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2015年9月

ブレイド・マスター(2014/中国)

今月の楽しみは、我らがホウちゃん待望の新作『黒衣の刺客』の公開!
…とは言っても、全国数カ所での公開スタート、今現在、東北での公開は未定です(泣)。そんなわけで、連休の上京時に新宿まで観に行きます。
主演は言わずもがな、ホウちゃん作品の常連となったすーちー&張震。
台湾生まれで同い年のこの二人、デビュー&ブレイク時からずっと活躍を見守ってきたけど、もうすっかりベテランになったのね…とまたおばちゃんくさくしみじみしちゃう秋の始まり。

さて、昨年の東京中国映画週間では『ブラザーフッド』という題で上映されていた、張震主演の中国映画『ブレイド・マスター』。これが初見になるけど、題名変えなくてもいいのに、残念だわーと思って、この夏から中華電影の特集上映を六本木から引き継いだシネマート新宿まで観に行った。

 明代末期に結成された皇帝直属の禁衛軍の一つ、錦衣衛。義兄弟の契りを交わした沈煉(張震)、盧剣星(王千源)、斬一川(李東学)の三人は、前宦官の魏忠賢(金士傑)の暗殺を依頼される。沈煉は潜伏先の宿屋で魏忠賢を発見して追い詰めたが、金と引き換えに魏忠賢を逃し、剣星たちには自分が斬ったと報告する。
 暗殺を依頼した現宦官の趙靖忠(聶遠)は、実は魏忠賢の義理の息子。義父を殺すことで宮廷で確固たる地位を築くことを望み、そのために錦衣衛たちを利用する。一方、三人の義兄弟もそれぞれの悩みを抱えていた。剣星は昇進を望み、沈煉は妓女の妙彤(劉詩詩)に惹かれ、身請けして外に出してやりたいと考えていた。そして盗賊の過去を隠して錦衣衛に入った一川にの目の前には、かつて兄貴分だった丁修(周一圍)が現れて自分のところに戻るようにと誘いかけるのだった。

 錦衣衛については、ド兄さんの『処刑剣』での感想を参考のこと。
明代に設立された秘密警察というのが一番とらえやすいんだろうけど、飛魚服という制服に身を包んで、複数で行動していたというところから、日本の歴史もので言えば新選組が幕府直属の機関となったようなものだと考えればいいのか?>ちなみに新選組には興味ないので違ってたらごめんなさい(こらこら)。
 この組織が世間からの嫌われ者になっているのは両作ともにしっかり描かれていて、それだからこそ、主人公の三人はその汚名をまとって任務を遂行する。しかし、宮廷の裏で起こる陰謀に否応なく巻き込まれ、傷つき倒れていく。

 張震自身が『グランド・マスター』での役作りのために八極拳を習得し、武道に長けて来たこともあってか、アクションがワイヤーに頼らないリアル感があっていい。ド兄さんの時は鉄の帽子&フロックコート風だった飛魚服も、凝ったデザインをあしらってるスマートなデザインで、これも素敵だった。昨年の金馬奨では最優秀造形デザインを受賞しているそうで、大いに納得。
 三兄弟もバランスが取れた人選だとは思う。剣星役の王千源は美形じゃないが(岸谷五朗説もわかるが、それに柄本父子も少し入ってる気がする)、まあ血がつながってないから許してあげよう。李東学は名前をよく見かける中国の若手なので、三男坊のポジションにはぴったり。でもかわいそうなんだよねー。
 そして、張震のクールさは際立ってますねー。アクションもだけど、立ち姿も綺麗に撮ってもらえていいねえ。

 だけどね、彼と劉詩詩演じる妓女のくだりは、もっとウェイトを減らしてもよかったよ。彼女が沈煉と昔からの因縁があったことは割と早いうちから気づけるのだけど、恋バナは一川と、彼が懇意にする医師の娘張嫣(葉青)くらいでよかったんじゃないかな。その筋の分量が多かったので、やや散漫な印象があったかもしれない。決して悪い出来じゃなかったからね。

原題&英題:繍春刀(Brotherfood of blades)
製作:テレンス・チャン 監督&脚本:ルー・ヤン 
出演:チャン・チェン リウ・シーシー ワン・チエンユエン リー・トンシュエ ニエ・ユエン チョウ・イーウェイ イエ・チン ジン・シージエ 

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共犯(2014/台湾)

 昨年のTIFFで見逃していた、『光にふれる』のチャン・ロンジー監督の新作『共犯』が、この夏東京で公開。
製作はもちろん、王家衛んとこの澤東電影公司。
帰省のついでに観てきましたよ。


動画のサムネイルが閲覧注意状態っぽい…ごめんねー。

 明仁高中に通う女子生徒、夏薇喬(姚愛寗)が路地裏で頭から血を流して死んでいた。彼女を発見したのは、同じ学校に通ういじめられっ子の黄立淮(巫建和)、オラオラ系の葉一凱(鄭開元)、おとなしい林永群(鄧育凱)の同学年の男子生徒。これまで全く接点がなかったこの三人は、薇喬が死んだ原因を一緒に探ることに決め、facebookのメッセージで連絡をとりあう。そこから彼らは、薇喬の思いもよらない一面を見ることになり、母親(李烈)が不在の薇喬のマンションに無断で立ち入るが、彼女の部屋で立淮が見つけたメモには、「朱静怡(温卓菱)、全部アンタのせいよ」と書いてあった。そこから、薇喬は静怡にいじめられていたと判断した三人は、静怡を学校の裏山に呼び出し、痛い目に遭わせる。
 薇喬の復讐を果たした三人は、興奮のあまり裏山の小さな湖ではしゃぐ。しかし、永群が溺れてしまい、立淮がそれを助けようとして逆に溺れて死んでしまう。
 立淮の遺体が引き上げられて間もなく、明仁高中の生徒の間では、立淮は一凱にいじめられていたとfacebookで拡散されるようになった。そして、永群は立淮の年子の妹・詠臻(サニー・ホン)に兄の死の真実を一緒に探ってほしいと頼まれ、静怡は一凱に近づき、驚愕の事実を彼に告げる…。 



ポスター二種。上がオリジナル@TIFF。下は日本公開版。トリミングされているけど、血だけでもインパクト大。

 子供たち(ごめん、あえてこう言いますわ)の心情は大人がとやかく言えないものである。それは自分が本業での経験から学んだものである。もちろん、いじめは許せないし、解決すべきものだ。だけど、子供たちの死にまつわる背景は、単純なものから深い闇をはらんだものまで本当に多々ある。だから、大人は安易にそれを詮索したり、守ったりできないのではないのか。子供のトラブルは子供たちの間で解決できないか。そんなことをよく思う。
…そう簡単に解決できないから、若い子たちが命を失う事件が続いているわけなのだが。

 女子生徒の死の現場にたまたま居合わせた三人組は、同学年という共通点以外は全く接点がない。ガキ大将っぽいオラオラくん、メガネの真面目くん、そして小柄で控えめないじめられっ子。学校での階層(『九月』で桐島に触れたけど、アレにも出てきたいわゆるスクールカーストね)に当てはめても、決して出会いそうもない三人がこの異常な現場で出会ってしまったのなら、階層を超えて結びつき、協力して彼女の死の真相を探ることになるのは自然なことだろう。普段の生活を続ける中でfbで連絡を取り、謎解きに夢中になっていた間は、三人は本当にかけがえない仲間になれたんだと思う。だけど、彼らのたどり着いた結論と、その後に訪れた悲劇が物語を思いもよらない方向に持っていき、真実を明らかにさせる。それはたった三人の世界から事件が描かれた前半とは打って変わって、外からの視点を入れることで、三人の学校での位置づけをはっきりとさせ、彼らの考えとは違う現実を見せつけられたようだった。

 そこで浮かび上がった真実のキーワードは「孤独」。その「孤独」が彼ら/彼女に心のなかで叫ばせ、孤独から抜け出すことを願わせ、そして悲劇をも呼び込んだのか、そんなふうに読み取ったのだった。
 いじめっ子もいじめられっ子も傍観者も、決してそれが本質じゃない。自分はそうじゃない、真実を知ってほしい、自分をわかってほしいというのを、男子三人組も、死んでいった薇喬も、もしかしたら静怡も詠臻も感じていたのかもしれない。特にそれが強かったのが、立淮だったんだろう。だから彼は、事件を調査していくうちに、あのような事をしでかしてしまったのか。あるいは、薇喬に共鳴して事を起こしてしまったのか。これは、もう一度観た時にヒントが見つかるかもしれない。

 謎も多く、どこか重いものも残る後味(決して悪いというわけではない)。だけど、それだからこそ、かつての自分の学生時代を思い出したり、現代日本の中高生事情にも通じる心情を感じる。刺激が強いシーンもあるけど、高校生くらいならこれを観て孤独について、いじめと友情についてなど、映画をめぐって思い浮かぶあれこれについて考える力もあるんじゃないかな。

 あ、flumpoolが中国語で歌う主題歌もよかったですよ。

英題:Partners in crime
監督:チャン・ロンジー 製作:チェン・ホンユエン&ジャッキー・パン 原作&脚本:シア・ペア&ウーヌーヌー
出演:ウー・チェンホー チェン・カイユエン トン・ユンカイ ヤオ・アイニン ウェン・チェンリン サニー・ホン アリス・クー リー・リエ

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