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王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件(2010/香港・中国)

 この映画、実は今まで約3回観ている。
だけど、機内上映・台湾に行った時のTV放映(北京語吹替)・昨年WOWOWで放映された時に観たにもかかわらず、いずれも途中の部分しか観られなかったので、ちゃんと観てから感想を書こうと思っていたのだ。そしたらあーた、ちゃんと観る前に続編(というより前日譚)の日本公開まで決まっていたじゃないですか、しかも題名が『ライズ・オブ・シードラゴン』!…全然シリーズっぽくねえぞこら。

 さて、いつまで徐克さんは「香港のスピルバーグ」と呼ばれなければならないのだろう?と思いながら、2010年に製作した狄仁傑判事シリーズの第1弾『王朝の陰謀・判事ディーと人体発火怪奇事件』について。
ちなみに、シードラゴンも帰省時に観てきました。

 唐代の政治家・狄仁傑は、Wikipediaにもある通り、実在の人物。 
特に中国史上唯一の女帝である武則天(日本では則天武后)に重用されたという点では大きな注目だけど、うーん、さすがに中国史でそれやってこなかったような…ってオマエがフマジメだったんだろうが(笑)。

  

 でも、おそらくこの人を有名にしたのは、オランダの外交官にしてミステリー作家、ロバート・ファン・ヒューリックの『ディー判事シリーズ』。現在はハヤカワ・ポケット・ミステリで14巻刊行。当時の裁判の判例などに題材をとった公案小説『狄公案』をヒントに、シャーロック・ホームズばりの推理力と行動力を持った天才として書き、好評を得たらしい。
 で、このシリーズも原案としながらも、さらに徐克作品らしい破天荒な映画になっているのであった。


とりあえず1冊。

 西暦689年。亡き高宗の太后・武則天(カリーナ)が即位することになり、都では通天仏という巨大な仏像が建設されていた。その現場で、政府の要人が次々と発火し、黒焦げになって焼死するという怪事件が発生する。元医師で通天仏建立の現場責任者である沙陀忠(シャトー・チョン/カーファイ)はこの事件を解決できるのは現在太后への反逆罪で服役中の元宰相・狄仁傑(アンディ)しかいないと言い、かつて狄仁傑が宰相を務めていた大理寺の現宰相・裵東来(ペイ・トンライ/鄧超)と武則天の侍女静児(チンアル/李冰冰)の監視下に置くことを条件として釈放を認められる。狄は裵と共に人体発火の謎を追うが、やがてそれに王朝への反乱が企てられていることに気づき…!

 とまああらすじを簡単に書いてみたが、犯人が誰かとかはあまり重要じゃなかったりするこの映画(笑)。やりたい放題とかヒロインが凛々しいとか言うと、それはそれでいつもながらの徐克さんじゃないかって言われるんだけど、それでもちょっと違う感じ。なんでかな?と考えたら、彼の80年代頃の作品のノリがこの作品に感じられるのだ。
 ま、人体発火等の人体破壊系も80年代にはすでにあったけど、そのへんは苦手だから語らんぞ。
 例えば、狄が監視についた静児と一つ屋根の下で一夜を過ごす場面。着替えの件で揉めるわ、静児はセミヌードになるわ(もちろん「三點」の露出は死守しているが)、そんな状況で招待不明の敵に襲われるわって、プロデュースした『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』に近いノリがあるし、事件の中核に迫るために、元宮廷侍医の王(リチャード・ン/テディ・ロビン)に会いに行くくだりも然り。あと、随所で登場する神の鹿(?)も、昔似たようなものを見たかな。
 あ、これは決して80年代に戻ることがいいことだって言ってるわけじゃないよ。いくら黄金期の香港映画が面白いことが事実にせよ、ワタシは懐古主義者じゃないしね。だけど、80年代と同じことをやってもそれが同じにならない、むしろうまくハマって画面に馴染むのは、やっぱりCGの発達が大きいよなあ。だからこそ、これまでのやりたい放題とはちょっと変わったように思える。まあ、首や腕がゴロンゴロンに変わって、人体発火で焼け焦げた遺体がゴロンゴロンなんだが、いくらやだなーと思ってもまあそれは物語に関係あるのであって(苦笑)。

 アンディの狄判事は清廉潔白というよりどっか人をなめてかかってる感がある。よく比較されるシャーロック・ホームズほど変人ではないんだけど、日本にも影響を及ぼしたのはいうまでもない烏帽子姿も似合っててよい。彼のワトソン役となる裵役の鄧超は、白髪と白い肌がどこか悪役くさいのだが、意外とそんなことなかった。しかし鄧超、これで初めて顔を見ながらも、これ以降もあまり見てないんだよなあ。大陸の俳優さんだからか?
 静児役の李冰冰、初見時にちゃんと彼女だと認識したのになぜか日本公開時に范冰冰と勘違いして公式Twitterに絡んでしまったという恥をかいたことがある(笑)。ファンビン同様彼女もハリウッド進出してるからまた紛らわしいんだわ。武則天の侍女らしく凛々しく、男装も決まるんだが、そういう役どころかよー、と後半で唖然。
 梁家輝の沙陀忠、狄判事の旧友でもあるんだけど(ネタバレにつき中略)で、王のダブルキャストの無駄さに笑った次第。
 そして、この作品で金像奬最優秀主演女優賞を初受賞した(意外なんだけどね。旦那があれほど獲っているのにもかかわらず)カリーナ。武則天といえば日本にもその名が轟く悪女だけど、ここにきてついに当たり役が来ちゃったねえ。それほど残忍さは見せてないんだけど、あの上がり眉と迫力は彼女だからこそ似合う。

 あ、軽く感想書くつもりだったのに、やっぱり長くなった。
これは壮年期の狄判事の物語なので、歴史的事実に乗っ取りながらもちょっとわかりにくい部分も案外あるんじゃないかなって思うのだが(特に唐代の中国史も学校では遣唐使絡みでサラッとしかやらない印象あるし)、そのへんは『シードラゴン』でだいぶ補填してくれていたので、そっちを観れば問題ないかなと思う。というか、むしろ逆に見てもいいってわけだ。
 そんなわけで、次の感想はシードラゴンです。やっぱり続けて書いた方が効率いいもんね。

原題:狄仁傑之通天帝國(Detective Dee)
監督:ツイ・ハーク 原案:ロバート・ファン・ヒューリック 音楽:ピーター・カム 武術指導:サモ・ハン・キンポー
出演:アンディ・ラウ リー・ビンビン ダン・チャオ リチャード・ン テディ・ロビン レオン・カーフェイ カリーナ・ラウ

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