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『太陽は動かない』吉田修一

 現在大阪を中心に撮影されている ウーさんの新作《追捕(Manhunt)》
あの高倉健さんの出演作で、文革終了間もない中国大陸で人気を博した映画『君よ憤怒の河を渉れ』と同じ原作小説(西村寿行氏著)の再映画化。つまり、リメイクではないというわけなのね。
 当初はアンドリュー・ラウ監督、アンディ&金城くんの主演、ヒロインはすーちーで企画されていて、監督がウーさんに交替してからもしばらくそのキャスト案は生きていたらしい。でも全てオファーが断られてしまったらしいのと、東アジア映画の大作として製作されることから、『戦場のレクイエム』のチャン・ハンユーが健さんの役どころとなり、映画版では原田芳雄さんが演じた警部を、なんと福山雅治が演じることになった。ヒロインは大陸のチー・ウェイ。他、韓国のハ・ジウォン、日本からは桜庭ななみ、國村隼さん、倉田保昭先生なども出演とのこと(詳細はこちら)。
 製作がおなじみ香港のメディアアジアだけど、メインに香港の俳優がいないのがほんとうに残念。でもこれまで『破風』『ヘリオス』などで、なぜこれだけ大規模な東アジア映画が作られながらも日本が絡めないのかと苦々しく思っていたこともあって、このプロジェクトには成功してほしいと思っているのだ。
 なんてったってさあ、フクヤマの事務所はあのアミューズだぜ。フクヤマや神木くんやタケルやperfumeだけでなく、おでぃーんや中国語が堪能なことをぜひ売りにしてほしい野村周平も所属しているんだぜ。それに20年前には香港映画に出資したり、香港の人気明星たちをサポートしていたこともあるんだし。
 なお、日本ではギャガでの配給が決まり、公開は2018年だとのこと。ちと先が長いなあ。でも楽しみ楽しみ。

 さて、今回は今後製作が盛んになってほしい東アジア映画の原作になれば面白いなと思った小説の感想。以前書いた『路』の吉田修一さんが、前者に先駆けて書かれた初のスパイ&冒険小説です。


 主人公はニュース通信社のホーチミン支局に所属する鷹野一彦。しかし記者とは仮の姿で、アジア各国を渡り歩いては機密情報を入手し高値で売り飛ばす産業スパイである。今回の任務は、新疆での油田開発をめぐる日中韓の利権争いの背後関係を探ること。情報を狙っているのは彼だけではない。韓国人スパイのデイビッド・キムと、AYAKOという日本名を持つ、国籍不明の謎の美女も動き出していた。サイゴンの病院で起きた銃撃事件や、ウイグル過激派が天津のスタジアムを爆破する計画など、複数の関連事件を探りながら真相をつかもうとする鷹野だが、部下の田岡が何者かに拉致されたことから、壮絶な情報戦に拍車がかかっていく…。

 アジアの闇事情に通じる上海雑技団のボス、武闘派のウイグルゲリラ(女性)、中国共産党の若手政治家から、日本の政界の重鎮までが登場して物語に絡んでくるが、日本の目的はエネルギー政策。この小説が発表されたのが4年前の春、しかも書き下ろしとのことなので、3.11は意識していたことはわかる。そういう背景でアジアでのインテリジェンスを描いているので、面白く読んだ。日本のスパイものをあまりよく知らない(公安だったらドラマ&映画の『外事警察』が思い浮かぶんだが)から、なおさらかもしれない。

 でも、ちょっと引っかかりを覚えたのが、鷹野たちがスパイとなった由縁。クールなスパイものにしてはあまりにウェットでヘヴィな背景を背負っているのだ。彼らの所属するAN通信が今いろいろ言われている某公共放送が計画しながら頓挫したアジア版CNNから生まれたというアイディアは悪くないんだけど、兵隊として使われる彼らがあまりに突拍子もない設定をしょっているので、それでいいのかなー?とちと疑問で。この件は昨年発売された第2弾『森は知っている』で書かれているらしいので、文庫化されたら読もうかな。

 いずれにしろ、映画化したらかなり面白そうな話。
日本で企画を立てて香港や台湾に持って行ってもいいだろうしね。制作費がなかなか取れない現実はもちろんわかっているけど、少女漫画原作ばかりでなく、こーゆー重厚な東アジア映画もたまに邦画でやってくれてもよくってよ。

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