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2014年8月

ポリス・ストーリー レジェンド(2013/中国)

 今年は旧作上映企画「バック・イン・シネマ」やBS放映等で往年&黄金期の香港映画群を観る機会が多い。そのぶん新作香港映画が地元の劇場で上映されない不満は大きくなるばかりなのだが、前者に関しては、スクリーンで再見することでじっくり感想を書けるし、その作品が後に影響をどう及ぼしているか確認できるので(例:るろけんでの観柳邸死亡遊戯とか)、意義は十分あると思う。

 さて、5月にこの企画で『ポリス・ストーリー』を観たばかりなのだが、その時にはまだ我が街での上映が決まっていなかった「最新作」の《警察故事2013》こと『レジェンド』が我が街にやってきたので、やっと観に行った。しかし、もう香港映画ではなくなっているものの(これについては後述)、成龍さん作品ももう全国ロードショーと同じタイミングで来なくなってしまったのね…。

 舞台は北京。中国公安のベテラン警察官鐘文(ジョン・ウェン/成龍)は、繁華街にある大規模なクラブ「ウー・バー」にやって来た。ジョンには妻の死がきっかけで断絶してしまった苗苗(ミャオミャオ/景甜)という医学生の娘がおり、その彼女に呼び出されて、自分には似つかわしくないこんなところまで来たのだ。派手な身なりをしたミャオミャオは、ジョンに経営者の武江(ウー/リウ・イエ)を紹介し、なんとこの彼と結婚するなどと言い出す始末。
 しかし、これは罠だった。ウーはさる事情によりジョンを恨んでおり、彼を拘束して、ミャオミャオや数組の客を巻き込んで店を閉鎖してしまう。ジョンはウーの恨みの原因を推察しながら、ミャオミャオの携帯電話を使って隊長(于榮光)たち他同僚と連絡を取り、脱出を図ろうとするが…!


 ポリス・ストーリーと名のつくシリーズはこれで第6作目らしい。
 でも、ストーリーやキャラクターが繋がっているのは4作目の『ファイナル・プロジェクト』まで。ちょうど10年前のニューポリはリブートした作品なのに、なぜか5作目。個人的にはニューポリは好きな作品だけど、4作目までのファンには「署長が出ないじゃん」とか言われてたのを思い出すなあ。
 で、9年経って再リブートしたに等しい今作は、今までにない試みがなされている。舞台が北京に移されたこと、主人公が実際の成龍さんの実年齢に近く、しかも初めての子持ち(しかも年頃の娘)であること、そして、舞台のほとんどがウー・バーなので、ほとんどワンシチュエーションスリラーのような雰囲気で進むこと。最初はともかく、後の二つは好ましい。もう還暦を迎えられたのだから、年相応の役どころも見たくはあるし、本人が度々おっしゃっているように、激烈なアクションよりドラマ性も重視したいのもわかる。実際、期待せずに観たわりには、わりといいんじゃないの?と思ったからね。
 だけど…とモニョってしまうのが、どうしてこのようなことが香港時代にできなかったのだろうか?ってこと。ストーリー重視の展開はもちろんニューポリや新宿事件で確立していたけど、それでも成龍さんのキャラは基本的に変わらず、ヒロインはその年代に応じた、娘ほど年齢の離れた若い女優だった。まあ、50歳過ぎても若目の役どころを振られる俳優もまだいるんだけどさ(誰とは言わん、誰とは。笑)、ここは香港で集大成的な作品を作って、大陸に行ってほしかった気もする。
 それよりも何よりも、ワタシより熱心な警察故事ファンにもきっと複雑な思いを抱いている人が少なくないんじゃないかと思うのだが、香港警察の警官の活躍を描いてきたのが、このポリス・ストーリーシリーズなのに、それを大陸に持って行ってしまって続けるというのは、もうすでにこのシリーズの意味がないんじゃないかということが気になった。ここ数年活躍の場をすっかり大陸に移してしまい、大陸と香港、あるいは他国(含む日本)との政治的発言等で、彼が失言をかましてきたことで、香港人やそれ以外の一部をガッカリさせてきたことも思えばなあ…とこれ以上は暴言になりそうなので言うのはやめます。まあ、せっかく地元の香港で行われているのに、今年の金像奬のスピーチで北京語を喋っちゃったことには、もう彼は香港の大哥ではなくなってしまったのね、と本当にがっかりしちゃったのだけど。
 うん、だからね、これには「香港映画」のカテゴリはつけませんでした。今後も大陸で映画を作り続けるだろうし、ハリウッドのベテランアクション俳優が集うエクスペンタブルズシリーズにもいつか出るんだろうな、って思うしね。もう、好きなことをやっていただければいいですよ。はい。

 成龍さんの娘役、景甜ちゃんは最近出演が続く大陸の女優さん。うん、確かに常盤姫似かもしれないね。長髪が全然似合ってなかったけど。まあウィッグだったわけだし。
 そしてリウイエ…うーん、うーん、なんでしばらく見ないうちにこうなっちゃったのキミは。

 で、北京と親子とくれば、やっぱりこのことを書かねばならないか(泣)。

 8月19日にジェイシー・チャンが大麻使用と所持の容疑で北京当局に身柄を拘束されました(新聞記事)。一緒にいたコー・チェントンも拘束。しかも大麻吸引は8年前からという報道もあり(レコチャイ)、この衝撃はかなり大きかったです。先日、やはり北京でロイ・チョンが大麻所持の疑いで拘束されているので、もしかして中国公安のプロパガンダか?と最初は思ったけど、ジェイシーが大麻を100グラム以上所持していたという点でもうとどめを刺されてしまった感が…(泣)。
 成龍さんもジェイシーもファンじゃないけど、こういう事件が起こってしまったことは本当に悲しくて残念だ。ジェイシーは日本でも全然知名度がないのであまり反応がないように思われるのだけど、こんな裏もあるらしいというのも、ネタとしてもどうも嘘じゃないような感じだもんなあ。実際、今の中国政府の動きを見ると、なおさらね。
 ああ、この事件、もうなんともならないのかなあ…と半分泣きながら終わります。すいません本当に。

原題:警察故事2013
監督&脚本&編集:ディン・シエン アクション監督:へ・ジュン
監督:ジャッキー・チェン リウ・イエ ジン・ティエン ユー・ロングアン

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・キョウト 浪客剣心續集

 いやあ、ほんとにすいません。この夏ならディー判事シリーズ第2弾『ライズ・オブ・シードラゴン』とか、仙台で上映されたパン兄弟祭りとか、先日新文芸坐で上映された『ドラッグ・ウォー』とか、お盆明けから東京で上映される台湾巨匠傑作選(しかし魏徳聖さんをこのカテゴリに入れるのは早過ぎるんじゃないの?)で大騒ぎしなければならない中華趣味なんですが、説明不要な諸事情につき、2年ぶりでこちらでも騒がせていただきます『るろうに剣心』


素朴な疑問。これ、公式チャンネルからの動画なんだけど、なんで中文字幕が簡体字なの?大陸での上映は確か(後略)

 監督の大友さんと我らがアクション監督谷垣さんが放つ京都編二部作(現在公開中の『京都大火編』、前作も含めた三部作の完結編『伝説の最期編』は来月公開)は、2年前に衝撃を与えた前作よりアクションが3割増し。初見ではもうニヤニヤしちゃってたまりませんでしたわ。
 この2年間、谷垣さんも日本と香港や大陸を行ったり来たりしながらド兄さんとのお仕事や『猿飛三世』や『宮本武蔵』などの日本のドラマでアクション指導をし、剣心を演じたタケルも主演ドラマでキレッキレのアクションを見せるなど、日本のエンタメにおけるアクションの重要性に改めて注目させてくれたのはいいことだなーと思う次第。
 とは言っても、中華古装片のファンタジックアクションと、フィクションではあるけど近代を舞台にした日本の時代劇は明らかに違う。ワイヤーバンバンというわけでなく、俳優たちが肉体を使ってほぼノースタントで限界に挑む、高速で力強いアクションはまさに黄金期の香港映画を彷彿とさせて観ていて楽しい。おかげで昔の香港映画を見直すと、李小龍さんや成龍さんやショウ・ブラザーズ作品がいかにあの映画に良き影響を及ぼしているかがよくわかるアルのよ。

 かつて人斬り抜刀斎として恐れられ、鳥羽・伏見の戦いを境に姿を消した流れ者の元剣客緋村剣心(タケル)が維新以 来10年ぶりに東京に舞い戻り、抜刀斎の名を名乗る剣客他を擁する実業家と対決した第1作から2年。剣心の後を継いで闇の刺客となりながらも、時代の流れ に取り残され、自らが仕えた者に裏切られて全身を焼かれた狂気の復讐者・志々雄真実(藤原竜也)が政府の転覆を狙う京都編二部作では、志々雄を始めとした 新キャラも多く登場すればアクションのバリエーションも広がって、もう観ているだけで狂喜乱舞(笑)。
 だってオープニングの志々雄と斎藤一(江口)率いる警察との対決がもうニューポリ序盤の陳國榮たちとイカれたジョーたちの「ゲーム」の場面そのものだったから(くれい響さん曰く、この場面は大友さんが最初からそれを意識してたと書かれていたのでおおやはり!と)、もうたまらんですわ。

 志々雄の企みを阻止するために剣心は京都へ旅立つのだが、彼がそこで出会う新たなるキャラたちも実に個性豊か。
 中でも京都御庭番を率いる旅籠の主・柏崎翁(田中泯)とその孫・巻町操(土屋太鳳。来年春からの朝ドラ『まれ』の主演に決定)がお気に入り。家族揃って香港アクション映画ファンで、好きな映画に『新少林寺』を挙げている太鳳ちゃん演じる操は、御庭番仲間でほのかな想いを寄せている四乃森蒼紫(伊勢谷友介、以下いせやん)を探す旅の最中に剣心と出会い、思いもよらない大乱闘を繰り広げる。もう身体はよく動くし、開脚キックも確実に決めるしで、キミはマジで谷垣さんにくっついて香港でアクション女優を目指すべきだよ太鳳ちゃん!って感心したもの。谷垣さんも話されていたけど、彼女は現場で自らアクションを提案して実践したというので、ホントに好きだし、この役やりたかったんだねー。まだ二十歳前のお嬢さんだけど、今後は大いに期待しますよ、太鳳ちゃん。
泯さんはもともと舞踏家で、俳優デビュー作こそ剣士を演じた『たそがれ清兵衛』だったけど、大友組作品では寡黙なレンズ研磨の特級技能士や土佐の怪物と言われる天才藩士を演じてきた。だけど、そんな常連でも同じ役どころは二度と回ってこない。しかも柏崎翁は元御庭番だから凄腕の武闘派!
 今年69歳という泯さんと、いせやん演じる蒼紫の対決が用意されているが、これもまさに驚愕もの!ダンサーとしてのキャリアがあるとはいっても、ここまですごいアクションを見せられるとは。いやあ、もう少しで鼻血が出そうでした。そういえばいせやんも、かつて高杉晋作を演じた時は、馬関の戦いのエピソードにてまるで『レッドクリフ』の趙雲のような敵陣突破を鮮やかに決めてくれていました。ただし抱えていたのは赤ん坊じゃなくて三味線だったけどね。

 京都に辿り着いた剣心を狙う志々雄の十本刀の一人、沢下条張を演じるのは、『仮面ライダーオーズ』で主人公の相棒にして元敵方の怪人・グリードのアンク(正確に言えば彼がとり憑いた人間だが)でお馴染みの三浦涼介。俳優の三浦浩一さんの息子さんでもあります。大友さん曰く「大火編の秘密兵器(ちなみに前作のそれは綾野)」だそうで、それゆえ大暴れします。そして剣心とはガチで戦います。しかも神社の境内の下で (笑)。ここは谷垣さん曰く「この境内の下が人が入れるよりもっと低かったら、『酔拳2』のパクリと言われたかも(詳細)」だそうですが…ほー、そうだったのか、と。 『酔拳2』観たのもずいぶん昔だったので、いつか観直したいもの。

 こんなふうにかなーり楽しみ、大喜びしてたので、前作に続いておかわり鑑賞しちゃいましたよ。完結編公開までに、できればあともう1回観たい。公開第1週でトップとったし、夏休み映画ではかなりのヒットだしね。香港映画が好きな方には前作同様楽しめる作品です。
 ただ、一部のガチな香港電影迷の方々の評価は相変わらず厳しいですね。カメラがアクションを撮れてない、編集が悪い、そして大友さんの演出と谷垣さんのアク ション演出が馴染んでないなど。(これは前出のくれい氏の批評にもあり)ええ、監督も好きだし、作品自体も好きなので、批判されたら素直に凹みます。『グランド・マスター』の時もそうだったしな!
 ワタシは大友さんのNHK時代からの熱烈なファンだし、どうしても贔屓が入っちゃうから冷静に観られないし、重箱の隅をつつけない性格です。すいません。でもいいじゃん、アタシが好きだったらそれでいいんだよ!
(こういう主観バリバリで長々と感想書くからダメなんだよなー)

 って、逆ギレはやめなさい自分よ。
気を取り直して。

 香港映画でもないこの映画の感想をここで書く理由は、上記の他にその逆も然りってことだったりします。つまり、るろけんを観てこの激烈アクションにハマった若い映画ファンには、ブルース・リーやジャッキー・チェン等の活躍する往年の名作の他、是非とも谷垣さんの師匠格であるド兄さんことドニー・イェンの出演 作品や昔のショウ・ブラザーズ作品、さらに余裕があればそれらをリメイクした現代の香港映画も観ていただきたいのですよ。ついでに京都編二部作の構成なら、 話の展開やキャラの出し方で『レッドクリフ』も参考になると思う。
 ちょうど前作公開と同じ年に、ド兄さんと金城くんの『捜査官X』も公開されているし(ただし我が街では悔しいことに未上映…) るろけんがきっかけで、ド兄さんの日本での知名度がアップしたらいいのにとか思ったけど、実際なかなか…なのがちと切ないもんで。
 でも、この映画がとっかかりになって、香港映画の広い世界に興味を持ってくれたら、約20年来の香港電影迷としては本当に嬉しいよ。だから自分もあまりマニアックにならないように心がけるよ。

 久々の記事ともあって、長くなって申し訳ない。
ただ、最後にこれを言わせてくれ。

 いっちばん最後に登場したあの「謎の男」、演じているご本人は人気があっても特に好きでもないし、今まで全くそう思ったことがないのに、あの場面でだけイーキン・チェンに見えてしまったのはなぜなんですか?えっ、気のせいだって?そうだったらスマン。あの人に愛がないとは、イーキンのファンの人には申し訳ないですね。
 まあ、おそらく大活躍であろう次作では決してそう見えないだろうね。あはははは。
てなわけでこれで終わりでござるよ。(^^;メ)

 あー、終わりにしたのに、これを忘れてた。
 『伝説の最期編』上映開始2週間後の9月26日(金)より、「バック・イン・シネマ」の企画上映として、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』が始まります。何度も言ってますが、るろけん三部作のお手本となったのがこのシリーズ。なんと初映時より上映館数が多いという奇跡が起こってます。るろけん後始めて触れる香港アクションとして強力お勧め。
 もちろん、ワタシも観に行きますよ。

  さらに蛇足。
 『ハゲタカ』以降大友組のほとんどの作品を手がけており、前作に続いて音楽を手がけているのは佐藤直紀さんですが、公開が待ち遠しい『KANO』も彼の担当です。

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