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台湾人作家の見る日本×日本人翻訳家の見る台湾@不忍ブックストリートweek2016

 2005年から始まり、毎年谷根千地域を会場に行われる日本最大の地域型ブックイベント・不忍ブックストリートweek
 ここ数年はGW中に開催され、古本をダンボール一箱分のスペースで売る一箱古本市を中心に様々なイベントが行われています。不肖もとはしも、書局やさぐれ店主として昨年の一箱に参加いたしました。
 このイベントの中心人物である南陀楼綾繁氏の著書『一箱古本市の歩きかた』によれば、一箱古本市は『牯嶺街少年殺人事件』の、夜市で古本が売られていた場面から発想されたとのことで、台湾好き&本好きとしては何かを感じさせられるものが大いにあります。

 そんな今年の不忍で、4月29日に開催された台湾トーク「台湾人作家の見る日本×日本人翻訳家の見る日本」に参加してまいりました。遅くなりましたがご報告を。
 ちなみにこのイベントで行われた台湾関連のトークショーは、2014年の「台湾で本を売ること、作ること」に続いて二度目だそうです。

 ゲストは東京在住の台湾人作家、張維中さんと、『歩道橋の魔術師』 『日本統治時代の台湾』の翻訳者で台湾文学を中心としたブックカルチャーを紹介しているサイト「もっと台湾」主宰の天野健太郎さん。
 トークはオール日本語。張さんは8年前から日本に住んでいて日本語も実にペラペラですが、日本語で長時間トークされるのはこの日が初めてだったそうです。

フライヤーいろいろ。一番上の猫の写真は天野さんの最新翻訳作『店主は、猫』のアドカード。


会場は谷根千〈記憶の蔵〉。現在は映画保存協会の資料保存庫としても使われているそうですが、かつては八路軍で働いていた看護婦たちの荷物保存庫だったとか。

 張さんはまだ著作の日本語訳がないそうですが、著作『天地無用』の一部訳が読めます。
 小さい頃から家族が「日本製のものはいいよ」など、よく日本の話をしていたことと、90年代末からの哈日ブームの頃は大学生で、その頃映画の『Love Letter』にハマって2回観たとか。初日本旅行は大学4年の頃で、それ以来年一回くらいで来日。他に香港や米国にも旅をしていて、旅した場所を作品の舞台にすることが多かったとか。
 15年前くらいは、英語が喋れない日本人が多く、旅するたびに「よし、日本語を勉強しよう!」と決意しては挫折を繰り返し、そこで日本で本気で1年間頑張ってみようと思って2008年から早稲田に留学し、専門学校で雑誌編集デザインを学んだ後、現在は出版社に勤務して台湾のガイドブック等を作り、台湾で小説やエッセイを発表しています。

 一方、天野さんは90年代中盤の香港返還をきっかけにした中華カルチャーブームの洗礼を受け(同志よ!と思ったら見事に同世代でした。納得)30歳を前にして中国語を学びたいと決意し、香港と台湾に行ってみたが、後者の方が暮らしやすいと思い、師範大学の國語中心に留学。その後通訳・翻訳者を経、2010年から台湾の本を日本で売りたいと『台湾海峡一九四九』を翻訳して白水社から出版したそうです。

 台湾ブームは2000年からあったが、一気に注目されたのが震災後のあの義援金のことから。それを好機といろいろと活動をしている天野さん曰く、台湾ブームには、90年代後半の、司馬遼太郎の『台湾紀行』、台湾在住の片倉佳史さんや青木由香さんが発信する日本人からの視点のものがあるという。それぞれをファーストウェーブ、セカンドウェーブと名付けると、未だに盛んなのはセカンドウェーブであり、その延長線上として旅行誌や女性誌で取り上げられる台湾は消費されるものばかりなので、小説やノンフィクション、建築やデザインなど台湾人が発信する台湾カルチャーをサードウェーブとして紹介したいという話が一番印象的でした。

 90年代初頭から今に至るまでたびたび台湾に渡り、家族も住むようになった身としては、義援金についてはもちろん感謝しているし、以前に比べて台湾のことを話しやすくなった嬉しさはあるんだけど、雑誌やwebで特集される台湾は「美味しい、かわいい、ほっこり」なものばかりで、それだけじゃなんだかなあと思ったのでした。悲情城市のロケ地として観光地となった九份を、某ジブリアニメのモデルとなったなどと紹介されるのもなんだか違和感だったもの。
 ワタシ自身、かつて一周旅行までしたこともあるけど、詳しく知ることなく今に至っている。それに中華商場もだけど、あの頃あった思い出の場所や遊び場もなくなってしまっている。第二の故郷とも言えた淡水も、もうすっかり変わってしまってビックリしたもの。
それでも、今の台湾は興味深い。日本統治時代の建物のリノベーションや、日本のカルチャーに影響を受けて自分たちの街であれこれトライしてローカルカルチャーを育っていく若者たち。ここ数年足を運ぶために、いろいろな面白さを感じるし、それを踏まえて映画や文学やデザインを見ていくとほんとうに面白い。ただ癒されに行くだけでなく、歴史や社会の上から生まれた台湾カルチャーを大いに味わい、いろいろな発見ができるのが楽しいんですよね。あ、もちろんおいしいものは正義ですから、こちらも助けられています。

 

 当日購入したりいただいたりしたもの。左は各主要都市のランドマークをデザインした高鐵特製ふせん(これはもちろん台南ね)と印花樂の付箋、そして張さんのエッセイ『夢中見』。エッセイは張さんに質問していただきました。ちょっとずつですが今読んでいます。
 そして右は岩合さんの世界ネコ歩き台湾編のコーディネーターを務めた猫夫人の最新フォトエッセイ『店主は、猫』。
後日、こちらの感想もアップいたします。

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