壮壮的なやり方(としかいえない)で描くので、ずーっと静寂。ま、こういう手法には慣れているから、決して誤ったものではないだろう。
 …しかし、そういうスタイルだからといって、終始真っ暗で、ホントにわかりにくいってのはまずいんじゃないのか?田壮壮よ。いや、暗くしたからこそ、CGの不自然さやわざとらしさは隠せるからまあ悪くはないんだけど。
 後は、字幕説明がやたらと多いのだよねえ。こちらは14型のちっちゃなテレビモニターで観ていたんだけど、字が小さくてわかりずらい(そりゃ歳だからだろう>自分)。文学的な効果は出てはいたけどね。大きなモニターでもう一度見直した方がいいのかな?

 ワダエミさんの衣装がよく似合う(&地毛のマゲとヒゲ面は部隊に馴染んでいた)ジョー。台詞は吹替だったようだけど、ところどころ地声だったような気がする。役者デビュー前に米国留学経験があるせいなのか、発音は悪くなかった気もするんだけど、どーなのかな?ファンタジーテイストなので、彼の起用は間違いではない気がする。
 でもなー、相手役は当初予定されてた湯唯ちゃんで観たかったなあ。マギーQは美人だけど、こういう恋愛ものには似合わない気がするんだよな。それならばアクションやらせてほしい気もするんだけど。ベッドシーンじゃ絶対に胸見せないし、だいたいにおいてエロくない。いや、それが湯唯ちゃんでも二度同じことはやらんといって脱がなさそうな気もするんだけどね。
 あと、多分将軍役はトゥオ・ツォンホア。彼、《色、戒》以来で観るんだけど、なんか、いいオッサンになっちゃったなあってのが素直な感想。

 と、なんか全体的にやる気のない感想になって申し訳ない。ちゃんと原作を読んで、もっと大きな画面で見直したら、きっと印象が変わるだろうから、いつかリベンジしたいと思っている。
 そして、この作品ついでに、近日《蕩寇》こと『プラスティック・シティ』を観る予定。さながらジョー@中華電影祭りである。理由は特にない。許してくれ。ま、これには秋生さんも出ているわけだしね。かつてジョーと一緒にこーゆーことをやっていたこともあるし(笑)。 

英題:The warrior and the wolf
監督:ティエン・チュアンチュアン 製作:ハン・サンピン 小椋 悟他 原作:井上 靖 衣裳:ワダエミ
出演:オダギリジョー マギーQ トゥオ・ツォンホア 

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疾風迅雷 風林火山 二週連続赤壁祭り

 今年の春節は2月5日。というわけで今はまだ、中華圏的には寅年の年末。
旧正月の終わりごろに香港に行くことになったので、その残り香を楽しんできたいなーと思うのであった。車公廟にお参りでも行こうかな。

 さて、日本ではすっかり正月気分が抜けたけど、この時期に放映してくれるなんてまるで旧正月気分じゃないのよ、と思わせられたのが、説明不要のウーさん映画『赤壁(レッドクリフ)』前後編一挙放映@日曜洋画劇場。普段はこの手の映画番組は観ないのだが(最近某日テレの映画番組を観てすっごくガッカリしたことがあったし)、Twitterで「赤壁やるよー」というつぶやきが増え始め、それが中華系だけじゃなく一般の方々からも「観たいねー、そんで一緒に騒ぎたいねー」という声が目立ってきたので、久々に観ようかな、と思った次第。
 そして、みんなのつぶやきを共有できるように、放映日ごとのハッシュタグを「#rc_0116」と「#rc_0123」の二種類作り、タイムラインで告知して使ってもらうことにした。ホントは #redcliff にするつもりだったのだが、海外ですでに使われていたので諦めた次第。

 1月16日の前編はすでにTV放映されたこともあり、なおかつ当日は仙台に遠出していたので、あまり参加できないだろうなと思って、帰りの新幹線の中でタグをのぞいていたのだけど、それでもえらい盛り上がり。中華もの好き、歴史好き、各キャラ&俳優のファン、ちょっと腐な方など、いろんな人が入り混じって大騒ぎしていた。前半の見せ場である趙雲の単騎千里行では「趙雲△(さんかっけー)!」、周喩大都督登場場面は「きゃー、とにおさーん(twitter上でのトニーの愛称)」そして彼と小喬のベッドシーンでは「この場面、絶対いらないよねー」ってな感じで。特に最後は同意見多数だったのが嬉しかった(大笑)。あと、タグ上では小喬(チーリン)より尚香(ヴィッキー)を支持する人が多かったのが嬉しかった。

 1月23日の後編は地上波初放映、琴のセッション場面がまるごと切られたり、都督殿の風林火山の舞いの冒頭部がCMでカットされたりとやや不満はあったけど、この日は冒頭から観られたので楽しかった。この日のハイライトは孔明&魯粛の矢集めに決戦前の湯圓の場面、その他いろいろ(省略にてすまん。個人的には尚香のセクスィー場面も入れたいのだが)。
 湯圓は台湾旅行でも食べてきたけど、ちょうど旧暦の冬至も近かったということで、実際に作ってみました。白玉粉(ここではミツカンのもち粉を使用)を水で練って丸め、生姜湯に入れるだけ。ほら簡単。 

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 そして怒涛の「バイオレンスの詩人ジョン・ウーのの本領発揮場面」に突入したのだが、改めて観るとやっぱり壮絶で悲惨だよなーと思った次第。翌日、やはり放送を観ていた主任が「メインキャラ以外全員死んでるんだもんなー」と言ってたけど、まさに悲惨だよなあと。

 全編を通して多かったつぶやきは、やっぱりたびたび出てくる孔明と都督殿のお互いに見つめあうアップの場面でしょうか。この場面になるたびに「顔ちけーよ!」とみんながつぶやく(笑)。「もうチューしちゃえよ」ってのもあったねえ、ははは。 
 この映画がお好きな方は、だいたい同じ場面にツッコミを入れるということがわかって、嬉しゅうございました。

 普段なかなかTVでは中華電影は放映されない(それもトニー出演作だともっと機会が減る)けど、好きな映画を知っている人たちや知らない人たちと一緒に観るのはとっても楽しかった。
 劇場で映画を観る時には、なかなかこんなふうには騒げない。だけど、TV放映でネットと連動させれば、こんなふうに観ることができる。こういうことはこれまでもきっと掲示板系でもやったのだろうけど、鳥がさえずるように限られた字数であれこれ騒いで観られる楽しさは、Twitterの方に軍配を上げてもいいのかもね。
 
 あー、でもいくら楽しいからといって、最近こっちで長文が書けなくなってきているので、Twitterにかまけてばっかにならないように気をつけまーす。

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ラスト・ソルジャー(2010/中国)

 今年は成龍さんが日本に紹介されて30周年だかのメモリアルイヤーらしく、BSで80年代の人気作品が公開されたり、劇場公開作も『ダブル・ミッション』『ベスト・キッド』、そしてこの『ラスト・ソルジャー』と3本あって、成龍迷には実に嬉しい年だったのだろうなあと思う。
 確かに、彼の絶頂期である80年代の作品はそれなりに面白かった。アクションもてんこ盛りでユーモアもいい。香港映画界自体も絶好調だった、まさにこの時代ならではの名作群である。
 だからこそワタシは、成龍さんにあの時のまま時を止めてほしくないと思うのだが、残念ながら日本の一般マスコミは彼のことをこの時代で定型づけてしまったような感じがする。だから来日してインタビューを聞いても、聞かれることや要求されることがいつも同じなので、どうも…というのは、いつも書いている“ジャッキー・チェン・ジレンマ”なのでこれ以上は書かない。

 閑話休題。さて、劇場公開作のしんがりを務めるこの映画、先の2作(といっても実は『ダブル・ミッション』は未見)と違うのは、中国を舞台にした中国映画であることなのだ。しかも、香港の資本が入っていながら完全に大陸メイン、監督もこれが第1作となる新人である。まるで最近の成龍さんの政治的シフトを表しているなあ、なんてちょっと揶揄しそうになったけど、共演が宏くんこと王力宏なので観ないわけにはいかない!

 時は春秋戦国時代。梁国と衛国の間では、激しい戦が行われていた。
 屍累々な戦地の中に立ち上がったのは、衛国軍でたった一人生き残った中年の兵士(成龍さん)。その中で彼が見つけたのは、まだ息のある負傷した梁国の若き将軍(宏くん)。農民の出である兵士は、将軍を捕虜にして国に帰れば、広い畑がもらえると喜び、将軍を人質にして戦場を抜け出す。息を吹き返した将軍は、自分が敵国の兵士に拉致されたのに驚くが、傷が完全に癒えてなかったため、彼のなすがままにされるしかなかった。
 しかし、衛国軍は決して全滅したわけではなかった。将軍を目の仇にしている衛国の皇太子(ユ・スンジュン)が、将軍の生存を確認して彼を殺そうと追いかけ始めていた。追っ手の存在を確認した将軍と兵士は、皇太子たちと戦うことになるのだが、実は将軍と皇太子の間には思いも寄らぬ秘密が隠されていた…!

 笑って飛び回って「挺好的(最高だ)」を連発する成龍さん。これだけ見ればいつもの彼であるし、日本でも強調される面である。
しかし、そうであってもやはり彼は変わった。そのきっかけは『新宿事件』を撮りきったことからなのだろうか?
  ここ数年の彼が、主演作でも若手をたてる位置に立ってくるようになったのは今さら言わなくてもいいのだが、それでもあくまでも彼がヒーローであり、若い女性をヒロインにして自らラブロマンスを演じたりするのは相変わらずだった。(但し大陸資本が入ってくる最近作だと『プロジェクトBB』の高圓圓や『新宿事件』のジンレイ&ファン・ビンビンなどの大陸女優がお相手だったっけ)
 今回の映画の特徴としては、主演二人が対等の立場にあることと、ラストの意外な展開であるかな。そして、女性が出てないわけじゃないけど、突出した存在ではない。最初のうちこそ、成龍さんが「敵国の将軍を捕えて手柄を立てたい兵士」で、宏くんが「逃亡したいが負傷がひどくて彼を頼りにせざるを得ない将軍」なので、立場的には成龍さんが圧倒的に有利である。しかし、将軍を狙う同じ国の人間があらわれ、意外な事実がわかる頃には、二人の立場は対等となる。そしてラスト、兵士は将軍を殺さず、平和を彼に託す。そして…という展開なのである。ラストも含めてこういう流れは、珍しいのではないだろうか?物語的にも非常に考えられているなと思った次第。
 ただ、そうであってもやっぱり惜しいと思うのは、うーん、なんだろうな。脚本と監督はまだ本数をこなしていない大陸の監督らしいので、あまり厳しいことは言えないけど、大陸主体で作られた映画の限界なのかなとか、よく考えれば『英雄』のテーマにもダブってどっかデジャヴ感じちゃうんだよなと思わせられるところなのかしら。
 
 この映画の成龍さんはものすごいヒーローではない。ただの農民出身の中年兵士である。だけど成龍さんなので、その平凡さは消えてしまう。まあ案外、それが狙いなんだろうけどね。もう少し若いときに演じていたら、もっとヒーロー感を漂わせていただだろうから、今の年代で演じることが挺好、ってことなのかな。
 宏くんの将軍はもちろんカッコよかったけど、彼こそヒーローっぽさがあってもよかった気がする。ああいう姿での登場だったからしょうがない気がするのだが、その分クライマックスシーンが引き立つと考えたらいいのだろうか?
 彼らを追いかける皇太子を演じたのは、韓国のシンガー、ユ・スンジュン。すっとした顔立ちとか、無駄脱ぎせずともご立派な二の腕がいかにも大韓明星という感じだったが、もちろん惹かれるってことはなかった。
 あとは于榮光とか盧惠光とか探したり、ある場面で孔子とその弟子っぽい賢者の皆さんを見つけてちょっと笑ったりしたくらいかな。

 ちょっと全体的に厳しい意見になったけど、成龍さん映画は米国製より中華のほうが断然面白いと思っているので、ついついあれこれ言ってしまいたくなるのよね。
でもあまり大陸寄りになるのも、いろんな意味でマイナスになるのかもしれないと思うのは、考えすぎかしら。

 今後観たいのは、やっぱりジェイシーとの親子共演。ジェイシーが日本で全然知名度がないのもあるけど(一般的な意味でね)、もう共演しても問題ないと思うよ。

原題(英題):大兵小将(Little Big Soldier)
脚本&監督&編集:ディン・シェン 製作&原作&出演:ジャッキー・チェン
出演:ワン・リーホン ユ・スンジュン ユー・ロングァン ロー・ワイコン

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狙った恋の落とし方。(2008/中国)

 いつも1年に一度は起こっているし、かつて自分も台湾にいた頃に反日運動に遭遇したため、自分の中ではすっかり年中行事化してしまっている尖閣諸島(釣魚台)事件。
 だから、今年もまた自然と解決されるものだろうと思っている。
 でも、多分報道のせいもあるんだろうけど、中国側にも「そこまでやるのかよ?」的な反応が多いような気がする。これとかね。それって大人げないんじゃないの?というのが正直なところ。
 日台間での釣魚台をめぐるいざこざは歴史的背景を見ればよくわかるんだが(参考としてお約束だがwikipedia)、それに大陸が入ってきちゃったから、これがややこしくなってしまった感がある。ここは政治的立場を主張する場じゃないから、軽ーくまとめるけど(だから政治的コメントやTBが来たらスルーするよ、申し訳ないけど)、日中双方ともあまり騒がずに、ちゃんと解決すべきところは解決すべきじゃないかなーと思う次第。
 ちなみに在港の方情報によると、この件、香港では全く話題になってないらしい。…ええ、日本的論理で考えれば、香港も中国でしょ?(>ちょっと意地悪モードで聞いてます。笑)
 これもまた、政治的コメントお断り。

 そんなアホな前振りはさっさと切り上げて、映画の感想映画の感想♪
先月、やっと我が街にもやってきた『狙った恋の落とし方。(非誠勿擾)』。
昨年冬にnancixさんのblogで内容を読んだときには、「へー、こんな中国映画があるんだ。でもあの葛優がラブストーリーってどうよ?」と思ったもんである。
 まー、内容については後で書くとしても、この映画が話題になったのが大々的な北海道ロケと、それがきっかけでこの地に足を運ぶ中国人旅行客が爆発的に増えたということからだった。
 いうまでもなく、現在いろんな意味でイケイケドンドンな中国の姿は、“失われた10年”もとい20年からなかなか抜け出せない日本から見れば、いろいろと複雑な気持ちにさせられるのだろう。だから、この映画が引き起こした経済的現象をいちいちつっついたりしてるけど(全文載ってないけど、こんなのとかね)、それについてもはっきり言ってスルーさせていただく。
 さあ、さっさと行くぜ、映画の話。

 自らが発明した“紛争解決器”を投資家に売り、大金を得た発明家の秦奮(葛優)。40代を過ぎても未だに独身の彼は、真剣に交際できる女性との出会いを求めて、出会い系サイトで恋人を募集する。
 だけど、彼の前に現れたのは、ゲイだったかつての友人、熱心な墓地のセールスレディ、ものすごいど田舎からやってきた少数民族の少女、片っ端から忘れてしまうアムネジアの女性、恋愛より株に夢中なディーラー、セックスを嫌うバツイチ、妊娠している台湾女性(ビビスー)と、どうも“誠実なお付き合い”ができなさそうな人たちばかり。
 そんな女性たちの中に、CAの笑笑(すーちー)がいた。結婚目当てでなく、あくまでも興味本位で会ってみたという彼女を最初は突き放した秦奮だが、どういうわけは笑笑はまた彼に会おうと言いだす。実は彼女には恋人がいるが、その彼(方中信)は既婚。付き合って3年にもなるが、相手は離婚しようともしない。そんな苦しみの中で秦奮と出会った彼女は、付き合うことを条件に北海道への旅を提案する。そこは、彼女が恋人と過ごした思い出の場所だった。
 日本人女性と結婚して北海道で暮らす秦奮の旧友ウーさん(宇崎逸聡)を交えて、知床や網走を旅する3人。その旅で、秦奮は笑笑にひかれていく。そして、彼女の思い出の灯台にたどり着いた時、笑笑が決断したのは…。

 あー、こりゃ決して観光映画じゃないねー、と思ったのが素直な感想。
 むしろ、物語は日本のトレンディドラマにリアル感を持たせ(だって主役が葛優だもの)、当世中国富裕層の恋愛事情をうまーく盛り込み、最後は賀歳片らしい力技で落として、相変わらず馮小剛はあざとくうまいなーと感心したもんだもの(参考:夜宴)。ロケされた道東地方には、網走だけしか足を運んでないけど、今までの旅行で見てきた風景だから、とりわけ珍しいというわけでもないし(語弊があるかと思いますが、これでも北海道の旅は大好きですよ!たとえヴァカンスでスキーしているトニーに遭遇できなくてもね)
 それでも、中国人にとっては観光映画なのかな、なんて思ったりして。だって、あんな美しい風景の中で切ないラブストーリーが展開されるわけだから、やっぱり行ってみたいなー、なんて思うんだろうしね。憧れを持たれて見られるって点では、このあたり日本人は中国人に大いに自慢していいと思うんだよね。こんな素敵な場所が日本にはまだあるんだものね。なんて考え方は楽天的かしら?
 再び念を押しておきますが、政治的なコメントはお断り。

 馮小剛作品の常連のハ○オヤヂ、もとい梁朝偉先生に先駆けてカンヌで男優賞を受けた最初のアジア人俳優、葛優さん。観る作品ごとにガラッと印象が変わる、中国電影界を代表する怪優だけど、この役が一番いいと思ったな。ああ、いそうだよねー、こんな中国のインテリ中年独身男って思っちゃったもの。
 そんな彼を引っかき回すすーちー。色っぽくてアンニュイで切ない。こういう役どころは安心して見られる。温泉場面で久々に見せてくれたセミヌードもきれいだった。これくらいだったら脱げるだろうが、日本女優も(笑)。しかし、クライマックスからラストまでのあの扱いは…。うーむ。
 実際に日本で暮らし、中国映画にも深くかかわっているというウーさんこと宇崎さん。いやあ、いい味出してくれました。「知床旅情」を歌う場面も、かなりグッときたもんね。
 お馴染のメンツとしては中信さんとビビスー。葛優さんがああいうキャラなので、恋のライバルに中信さんを持ってきたのは正解でしょう。確かに惚れるー(笑)。ビビスーはゲスト出演?的な出番だったけど、彼女の声、実はすーちーより低いのね。一緒に出てくれたことで、改めて気がついた。

 しかし、エンドクレジットに登場した名前には驚かされた。
 冒頭で秦奮が売り込み、ラストで再び登場した“紛争解決器(要するに後出し防止じゃんけんマシーン)”、これのアイディア提供って、我らがパン・ホーチョンだったんだよ!
うひょー!さすがだホーチョン、そんなアホなことを思いつくのは彼しかいないよ!と驚きながら、まもなく東京国際の季節を迎えるのであった(笑)。

原題:非誠勿擾
監督&脚本:フォン・シャオカン 撮影:ロイ・ルー
出演:グォ・ヨウ スー・チー アレックス・フォン 宇崎逸聡 ビビアン・スー

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中華電影(含む香港電影)の、明日はどっちだ!

 フィルメックスツアーに出ていた連休の日曜、某大河の最終回に続いて、NHKスペシャル『チャイナパワー』の第1回「“電影革命”の衝撃」を観た。

 番組では、ピーター・チャンプロデュース&テディ・チャン監督の《十月圍城》の撮影現場を中心に、ピーターさんやドニーさんのみならず、彼らのライバルとなるユンファ主演の《孔子》の制作現場(制作はIT企業!)や、大陸電影の状況に危機感を抱く、かつてピーターさんがいた香港の映画製作現場なども交えた構成。主として、ピーターさんを中心に、映画の完成を追いながら、いかに中国映画が様変わりしたか、そしていかにこれから世界に打って出るかをまとめたという印象。

 かつて、金枝玉葉2部作や『月夜の願い』で香港人のささやかな暮らしを優しい視線で描き、『ラヴソング』で返還への想いを描いたピーターさんが、まさか大陸で大作を手掛けるようになるとは、10年前にはだれが思ったのだろうか。それは、張藝謀がアクション映画を手掛けることだって予想もしなかったし、そもそも大陸電影自体がこんなになることだって誰も思わなかったことかもしれない。

 もちろん、これは国家がもろに映画製作にかかわっているわけじゃないだろう。そのへんは別にして考えた方がいいのかも。
 ピーターさんたちも、もちろんビジネスとして大陸の現場に入り込んでいるに違いない。彼のブレーンとしてアンドリューさんやヴィンセントさんがいて(字幕で紹介されなかったけど)、広東語であれこれ作戦を練っているのを見て、彼らが割り切ってやっているのかな、という印象もちょっと抱かされたところもある。ただ、この映画が大陸で成功しちゃったら、今後はどんどんイケイケになるのだろう。そうなるとやっぱり、昔のピーターさんの作ってきたような作品にはもう出会えないのかな、という寂しさもあるのは確か。
 先週、ベテランの香港電影迷らしき方(あくまで推測です)が朝日新聞テレビ解説面の「はがき通信」に、ピーターさんの今後の動向で、中国映画の小品(含む香港ローカル映画?)が駆逐されてしまうのではないか心配だという投稿をされていたけど、それにはもちろん同意する次第。

 しかし、この番組を観て気になったことが二つ。
 ひとつは、《十月圍城》の本来の監督である、テディさんがまったく登場してこなかったこと。もうひとつは、香港側の人間としてはトンシンさんと同格なくらいゴッドファーザー的存在のジョニーさんが登場しなかったこと。
 これって、単にインタビューが取れなかったってことだけなんだろうか?

 大陸に活路を開きたい香港映画人と、映画製作に力を入れたい政府の思惑が一致しているような今の大陸電影界。この蜜月、中国が力を持っている間はずっと続くんだろうか。そして、今後の香港電影界は、大陸電影界とどのように影響しあうのだろうか?それは前から気になっていることであり、今後も大いに気になるところ。
 政府がらみだと、陰でやたらと文句を言われる中国ものだけど、ワタシはあくまで客観的な視点で、この動向を見守っていきたいと思うのであった。

 さて、その動向を見守るためにも、近日中に《葉問》と『コネクテッド』(結局地元上映がなかったので、香港で買ったVCDでの鑑賞)をしっかり観なくちゃね。
 今年はただでさえ、中華電影を観る機会が少なかったのだからね(泣)。

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