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『民俗学・台湾・国際連盟 柳田國男と新渡戸稲造』佐谷眞木人

☆本blogでは、花巻-台湾間の国際線定期便の就航を熱烈に応援しています。

 『KANO』地元公開記念勝手に熱烈サポート企画も兼ね(だって地元で純粋な台湾映画が2作続いて公開されるのはめったにないことだものー)、岩手と台湾を結ぶものを探していたところ、岩手にまつわる2人について書かれた本が今年初めに出版されたことを知りました。


 幕末の盛岡に生まれ、農政学者として米国で働き、米国で『武士道』を英語で著した後に台湾に渡り、やがて国際連盟の事務次長に就任する新渡戸。彼の生涯を探るため国際連盟(現国連)の本部があるジュネーブに、映画『るろうに剣心』三部作の大友啓史監督が渡った紀行ドキュメンタリー「ジュネーヴの星」が、昨年地元の岩手めんこいテレビによって製作されています。なお、大友さんも盛岡のご出身で、NHKでドラマディレクターをされていた頃から、新渡戸の精神を作品に盛り込むことを試みているそうです。

 一方『遠野物語』を著して岩手でのフィールドワークを重ね、日本に民俗学という研究分野を成立させた柳田。その研究姿勢はあくまでも日本国内に向かっているので、13歳年上で国際的な活躍を見せた新渡戸とはあまりにも対照的なため、関わりがないのかと思っていたら、彼もまた農政学を学んでおり、大学卒業後は官僚として農務局に勤務していた。
 この農政学という接点が新渡戸と柳田に出会いをもたらし、新渡戸が提唱した「地方(じかた)学」を研究する「郷土会」の結成と、新渡戸の推薦によって柳田が着任した国際同盟での経験が彼らを決別させ、それぞれに転機をもたらしていく、というのがこの本の簡単な内容。

岩手県は新渡戸の他、後藤新平や伊能嘉矩など、日本統治下の台湾に関わった人物が意外と多い。それを知ったのは、就職で岩手に移住してからだった。それ以前にもともと民俗学に興味を持っており、そのきっかけが当然柳田の『遠野物語』だったりするんですわ。個人的な事情ですが。しかし、新渡戸と柳田を結ぶキーワードにまさか台湾があったとは、これも縁なのかなあ。

 新渡戸が台湾に渡って製糖技術を指導したのは、当時台湾の民政長官を務めていた後藤が同じ岩手(水沢)出身だからというわけでなく、台湾総督府殖産課には新渡戸が卒業した札幌農学校出身者が多く、農政者としての考え方が後藤と似通っていたゆえの起用らしい。そして、これは今まで知らなかったのだが、二人が統治に関しては、台湾独自の殖産体制の構築のために、台湾独自の政策を図るための考えとして分離主義を唱えていただったということらしい。この考え方は人道主義や文化相対主義にも通じるらしいが、あくまで効率上の考えであり、実際は台湾人と日本人は平等であるべきという同化主義を掲げる人たちとは対立したらしい。
  つまり、統治といえば日本人が漢人や台湾原住民を下に見て支配するという考えとは限らなかったってことで、それがあるから台湾統治は他とは違ってうまくいったと言われたのか、と納得したのだが、まあ事情はいろいろあっただろう、ということでこの件はとどめておく。だって変に誤解されそうだからね。政治的意図とか興味ないし、文句言われても困るもん。

   そんなわけで、この台湾経験で新渡戸は植民政策学という、西欧の植民政策とは違う点からの統治を試みる学問を唱え、もう一つは自らの土地の文化や習慣を研究する地方学という学問も生み出した。後者には柳田が大きく関わっていき、これが日本での民俗学となっていったらしい。両者の出会いは柳田が国際連盟の委任統治委員というポストに就くきっかけを生み出したが、新渡戸が自らの経験を西洋でもうまく生かしたのとは対照的に、柳田がジュネーブで目指した理想が西洋的価値観との対立で挫折し、帰国して日本のみで行う一国民俗学にのめり込んでいく…という流れでこの本は執筆されている。

 かなりええ加減な紹介になっているのは、まあ皆さん読んでみてくださいってわけなのですが(笑)、新渡戸と柳田が台湾と国際連盟というキーワードで繋がったことは嬉しかった。新渡戸の台湾政策についてはこれだけではなく、後藤や当時の提督だった児玉源太郎の資料にも当たるべきだろうけど、それは本腰入れなきゃいけないし、それやったら映画観られなくなる(汗)。そして、これもわりと有名なことだろうけど、柳田のいう南方が台湾も含まれていたということで、改めてそのへんを意識してみていいんだなって思ったもんでね。

   いずれにしろ、岩手と台湾を結ぶ共通項は多く、両地が観光だけでなく文化交流などもどんどん進むと今後は面白くなるんじゃないかなーと思うし、そんなローカルな面だけじゃなく『武士道』を揚げなくても、新渡戸の国際感覚は世界を見ていくには十分参考になるものが大きいし、柳田の研究も決してうちにこもるものではなく、外に出ていけるものではないかなとも考えるのですよ。

   こういうところを押さえつつ、今月末に上映される『KANO』を観てみようと思います。いや、そんなに真面目くさってるわけじゃないんだけどね。あはは。
 そしてしつこく言いますが、本blogでは、花巻-台湾間の国際線定期便の就航を心から願っております。
 さらに言いますが、この感想には政治的意図は何もありませんし、反論があっても基本的にスルーしますので、あしからず。

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