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レイジー・ヘイジー・クレイジー(2015/香港)

 世界中で映画祭があると、いつも楽しみにしているのが河北新報サイトの連載コラム「シネマに包まれて―映画祭報告」。アジア映画のプログラミングを一手に引き受ける石坂健治さん(得意分野は中央アジア&中東とのこと)のインタビューをふむふむと読んでいて、思わず遠い目になってしまった。
 そうか、パンちゃんの作品が日本に紹介されて、もう10年が過ぎちゃったのよね…。それなら彼の弟子がメガホンを取るのは自然の流れだよなあって。

 今年のパンちゃん作品は、TIFF提携企画の東京中国映画週間で、大陸で撮った最新作『愛のカケヒキ』が、その前の『アバディーン』が大阪アジアンでそれぞれ上映されている。その勢いにのりプロデューサーとしてTIFFに持ってきたのは、『恋の紫煙2』『低俗喜劇』の脚本を書いたロック・イーサム改めジョディ・ロックの初監督作『レイジー・ヘイジー・クレイジー』

 新界の学校に通うメガネのトレイシー(アシーナ・クォック)、ボブカットのアリス(フィッシュ・リウ)、茶髪のクロエ(コーイー・マック)の女子高生三人組。仲よく学校生活を送る一方、それぞれ売春をしている。両親がそれぞれ海外で別居しているアリスは、他の生徒から安マンと陰口を言われるが、生活のためと割り切ってしまう。祖母(スーザン・ショウ)と姉(ダダ・チャン)との生活に窮屈さを感じ、衝動的に犬を買ってしまったトレイシーはアリスの家に転がりこみ、クロエと共に生活を始める。
 クロエの紹介で売春クラブの合コンに参加したトレイシーは、その場の雰囲気に馴染めなくなって飛び出してしまうが、参加者の会社社長レイモンド(グレゴリー・ウォン)に気遣われ、優しくされる。その後、実家に戻ってコンドームを見つけられてしまい、祖母に責められた彼女レイモンドの家に行き、彼と寝てしまう。
 その一方で、三人組はクラスメイトのアンドリューに熱を上げていた。彼と一番仲がよかったのはクロエだが、一番夢中になったのはトレイシーだった。しかしアンドリューと深い関係にあったのはアリスであり、それを知ってショックを受けたトレイシーは…。


左から、トレイシー役のアシーナ、アリス役のフィッシュ、クロエ役のコーイー。
TIFFでの上映がワールドプレミアでした。

ぶっちゃけ言ってしまえば、援助交際女子高生の話である。だけど、援交という言葉は使いたくなかった。どんな年齢であっても、体を売れば年齢性別関係なく売春は売春で、オヤジな連中が援交なんていう生温い言葉で言い換えて一般化されるのはなんかやーな感じなもんで。まあ、売春が援交と言い換えられるようになったのは、ワタシが社会人になって間もなくだったし、体を売ることを考えるといろいろ解せないと当時は思ったもんな。
そんなわけで、援交という言葉や売春には実際には抵抗感はあるのだが(実際、体を売るほど困ってなかったし、自信なかったし…っておいおい)、この映画で登場する売春にはそこまで抵抗感を持たない。だって実話を基にしたなどと言われても、あくまでもフィクションだから。


左からアシーナ、パンちゃん、ジョディさん。通訳は安定の周さん。

 売春を扱った映画は香港でも数多い。そういえば今年の春に大阪アジアンで上映されたハーマン・ヤウ監督の『セーラ』も売春を扱った話だっけか(すいません未見なもんで。厳密に言うとかつて若いころに家庭で虐待され、経済援助を受けていた女性の話、だそうです)。
 こういうものだとどうしても後ろ暗くなったり、イタい部分を見せられたりしそうなのだが、実はこの映画にはそういうものを全く感じなかった。それは主人公三人組のキャラの絶妙さもあるし、ガーリーさをもちながらも、実はその斜め上をいく生の18歳女子の姿をストレートに表現した大胆な演出があったからだろうと思う。
 だってさー、三點露出が御法度な香港映画界でヌードを見せるだけでも大騒ぎなのに、おぱーい(ふざけた言い方ですんまそん)どころかヘアまで!オールヌードまで見せてしまうわ、それはセックスシーンではなくて白昼の屋上でだったりするし、「タンポン抜けないんだけどー」とか「仲がいいと生理も一緒に始まっちゃうんだよー」なんてのも隠すことなく見せてしまう。こういう感覚、邦画でも多少似たようなものがあったなと思ったら、安藤桃子監督がデビュー作でやってたなあ、と。ちなみにこの映画
 そんなわけでいい意味であけすけで、ちっともいやらしさや悲壮感を覚えない。むしろ共感すら抱きたくなったよ。あ、言っておきますけど意見には個人差がありますよ。人によっては売春が受け入れ難い人だっているだろうし。

 ワールドプレミア上映だったので、質問はひとつしか受け付けられなかったのだが、そのひとつに当たったので、「初監督においてこれだけは譲れない!と思ったことは?」と質問したところ、ジョディさんの言葉には眼から鱗だった。こちらにも載っているけど、「女性が裸でいるのは、通常ならセックスシーンがほとんどである。でも、そうしたくはなかった。ワタシは裸のシーンを昼間の光のなかで撮ることで、裸は日常の中に普通にあるもので、女の子たちには自分のカラダが自分のものとしてどう受け入れるか意識してほしいと思った」と答えていた。
 カラダも心も自分のもの。生活のためとか興味本位でカラダを売っても、それはセックスの相手のものじゃなくてあくまでも自分のもの。心ならむしろそれ以上に大事。男と寝ることを繰り返しても、夢中になるのはクラスのイケてる男子だし、どんなに性戯が上達しようとも、恋をすれば心はときめく。アンドリューをめぐってさまざまな思惑を繰り広げ、トレイシーがやっとのことで彼に近づいてしでかすある行為は滑稽には見えるけど、アレをやられたらさすがに退くだろうし、拒否されればショックだろうな、とはちょっと思ったけど、イタさまでは思えなかったな。いや、30代(多分ね)男子が書いたこの感想を読んでて、まあオトコ目線ならそう思わざるをえないんだろうなって感じたんだけど(でも参考になりましたわ)


ジョディさんはキャスケットがよく似合ってて、長身でかっこよい女子。でもまだ若いのよねー。

 ただ、彼女たちの結びつきは男ぐらいで揺らぐことはない。友情が愛で壊れることはない。たまに仲違いをしたりはするけど、なんのかの言いつつもすぐに仲直りする。アリスとクロエの間には、どこか愛情に近い友情が発生したりする。そんな感じの、まさに女子会的に突き進む三人組には、ハラハラさせられながらも愛おしさを感じたものだ。



 メガネを掛けても外してもかわいいアシーナ、ボブカットの美少女フィッシュ、いかにもギャルだけど大人っぽい(だって24歳だものー)のコーイーの3人組は、オーディションで選ばれたモデル出身とのこと。トレイシーの姉役で久々に顔を見たダダちゃんと同じように、映画デビューでかなり大胆な演技が求められたけど、若手俳優不在の香港で、なんとか生き残ってもらいたいものである。ローカル香港映画でしっかり出て、中華圏進出はその後でもいいから、まずは地元で!
 トレイシーをヴァージンブレイクさせてしまう(としか思えなかったよ)罪な男、レイモンドはパンちゃん組俳優にして、NHKやWOWOWのドラマ出演の経験があるグレゴリー。相変わらずええ男だ。ええ男だがスケベだ。スケベだけど王子様だ。以上(おいおい)
 トレイシーがバイトするメイド喫茶の面々も面白い。徐天佑が執事やってると思えば、マダム(!)役がデレクで似合ってるんだけど衝撃的。恋の紫煙2でお馴染み「有名人に似ている一般人」枠はなんと世界の蒼井そら先生(敬意を込めての敬称)だが、特にそこには全くちっとも驚かなかったのは異常に偏っているワタシだからですか?どうですか?

 ま、ワタシはおもいっきり楽しんだし、気に入った作品なんだけど、人によっては抵抗感もあるだろうし、オンナの出来損ないみたいなワタシの感想はオトコの人たちとは明らかに違うだろうしなあ。ま、ワタシの心もカラダも感想も、ワタシのものですからね、とオチを無理やり付けてみたりするのでしたよ、あはははは。
 18歳よ、永遠に!>とおばちゃんが言っても意味がない


プレミア鑑賞者へのプレゼントは、日本人漫画家に描き下ろしてもらったビジュアルのペーパーファイル。中は三人組の衝撃フォトがあしらわれているけど、見せてやらなーい(笑)

原題:同班同學
監督&脚本:ジョディ・ロック 製作:パン・ホーチョン 撮影:ジャム・ヤウ   編集:ウェンダース・リー
出演:アシーナ・クォック フィッシュ・リウ コーイー・マック グレゴリー・ウォン ダダ・チャン チョイ・ティンヤウ デレク・ツァン 蒼井そら スーザン・ショウ

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