ドラゴン・ブレイド(2015/中国)
香港映画の上映が地方で減少していく中、香港から中国に活動の地盤を移したとはいえ、成龍作品は上映されるので観に行くわけだけど、ここ数年の『ライジング・ドラゴン』と『ポリス・ストーリー レジェンド』は往年のヒット作のリブート…というか、過去のヒット作を焼き直した感があって正直あまりノレなかった。ここ5年は大陸で製作しているとはいえ、同じことをやる必然性はどこに?と思うと、どうしても素直に楽しめなかったのよね。
そんなわけで、期待値は低かったです『ドラゴン・ブレイド』。
前漢の西域。霍去病(ウィリアム・フォン)に育てられた霍安(成龍さん)は成人後、西域警備隊に所属し、隊長として辺境で睨み合う36の部族のいざこざを収めていた。しかし、何者かに罠をかけられ、反逆者の汚名を着せられて部下とともに辺境の雁門関に送られる。そこで彼らは関門の建設に駆り出される。
ある日、西の方から軍隊がやってきた。率いるのはローマ帝国の将軍ルシウス(ジョン・キューザック)。暗殺された執政官の末息子で失明した少年プブリウス(ジョセフ・リュウ・ウェイト)を連れ、逃げてきたのだ。当初は関門を破り、占拠するはずだったが、霍安は彼らを受け入れて匿うことにする。
霍安や他の部族と打ち解けたルシウスは、執政官の長男タイベリウス(エイドリアン・ブロディ)にかつて仕えていたが、父親を殺し弟に薬を盛って失明させたことを知って決別したことを彼らに話す。そしてタイベリウスの追手が迫っていることを知った霍安は援軍を呼びに街に戻るが、彼の不在の間にタイベリウスが雁門関を襲撃してきた…。
冒頭に「史実に基づく物語」とあり、まあシルクロードを介してローマと前漢及びその周辺民族は交流を持っていたというし、今さら改めて言うことじゃないでしょうって思ったんだが、wikipediaによると、成龍さんが甘粛省のある地域で古代ローマの軍団の一つがまとめて行方不明になり、彼らの末裔がそこにとどまって古代ローマ風の集落を築いたらしく、その遺跡が発見されたというニュースに興味を示したことからこの物語が生まれたらしい。霍安が『史記』に登場する前漢の名将・霍去病の養子という設定には、ニヤッとした人もいたんだろうなあ。
ルシウスのローマ軍と西域の人々が協力して関所を築き、そこを多文化共生の象徴にすることを試みるという解釈はあまりに現代的なんだろうけど、こういう描写も悪くない。西域の各部族もわかりやすく描写されているし、なによりも辺境に追いやられて生きていることから、団結するには容易なわけだからね。
その穏やかさを一気に打ち崩すのがタイベリウスの襲撃なのだが…これがまあ残酷すぎるわ。ルシウスへの執着が蛇足っぽく感じるのもそうなのだが(吹替版鑑賞ではなんか萌えてたお嬢さんもいたそうだが、こちとら劇場版は基本字幕で観るのでそんなんどーでもいいのである)、そこまでやるか?ととても言葉にできない(というかネタバレなので)残酷っぷり。まあブロディくんもオスカーウィナーだけど基本悪人顔だし(笑)、成龍さんのファンらしいとどこかで読んだので、この役どころは楽しかったんじゃないのかな?
で、ルシウスを演じたキューザックだが…、まあ、おいしい役なのにね…、なんか『シャンハイ』を思い出していたんですけど。まあそれはね。
監督は成龍さんとはおそらく初タッグになると思われるダニエル・リー。ダニエルさんといえば、毎度の如くアクションはすごくいいんだけどそれ以外がもにょもにょと言っておりますが、ここしばらくは歴史アクションの監督が多く、成龍さんとの相性も抜群だったと思います。なにせやっぱり香港映画から出てきた人なので、大陸の若手監督よりもこなれた撮り方をするし、安心感も高い。それでも、えーそれは必要か?とか、まさかそこまでやるのか?と多少もにょりたくなるのはあるけどね。
いずれにしろ、ここ数年の成龍さん作品に物足りなさを感じていたので、それを思えば合格点だと思いましたよ。そして、彼はこれで完全に中国映画の人になってしまったのだということも、改めて実感したのでした…。
ところで、結構鳴り物入りで紹介されてた感があったシウォンさんですが…もっといっぱい出てるのかしら?と思ったんだが、意外とそうじゃなかったね。まあいいんだけどね。
原題:天将雄師
監督&脚本:ダニエル・リー 音楽:ヘンリー・ライ アクション指導:ジャッキー・チェン&成家班
出演:ジャッキー・チェン ジョン・キューザック エイドリアン・ブロディ チェ・シウォン リン・ポン ミカ・ウォン ウィリアム・フォン
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