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EXIT -エグジット-(2014/台湾)

 意見には個人差があるので、話半分に聞いてほしいのだが(笑)、かつての台湾の女優の活動にはだいたい2パターンあった。香港映画でブレイクするのと、台湾での活動を中心に置くものと。前者はブリジット・リン、ジョイ・ウォン、ン・シンリン、スー・チー、カリーナ・ラムなどの多数で、後者がヤン・クイメイ、チェン・シャンチーなどか。最近ではバーヴィー・スーやグイ・ルンメイなど、ドラマや台湾映画で高く評価されてから香港や大陸に進出する女優も増えてきているので、もうはっきりと線引できるわけではないし、ジュディ・オングやビビアン・スーなど日本で評価されるタレントもいるから、思った以上に多様である。

 そんななかでヤン・クイメイやチェン・シャンチーは、エドワード・ヤンやツァイ・ミンリャンが90年代に高く評価されたことで顔と名前を覚えた台湾女優である。特にシャンチーは、『エドワード・ヤンの恋愛時代』でヒロインを演じた時、「台湾のオードリー・ヘップバーン」と呼ばれたキュートさが強く印象に残った。そこからミンリャン作品の常連となって、シャオカンとあーんなことしたりこーんなことやらされたりだったから、ああ…なんてつい遠い目をしてしまいましたねえ。

 その『恋愛時代』から20年近く経ち、台湾映画は長い低迷期があったものの、21世紀初頭からのTVドラマのアジア的人気をうけてのここ10年の大復活に至るわけであるが、その間にはヤンちゃんがこの世を去り、ミンリャンが長編映画の製作を休止している。一昨年の『郊遊/ピクニック』で姿を見られたのは嬉しかったけど、そういえばシャンチーの主演作はあまり観てこなかった気がする。
 例のシネマート六本木閉館企画の一つに、台湾映画特集があったのだが、特集限定新作上映として、『祝宴!シェフ』の撮影監督が手がけたこの作品が上映されたので、観に行った。その時は、決してシャンチー目当てでってわけじゃなかったんだよね。


 玲子(リンズ/シャンチー)は高雄に住む40代半ばの裁縫師。夫は上海出張から帰らず、中学生の娘も彼氏を作って家を出たまま、帰ってこない。さらに勤めていた裁縫工場を解雇されたので、病院に入院した義母の介護をすることになった。
 ある日、義母の向かいのベッドに意識不明の重症患者が運ばれた。四肢をグルグル巻きにされ、目も塞がれた若い男・張(イーストン・ドン)だ。全身の痛みに苦しみ、時折恐ろしい呻き声を上げる。見舞いに来るものはだれもいない。義母の介護の傍ら、玲子はだれもいないのを見計らって、男の身体を拭き、痛みを和らげようとする。その秘密の介護を始めたことから、彼女の心に忘れていたものが立ち上がってきて…。

 セリフは少なく、登場人物も限られ、描かれる内容も非常に内省的。こう言うとまるでミンリャンじゃん、と言いたくなるが、上映時間も短いし、極端な長回しもない。あ、もしかしてヤンちゃんもこんな感じの作品を作ってなかったっけか?台詞の応酬やらを面白いと考えてしまい、こういう静かな作品を退屈とかつまらないとか言ってしまうのは実にもったいないものだ。
 その静けさの中で、玲子がどう日々の生活を過ごし、その隙間に差し込んできた嵐にいかに心動かされるのかは彼女の仕草や行動が語ってくれる。そう考えたら、アクション映画のようにも観られると思う。それが、若い男性に出会った突然のときめきに自らが封じていた女としての自分をかき乱され、しばしその官能に浸りつつもふとしたことで醒めてしまう話であっても。

 そう、簡単に話せば、崖っぷちの40代人妻の密かな恋の未遂話なんですよ。若いころなら、きっとそれを人ごととして観ていたはず。だけどね、自分もそういう年代になっちゃったんですよ。だからなんだかもういろいろと重なっちゃってもう痛くて切なくて…。
 そして、それをシャンチーがリアルに演じ、心の乱れを細やかに見せてくれるのだから、なおさら心にきてしまったし、昔から彼女を観てきたことを思えば、なんだか遠くまで来てしまったわねえ…と遠い目になってしまったのでした。

 ああ、この感想を書いていたら、久々に『恋愛時代』を観たくなったなあ。
『恐怖分子』は今年になって日本でも再映されたけど、これは観られるのかな?



 

原題:迴光奏鳴曲
監督:チエン・シアン 製作:チェン・パオイン
出演:チェン・シャンチー イーストン・ドン

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