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『明月』蔡 素芬

 この度の台湾南部地震で被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。
 この春、台南へ旅しますが、ワタシが行くことで現地のためになればと思っております。ってなんか偉そうですみません。

 さて、今回はその台南と高雄を舞台にした約20年前の台湾のベストセラー、《塩田児女》シリーズの第1弾『明月』の感想。なぜこれを?という理由は、この小説は我が地元、岩手県紫波町の地方出版社・桜出版から発売されているからなのです。これまでの台湾小説は、少出版社でありながらも東京の会社から出版されることが多かったのですが、ここ数年は地方の出版社からも出ているようです。
で、なぜ紫波町の?と不思議に思ったのですが、昨年11月に盛岡市で行われた台湾文学講座(こちらで多少触れてます)でわかりました。この小説の邦訳を監修された翻訳家の林水福さんが、石川啄木の中文訳をされていた方なのでした。啄木といえば盛岡の先人。もしかしたらそんな縁で、こっちの出版社で引き受けることになったのかしら、と推測しておりますが、真意はいかがでしょうか?


 台南郊外の七股は、塩田による製塩業が盛んな集落。王明月は塩田農家の二番目の娘である。しかし塩田だけでは子供たちを養えず、父の知先は台北に出稼ぎに出ており、明月は姉の明心と共に、ひどい喘息を患って寝たきりになっている母・阿舎の世話をしながら塩田を切り盛りしていた。やがて成人した明心が嫁いで家を出るが、程なくして病で命を落としてしまう。そこで阿舎と知先は、明月に婿を取ることを決める。明月は幼なじみの漁師・大方と相思相愛だったが、大方は一人っ子のため婿入りさせられず、慶生という男が王家の婿に入ることになった。
 しかし、慶生は明月と結婚した途端、塩田業を手伝うことなく博打に明け暮れる。お互いに愛がないことを知りながらも、小さな子供がいることでどうしても別れることができなかった。やがて漁から大方が帰り、明月と再会するが、二人の恋は燃え上がり、彼女は大方の子供を宿す。
 そんな中でも慶生は博打で借金を増やしていく。いよいよ塩田業だけでその借金は返せなくなってしまい、明月は七股を離れ、一家揃って高雄に移住して働くことを決意する…。

 物語は40年代末から始まる。昨年秋の台湾文学講座で、著者の蔡さんが自作を解説してくださったのだが、曰く、この小説では戦後早期の台湾女性の典型的な姿を描くことを試みたらしく、貧しい村での農業の発展、そこから工業へと主産業が変化し人口が減少していく様子も合わせて描いたとのこと。人口減により七股の製塩業は衰退し、92年に生産をストップしてしまったものの、今でも塩田は残っているので、台湾でこの小説が出版された時、塩田を見に行く人が増加したらしい。昨年、安平の夕遊出張所にも行ったのもあるけど、予定次第かな。

 読んでみて思ったのは、いやー、メロドラマだな~ってこと>当たり前だけどね。
台湾では1998年に全20回の連ドラになったそうだけど、日本だったら昼メロだろうなあ。慶生が安定のクズなので、大方とのロマンスが引き立つのも子供出来ちゃうのもお約束だしね。
 まあ、オーソドックスだよなー、もうちょっと意外性があってもと思って読んでたら、クライマックスで慶生が!そして窮地に落とされた明月に思いがけない助け舟が!という展開になり、えーっ、そこで終わるの!と驚いた。で、この後は明月の娘・祥浩が80年代の台北で大学生活を過ごす続編『オリーブの樹』で読めるようなので、そのうち買って読みますわ。で、実はこの祥浩が…なんだけど、それも続編の感想で改めて書きますわ。

 しかし、「明月」だけでとってもステキな題名だと思うから、わざわざ英題の「クリスタル・ムーン」ってつけなくともよかったのよ。あとね、訳文はもう少しブラッシュアップしていただいてもよかった。女性なのに男言葉で話されたり(某東京中国映画週間のオネエ字幕を思い出した)、原文の固有名詞をそのまま使ったので日本語で漢字が出てない箇所が多少あって気になった。続編ではそのへんが解消されていることを願います。

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