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アリフ、ザ・プリン(セ)ス(2017/台湾)

アジアでもっともLGBTに対する理解が高いと言われる台湾。
これまで『藍色夏恋』『僕の恋、彼の秘密』『ビューティフル・クレイジー』『GF*BF』などの同性愛が背景にある2000年代以降の青春映画を観たり、アン・リー監督のヴェネチア映画祭金獅子賞受賞作『ブロークバック・マウンテン』に対する熱い支持などで、それを実感することができたが、そこから社会的な理解度の高さを推量することはなかなかできなかった。 (もっとも『GF*BF』は90年代台湾の政治状況とともに台湾初の同性結婚式挙行という実話もエピソードとして盛り込まれており、青春映画に収まらない意欲的な作品として興味深く観た) Wikipediaには中華民国におけるLGBTの権利という項があり、アジアで最もLGBTへの理解が進んだ国としてプライドパレードを始め様々なイベントや歴史がわかりやすく紹介されている。
また台湾とLGBTという検索項で上位にくる、在台日本人によるblog「にじいろ台湾」も理解の一助となる。



『アリフ、ザ・プリン(セ)ス』(台湾サイトあり)の主人公アリフは台東出身でパイワン族のトランスジェンダー。アリフは男性から女性への適合手術を受けることを目指して台北に出て、昼はヘアサロンで、夜はショーパブでドラァグクイーンたちのスタイリストを務めながら暮らしている。ルームメイトの佩貞はレズビアン、ショーパブのオーナー・シェリーは性別移行済のトランスセクシュアルであり、ドラァグクイーンの一人のクリスこと正哲はヘテロの公務員でピアノ教師の妻がいる。
アリフはクリスにひかれるが、クリスは妻に秘密がバレてしまう。シェリーは幼馴染で前科者の水道管工の呉さんを愛しているが、ガンで倒れてしまう。アリフは倒れた父から族長の後継となることを願われるが、息子として継いでほしいと頼まれる。父の気持ちはわかるけど、族長を継ぐよりも一日も早く適合手術を受けたいアリフ。
そして適合手術を控えたある日、佩貞はアリフにとんでもない申し出をする。



今年は日本でもLGBTが合言葉のようにネットやマスコミを飛び交い、TVニュースやイベントに登場する頻度が高くなったものの、まだまだ一般的認知度は低いし、身の回りでも誤解は多い。当事者からも「LGBとTは分けるべき」という声もあって、どこか複雑な印象をあたえるのだが、そもそも人間というものは複雑で多様なものではないか、と思うと、もめることも不理解もわからなくもない。この映画ではトランスジェンダーを中心に扱っているけど、かつては性同一性障害と言われ、適合手術の有無だったり異装者との違いなど、すぐ理解した、なんて言ってしまっては申し訳ない。

アリフは台東で自分の性別の違和に気づき、台北で働き出して女性への移行を始める。と言っても彼女からは詳細は語られないので、これは展開からまとめてみたが、説明されないのがいい。本来はそれでいい。
そういえば、パイワン族には女性の族長もいるので、男子のみが継ぐと言うわけではなくと台湾で先住民研究を行っている弟が話していた。確か他の先住民でも女性族長はいたことはわかっていたので、物語的な理由かな。お父さんが心情として息子として継いでもらいたかった、という感じだろうか。

ところで台湾公開時には、手術を前にしたアリフと恋人と別れた佩貞が関係を持ち、子供を作ってしまったことが両人のセクシュアリティを否定するように捉えられて議論になったようだけど、この映画がダイバーシティを狙って作られているのならば、そこは大目に見てもいいのではないかと個人的には思ったかな。ラストでアリフが帰って女性として族長となった時、彼女の実家の太麻里を訪ねた佩貞は、いずれは子供にもうひとりのお母さんとして話すのだろうしね。

昨年のTIFFで上映されたこの映画は、今年日本各地のクィア映画祭やイベントでたびたび上映され、LGBTへの関心(と誤解)が話題になったいいタイミングに観られるのはいいことであると思った。
しかし、先ごろ台湾の地方選と同時に実施された国民投票では反同性婚の動きが様々な条項を否決したというようなニュースもあり、気になったこともある。今後どうなるのだろうか。自分自身はヘテロ認識ではあるけど、地元のプライドパレードに参加したり、職場でもネガティブな文脈で話題が上がったら気を遣いながら話して誤解を解くことを試みているので、当分気を付けてみていきたいと思う。

原題(英題):阿莉芙(ALIFU THE PRINCE/SS)
監督:ワン・ユイリン 
出演:ウジョンオン・ジャイファリドゥ チャオ・イーラン ウー・ポンフェン バンブー・チェン マット・フレミング キンボ

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