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西遊記 はじまりのはじまり(2013/中国)

 またしても、最初に言っておきます。

 実はワタクシ、香港電影迷歴かなり長いくせに、未だに星仔の『チャイニーズ・オデッセイ』二部作を観ておりません!いいのか、こんな不真面目な電影迷でいいのかワタシよ!
まあそのへんはいずれカバーすることにしよう。あ、あとそういえば『西遊記リローデッド』もまだ観てなかったよ、あはは。

 そんなふうないい加減な人間なので、星仔の5年ぶりの新作が『西遊記』と決まった時、特に感想もなければ感慨もなかった。ただ、完全に中国主体の製作で、さらに出演しないのは残念だなーということだけか。それでも、デレク・クォックが共同監督を務めるというのは大いに気になっていたけどね。

 どれくらいかわからないが、時は昔。
 川辺の村に半獣半魚の妖怪が突如現れ、人々を喰らってパニックに陥る。そこに現れたのは、陳玄奘(文章)というボサボサ髪の修行僧。彼は修行のために妖怪ハンターをしており、村人とともに水妖(李尚正)を陸上に引きずり出す。退魔大典こと「わらべ唄三百首」を手に歌って水妖を改心させようと試みるが、全く効かない。そこにさらに現れた妖怪ハンター・段(すーちー)が水妖を横から引っ掴み、封じ込めたことで事は無事収まる。
 玄奘の師匠は「お前には何かが少し足りない」と言うが、仏道を極めたい彼にはそれが何だかわからないまま、次の妖怪ハントの場へ赴く。謎の美男子・豬剛烈(陳炳強)の営む山奥の餐廳で人々が次々と殺されているのに気づいた彼は、店主が豚の妖怪だと気づき、段と協力して果敢に戦う…も、剛烈は巨大な猪に変身して逃走する。
 師匠から、剛烈と戦えるのは五箇山に500年間幽閉されているという妖怪の王・孫悟空しかいないと言われた玄奘は、早速五箇山に旅立つ。途中、「アンタに惚れちゃったのよー」という段とその仲間に付きまとわれたり、同じ妖怪ハンターの北斗五形拳(行宇)、天残脚、空虚王子(ショウ)に出会ったり、なんやかやで五箇山に辿り着いたが、そこで出会った孫悟空(黄渤)は青白いハゲた爺さんだった…。

Xiyou

 世の中に西遊記ものは数多い。ちょうどこの映画が中華圏で上映された後に、ド兄さんの《大鬧天宮》も公開されてたわけだが、そっちの方はどうやら本当に西遊記の最初の方をアレンジしたものらしい、というのを最近岩波少年文庫版をパラパラ読んでいた気がついた次第。だから、時代的には悟空が山に閉じ込められてから後の話となるわけか。

 で、観終わって頭のなかに出てきた言葉は「本当は怖い西遊記」と「All you need is love(笑)」。両者とも星仔映画の基幹をなす要素じゃないかな。
 大陸でのレイティングは不明なのだが、日本公開はPG12。でも子供向けの文庫が出たり、吹替版が用意されたりとなぜかファミリー向け展開。実際、吹替版を観に行った時は、小さなお子様連れもいたもんなあ。最初の部分なんか確実にトラウマになるよ、どうかなと思ったけど、まあ、そういう経験も必要じゃないかな>実は幼いころの自分がそうだった。アニメ目当てで行った映画館でものすごい怖いホラー映画の予告を観てしばらくトラウマになった経験あり。
 後の沙悟浄である水妖も、猪八戒と名乗ることになる豬剛烈も、元々は人間であったけど、それぞれが愛に裏切られた末に妖怪と化し、人間を襲って殺しまくるという設定が興味深い。妖怪より恐ろしい人間という考え方ももちろん根底にはあるけど、その残虐さを救えるのもやはり愛という点で、先の言葉に繋げられるのかな。
 孫悟空が幽閉されたのは原典と同じ理由なので特に語られる必要がないのはわかるけど、狡猾で残虐で根に持つタイプの妖怪の王というラスボス的設定がなされるので、青白い爺さんモードより本来の姿を現した時のほうが凶暴化するのもそれで納得。そして、愛を理解しないのもね。だからこそ、玄奘と段の純情肉食娘とヘタレ草食坊主の恋愛模様がじわじわと効いており、それはきっと『チャイニーズ・オデッセイ』にも通じるテーマなんだろうなと確信した次第。だからこその、星仔渾身の一作になったんだろう。

 それはキャスティングでもよくわかる。星仔自身が出演していないのはほんとうに寂しいけど、脇に過去作品でユニークなキャラを演じた俳優たちを置きつつも、メインは中国と台湾の人気と実力のある俳優たちで固めた点、シモネタはあっても決してクドくはない点、そして今や中華圏を代表するミューズとなったすーちーが堂々の主演を務め、しかも汚されることなく可憐で強いヒロインを堂々と演じている点。
 すーちーといえば最近はすっかりホウちゃん作品のミューズだったり(来年日本公開決定の最新作『聶隱娘』にも出演するしね)、『狙った恋の落とし方。』の可憐なヒロインのイメージが強かったけど、久々にハチャメチャなアクションコメディに戻ってくれたのがなんとも嬉しい。途中退場は残念だけど、物語を引っ張るには十分過ぎるキャストである。
 近年はいろいろ活躍を見せる文章くん。『海洋天堂』の頃から結構可愛い顔してるよなとは思っていたが、ちゃんと可愛く成長しているのが好ましい。こういう人材は中国には必要だ。星仔リスペクトの完コピっぷりもすごいけど、そこはやっぱり監督本人には及ばずね。
 本来ならもう一度悟空を星仔がやってもいいのに、とは思ったものの、ここではラスボス的立ち位置だからやらなかったのだろうな、と黄渤演ずる悟空の見事な变化っぷりになんか悟った(笑)。彼もまたコメディアンではあるけど、星仔自身は黄渤に自らとの共通点などは感じたのかな?パンフではさらっとしか書いてなかったので、そこは知りたいところ。ほんでもってパンフの黄渤インタビューを読むと、忙しいから断ったのに騙されたから出たとか、星仔へのリスペクトはあるのでとりあえずはよかったけどね。
 後はショウがはまり役だったねー。ああいう美形の笑わせ役はやっぱり必要。

 さてさて、そんなわけで予告編でジャンジャンかかってた『Gメン'75』のテーマに乗って、役者が全て揃って天竺へのミッションが開始されたけど、これはいつ続編ができるの?現在星仔は別作品の製作に取りかかっているそうだけど、それなりに実績も出したし、日本にもとりあえずチャウ・シンチー健在の証は残せたのだから、早いところ頼むねー。中国マネーがあればなんとかなるだろうしね(こらこら)。

原題:西游 降魔篇(Journey to the west)
製作&脚本&監督:チャウ・シンチー 共同監督&脚本:デレク・クォック 音楽作曲:レイモンド・ウォン
出演:スー・チー ウェン・ジャン ホアン・ポー ショウ・ルオ クリッシー・チャウ

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