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2014年9月

ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪(2013/香港・中国)

 初の3D作品『ドラゴンゲート』の後に徐克さんが手がけたのは、『王朝の陰謀』に続くディー判事シリーズの続編。それが『ライズ・オブ・シードラゴン』
 でも、前作の続きではなくて前日譚というのがミソ。前日譚なのでキャストはほぼ総入れ替え。唯一変わってないのは武則天役のカリーナ姐のみ。


 西暦664年の唐、高宗の世。皇帝は敵対する扶余国に水軍を送るが、一瞬のうちに全滅させられてしまう。武則天(カリーナ)は大理寺の司法長官・尉遲真金(ユーチ・ジェンチン/ウィリアム・フォン)に捜査を依頼するが、都では海の神である龍王の怒りに触れたとの噂が立ち、都一番の花魁・銀睿姫(イン・ロンチー/angelababy)が龍王の祠に生贄として捧げられる。
 同じ頃、大理寺に判事として30歳の狄仁傑(マーク)が赴任。読唇術を心得、優れた洞察力を持つ彼は、通りすがりの男たちが睿姫の誘拐を企てていることを察知し、それを阻止。しかし、祠には謎の怪物が押し入り、睿姫を連れだそうとしていた。それも捕まえようとした狄だったが、すんでのところで取り逃がし、その場にやって来た尉遲に取り押さえられる。自分の任地であるはずの大理寺の地下に幽閉された彼は、そこで医官を務める沙陀忠(林更新)と知り合って脱出し、彼の強力を仰いで尉遲とは別ルートで捜査にあたる。
意外にも怪物の正体は、睿姫の恋人である清心茶房の跡取り・元鎭(ユエン/キム・ボム)であった。彼は蠱毒を盛られ、身体が変化してしまったのだ。沙陀の師匠・王(陳坤)に治療を依頼し、尉遲にマークされながらも狄が突き止めたのは、東島幫の首領・霍義(胡東)による唐王朝の転覆だった…。

 CGでの遊びっぷりとワイヤー多用によるアクション、そして人を食った予想不可能の展開は前作の三割増し。前作よりこっちの方が面白いと思う人は多いだろうな。アンディやカーファイが出演した前作は黄金期の香港映画のかほりを漂わせつつ、21世紀向けにアップデートしていた印象があるけど、中華圏の(比較的)若手俳優+αで固めた今作は、それ以上にアップデートされていて、ちょっとアニメ的なアプローチもなされていた感じ。徐克さんがアニメ好きってこともあるから、なおさらそう思えるんだろうな。

 おそらくこれが台湾以外の映画初主演となるマーク。アンディほどの個性の強さはないけど、今後の続編も彼が演じてもいいかなーと思うくらいにはハマっていた。アンディとは違うんだけど、それでも演じ方にはどこか共通するものも感じたぞ。相方となる沙陀を演じるケニー・リンは今年の金像で最優秀新人俳優賞にノミネートされていたのか。大陸出身だけど台湾で活躍しているとのことなので、今後もどんどん出てくるのかな。いい感じの若造っぷりに好感もてました。
 ドラマ『蘭陵王』に出演し、日本でも中華ドラマファンに人気のウィリアム・フォン(てかすでに馮紹鋒で定着してるのか)。前作の司法長官が白髪の裵だったので、今回は赤毛…なのかな?どーも『太極2』のヘタレ兄さんのイメージが強すぎるせいか、いつヘマをするのかが楽しみだったんだが…って違うか。
 で、太極では妹役だったangelababyがヒロイン。花魁役だけあって、唐代のセクスィー系からあれこれ着替えてくれて本業のモデルばりの七変化を見せてくれるのは楽しいが、身体も動くのだからアクションができる役どころだったらよかったなあ。
 その恋人の恐怖半魚男が、韓国から参加のキム・ボム。…すまん、当たり前だがしらん!韓国版流星花園でブレイクして、日本でも人気があるのか。ふーん。しかし君は偉いよ、よくあのメイクを引き受けた。フツーなら断るだろう(笑)。メイクといえば陳坤が全然わからなくて参ったわ。
 香港からのキャストがカリーナ姐(と言っても彼女も大陸出身)しかいないことが残念にも思えるけど、そうであっても徐克さんのテイストはしっかりと残されているわけであって。 香港映画の中国映画化は苦く思ってしまう傾向にあるけど、大陸に行っても徐克さんは徐克さんであるんじゃないかな。

 それから、最近は大陸作品に韓国俳優が入ってくる率も高くなっている。ダンテ・ラム監督の新作《破風》にも日本で知られている韓国俳優が参加しているので、そっちが好きな人には注目されるんだろうな。いや、韓流が他のアジアンエンタメを駆逐しまくった時期を経験しているとはいえ、もう韓国憎し(それでも好きになれんが)ってわけじゃないし。ただ、こういうアジアンコラボが展開されているのに、日本だけが置いてきぼりになってるのはやっぱりもったいないんだよ。
 先月の東京公開時のSkypeインタビューで徐克さんったらこんなこと言ったらしいけど、これをリップサービスに終わらせちゃさらにもったいないよ。
 エンドタイトルに映画化済の《通天帝國》含め、今後のディー判事シリーズのイメージボードが描かれてたから、この中には日本人遣唐使がディー判事の事件に巻き込まれるって話もできそうな気もするもんね。

 て言うか、いつも書いているけど、「香港のスピルバーグ」なんていう枕詞はもう外してほしい。これをつけてもディー判事シリーズは全国公開にならなかったのだから>ホントは全国公開にしても十分面白い作品だったのに。
 あと、劇団☆新感線のいのうえひでのりさんがコメントを寄せていたからな、ディー判事自体を新感線の演目に取り上げてもいいんじゃないの。そしたら少しは知名度上がるのかも。

原題:狄仁傑之神都龍王(Young Detective Dee:Rise of the Sea Dragon)
製作&監督&脚本:ツイ・ハーク 製作:チェン・クオフー アクション監督:ユエン・ブン 音楽:川井憲次
出演:マーク・チャオ ウィリアム・フォン  angelababy ケニー・リン キム・ボム チェン・クン フー・トン カリーナ・ラウ 

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王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件(2010/香港・中国)

 この映画、実は今まで約3回観ている。
だけど、機内上映・台湾に行った時のTV放映(北京語吹替)・昨年WOWOWで放映された時に観たにもかかわらず、いずれも途中の部分しか観られなかったので、ちゃんと観てから感想を書こうと思っていたのだ。そしたらあーた、ちゃんと観る前に続編(というより前日譚)の日本公開まで決まっていたじゃないですか、しかも題名が『ライズ・オブ・シードラゴン』!…全然シリーズっぽくねえぞこら。

 さて、いつまで徐克さんは「香港のスピルバーグ」と呼ばれなければならないのだろう?と思いながら、2010年に製作した狄仁傑判事シリーズの第1弾『王朝の陰謀・判事ディーと人体発火怪奇事件』について。
ちなみに、シードラゴンも帰省時に観てきました。

 唐代の政治家・狄仁傑は、Wikipediaにもある通り、実在の人物。 
特に中国史上唯一の女帝である武則天(日本では則天武后)に重用されたという点では大きな注目だけど、うーん、さすがに中国史でそれやってこなかったような…ってオマエがフマジメだったんだろうが(笑)。

  

 でも、おそらくこの人を有名にしたのは、オランダの外交官にしてミステリー作家、ロバート・ファン・ヒューリックの『ディー判事シリーズ』。現在はハヤカワ・ポケット・ミステリで14巻刊行。当時の裁判の判例などに題材をとった公案小説『狄公案』をヒントに、シャーロック・ホームズばりの推理力と行動力を持った天才として書き、好評を得たらしい。
 で、このシリーズも原案としながらも、さらに徐克作品らしい破天荒な映画になっているのであった。


とりあえず1冊。

 西暦689年。亡き高宗の太后・武則天(カリーナ)が即位することになり、都では通天仏という巨大な仏像が建設されていた。その現場で、政府の要人が次々と発火し、黒焦げになって焼死するという怪事件が発生する。元医師で通天仏建立の現場責任者である沙陀忠(シャトー・チョン/カーファイ)はこの事件を解決できるのは現在太后への反逆罪で服役中の元宰相・狄仁傑(アンディ)しかいないと言い、かつて狄仁傑が宰相を務めていた大理寺の現宰相・裵東来(ペイ・トンライ/鄧超)と武則天の侍女静児(チンアル/李冰冰)の監視下に置くことを条件として釈放を認められる。狄は裵と共に人体発火の謎を追うが、やがてそれに王朝への反乱が企てられていることに気づき…!

 とまああらすじを簡単に書いてみたが、犯人が誰かとかはあまり重要じゃなかったりするこの映画(笑)。やりたい放題とかヒロインが凛々しいとか言うと、それはそれでいつもながらの徐克さんじゃないかって言われるんだけど、それでもちょっと違う感じ。なんでかな?と考えたら、彼の80年代頃の作品のノリがこの作品に感じられるのだ。
 ま、人体発火等の人体破壊系も80年代にはすでにあったけど、そのへんは苦手だから語らんぞ。
 例えば、狄が監視についた静児と一つ屋根の下で一夜を過ごす場面。着替えの件で揉めるわ、静児はセミヌードになるわ(もちろん「三點」の露出は死守しているが)、そんな状況で招待不明の敵に襲われるわって、プロデュースした『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』に近いノリがあるし、事件の中核に迫るために、元宮廷侍医の王(リチャード・ン/テディ・ロビン)に会いに行くくだりも然り。あと、随所で登場する神の鹿(?)も、昔似たようなものを見たかな。
 あ、これは決して80年代に戻ることがいいことだって言ってるわけじゃないよ。いくら黄金期の香港映画が面白いことが事実にせよ、ワタシは懐古主義者じゃないしね。だけど、80年代と同じことをやってもそれが同じにならない、むしろうまくハマって画面に馴染むのは、やっぱりCGの発達が大きいよなあ。だからこそ、これまでのやりたい放題とはちょっと変わったように思える。まあ、首や腕がゴロンゴロンに変わって、人体発火で焼け焦げた遺体がゴロンゴロンなんだが、いくらやだなーと思ってもまあそれは物語に関係あるのであって(苦笑)。

 アンディの狄判事は清廉潔白というよりどっか人をなめてかかってる感がある。よく比較されるシャーロック・ホームズほど変人ではないんだけど、日本にも影響を及ぼしたのはいうまでもない烏帽子姿も似合っててよい。彼のワトソン役となる裵役の鄧超は、白髪と白い肌がどこか悪役くさいのだが、意外とそんなことなかった。しかし鄧超、これで初めて顔を見ながらも、これ以降もあまり見てないんだよなあ。大陸の俳優さんだからか?
 静児役の李冰冰、初見時にちゃんと彼女だと認識したのになぜか日本公開時に范冰冰と勘違いして公式Twitterに絡んでしまったという恥をかいたことがある(笑)。ファンビン同様彼女もハリウッド進出してるからまた紛らわしいんだわ。武則天の侍女らしく凛々しく、男装も決まるんだが、そういう役どころかよー、と後半で唖然。
 梁家輝の沙陀忠、狄判事の旧友でもあるんだけど(ネタバレにつき中略)で、王のダブルキャストの無駄さに笑った次第。
 そして、この作品で金像奬最優秀主演女優賞を初受賞した(意外なんだけどね。旦那があれほど獲っているのにもかかわらず)カリーナ。武則天といえば日本にもその名が轟く悪女だけど、ここにきてついに当たり役が来ちゃったねえ。それほど残忍さは見せてないんだけど、あの上がり眉と迫力は彼女だからこそ似合う。

 あ、軽く感想書くつもりだったのに、やっぱり長くなった。
これは壮年期の狄判事の物語なので、歴史的事実に乗っ取りながらもちょっとわかりにくい部分も案外あるんじゃないかなって思うのだが(特に唐代の中国史も学校では遣唐使絡みでサラッとしかやらない印象あるし)、そのへんは『シードラゴン』でだいぶ補填してくれていたので、そっちを観れば問題ないかなと思う。というか、むしろ逆に見てもいいってわけだ。
 そんなわけで、次の感想はシードラゴンです。やっぱり続けて書いた方が効率いいもんね。

原題:狄仁傑之通天帝國(Detective Dee)
監督:ツイ・ハーク 原案:ロバート・ファン・ヒューリック 音楽:ピーター・カム 武術指導:サモ・ハン・キンポー
出演:アンディ・ラウ リー・ビンビン ダン・チャオ リチャード・ン テディ・ロビン レオン・カーフェイ カリーナ・ラウ

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