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2016年2月

『明月』蔡 素芬

 この度の台湾南部地震で被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。
 この春、台南へ旅しますが、ワタシが行くことで現地のためになればと思っております。ってなんか偉そうですみません。

 さて、今回はその台南と高雄を舞台にした約20年前の台湾のベストセラー、《塩田児女》シリーズの第1弾『明月』の感想。なぜこれを?という理由は、この小説は我が地元、岩手県紫波町の地方出版社・桜出版から発売されているからなのです。これまでの台湾小説は、少出版社でありながらも東京の会社から出版されることが多かったのですが、ここ数年は地方の出版社からも出ているようです。
で、なぜ紫波町の?と不思議に思ったのですが、昨年11月に盛岡市で行われた台湾文学講座(こちらで多少触れてます)でわかりました。この小説の邦訳を監修された翻訳家の林水福さんが、石川啄木の中文訳をされていた方なのでした。啄木といえば盛岡の先人。もしかしたらそんな縁で、こっちの出版社で引き受けることになったのかしら、と推測しておりますが、真意はいかがでしょうか?


 台南郊外の七股は、塩田による製塩業が盛んな集落。王明月は塩田農家の二番目の娘である。しかし塩田だけでは子供たちを養えず、父の知先は台北に出稼ぎに出ており、明月は姉の明心と共に、ひどい喘息を患って寝たきりになっている母・阿舎の世話をしながら塩田を切り盛りしていた。やがて成人した明心が嫁いで家を出るが、程なくして病で命を落としてしまう。そこで阿舎と知先は、明月に婿を取ることを決める。明月は幼なじみの漁師・大方と相思相愛だったが、大方は一人っ子のため婿入りさせられず、慶生という男が王家の婿に入ることになった。
 しかし、慶生は明月と結婚した途端、塩田業を手伝うことなく博打に明け暮れる。お互いに愛がないことを知りながらも、小さな子供がいることでどうしても別れることができなかった。やがて漁から大方が帰り、明月と再会するが、二人の恋は燃え上がり、彼女は大方の子供を宿す。
 そんな中でも慶生は博打で借金を増やしていく。いよいよ塩田業だけでその借金は返せなくなってしまい、明月は七股を離れ、一家揃って高雄に移住して働くことを決意する…。

 物語は40年代末から始まる。昨年秋の台湾文学講座で、著者の蔡さんが自作を解説してくださったのだが、曰く、この小説では戦後早期の台湾女性の典型的な姿を描くことを試みたらしく、貧しい村での農業の発展、そこから工業へと主産業が変化し人口が減少していく様子も合わせて描いたとのこと。人口減により七股の製塩業は衰退し、92年に生産をストップしてしまったものの、今でも塩田は残っているので、台湾でこの小説が出版された時、塩田を見に行く人が増加したらしい。昨年、安平の夕遊出張所にも行ったのもあるけど、予定次第かな。

 読んでみて思ったのは、いやー、メロドラマだな~ってこと>当たり前だけどね。
台湾では1998年に全20回の連ドラになったそうだけど、日本だったら昼メロだろうなあ。慶生が安定のクズなので、大方とのロマンスが引き立つのも子供出来ちゃうのもお約束だしね。
 まあ、オーソドックスだよなー、もうちょっと意外性があってもと思って読んでたら、クライマックスで慶生が!そして窮地に落とされた明月に思いがけない助け舟が!という展開になり、えーっ、そこで終わるの!と驚いた。で、この後は明月の娘・祥浩が80年代の台北で大学生活を過ごす続編『オリーブの樹』で読めるようなので、そのうち買って読みますわ。で、実はこの祥浩が…なんだけど、それも続編の感想で改めて書きますわ。

 しかし、「明月」だけでとってもステキな題名だと思うから、わざわざ英題の「クリスタル・ムーン」ってつけなくともよかったのよ。あとね、訳文はもう少しブラッシュアップしていただいてもよかった。女性なのに男言葉で話されたり(某東京中国映画週間のオネエ字幕を思い出した)、原文の固有名詞をそのまま使ったので日本語で漢字が出てない箇所が多少あって気になった。続編ではそのへんが解消されていることを願います。

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ドラゴン・ブレイド(2015/中国)

 香港映画の上映が地方で減少していく中、香港から中国に活動の地盤を移したとはいえ、成龍作品は上映されるので観に行くわけだけど、ここ数年の『ライジング・ドラゴン』『ポリス・ストーリー レジェンド』は往年のヒット作のリブート…というか、過去のヒット作を焼き直した感があって正直あまりノレなかった。ここ5年は大陸で製作しているとはいえ、同じことをやる必然性はどこに?と思うと、どうしても素直に楽しめなかったのよね。
 そんなわけで、期待値は低かったです『ドラゴン・ブレイド』。 

 前漢の西域。霍去病(ウィリアム・フォン)に育てられた霍安(成龍さん)は成人後、西域警備隊に所属し、隊長として辺境で睨み合う36の部族のいざこざを収めていた。しかし、何者かに罠をかけられ、反逆者の汚名を着せられて部下とともに辺境の雁門関に送られる。そこで彼らは関門の建設に駆り出される。
 ある日、西の方から軍隊がやってきた。率いるのはローマ帝国の将軍ルシウス(ジョン・キューザック)。暗殺された執政官の末息子で失明した少年プブリウス(ジョセフ・リュウ・ウェイト)を連れ、逃げてきたのだ。当初は関門を破り、占拠するはずだったが、霍安は彼らを受け入れて匿うことにする。
霍安や他の部族と打ち解けたルシウスは、執政官の長男タイベリウス(エイドリアン・ブロディ)にかつて仕えていたが、父親を殺し弟に薬を盛って失明させたことを知って決別したことを彼らに話す。そしてタイベリウスの追手が迫っていることを知った霍安は援軍を呼びに街に戻るが、彼の不在の間にタイベリウスが雁門関を襲撃してきた…。

 冒頭に「史実に基づく物語」とあり、まあシルクロードを介してローマと前漢及びその周辺民族は交流を持っていたというし、今さら改めて言うことじゃないでしょうって思ったんだが、wikipediaによると、成龍さんが甘粛省のある地域で古代ローマの軍団の一つがまとめて行方不明になり、彼らの末裔がそこにとどまって古代ローマ風の集落を築いたらしく、その遺跡が発見されたというニュースに興味を示したことからこの物語が生まれたらしい。霍安が『史記』に登場する前漢の名将・霍去病の養子という設定には、ニヤッとした人もいたんだろうなあ。

 ルシウスのローマ軍と西域の人々が協力して関所を築き、そこを多文化共生の象徴にすることを試みるという解釈はあまりに現代的なんだろうけど、こういう描写も悪くない。西域の各部族もわかりやすく描写されているし、なによりも辺境に追いやられて生きていることから、団結するには容易なわけだからね。
 その穏やかさを一気に打ち崩すのがタイベリウスの襲撃なのだが…これがまあ残酷すぎるわ。ルシウスへの執着が蛇足っぽく感じるのもそうなのだが(吹替版鑑賞ではなんか萌えてたお嬢さんもいたそうだが、こちとら劇場版は基本字幕で観るのでそんなんどーでもいいのである)、そこまでやるか?ととても言葉にできない(というかネタバレなので)残酷っぷり。まあブロディくんもオスカーウィナーだけど基本悪人顔だし(笑)、成龍さんのファンらしいとどこかで読んだので、この役どころは楽しかったんじゃないのかな?
 で、ルシウスを演じたキューザックだが…、まあ、おいしい役なのにね…、なんか『シャンハイ』を思い出していたんですけど。まあそれはね。

 監督は成龍さんとはおそらく初タッグになると思われるダニエル・リー。ダニエルさんといえば、毎度の如くアクションはすごくいいんだけどそれ以外がもにょもにょと言っておりますが、ここしばらくは歴史アクションの監督が多く、成龍さんとの相性も抜群だったと思います。なにせやっぱり香港映画から出てきた人なので、大陸の若手監督よりもこなれた撮り方をするし、安心感も高い。それでも、えーそれは必要か?とか、まさかそこまでやるのか?と多少もにょりたくなるのはあるけどね。
 いずれにしろ、ここ数年の成龍さん作品に物足りなさを感じていたので、それを思えば合格点だと思いましたよ。そして、彼はこれで完全に中国映画の人になってしまったのだということも、改めて実感したのでした…。

 ところで、結構鳴り物入りで紹介されてた感があったシウォンさんですが…もっといっぱい出てるのかしら?と思ったんだが、意外とそうじゃなかったね。まあいいんだけどね。

原題:天将雄師
監督&脚本:ダニエル・リー 音楽:ヘンリー・ライ アクション指導:ジャッキー・チェン&成家班
出演:ジャッキー・チェン ジョン・キューザック エイドリアン・ブロディ チェ・シウォン リン・ポン ミカ・ウォン ウィリアム・フォン

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大館の御成座で『捜査官X』を観る

 今回は久々に映画の話題です。

 シネコンの都心進出と対比して、シネマート六本木やシネマライズの閉館、新宿武蔵野館の休館など、都心では単館系映画館の寂しい話題が続き、地方の映画ファンでも残念に思うこの頃。
 北とーほぐの我が街にはメインストリートに交差する「映画館通り」がありますが、実際は5館14スクリーン。年間上映本数が1000本を超えるここ数年ですが、どうしてもシネコンではメジャー作品が上映の中心になるので、香港映画や台湾映画の上映本数は悲しいほど減りました。まあそれでも、今月末には実に18年ぶりのホウちゃん作品上映になる『黒衣の刺客』やピーター・チャンの新作『最愛の子』が地元上映されるので、ちょっとはホッとしてます。あ、当然(笑)『ドラゴン・ブレイド』は上映されますけどね。

 それは置いといて、先日、秋田県大館市にある御成座に行ってきました。
我が街から大館は高速バスで2時間20分位で行けます。

 御成座は1952年に開館した洋画専門のロードショー館で、老朽化により2005年閉館。駅から徒歩3分という地の利の良さのため、常設館としての再建も試みられたようですが、2014年7月より平日はイベントホール、週末に映画上映という形で利用されることになったそうです。上映はフィルムとBDの併用で、ドルビーSRDも導入されているとか。そしてなんといっても幅9メートルの大画面が魅力的!

 これまでの上映はとーほぐではなかなか観られないミニシアター上映作品や国内外の往年の名作など。香港映画は成龍さんの『ファースト・ミッション』が昨年上映されています。SNSでの情報発信も積極的に取り組んでいて、飛ば…じゃなくてユーモアと情熱あふれるtweetが楽しいです。

 で、ここで観たのは…

『捜査官X』でした。初映時に関東で観たものの、結局地元盛岡では上映されずに終わり、同年のもりおか映画祭でも「せっかく谷垣さんがるろけん上映で来盛されているのに、なんで出演作品を上映してくれないのー!」と一人勝手にブーたれていたという、例の件のアレです。まあ、個人的な想いなのでこれはこのへんで。

 さて、ここで久々の劇場上映を盛り上げるために、御成座さんが用意した数々のアイテムをご紹介いたしましょう!

 オサレなカフェ風ブラックボードにキメキメのロゴデザインとキュートでファンキーな似顔絵!※意見には個人差があります。

 上映のために地元の看板屋さんに描き下ろしていただいたというイラスト看板!
これは盛岡名物ピカデリーの絵看板と双璧をなすぞ!

4月までの上映ラインナップ。ピアノ伴奏付きサイレント映画上映会なども行われているそうです。
そしてとーほぐ、雪国秋田といえばこれだ!どや! 

金城徐百九だるま&ド兄劉金喜だるま!いやー、似てるなあ。
今年は暖冬で雪が少ないので、もっと積もってたら面白かったんだけどなあ…。

 昔の映画館ゆえ、建物が古いのはまあ仕方がないのだけど、場内にはブルーヒーターがあったので(!)、ストーブに当たりながら久々の大スクリーンでド兄さんと王羽さんの激烈な闘いを堪能いたしました。フィルム上映だったのもまた良し。

ちなみに↓は、ロビーにあった旧型の映写機。

ロビーには市内の映画サークルでアジア映画ファンの方の愛蔵書(だいたい持ってたわ…あは)やパンフも展示。そしてこんなポスターもね。

このように往年の映画館の雰囲気を漂わせているけど、実は結構フリーダムな館内。
そのフリーダムさを象徴するのが、この子。

御成座さんのアイドル、うさぎのてっぴー。
普段はストーブの前が指定席らしいのですが、一度椅子の下に潜るとなかなか出てこないとのこと。当日がそうでした(笑)。
むくむくしてかいらしいんだけど、うまく撮れなくてすみませぬ。

 こんな感じの映画館で楽しんできました。
 東北の映画館も郊外のシネコンが多く、県庁所在地ではミニシアター作品が上映されても、仙台や山形で上映されても盛岡や他の小都市まで来なかったり、名画上映ももっと選択肢があってもいいよなと思うのだけど、御成座さんのように、小さな都市の映画館として往年の作品と癖のあるミニシアター作品をうまい具合に上映していけるのは面白いと思うし、東北各地の小さな単館でも楽しくできるという可能性を示してくれるような気がしました。岩手にも盛岡以外で小さな映画館がいくつかありますが、そこでもなにか面白い映画がかかれば観に行きたいですよ。できればアジア映画を…成龍さんの以外の(ごめん、贅沢言って)。

 とまれ、御成座さんは今後も応援いたします。またアジア映画が上映されたら観に行きますね。今度は夏に行って、夕方まで楽しみたいわ。
 そんなわけで、全国の映画ファンの皆様、とーほぐを旅するときには、是非大館の御成座へ!そのついででもいいから、盛岡にも来てねー(と一応地元アピールもしようっと)

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『路』吉田修一

 前回の『流』の東山さんは直木賞作家なので、今回は賞つながりで芥川賞作家の書く台湾小説の感想を。

 2002年に『パーク・ライフ』で芥川賞を受賞した吉田修一さん。『パレード』『悪人』『横道世之介』『さよなら渓谷』など映画化された作品も多く、今年は『悪人』を手がけた李相日監督による『怒り』の公開が控えています。純文学の賞を受賞しましたが、書かれる作品の幅がかなり広いのが面白いです。と言いつつ、実際に読んだのは世之介と渓谷くらいです、はい。
 そんな吉田さんは4年前に、アジアを舞台にした長編小説を立て続けに2作発表しました。一作は、南シナ海の油田開発と新エネルギーを巡る日中のにらみ合いの中で暗躍する産業スパイ鷹野一彦を主人公にした冒険小説『太陽は動かない』。そしてもう一作が、今回取り上げる『路』

 台北と高雄を結ぶ台湾新幹線(高鐡・THSR)は、二転三転の上、日本方式による建設が決まった。 商社の台湾新幹線事業部から台北勤務となった多田春香は、学生時代の初の台湾旅行で知り合ったエリックという青年の行方を気にしていた。そのエリックこと劉人豪は、当時は淡江大学の建築系の学生だったが、春香と出会った直後に発生した阪神大震災に衝撃をうけて日本に渡り、ボランティアに従事後、春香の行方を探して日本の大学院に進学し、そのまま日本で建築士として職を得ていた。
 この二人を中心に、春香の歳上の同僚・安西誠、高雄の車輌整備工場で働く陳威志、湾生の老人・葉山勝一郎など、さまざまな人々のエピソードが受注成功から開通までの8年間で綴られる群像劇的小説。

…とあらすじを書いてから、特設サイトにあった吉田さんのインタビューを読んでみたんだけど、おお、おお、そうだったのか、これは恋愛小説だったのか!と膝をたたいた次第。って気づくの遅いよ自分(笑)。

 これは3年間雑誌に連載された後、2012年秋に単行本が出版されたとのこと。書かれたきっかけは、ご本人が台湾が好きで(おお、嬉しい)、先行して日本人女性と台湾人男性の短編を書いたので、それを膨らませるためにたどり着いたのが、日本方式で作られた台湾新幹線だったとか。
 学生時代に一時を過ごし、その後もお互いを探し求めていた春香と人豪のエピソードはとても瑞々しくておねーちゃんは羨ましい(こらこら)。かすかな記憶の中でお互いを探し合うので、二人が再会するのも中盤頃である。だけどそれまでがもどかしくなく読み進められるのは、新幹線の建設をめぐる人々にもそれぞれのドラマがあり、しっかりと書き込まれているからだ。
 新幹線の建設も、いくら日本が関わっているからとはいえ順調には進まない。春香より先に台湾に赴任して、様々な交渉に当たるものの、壁にぶち当たっては神経をすり減らしていく安西の苦悩はリアルな痛々しさを覚える。実際に台湾の商社で働く日本人も、あれこれ大変な思いをしているのだろうなって思ったもの。結局ワタシ自身も留学をしたとはいえ、台湾で仕事をする道は選ばなかったけど、もし選んでいたらどうなっていただろう…こんなお気楽blogを書いているってことはきっとなかっただろうな。

 嬉しいのは、日本人だけじゃなくて台湾人の人間模様もしっかり書いてもらえたこと。フリーターからやがて新幹線に関わっていく高雄の阿志こと陳威志の青春物語は、読んでて頬がゆるんでしまう愛おしさがある。彼らの話だけでももっと深く掘り下げられそうな感じ。
そして湾生の勝一郎さんの、生まれた地である台湾への望郷の念。文中では『悲情城市』を観る場面などもあるし、そんな彼と人豪が結びつくという縁も。湾生の方々の思いは、これから読む『日本統治時代の台湾』でも書くつもりだけど、これらは台湾を知る上で語られることが必要不可欠だと改めて思った次第。

 吉田さんの作品は、『悪人』や『怒り』、『さよなら渓谷』など、罪を抱えた人間の姿を描くことに定評があるけど、闇ばかり抱えているのではなく、くっきりとした明るさもまた持ち合わせていることを『世之介』でちゃんと書いている。この小説は明るさを保って書かれているのがいい。国は違えど、いろんな複雑さを抱えていても、人と人は思いを結ぶことができる。
国境を飛び越えてつながることは、そんなに難しいことじゃない。重厚な作品が多い吉田さんがこの小説で軽やかにそれを語ってくれたのが実に嬉しいのでありました。

 完全映像化は難しいかもしれないけど、これも日台合作で映像が観たいですねー。映画か、WOWOWのドラマWで観たいところ(ホントはNHKの土ドラがいいのだろうけど、政治的に難しいと思うので)。もし実現したら演出は吉田作品を複数手がけている行定勲さんにお願いしてほしいなー。
 キャストもざっと考えてみたけど、春香は石原さとみ(近年中華圏進出を目論んでる長澤まさみじゃないのはあえてだよ)、人豪はジョセフあたりかしら。他のキャストもいろいろ考えてみたけど、思いついたのはそんなところ。

てなわけで企画書書けというなら書きますよー。
とか言ってもそんなコネもツテもないので、冗談ですよー。

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『流』東山彰良

 台北に生まれて福岡に暮らし、大学で中国語を教えながら日本語で小説を書く台湾人作家の東山彰良さん。そのプロフィールから一度作品を読んでみたいもんだと長らく思っていたのだけど、なかなか読めなくてすみません(笑)。昨年夏にこの『流』が直木賞を受賞したことで注目され、やっと読む機会ができたのはありがたいことでしたわ。
 同時発表の芥川賞で芸人の人が受賞したのでそっちばかり騒がれたけど、邱永漢氏に続く台湾生まれの直木賞作家誕生のニュースは日本のみならず台湾でも注目されました。受賞当時はまだ翻訳が台湾で売られてなかったっと聞いた気がするけど、翻訳も幾つか進んでいるかな。

 1975年4月、台湾を臨時政府と定めていた中国国民党の総統、蒋介石が死んだ。その1ヶ月後、台北に住む高中生の主人公、葉秋生の祖父・尊麟が迪化街の自宅で何者かによって殺害された。
 尊麟は山東省出身の外省人で、国民党の本土退却とともに妻と4人の子供を連れて台湾に移り住んだが、同世代の外省人のほとんどが夢見たように、いつか大陸に帰りたいと願っていた。同郷の年寄りたちによると、尊麟は故郷で凄腕の豪傑として腕を鳴らしており、どうも恨みを買われていたらしい。まさか、大陸からやってきた誰かが復讐のために祖父を殺したのか…?
 そんな時、秋生は悪友の小戦こと趙戦雄の誘いに乗って替え玉受験に乗ってしまい、それが失敗して通っていた進学校を退学処分になる。秋生はやむなく底辺校へ転校するが、行った先でもトラブルに見舞われるばかり。それでも一度しかない青春を走り抜ける秋生。幽霊との遭遇、幼馴染との淡い恋、大学受験の失敗、小戦との暫しの別れ。
 兵役を経て、食品公司に就職した秋生は、祖父の死の謎を追うべく、出張先の日本を経由して大陸に入った。日本軍の間諜と対立していた祖父の過去を追ううち、意外な真犯人が浮かび上がる…。

 迪化街に中華商場などよく知った固有名詞、中国語に日本語のルビを振った一部のセリフが面白く、裏道を疾走するワルガキどもの姿が見えるような描写とテンポの良さ。読んでいて思い出すのはヤンちゃんことエドワード・ヤンの作品群だったり、『モンガに散る』だったりの、これまで観てきた台湾映画の数々。そういえば東山さんもモンガの監督、豆導こと鈕承澤の映画がお好きだと語っていたらしく、なろほど!と膝を叩きたくなった。

    デビューが宝島社のこのミス大賞だそうで、読む前まではミステリー寄りなのかなと思えばそうでもなく、青春小説の色合いの方がぐっと濃い感じ。70年代台湾は映画でもあまり知らない時代であるし…と言おうとしたが、去年観た『風の中の家族』でちょっとだけ出てくるか。まあ、あれだけじゃ足りないのは承知。また、当時の台湾と大陸および日本との関係も興味深い。イーグルスの「デスペラード」や日本統治時代に育った登場人物の一人が日本語で歌う「朧月夜」、そして後半に登場する中森明菜の「セカンド・ラブ」など、引用されている歌も物語の展開にうまくマッチしていていい。さらにコックリさんまで登場するよ。

 こんなふうに書くと、なんだか雑多で取り止めがない感じだけど、もちろんそんなことはない。 大陸から台湾まで流れ来た祖父と、その血を受け継いで流れ行く青春を送りつつ、自らのルーツである祖父の過去に迫る秋生。20世紀の中華圏の激動を感じ、台湾の複雑さにも改めて思いを寄せられる。しかもハードボイルドであるから、とても楽しく読めた。
街はかなり変わってしまってはいるけど、今度台北に行ったら、文中に登場する地域に行って、秋生や戦雄がいたであろう路地を探してみるというのも面白いだろうな。
映画化するならもちろん日台合作で、監督は当然豆導でお願いしたいです。どうですか、最近再び中華圏進出を狙い始めた某藝神集団さんあたりで企画出ませんかね?>人頼みかい(苦笑)

 なお、今年の初めにこの小説の後日譚というべきスピンオフ短編『I Love You Debby』が発表されました。 前編後編にわかれています。読まれた方はぜひこちらも。

 そうそう、今回の受賞をきっかけに東山さんの過去の作品も読もうと思って、文庫化されたメガノベル『ブラックライダー』も読んだのだけど…いやあ、実に人を喰った話でビックリだった。ええ、字面通りの話ですよ?とだけ言っておきますか。
 あと、今年になって発行された初エッセイ集『ありきたりの痛み』(リンク先はインタビューです)をちょっと立ち読みしたのだけど、この本には新聞で連載されていた映画評や直木賞受賞時のジャーナル、台湾への帰国などについて書かれているので、近日買って改めて読み、感想を書く予定です。

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