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西遊(2014/フランス・台湾)

 暗闇の中から、ゴツゴツした男の顔が浮かび上がり、大写しになる。ここは南仏、マルセイユ。
 あれ、この顔はもしかしたら、ドゥニ・ラヴァンじゃないか?フランスのシャオカンことドゥニ・ラヴァンじゃないか!と思ってしばし画面を見つめていると、やがて画面が転換し、暗闇の中に赤い僧衣をまとった裸足の三蔵法師(シャオカン)が現れ、ゆっくりと、ゆーっくりと歩を進める。
 三蔵は洞窟からゆっくりと出て、浜辺をゆっくり歩いて街に出る。町の人々の動きは忙しなく、彼の姿を見ても通りすぎてしまったりもするが、時に目を留め見守る人や、時に彼から少し離れて同じ速さで歩いてみたりする人もいる。三蔵は突然街に現れ、街の人々の歩みとは全く違う時の中を進んでいく。

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 長編劇映画からの引退を宣言し、映画作家として新たなフェーズに突入した蔡明亮の新作『西遊』は、先に書いた星仔の西遊とはまったくもって違う話(当たり前)。
製作のいきさつなど、詳しくはフィルメックスHPのレポートで(その場にいたけど書くと長くなるのでパス。笑)

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 しゃべりだすと止まらないミンリャンと、ゆっくりゆっくり話すシャオカンは対照的だけどやっぱりいいコンビ。

 シャオカン三蔵はゆっくり歩むが、全く動かないってわけではない。あの長回しの中でも、確実に進んでいる。速度こそチベット仏教の五体投地にはかなわないけど(実際にラサで見たことあります)、人々の速さとは全く違う次元の中で確実に歩いている。ティーチインでミンリャンはこの映画を時間について描いたものだと言っていたけど、それは実にわかりやすいテーマである。それに加え、マルセイユの街のどこにシャオカンが登場するか、どこからどこへ歩いていくのかというスリリングさを楽しめて、興味深かった。
 ああ、かつては苦手だったミンリャンだけど、今になってこんなに楽しめるとは思わなかったですわ。成長したのかしら、自分。

 ところで、先にドゥニ・ラヴァンを「フランスのシャオカン」と呼んでいるのだが、実はシャオカンのことも「台湾のアレックス」と呼んでいたことがあった。それは、ミンリャン映画におけるシャオカンとレオス・カラックス作品におけるドゥニ演じるアレックスにどこか共通するものを前々から感じていたからだ。それだから、今回二人が共演してくれたことは密かに嬉しかった。
 とか言いつつも、実はカラックス作品も昔は苦手だったんだよ。『ポンヌフの恋人』は大ヒットしまくった初映時に間に合わず、アレックス三部作の特集上映で観たんだけど、その時抱いた印象が「なんかミンリャン映画みたいだなー」というものだったのだ。まあ、こういう感想言うのって自分だけかもしれないんだけどね。そんでもって、昔は苦手だったのに、数年前の再映で見なおしたってのも共通するものだしなあ。そんな感覚、わかってもらえるかどうか。

 なお、この映画は1時間以内の中編シリーズとしてすでに6本撮られており、今回のマルセイユの他、ミンリャンの出身地マレーシアや香港でもシャオカンを歩かせたとのこと。さらに来年2月にはシリーズ新作を日本で撮るとのことで、シャオカン三蔵と一緒に歩いてねとミンリャンがアピールしてた。ああ、ロケに行きたいなあ。でもやっぱり撮るのは東京かな?

英題:Journey to the West
監督:ツァイ・ミンリャン
出演:リー・カンション ドゥニ・ラヴァン

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