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恐怖分子(1986/台湾)

かなり長い間blogを書いてきたが、意外にもこれが初めて感想を書くことになったエドワード・ヤン(以下ヤンちゃん)監督作品。考えてみれば、最後の作品だった『ヤンヤン 夏の思い出』が2000年製作で、2007年に亡くなるまでの間、旧作も観直していなかったのだった。
一番好きなのが『牯嶺街少年殺人事件』なのだが、これは日本では権利問題で再上映もソフト化が当分不可能だそうなので日本語字幕で再見できないのが悔しい。

そんなわけで早いところそのトラブルを解決して再上映を!と長年思い続けていたのだが、今から29年前に製作されたヤンちゃんの長編第3作『恐怖分子』が修復されて日本で再公開。しかも中華電影が滅多に来ない我が街にまで来てくれた。これは嬉しい。
ちなみに18年前のみちのく国際ミステリー映画祭で上映されて以来の再見となります。


兵役を目前にした青年カメラマン小強(馬邵君)は夜明けに銃声を聞く。恋人(黄嘉晴)をおいてカメラをもって出かけた彼が見たのは、路上に倒れる男と、賭場のあるアパートの2階から男と一緒に逃げ出そうとするショートカットの少女、淑安(王安)。小強は立て続けにシャッターを切る。それ以来、小強はファインダーに収まった淑安に心を奪われてしまう。
母親に幽閉された淑安は、電話帳を使ってあちこちにいたずら電話をしていた。ある日、不意につながった相手に、彼女は賭場のあるアパートを訪ねるように依頼する。電話を取ったのは小説家の周郁芬(コラ・ミャオ)。医師の夫李立中(李立群)と暮らす彼女だが、平凡な生活の中で深刻なスランプに陥っていた。旧友の沈(金士傑)は彼女の心配をして仕事を用意するが、二人は不倫の関係に陥っていた。そんな彼女が電話の指示で尋ねた先には、その部屋を借りて暗室にしていた小強がいた。そして、郁芬は数日失踪する…。
淑安は隙を見て家から逃げ出し、西門町で男を引っ掛けて金を巻き上げようとして刺してしまう。あの賭場まで逃げてきた彼女は小強と出会う。恋い焦がれた相手にやっと出会えた彼は彼女を泊めるが、淑安は彼のカメラを盗んで馴染みの質屋に売りに行く。すると、あの賭場で別れて警察に捕まった恋人の大順(游安順)が釈放されたという情報を得る…。
郁芬の小説が賞を受賞し、彼女は立中に離婚を切り出す。驚く彼に追い打ちをかけるように悲報が届く。どうしようもなくなった彼は、ある行動に出ることに…。

18年前に観た時は…あー、残念ながら覚えてない(泣)。まだ若かったし、映画観始めて間もない頃だったから、のめり込めずに終わった感が強かったんだよな。
でも、今観るとこの映画の面白さが充分に理解できる。必要最小限の台詞、偶然の出会いがドラマを転がし、悲劇に至らしめる展開、若い俳優に積極的にフォーカスする演出、確かにヤンちゃんの映画ってこういうのだったよな、と思い出させるのも早かった。都会で生きる人間の孤独を描くといえばミンリャンも思い出すけど、彼とも全然違うってのもよくわかるしね。ミンリャン作品はどこかウェットで、そこが魅力だと思うんだけど、ヤンちゃんはわりとドライな感じがする。米国で映画を学んで、外から台湾を観ていたというのもあるのかもしれないけど、それも一概にいえないよな。まあ、個性なんだと思う。

この映画の再映に寄せる評論やエッセイを読むと、ニューシネマ的な観点から語られているのが多いし、実際そうだからねえ、って感じでついついなんちゃってシネフィルになっちゃうんだけど、実はそういう面で(てか、なった気して)あまり語りたくないんだよね。手塚治虫を愛し、日本にも心を寄せていたことを知っているし、もっとカジュアルな面で彼を見たいよなって思うの…なーんて言ってみても、もっと長生きして映画を撮ってもらいたかったなってのが正直な気持ちでしょうか。生意気なこと言っちゃってますけどね。

あと、30年前の台北の風景にはやっぱり懐かしさを覚えたな。数年後に自分が留学することもあるんだけど、直接画面には映らないものの、西門町の場面にはちょっと歩けば中華商場が存在しているのを感じるからかな。
と、突然そんなことを言い出したのは、最近『歩道橋の魔術師』と『流』という、中華商場が出てくる小説を立て続けに読んだからでした(笑)。この2冊の小説については、近々感想を書きますね、とここで予告しておきます。

英題:Terrorizers
監督&脚本:エドワード・ヤン 脚本:シャオ・イエ 撮影:チャン・ジャン 編集:リャオ・チンソン 音声:トゥー・ドゥーチー
出演:コラ・ミャオ リー・リーチュン チン・シージエ マー・シャオチュン ワン・アン ヨウ・アンシュン

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