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真夜中の五分前(2014/日本・中国)

 昔から映画は国境を越えるものであり、欧米だけじゃなくて日本もアジアで多く合作を作ってきた。日本の映画会社が香港や台湾でロケしたり、日本の技術スタッフが現地で仕事したり中華圏の俳優を出演させたりと方法は様々だったらしく、そういえば李小龍作品は日本の西本正さんがカメラを回してるんだっけ、と過去記事から改めて気づく。このへんはお詳しい方に負けるので、詳細はググってもらえれば(^_^;)。
 ワタシが中華電影にハマった頃もこういうアジアンコラボは積極的に行われていたけど、当時は日本の俳優や音楽家が参加するくらいって感じだったと思う。それでも好きな俳優やスタッフが香港や台湾で仕事するなら嬉しいものだったけど、そんなに好きじゃないとどーでもよかった。☆月とかな(苦笑)。

 この『真夜中の五分前』は『GO』や『世界の中心で、愛をさけぶ』で知られる行定勲監督が、本多孝好による同名の小説を、上海を舞台に移して映画化したもの。すでに大陸などでは公開済み。驚いたのは完全に日中合作で作られたので、自国映画枠での公開ができたとのこと。そして主演が三浦春馬なので、アミューズ上海が製作に加わっていたことも知って、アミューズが昔香港で合作映画に取り組んでいたのを思い出してたりして。kitchenとかね。

 良(三浦春馬)は上海でアンティーク時計の修理工をして暮らしている。住み込みで働いているので、仕事が終わったら近所の屋内プールに泳ぎに行く。そこで彼は美しい女性若藍(劉詩詩)と出会い、贈り物を選んで欲しいと頼まれる。良が提案したのは、自分の店の時計だった。
 それから、良は若藍と瓜二つの一卵性双生児の妹如玫(劉詩詩)とも出逢う。如玫は女優をしていて、映画プロデューサーの天倫(ジョセフ)と婚約していた。控えめで聡明な若藍と華やかで妖艶な如玫と付き合っていくうちに、良は若藍にひかれていく。
しかし、若藍と如玫は旅行先のモーリシャスでクルーザーの事故に遭う。生き残ったのは如玫だった。間もなく如玫と天倫は結婚する。
 それから1年後、良は天倫から連絡をもらう。彼曰く「如玫はもしかして如玫じゃないかもしれない」と。良は久しぶりに如玫と出会うが、確かにすっかり変わってしまっていた…。

Yukisada
岩手日報2014年12月23日付。この記事、web化されてないのが残念。拡大できます。

 行定さんの作品は割とよく観ている。監督作がかなり多いので(これの前に撮った作品が昨年公開されてたし、ドラマや舞台演出もしている。最近はWOWOWのドラマ『平成猿蟹合戦図』や舞台『ブエノスアイレス午前零時』なども)全部は観てないけどね。『GO』『今度は愛妻家』『パレード』が好きかな。
 『南風』の感想にも書いたけど、行定さんはアジア映画のスタッフやキャストを積極的に作品に起用してきたので、いつかはアジアンコラボを手がけるのだろうと思っていた。フィルメックスでのQ&Aや上の新聞記事(写真)でもわかるように、台湾ニューウェーブや王家衛作品に影響を受けていると言われたら大いに納得する。
 今回は中華圏を代表する録音技術師・杜篤之さんを起用。それを先にわかっていたので、サウンドデザインに注意して聞いてみた。セリフは最小限で、がちゃがちゃしていそうな上海が舞台なのにかかわらず、背景の音はけたたましくはない。ジャンクーやホウちゃんの作品にも関わっている、半野喜弘さんの音楽も画面にすっと入り込むような感じでいい。行定さんの映画はあまりおしゃべりな感じではない(『GO』は例外だろうけど)ので、これがいい効果を上げていて、舞台を移してもちゃんと行定さんの映画だとわかるのがいい。

 幼い頃からお互いを交換して生きてきた双子の姉妹のアイデンティティの揺らぎ。如玫は素直に若藍に憧れ、若藍は無邪気な如玫に嫉妬する。そうやって生きてきたのがよくわかるので、事故で一人になってしまった「彼女」は果たして如玫なのか、それとも若藍なのか、と観ている方も混乱する。二人を演じた劉詩詩は姉妹の演じ分けを意識していたそうなので、生き残ったのがどちらなのかというのは何回か観ればきっと分かりそうなんだけど、そのへんはどちらかと決めずに、曖昧なまま観ても無問題だと思う。かつてはこういう余白を残した作りの映画も多かったし、行定さんの昔の作品も思い出してた。一番最初に観た『ひまわり』がこれと同じ感覚だった気がする。
 彼が朝日新聞のインタビューで言われているように、今はわかりやすい映画が求められているので、こういうのは冒険に思われて企画が避けられるのは残念だなーと思う。実際、感想も生き残ったのがどっちか描いて欲しい的なものもよく見かけたけど、そういう見方はちょっと残念。わかりやすいからいいってわけじゃない。もちろんこの良さもわかっている人もいるだろうからね。

 春馬はあまり好みじゃないんだけど、今回は中国語のセリフも頑張っていたし、控えめな役どころで正解。こういうナイーブな男子が中華圏女子にはどう受け入れられたかはわからないけど。劉詩詩はドラマ『宮廷女官若曦(步步驚心)』でブレイクしたのか、そうか。おしとやかな雰囲気がハマっておりました。この作品から名前を中国名に統一したジョセフ(今後もこう呼びます)も手堅かった。やっぱり短髪が似合うよな。

 今までも、越境する日本/アジア映画はあったけど、監督が越境して撮るというのは久しくなかった気がする。日本映画ならなおさらのこと。香港でも韓国の俳優がメインキャストに抜擢されることも増えてきたし、去年観た『危険な関係』もホ・ジノさんが越境した撮ったので、失敗を恐れることなく、日本の映画監督さんはどんどん外に出て行ってもいいと思う。

 面白いことに、同じ東映系で来月公開される永作博美主演の映画『さいはてにて』は、台湾の新人監督が日本で撮ったという作品。これは偶然なんだろうけど、もしかしたら東映もこういう流れでアジアンコラボの可能性を探っているのかな、なんて思ったりした。国同士のいざこざやら周りの雑音など気にせず、今年はどんどんアジアンコラボが進んでもらいたいなーと思ったのでした。

原題&英題:深夜前的五分鐘(Five minute to tomorrow)
監督:行定 勲 原作:本多孝好 脚本:堀泉 杏 音楽:半野喜弘 録音:トゥー・ドゥーチー
出演:三浦春馬 リウ・シーシー チャン・シャオチュアン(ジョセフ・チャン) チャン・イーバイ 

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