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ミッドナイト・アフター(2014/香港)

 我らが香港映画の風雲児(いま考えた!)フルーツ・チャンが久々に香港映画に戻ってきた。長編は『トイレ、どこですか?』(2002)以来…と思ったら、なんと『女優霊』の英語リメイクも手がけていたのか!
 実は『トイレ』は未見。冬冬こと阿部力の出世作という認識しかなかったのだが、主演が韓国のチョ・インソンで、カテゴリ的には韓国映画にはいってるのか!しかもあーまーぞぉーんのレビューがこてんぱん(笑)。まあ、それはそれはお気の毒に、としか言えん…つか、今度観ようかな。


 それはともかく、Wikipediaによると、ゼロ年代の彼のフィルモグラフィはなんからしくないなーと思うものばかりで(女優霊もそうだし、短編もね)なんとも物足りなかったのだが、『ミッドナイト・アフター』では、久々にフルーツさんがホームグラウンドに戻ってきたような感じを受けて楽しんだ。 

あの日の深夜、ボクらは旺角から大埔行きの紅いミニバスに乗った(原題意訳)。
ガールフレンドとのデートをキャンセルされた阿池(黄又南)、金貸しの發叔(ヤムヤム)OLのユキ(ジャニス)、保険のセールスレディ兼占い師の英(惠英紅)、電機修理店で働く阿信(徐天佑)、間違って乗ったジャンキーのチンピラ盲輝(サム)など16人が旺角から乗り合わせたバスは、獅子山のトンネルを通り抜けたところで異変に巻き込まれる。
彼らより先に中文大学で降りた4人の学生が、次々と原因不明の高熱に侵されていくが、大学にはだれもいない。彼らがパニックになっていた頃、バスは大埔に到着するが、ここにもまた、誰もいなかった。しかも、携帯もネットも通じない。運転手(林雪)も含んだ乗客たちは、夜が明けてから茶餐廳に集まって対策を練る。様子を見に外に出た阿池たちの前に現れたのは、黒いレインコートを着て防毒マスクをかぶった日本語をしゃべる男。
 だれもいない香港。黒いマスク男、一瞬つながる携帯の回線から流れてくるノイズ。一体何が起こったのか。彼らは謎に迫ろうとするが、中文大生を含む残された乗客たちが、一人ひとり謎の死を遂げていく…!
 

Midnightafter

 SFである。ホラータッチの作りなので、ついそっちに引きずられてしまいがちだが、香港映画には珍しいSF映画である。フルーツさんもホラーを作ってる人なので、特に珍しいことでもなんでもないけど、SF入ってたことで特に怖いとか嫌だとかはなかったなあ。
 原作は「香港の2ちゃんねる」と呼ばれる巨大掲示板「香港高登討論區」に掲載された、ハンドルネームMr.Pizzaによる同名ネット小説。ワールドプレミアはベルリン映画祭のパノラマ部門、その後香港国際映画祭のオープニングを飾った作品。韓国のプチョンファンタスティック映画祭では審査員賞を受賞しているとのこと。

 フルーツさんの持ち味としてワタシが認識しているのは、軽やかさの中にある現代香港へのクールな眼差し。それは『メイド・イン・ホンコン』から始まる初期の香港三部作はもちろんのこと、『ドリアンドリアン』(『ハリウッド☆ホンコン(未見)』と合わせて娼婦三部作と呼ばれるそうだが三作目は未製作)にも感じられる。
ゼロ年代後半は大陸に行ったり、短編の製作やプロデュースで活動していたフルーツさんが久々に香港に帰ってきたことで、サムや又南&天佑のSHINEコンビなど彼に縁のある俳優に、ヤムヤムや林雪、惠英紅さんなどのベテラン陣も参加して賑々しく展開して楽しいのではある。
 しかし、これを楽しいと言ってしまうには少しためらわざるものを感じるのは、香港の自由選挙を求めての政府と民主派勢力との衝突が起こってしまったことで、この映画の展開が香港の未来を予言するようなものになってしまったと感じるからなのだろうか。劇中にはいろいろな寓意がうまく込められていて、それが現実の出来事とリンクしてはハッとさせられ、モノによっては恐ろしさも感じる。我々のような香港映画ファン、映画はそれほどで好きでなくても、香港へよく旅したり住んだ経験がある人なら、それに気づけると思うものばかりだ。

 「一晩のうちに、香港がなくなった」。先に貼ったオリジナルポスターのコピーにはそう書かれているが、このところの対立で2046年より前に真の意味で香港が亡くなってしまうのか否か、そんなことも考えてしまう。
 でも、悲観ばかりではないだろう。真実に近づいた乗客たちは、さらなる真実を求めてある場所に行こうとするが、最終的にはそこではなく、九龍のダウンタウンへと向かう。その姿には悲壮感はなかった。むしろ、愛する街で楽しく終末を迎えてやるぜ!というポジティヴな意地にも思える。そこに、香港製造な人々の精神を感じ、まだ希望はあるのではないかと思ったのであった。

Midnightafter2

…とまあ、今回はかなりネタバレ控えめにお送りしました。
 香港映画の現状を考えると、日本公開はかなり難しそうなんだけど、ソフトでも配信でも観てもらえるチャンスは欲しいんだよなあ。しかもこれ、原作の前半部分のみの映画化というから、なんとか後半も製作してほしいもの。

 そして、最後にこれは欠かせない。物語のキーとなる曲、デイヴィッド・ボウイの「Space Oddity」


原題:那夜凌晨,我坐上了旺角開往大埔的紅van
監督&脚本:フルーツ・チャン 原作:Mr.Pizza 撮影:ラム・ワーチュン
出演:ウォン・ヤウナン ジャニス・マン サム・リー チョイ・ティンヤウ カーラ・ウェイ サイモン・ヤム ラム・シュー

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