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妻への家路(2014/中国)

 以前も書いた気がするけど、ここ15年位(というか『英雄』以降)の張藝謀は、急激にエンタメへと傾斜していったので、それを喜んでいいのか悩んでいいのか、複雑な気分にさせられたことがある。それと同時に中国映画界も大きく変化し、香港映画をも飲み込もうとしているので、さらに輪をかけて…と話を逸しちゃダメですね。

 4年前の『サンザシの樹の下で』以来のイーモウ作品である『妻への家路』
この間にはこういう映画もありますが…、まあ、今の状況じゃ当分日本語字幕つきじゃ見られないでしょうねー。主演はダークナイトで、日本人キャストも悪くないけど。そういえば公式サイトでもスルーされてるわ(汗)。
 で、その作品にも携わったゲリン・ヤン(この表記いまだに慣れないのだが、まあ仕方がない)の原作を映画化したのがこれだが、『王妃の紋章』以来8年ぶりのコン・リー姐に、問答無用の名優・陳道明さんが夫婦を演じると聞けば、これはかなりいいものになるのでは?と思ったものだった。

 時は文革後期。教師をしている馮婉玉(コン・リー)の元に、50年代に右派分子として捕らえられていた夫の陸焉識(陳道明)が強制労働先から逃げてきた。アパートの扉越しに再会する二人だったが、革命バレエ団に所属する娘の丹丹(張慧雯)が焉識のことを当局に密告する。翌日、焉識に会いに行った婉玉だったが、目の前で夫が当局に捕らわれ、その騒ぎの中で転倒してしまう。
 数年後の1977年、焉識は解放されて婉玉のもとに戻ったが、自分を見てひどく怯える彼女の姿に衝撃を受ける。婉玉は記憶障害を起こし、焉識の記憶をすべて失くしてしまっていた。自分の密告が元で母に負い目を感じ、母から離れてしまった丹丹の助けを借りて、焉識はアパートの向かいに住み、他人のふりをして婉玉の支えになることにした。

 多くの人が言ってたことだけど、ここしばらくの大作路線から、イーモウが本来のフィールドに戻ってきたと感じさせられる作品だった。
 文革が人々に起こした影響はこれまでの中国映画にも繰り返し描かれてきたが、イーモウや陳凱歌から下の世代が映画界に現れてくると、その見方は全く変わってくるし、時代の要求によって描写も変わってくる。前作でも文革には触れていたけど、それほど強いものには思えなかった。
 今回もテーマは夫婦・家族の絆なので、一見して文革の描写は薄いのだが、それであっても文革が家族を壊す悲しみは十分に伝わる。夫の逃亡を職場で聞いて、動揺しながらも上の指示に従わざるをえない婉玉、憧れの「紅色娘子軍」のプリマになれるかもしれないという欲望にかられて実の父親を密告する丹丹。こういう残酷さが当時はどこでも起こっていたということをしっかり描いてくれている。それを受けて再生にむかう家族を描きつつ、婉玉の記憶障害がそれを阻む壁となることも、それを安易に回復させない結末も残酷ではある。だけど、希望は全く失われてはいないことだってわかるので、決して切なく悲しい物語じゃないし、こういうのが本来のイーモウ作品だよなと改めて思った。

 英雄以来のイーモウ作品登板になる(『一人と八人』にも出てたのか)道明さんと、コン・リーの夫婦役はもう言うことなし。道明さんは秦王様や終極無間のシェンもいいけど、市井の中年役も実に味わい深い。『唐山大地震』でも市井の兵士を演じていたけど、まあ出番はあまり多くなかったので、こちらの方が心に来る。
 コン・リー姐はすっぴんでも老け役でも何でもござれになっていて、さすがにもうベテランだしねえ…と感慨深いものを抱いたが、かつて「中国の山口百恵」と呼ばれていたことを久々に思い出したりする。まあ、お互い歳をとりましたよね。
 ネットメディアで盛んに「イーモウガール」と書かれていたのはどうよ?と本気で思うホイウェン小姐。予告編でも見せている綺麗な脚にも目が行ったけど、結構後ろ暗い役どころを演じるにはどう取り組んだんだろうか?というのも多少気になった。今後はどんな女優になっていくのだか。

 そういえば自分、わりとイーモウ作品には昔からキッツく観ていたのは以前からも書いていた通りなんだけど、今回はあまりそういう観点は持てず、比較的好意をもって観ることができた。…繰り返しちゃうけど、やっぱり歳をとったからかしらねー。

原題&英題:歸來(Coming Home)
監督:チャン・イーモウ 原作:ゲリン・ヤン
出演:チェン・ダオミン コン・リー チャン・ホイウェン  

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