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風の中の家族(2015/台湾)

 ホウちゃんやヤンちゃんより上の世代で、台湾映画界の大御所である王童監督の最新作『風の中の家族』。福岡映画祭などで作品は上映されてきたけど、意外にもこれでTIFF初登場。そしてワタシ的にも初王童作品。
お馴染み王家衛のとこの澤東がマネージメントしている『共犯』のアリス・クーが出演していることもあり、澤東のFBページでたびたび取り上げられていたのだけど…どうみてもこれ、某三丁目のなんたらっぽくない?と思わせられるのであった。その証拠はこのポスター。

 しかし、肝心の映画はあれみたいなノスタルジアなんて微塵も感じられない、第二次大戦直後の国共内戦から始まる骨太の歴史大作であった。

 国共内戦下の中国大陸。国民党兵士の盛鵬連長(トニー・ヤン)と部下の范(ジョージ・フー)、順子(李曉川)は、家族を失い、名前も持たない少年と出会う。3人の父親に育てられたという呂布の故事から盛は少年を奉先と名付け、連れて逃げることにする。折しも戦況は共産党に有利に働き、4人は国民党の撤退とともに台湾へ。左肩を負傷した盛は除隊し、奉先を連れて台北に向かうが、なんと范と順子も軍から脱走。4人は大稻埕のドブ川のほとりにあるあばら家を借り、共同生活を始める。
 力仕事のできない盛は車夫を始め、范は団扇作りで生活費を稼ぐ。順子は炊事兵のキャリアを活かし、牛肉麺の屋台を出すが、評判はイマイチ。ある日、いたずらで奉先たちが汁に香辛料を大量に混ぜたところ、客に褒められる。順子は近所で屋台を出す阿玉(アリス・クー)にひかれていく。
 また、順子の牛肉麺の評判に引かれて大稻埕にやって来た邱香(ヘイデン・クオ)は、ここで一緒の船に乗ってきた盛と奉先に再会する。奉先と同い年の妹邱梅も再会を喜び、奉先は姉妹の家でピアノを習うことになる。
貧しくとも一生懸命暮らす4人だが、決して楽しいことばかりではない。范は生活に不満を漏らすようになり、順子と阿玉の結婚でついに我慢の限界を迎える。盛は元上司を介して台中の山間部に農地を提供してもらい、范にそこで働くことを勧めた。また、奉先が國中に進学した頃、近所で火災が発生し、子供を救おうとして炎の中に飛び込んだ順子が命を落とす。
 邱香は外国留学を勧められたが、それは見合い同様のものだった。盛に想いを寄せていることを知っている奉先(メイソン・リー)と邱梅(アンバー・クオ)は、盛と邱香を会わせるが、大陸に残した妻と子供を忘れられない彼はその思いに応えられない。そして、左派の学者であった姉妹の父親が白色テロ首謀の疑いをかけられて逮捕され、一家は台北から姿を消す。
 それから10年後、盛たちは大稻埕から古亭に居を移し、盛は阿玉の店を手伝っていた。学校を出て印刷工にはなったものの、西門で遊びまわっていた奉先は、郵便局で働く邱梅に再会するー。

 描かれる時代は1949年から2009年ごろまで。ということは、『悲情城市』ラストから牯嶺街、そして『好男好女』までかつてホウちゃんやヤンちゃんが描いてきた台湾現代史をほぼ全てカバーする。直木賞受賞の小説『流』とも後半はかなり被るし、東アジアに視野を広げたら、今年日本公開された韓国映画『国際市場で逢いましょう』の時代も重なる。
 最近は『セデック・バレ』『KANO』などの先住民や本省人の側に立つ歴史を描く作品が多く登場しているが、そういえば外省人の歴史は詳しくは知らなかった。牯嶺街は外省人子弟が主人公となるけど、それは背景であってメインになることはなかったから。『流』も外省人の家族の物語だったからタイミングもよかったし、非常に興味深く観た。
 『三丁目の夕日』も合わせて、アジアの20世紀後半史を描く作品は家族がその中心になることが多いけど、この作品がユニークなのは、全く血縁のないものが家族として寄り添うこと。奉先は三人の兵士たちをそれぞれお父さんと呼び、順子亡き後も彼らと暮らす阿玉をお母さんと呼ぶ。寡婦となった阿玉は盛にも心を寄せるけど、彼はやはり大陸の妻のことを思って拒否してしまう。それによって阿玉は彼らの元を去るのだけど、奉先にとって彼女も親。だから、クライマックスの結婚式で招待する。血がつながらなくても、関係がギクシャクしても、共に暮らし苦難も乗り越えればそれは家族なのである。このような描写は王童さんが多くの元兵士への取材を重ねた上で作り上げたようだけど(参考として公式インタビューを)、実際あったかもしれないなあ、とは思わされる。



 そういえば当日のQ&Aでは上海で上映された時のことなどにも触れられていて、当時を知らない人にも大変好評だったと聞く。そこは素直に観たんだろうなって思う。
 まあ、複雑な台湾史の一面を知るにはいい作品だったけど、質としては?というと…意外と大味?(こらこら)でも、観られてよかったですよ。重ねて言いますが。

キャストはもちろん、全員若手。
特に盛を演じたトニー・ヤンは、『祝宴!シェフ』で開いた新境地に続き、また新たな一歩を踏み出した感がある。30年以上に渡る物語なので、話が進むにつれて当然どんどん老けていくのだが、実は外見的にはあまり老けない(笑)。だけど、ちゃんとその年代相応の重みを演技に加えていくのだ。そこに思わず膝を打ちたくなった。いやあ、『僕の恋、彼の秘密』『ブラッドブラザーズ 天堂口』も遥か彼方なのね…。弟分の2人もいい味出してました。
 女性陣では、アリス・クーがよかったかな。『共犯』より出番が多かったから印象深かったってのもあるけど。邱家の姉妹を演じたヘイデン嬢&アンバーちゃんは同じ郭性だけど、調べてみたら別に姉妹じゃなくて、ヘイデン嬢はハーフのモデルさんなのね。
 加えて驚いたのが、青年期の奉先を演じた李淳ことメイソン・リーくん。なんと李安さんの息子さん!『ハングオーバー!!』の2作目に出ていたらしいが、すまん未見である。生粋のABCなので、國語は全く喋れなく猛特訓したとか。そうね、伊藤ちびノリだー淳史くんに似てるってのには同意します。今後も中華電影に登場してきそうだね、李淳くんは。



 まあ、あまりにもド直球のエンタメ系歴史大作なので、映画祭でかけるには大味かもって意見もわかるけど、こういう作品は確実に一般公開は低そうな気がするし、映画祭で上映する意義は大いにあるでしょう。映画は文化や歴史を知るのには絶好なメディアだしね。

原題&英題:風中家族(When the Wind Settles)
監督&脚本:ワン・トン 編集:リャオ・チンソン 音響:トゥー・ドゥーチー
出演:トニー・ヤン アンバー・クオ ヘイデン・クオ メイソン・リー アンバー・クオ アリス・クー ジョージ・フー リー・シャオチュアン

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