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天空からの招待状(2013/台湾)

 現在台湾在住の弟によると、昨年ついに台湾が日本人旅行客の海外渡航先第1位となったらしい。おお、そうか…。そういえば去年の冬に渡台した時、ずいぶん日本人旅行者が多いなーと思ったもんなー、と学生時代にそこに住んでいた自分はついつい感慨深くなったものであった。一緒に暮らした旧友たちもすでにバラバラになってしまったけど、中国とも台湾とも全く縁のない職についてしまった自分が今も台湾を好きでいられるのも奇跡みたいなもんだなあ、とも思うのであった。

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 さて、2年前の後半から昨年前半にかけて台湾や香港で話題になり、大阪アジアン映画祭でも上映されて話題を呼んだのがこの『天空からの招待状』。公務員として航空写真を撮影していたカメラマンのチー・ポーリン監督が、3年の期間をかけてすべて空撮で台湾全島を撮りあげたというドキュメンタリー。製作総指揮は我らのホウちゃん、オリジナルナレーションには呉念眞さん、音楽は『セデック・バレ』のリッキー・ホー、そして挿入歌は林慶台さんとバックアップも鉄壁。さらに日本公開版ではナレーターとして西島秀俊くんが参加。よっ、フィルメックスの顔!ジャンクーやヤン・ヤーチェと同年代!>何この意味不明な掛け声は(苦笑)



これはオリジナル予告篇。日本語ナレーション版はこちらからどうぞ。

 デイタイムフライトでは、飛行機の下に広がる風景を眺めるのが好きだ。桃園に着くときは海岸線から田畑の青々さが目に飛び込んでくるし、3年前の年末に台北から台東に飛んだ時、雪に覆われた中央山脈がくっきり見えたのが嬉しかった。
 台湾も、日本と同じく山地が国土の面積の大部分を占める島だ。それゆえ、映画の序盤では中央山脈を中心とした山地の雄大な自然を取り上げており、普段はなかなか行くこともなければ観る機会も少ない「空から見た台湾」の姿に圧倒される。

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 しかし、中盤からその様相は一転し、雄大な自然に人工物が加わり始める。そこで顕になるのは、巨大台風の被害が痛々しく残る山地、山肌に一本走る道路、山頂を切り崩されて建てられる高層マンション、工場から排出された汚水によって汚された川や海…。それらは環境の大きな変化はもちろんのこと、人口や観光客の増加、工業の発展等によって起こされる負の遺産である。もちろん、これは台湾だけじゃなく日本で問題とされているのだが、その爪痕をありのままに映しだされて観ていると、台湾人じゃなくても自分がなんとも申し訳ない気分になる。観たのは日本語版だったのだけど、前半から一貫して淡々と語られる西島くんのナレーションもこれまた効果的で、「うわーごめんなさいごめんなさい、環境破壊に加担しちゃってごめんなさい、許して―」と心のなかで謝りたくなるほど、西島くんに説教されている気分になった次第。ちなみに呉念眞さん版も同じ感じらしいです。うむ。
 特に心が痛かったのが、高山茶を買い求める観光客のニーズに答えるべく、山地を大きく切り崩して茶畑を作ることが自然破壊につながってしまうってくだりかなあ。これだけは現地まで行かないとどこで作っているのかわからないだけ、本当に申し訳ない気分になるよ。
 そもそもこの映画が作られた意図も、チー監督が長年航空写真を撮影しているうちに、台湾の自然環境が大きく変化してしまったのに胸を痛めたかららしく、それを記録しようと最初は私財を投げ打って撮影し始めたとのこと。

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 もちろん、絶望だけじゃなく最後には希望が提示される。各地で盛んになりつつあるらしい野菜の無農薬有機栽培とそれを作るために集まった人々による新たなコミュニティの形成がラストに登場するが、これは日本でも行われている活動なので特に目新しくは感じない人もいたんじゃないかな。でも、資本主義社会が行き過ぎ、その弊害が現れているのはアジアの民主主義国家ではおそらく共通なこと。そんなことから、物質ではなく自然と共存して生き直すことが求められるのだから、同じアジアとしてお互いを見て、自分の周りを見直すにはいい。
 だからワタシはこれからも台湾には行くし、そこから自分のいるところの現在と未来も確認できる。そんなことをこの映画から感じた。

そんなわけで今年の春、また行ってきまーす。 

原題&英題:看見台湾(Beyond Beauty,TAIWAN from ABOVE)
製作総指揮:ホウ・シャオシェン 監督&撮影:チー・ポーリン 音楽:リッキー・ホー 挿入歌:リン・チンタイ
ナレーション:ウー・ニエンジェン(オリジナル版)西島秀俊(日本語版)

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