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『日本統治時代の台湾』陳 柔缙

 これまで何度か書いていたけど、ワタシの師匠は台湾生まれの日本人、すなわち湾生である。最近blogを始めたので(といいつつ管理しているのはこの弟子なのですが>宣伝)、今後台湾で過ごした少女時代のことも、きっと語ってくれるはずである。
 また、今年の大阪アジアン映画祭のオープニングは、台湾で大きな反響を呼んだドキュメンタリー『湾生回家』。今年の秋、岩波ホールでの上映も決まったとのことで、観るのがとても楽しみだ。

 今回取り上げる『日本統治時代の台湾』は、師匠にもオススメした本。
コラムニストの著者が、題名通り日本統治時代の台湾の庶民史を、当時を知る人々からの聞き取りや日本語資料等を調べあげて、26のエピソードとしてまとめたノンフィクション。


 これまでは大きな中華圏の一部として台湾を捉えてきたけど、日本人的には、どうしても日本統治時代は台湾においてネガティヴに捉えられているのではないか、とかなり長い間思っていた。留学中に釣魚台事件が起こり、学内外で沸き起こった反日運動に巻き込まれたことがあったのでそう考えたり、環島の旅で出会ったお年寄りに「私は今でも日本人です、尊敬する人は天皇陛下です」などと言われると、自分のことでもないのに妙な照れくささやこそばゆさを覚えたものだった。
 実は20年前に他界した祖母が奉公時代に台湾や満州に渡っていたらしいのだが、とてもつらい思い出ばかりだったらしく、彼女はあの世にそのことを持って行ってしまった。だから、その時代のことはアンタッチャブルなのかと思っていたのだが、実際に青春時代を台湾で過ごした師匠の話を聞くにつれ、実はそんなに辛いわけじゃなかったのでは?と自分の思い込みを疑問に思うようになった。
 そして、『海角七号』『セデック・バレ』『KANO』と魏徳聖さんの日治三部作と言える映画を観たり、旅の中で統治時代の建物などに出会うことで、統治時代の台湾の、いろんな意味での複雑さ、もっとざっくり言うと面白さを改めて知った。その延長線上で、この本を面白く読んだ。

 台湾初のマラソンで大活躍した台湾人ランナーの話から始まり、ご存知一青妙&窈姉妹の先祖、基隆の顔家で起こったとんでもない盗難事件(!)、その顔家も含む台湾五大名家とイケメンセレブ、思わず近松門左衛門を江戸時代から連れてきたくなる美麗島心中(近松は鄭成功を主人公にした『国性爺合戦』を書いているしね。ついでにこの冬NHKで放映されていた『ちかえもん』面白かったわ)、板垣退助や閑院宮殿下の訪台とその顛末、といちいち書いているときりがないけど、戦後間もない米軍占領時の日本に渡った張超英のエピソードで締めくくられるまで、日本人も台湾人も、老いも若きも、お金持ちもビンボーな人々も、あらゆる人々の50年間の台湾での人生が詰まっている。どこから読んでも面白く、非常に興味深い。

 台湾はいい国だ、だって親日だからだと無邪気にいう人は少なくない。だけど、なぜ親日なのか?と考えると、非常な複雑さを覚える。もちろん、それは台湾人の持つ愛にもまさる親切心のなすところが一番大きいのだけど、こういう昔の姿を、決してかつての日本礼賛的な視点を全く抜きにして見ることもその助けになるのだろうな、などとふと思った。台湾人の著者がまとめたこともあり、非常に公正な視点で書かれているのも好感度が高いしね。

 で、師匠の思い出話を聞いたり、このような面白いエピソードを読んだことでふと思ったことがある。もしかしたら、日本統治時代の台湾で青春期を送った女性をヒロインにした朝ドラなどというのもできるんじゃないだろうかと。
 でも、それは絶対できない。だって企画した時点から、いろんなところからいろいろ言われそうだものね(汗)。

 そんなことを考えながら感想を書いてみましたが、例によって例のごとく、この記事に関する政治的な点においてのツッコミが寄せられても、一切ノーコメントを貫かせていただきますので、あしからず( ̄ー ̄)ニヤリ。あくまでも「※意見には個人差があります」

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