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大樹は風を招く(2016/香港)

 今年は本当に香港映画を観ていない。そもそも勉強してたのに広東語も聞けてない。なんとなくストレスが溜まってる感がある。そんなわけで、フィルメックスの閉会式で上映される『大樹は風を招く』は楽しみにしていた。

 この映画は11年前から香港で実施されている「鮮浪潮國際短片展」の歴代コンペで受賞した3人の監督を起用し、トーさんとヤウ・ナイホイさんのプロデュースによって撮られた作品。今年の金像奨では、最優秀脚本賞と編集賞を受賞。3人の監督のうち、ジェヴォンズ・アウ(歐文傑)さんは今年の金像奨作品賞受賞作《十年》の一編「方言」を監督。
 1997年、返還直前の香港を舞台に、実在した3人のギャング―季炳雄、葉繼歡、そして張子強をモデルにした、季正雄(カートン)、葉國歡(リッチー)、卓子強(小春)の運命を描いた作品。ユニークなのは、3人の監督がそれぞれ主人公3人のパートを演出していること。


 警官を射殺して大陸に逃亡したが、再び香港に戻っては小規模な犯罪に手を染めている季。強盗事件を起こした後にやはり大陸に逃げたものの、身分を隠して家電製品の密輸に携わる葉。彼らとは対照的に、誘拐と脅迫を繰り返しては派手に暴れている卓。香港と大陸とを行き来するも、出会うことはなかった3人だが、ある日どこからか「あの3人が協力して、何か香港でやらかすらしい」という噂が流れてくる。

 それぞれの事情を抱え、それぞれの思惑を抱いて動く3人。返還も控え、黒社会も落ち着かない。名を残す大物たちも、どこで生き残り、どこで躓くかわからない。主題歌として使われるのが、「時の過ぎゆくままに」の広東語カバー、《讓一切隨風》。香港では阿Bを始め、多くの歌手に歌われている名曲。


 トーさん製作で主人公たちが黒社会の大物とは言え、トーさん色が出ているところはキャスティングくらいだし(林雪もしっかり出てるしね!)、そのへんを期待した人には結構ハズレっぽく思われるかもしれない。現にワタシも劇場で「イマイチだった」という声を聞いたし。
でも、3人のパートをそれぞれ3人の監督が撮ったとはとても思えず、バランスが取れていた。寡黙だけど狂犬のような季、一見してギャングには思えない葉、とにかく派手でうるさい卓と、それぞれのパートを分けても無問題なんだろうけど、あえて分けなかったのだろう。
 3人のうち、一番面白かったのが葉のパートで、堅実に行くかと思いつつ結局腰をあげることになり、そこから香港に戻った時にあるハプニングが起きるわけだが、この時にすでに香港人の大陸へのある種の偏見が見えるようだったし、それがかつて香港を拠点にしていた葉の逆鱗に触れたのもわからなくはない。そして、このパートを演出していたのがジェヴォンズさんと聞いて、そう意図したのもなんとなく納得したものだった。(ネタバレ回避してかなりボカしてますが、まあだいたい想像つきやすいんじゃないかと思って)

 香港返還から来年で20年が経とうとしているが、やはり20年という歳月はいろいろとモノを変える。返還当時に渦巻いたいろいろな感情が今はどうなっているかはこれまた人それぞれだろうけど、政治的な面でここまで変わるとは思えなかった現在なら、返還の頃を振り返るとまたいろいろな感情が沸き起こるのだろう、と少し真面目に思ってしまったのだった。 

 とかなんとか言ってますけど、面白かったですよ。ユーモアも効いていたし、カートンもリッチーも小春も渋くてカッコええし、広東語もガンガン聞けて嬉しかったし。
 後はね、題名にある通り、風の使い方が印象的だった。屋上に干した洗濯物をゆっくり揺らしたり、人影が写ったりとよくある演出なんだけど、こういうベタさ(と言い切っていいのか?)がうまく効いているのがやっぱり映画だよなって思うからね。

原題&英題:樹大招風(Trivisa)
製作:ジョニー・トー&ヤウ・ナイホイ 監督:フランク・ホイ&ジェヴォンズ・アウ&ヴィッキー・ウォン
出演:ラム・カートン リッチー・レン チャン・シウチョン(ジョーダン・チャン) ラム・シュー フィリップ・キョン ユエ・ワー ヴィンセント・イン ン・チーホン ホン・ヤンヤン 

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