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『キン・フー 武俠電影作法』キン・フー/山田宏一/宇田川幸洋

 昨年フィルメックスで『侠女』を観て大興奮したのは記憶に新しいところだが、ちょうど20年前に出版されたこの本が職場に入っているのを思い出したので、先の記事を書くときには大いに参考になった。そんなわけで、今回は改めてこの本の感想を。


 今から20年以上前、東京国際映画祭やゆうばりファンタで来日されたキン・フー監督(以下カタカタ表記します)への三度のインタビューをまとめたのがこの本。その頃のワタシは香港映画ファンを始めたばかりではあったけど、返還がきっかけで起こった香港映画ブームにより次から次へと公開される新作映画に夢中だったので、こういう方面には全く目を留めなかった。今思えばとても残念なことをしたと思うが、当時はもちろん若かったし、香港映画にもここまで深く長くハマるとは自分でも思ってなかったもので。
 だから、刊行当時にこの本を読まれた方からすれば、かなり遅い読者にしてピントのズレた感想を書くことになるかもしれませんが、そのへんはどうかお許しくださいませ。

 一般的な香港映画のイメージとして、成龍さんや李小龍さんのカンフーものを挙げるのは今に始まったことではないのだが、実は彼らの登場より少し前の60年代後半に、香港映画は第1の黄金期を迎えていた。
 それを確立した映画人の一人がキン・フーさん。1932年に北京で生まれ、1949年に香港に移住し、50年代に映画の世界に入ってからは美術や俳優を務めていたという。本の第1章では大陸で過ごした幼少期について語っているが、その話が非常にスケールが大きくて面白かった。民国期の都会の典型的な大家族に生まれ育ったのだけど、両親や親戚、多くの兄姉の背景まで事細かに語られているので、この時期だけでも映画になりそうと思った次第。

 第2章からは香港に出てから映画に関わりだす話になるのだが、戦後10代で香港に行ったのは特に政治的な理由ではなく、海外進学を目指していたからというのが意外だった。得意の絵画がもととなって美術助手となり、それから俳優となるのは、オールマイティでできる香港映画人らしいキャリア。第3章からはショウブラに行き、いよいよ映画監督としてデビューを果たし、チェン・ペイペイの『大酔侠』(3章)台湾に渡って作った『龍門客棧』(4章)そして『侠女』(5章)と各作品を詳細に語っている。
 キン・フー作品で実際に観たのは、未だに侠女だけという情けなさなのだけど、昨年初めて大画面で観て疑問に思ったことや気がつかなかったことが多かったので、この本を後から読んで知識を補充できるのはよかった。連続掲載された侠女の例の竹林での闘いなど写真も多いのはわかりやすくていい。
 そして、最後のインタビューで語られていたある構想にあっと言ったのは言うまでもない。
そこでは、彼が亡くなった後にウーさんがハリウッドで撮影を切望していた《華工血涙史》について語られていたからだ。これは話を聞いてはいたものの、ワタシもすっかり忘れていたので、なぜか申し訳なく思ったなあ。

 案の定、文章を書いても自分の勉強不足を思い知ったので恥ずかしいところですが、以前も侠女で書いたように、キン・フーさんがもしいなければ、その後の香港映画の隆盛はなかったといえるだろうし、武侠映画や武侠小説に興味を持ったら、これを読んでさらに作品を観るとより理解が深まるので、良い教科書だなというのが総じての感想。また、60年代当時は香港と台湾が映画製作の基盤は別であっても、人が互いに行き合って映画をどう作っていったかという状況もわかるので、本当に貴重な記録である。
 草思社のサイトにはまだ掲載されていて、絶版にはなっていないようなので、まもなく東京で始まる侠女&残酷ドラゴン(龍門客棧)デジタル修復版上映に合わせて、書籍が動けばいいなと思っている。特に中華電影を観始めた若い観客には張り切ってオススメしたい。


…と、ここで不勉強丸出しな感想を書いたので、最後にダメ押しで自分の馬鹿さをさらけ出します。
 そういえばキン・フーさんについては、昔中国語の授業で読んだ《香港電影類型論》でもちゃんと論文が掲載されていたんですよ。でもすっかり落ちていたのでした。
ああもうほんとにすみません、そっちもきちんと読み返しておかないとなあ…。

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