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2014年11月

黄金時代(2014/中国)

 祝、湯唯小姐ご結婚!
 お相手は主演した韓国映画『レイトオータム』の監督だそうだけど、すまんその映画観てないわ。『色、戒』で世界的に有名になって7年、日本での公開作も少ないので、某映画メディアでの報道記事のヘッドラインがあまりにひどくて萎えたのだけど、どうかお幸せに。
 でも韓国ばっかじゃなく、香港映画にも出なさいねー。

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 さて、そんな湯唯ちゃんを主演に迎え、中華民国期の文壇を代表する夭折の女性作家、蕭紅の生涯を描いた『黄金時代』は、桃さんのヒットも記憶に新しいアン・ホイ監督の最新作。
 民国初期に東北部で生まれ、ハルピンから青島、上海、南京、そして香港へと漂流して肺結核で31歳の生涯を終えた蕭紅(湯唯)。その短い生涯の中で、親に反発して駆け落ちをした挙句、勘当されて極貧状態に陥った少女期、貧しさの中で書き上げた散文が当時の文壇に評価され、作家仲間の蕭軍(ウィリアム・フォン)と恋に落ちた時代、すでに中国を代表する作家となっていた魯迅(王志文)との交流、蕭軍とのすれ違いの始まりと日本滞在、共産党員である作家仲間・丁玲の長征への同行、蕭軍との別離と再婚、香港での暮らし…と、激動の時代を濃く短く生きた様が3時間で語られる。


 観たのは仕事後そのまま上京した月曜の夜。結構疲れ気味だったから途中で寝ちゃったらどーしよー?とかなり心配していたのだが、途中で眠気を誘われることなく、非常に興味深く観ることができてよかった。文芸映画なのに、割とエンタメ的な作りになっていたからかなあ?
 主人公の蕭紅自身が自らの生年と没年を告げるオープニングから「ん?」と思ったが、彼女によるモノローグの他、登場人物の中でも作家仲間たちが時にドキュメンタリーの証言シーンのようにその時の状況や心境を語り、またある時は劇中の場面から観客に語りかける。後者はこの秋公開されたクリント・イーストウッド御大の新作『ジャージー・ボーイズ』でも使われていた技法。
 早くにデビューしたものの、生前はあまり評価されなかったらしい蕭紅の姿を過剰に感情移入することなく客観的に描くのに、これは効果的だったと思う。あと、歴史的事件を絡めるのも明らかに直接的なもののみだったのも好感。日本への静養旅行や夏目漱石について論戦する文化人たちも、抗日戦争も割と同じ目線で描かれてたような。

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 興味深く思えたのは蕭紅と魯迅、そして丁玲との関係。
 翻訳家の水野衛子さんによるこのblog記事を読んでいても、この両者との関係は劇中でも力を入れて描いていたことがわかる。
 魯迅はだいたい誰でも中高の国語の授業で通っているはずだからわかりやすいだろうけど、晩年のエピソードとしては初めて知ったのは言うまでもない。奥方の許広平があまりいい顔をしてなかったのも、魯迅が蕭紅に好意を抱いていたということが匂わせられて面白い。
 丁玲は共産党員として活動し、その後失脚して名誉回復という波瀾万丈の人生を歩んでいた女性で、在学中に近代中国文学を選んでいたら確実に研究していただろうなという人物だけど、おそらく研究だけじゃイメージが結べなくて苦労するんじゃないかな。そんな彼女の描写に力が入っていたのも、蕭紅と対比しやすくてありがたかった。思えば、あれだけバリバリの共産党員として描かれていたのに、抵抗感なくあの丁玲を受け入れられたのは、彼女の後の人生のこともあるのだろうな。

 えーと、実はワタシ、大学の主専攻が中文だったのですが、文学じゃなくて語学専攻、しかも研究が地域・文化研究だったので、見事なまでに中国近代文学をスルーしてきたんですよ。お恥ずかしい話で申し訳ない。魯迅はもちろんのこと、丁玲も中国事情の授業で名前を聞いていた程度の知識。だから、そういう身にとってはこの映画は興味深く、学生時代の授業を思い出させてくれたりで観てて嬉しいものでした。
 しかし、ここまでわかりやすく意欲的な映画なのに、中国大陸ではコケたと聞いてビックリ。文芸映画として出来もいいのに、やっぱり上映時間が長いから?なんだかもったいない。日本でも一般上映は難しいかな。うーん。
 でも、いい作品です。大学生の観客がどれくらいいたかどうかはわからないけど、この映画がきっかけで蕭紅を研究する学生さんがいたら嬉しいなって思う。こういう論文もあるしね。

英題:The Golden Era
監督&脚本:アン・ホイ
出演:タン・ウェイ ウィリアム・フォン シア・ライ チュウ・ヤーウェン ワン・ジーウェン

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GF*BF(2012/台湾)

 今年は天安門事件と香港返還にも並ぶ大きな事件が中華圏に起こった年として記憶に残りそうだ。ひとつは現在も進行中の香港の「雨傘革命」、そしてもうひとつは台湾の「ひまわり学運」こと立法院占拠。どちらも担い手が学生たちである点が共通している。 ワタシも中国語専攻だったし、ただミーハーな関心を寄せているだけじゃないんだけど、ここでは長くなるのでパス。まずは感想優先。

 ワタシが台湾に留学した時には、尖閣諸島の釣魚台に日本のある右派団体が灯台を立て、抗議のために島に向かった台湾の漁船が海自に拿捕されたことで日本に抗議する運動が起こってしまったことがあった。ワタシはそれに巻き込まれたことで尖閣諸島問題を初めて意識したのだが、その半年前に台湾民主化を求める大規模な学生運動「野百合学運(または三月学運)」が起こっていた。この頃は我が友人が先に留学しており、大学に入ったレポートで少し教えてもらったことがあったが、今年の立法院占拠運動がそれ以来の大規模な学生運動と聞いた。

Gfbf

 その「野百合学運」を劇中に取り入れ、1985年から2012年までの3人の男女の関係と運命を描いたのが、この『GF*BF』。監督の楊雅喆(『Orzボーイズ!』未見です、すみませぬ)のプロフィールを見て驚いた。同世代で、ワタシが留学した大学の卒業生だった。もしかしたらあのキャンパスのどこかですれ違っていたのかもしれない。



 1985年、高雄。高中で水泳に打ち込む忠良(ジョセフ)、新聞部の心仁(リディアン)、そして風紀委員の美寳(ルンメイ)は仲良しトリオ。戦時下で思想統制がなされていた当時、古本屋台で発禁本を売り、生徒を巻き込んで教官に抵抗したりと不自由な中でも青春を味わっていた。家族に恵まれない美寳は忠良にほのかな思いを寄せていたが、忠良は彼女のことを友達以上には思えなかった。それを知った心仁は美寳に告白。彼女も忠良の本心を知り、ショックを受けるが心仁と付き合うことにした。実は忠良が好きだったのは心仁だった。
 やがて忠良と心仁は台北の大学に進学し、美寳はスポーツジムに就職する。戒厳令が終了して間もない1990年、心仁は民主化運動の学生リーダーとなり、忠良もそれに加わっていた。美寳と心仁の仲は続いていたが、中正記念堂で行われた学生集会の夜、彼女は心仁がとある女子学生と親しくしているのを目撃する。また、忠良は運動鎮圧にやってきた私服刑事と運命的な出会いを果たす。
 1997年、3人の共通の友人でカミングアウトしていた神龍(張書豪)が台湾初の同性結婚式を挙げる。心仁は件の女子学生と結婚し、義父となった行政院院長のブレーンに収まったが、美寳を愛人にしていた。忠良にも妻帯者である同性の恋人がいた。神龍の結婚式で7年ぶりに一緒になった3人は、それぞれの思いを抱えながら、昔には戻れないことを思う。そして心仁の子供を2人宿した美寳は、それと共に悪性の腫瘍が体内にあることを知る…。


挿入歌も素敵。MVがあったのでこれ。もう一つの『青春無敵』はこちらから。

 台湾映画お得意の青春ものであるが、これまでのとは違うと感じてしまうのは、実に様々なテーマをはらんでいる作品であること、そして主人公たちが現在40代半ばの年齢設定という点で、その青春模様には懐かしさとともにどこか自分の経験にもかぶるところがあるからか。といっても、先に書いたように「野百合学連」には間に合わなかった人間であるのだが。

 日本初映は昨年3月の大阪アジアン映画祭と、その2ヶ月後に東京で行われたアジアンクィア映画祭。優れた青春映画とともにゲイ映画としての側面も持っているこの映画だが、リンク先の楊監督のコメントがなかなか興味深い。戒厳令下での本省人と外省人(リンク先では「原住民」と「本土人」とあるが、おそらくこれではないかと)と、同性愛と異性愛に横たわる断絶を同等にとらえ、やがて「家」となるという考えを述べている。日本でいうところの「家族」とは全く違うし、それが本質ではないかと思うので、思いっきり首を振ってしまった。
 それを思えば、終盤で再開した3人が昔の関係に戻れないことを切なく思うのはまた違うのかとも感じる。それはラストで羅大佑の『家』(本編の動画なのでリンクのみ)が流れるのにも象徴されている。3人のうち2人でいたい、結ばれたいと願うのは青春時代の欲望だけど、それは1人が残される切なさもあるし、97年の美寶と心仁のように2人になれたからといってもずっと幸せってわけでもない(特に心仁は自由を渇望しながら、成人して体制に飲み込まれてしまったからというのもあるだろうし)。3人でいた青年期の幸せはもうないけど、わかりあえて心を結ぶことはできる。そんなふうに読み取れるのかもしれない。

 考えれば『藍色夏恋』からもう10年経ってしまったことに驚くのだが、ルンメイは歳を重ねるうちに好きになった女優だ。ボーイッシュで元気なキャラは昔から変わらないし、今回の美寶は特に元気なので一部女子にはうざいと思われそうで心配したのだが(実際SNSの映画好きの方の感想に「美寶イラッとくる」と書かれていたのを見かけたので)、成人してからの心の揺れを見事に体現していてよかった。金馬奨の主演女優賞受賞には大納得。しかし90年の場面のロングヘアは栗山千明ちゃんっぽかったな。今度共演してくれないだろうか?
 リディアンは相変わらず台湾の城田優とか呼んじゃうのだが(モンガを参照のこと)、今回の役どころはとってもよかった。あのバタ臭さもいい具合に働いてたし、オープニングとラストに登場する双子の顔立ちがちゃんと彼に似ていたのにも感心。そこで物語の行方がよめるしね(これ以上は事情により言わないけど)。
 そしてジョゼフ。『失魂』の時のような暗さがハマる俳優だと思うが、フィルモグラフィーを観るとわりとゲイ映画にもよく出ている。好みとは違うなといつも思って申し訳ないのだが、40代半ばの「父親」役は意外にハマってた。10年後が楽しみね。そしてジョセフといえば、今年の暮れに公開される行定勲監督の新作『真夜中の五分前』にも出演しているので、これは観るつもりなのだけど…なんで名前表記が「チャン・シャオチュアン」なの?もうすでに「ジョセフ・チャン」で紹介されているのに(汗)。

原題:女朋友、男朋友
脚本&監督:ヤン・ヤーチェ 製作:イエ・ルーフェン 撮影:ジェイク・ポロック 音楽:チョン・シンミン
出演:グイ・ルンメイ ジョセフ・チャン リディアン・ヴォーン チャン・シューハオ

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