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サイレント・ウォー(2012/香港・中国)

 

『レッドクリフ』二部作の製作から『グランドマスター』の完成までの期間はだいたい5年。後者の撮影は2009年から始まったと聞くので、この期間にぴったり当てはまる。しかしこの間、トニー・レオンはそれのみ撮影していたわけではない。2年前に一時期撮影が中断していた時、『大魔術師』とこの『サイレント・ウォー』の2本に出演している。この2作の共通点は、周迅と共演していること、そして舞台が大陸であるということか。
 ただし、日本公開時のダイアログは前者が普通話、後者が広東語。なんでだ。


 1949年、新中国設立前夜。共産党の特務機関「701部隊」の諜報員200号こと張學寧(周迅)は、ボスの老鬼こと郭興中(王學兵)に、暗号解読のために優れた聴覚を持つ者を探すという任務を受ける。上海に飛んだ彼女は、 聴力に優れたピアノ調律師の羅耳三(パル・シン)に目をつけるが、その間一騒動に巻き込まれる最中に出会ったのが、羅の相棒で目の見えない何兵(トニー)。彼の聴力に羅以上の可能性を感じた200号は部隊にスカウトする。その目論見は成功し、何兵は国民党の通信傍受に成功する。
 何兵は部隊の重要人物になり、同じ部隊に所属する沈静(メイヴィス・ファン)と恋仲になって結婚する。そして200号は郭から老鬼の地位を譲られて、新たなミッションを与えられる。それは通称「重慶」という国民党で重要な位置を占めるスパイの正体をつかむことであった…。

Silentwar


 中国の作家・麦家による長編小説『暗算』を映画化したということだが、すでに2006年に大陸でドラマ化されており、この麦家自身が脚本を手がけたらしい。
そんなベストセラーである原作だが、これを映画化したのが、我らが無間道脚本家コンビ、アランさん&フェリックスさん。
 時代設定は新中国創立の1949年頃。背景には国共内戦。そしてメインは共産党の特務機関。なるほど、確かにこれなら、この批評みたいに「国家礼賛のプロパガンダ」って言いたくなるでしょうねー。
 でもさあ、それ言ったら古今東西の諜報ものはすべてプロパガンダになるってことかよ。舞台が中国で何兵の目が見えなくなった原因が日本兵にどやされたから抗日でプロパガンダって安直すぎてつまらないし馬鹿らしい。映画は娯楽なんだから、こんなところにまで嫌中思想持ち込まないでほしいよ。

 とはいいつつも、物語的にはかなり辛くて厳しい。
200号と何兵は安直な恋愛関係にはならなかったものの、能力を利用し、それを発揮させたことで、かけがえのない仲間としての繋がりが二人の間に生まれたのだろう。そもそも彼女が恋愛体質ではなさそうなキャラであることは明示されていたようだし、国民党員の父親をもったことで不当な評価を受けていた沈静を何兵が支えられたのは、やはり自分も部隊の中では異端だったからじゃないのかな。
 だからこそ、後半の作戦のあのしくじりを大いに悔いたのはわかるんだけど、いくら何でもアレは…。それが安易に読める展開であったから、なおさら辛いのよ、ああ。

 以上のような部分を割りきって、ファン的にはトニーの姿を愉しめばいいやと思いましたよ。まあワタシも寝顔がいいなあとか思って観ていたわけだし。
 「目で殺す」キャラと言われてだいたい四半世紀のトニーだが、その眼力を封印させて演技派の本領を発揮させたいと願うクリエイターが多いのか、失明する役どころは『楽園の瑕』  『地下鉄』未公開の《偷偷愛你》(多分観てないようなのだが…。参照は大陸版wikipedia)に続いて4作目だそうだ。なんでそんなに眼神演技を封印させたいんだ香港映画人(苦笑)。
 序盤に見せる白濁した瞳はあまりにも痛々しい。それでいても見つめられているような気にはなるんだけど、それでも痛々しい。そんな彼も視力が回復できることになり、手術を受けて見えるようになった喜びやら、沈静を見つめる眼差しの柔らかさなどはさすが眼神って言いたいんだけど、それでも悲劇が…。
 でも、キャラ設定はちょっとブレていたんだじゃないかな。200号と出会った時の、これまで街で必死に生きてきた人間ゆえのスレてて人をなめくさってて、それでいてどっか可愛さのある雰囲気(割と得意な感じのキャラね)がよかったのに、諜報局に招かれてからはどんどんシリアスになっていったわけだし、うーん、そのへんが個人的に惜しいです。

 まあ、感想はこんなんでいいかなあ。比較的ネタバレ少なめでお送りしました。
しかし、『グランド・マスター』公開と今年のベルリン映画祭審査員を経て、現在休養中のトニーだけど、髪が伸びた頃にはゆっくりペースでも構わないから、香港での新作に出演してほしいなあ。一代宗師を含んだここ数年の作品で、香港映画に関心ない人々にはすっかり「中国の俳優」扱いされているみたいだしなあ。あ、『1905』以外の日港合作の企画でもいいんですよ。外野に余計なことを言わせられないしっかりしたオリジナル企画、出てこないかなあ。ワタシが出したいくらいだけど、プロちゃんじゃないですし、場末のアマチュアブロガーですから。

原題:聽風者
監督&脚本:アラン・マック&フェリックス・チョン 原作(『暗算』)&脚本:マイ・ジア 製作:ロナルド・ウォン&チャーリー・ジュオ 音楽:チャン・ウォンウィン 撮影:アンソニー・プーン 編集:パン・チンヘイ
出演:トニー・レオン ジョウ・シュン メイヴィス・ファン ワン・シュエピン パル・シン キャリー・ン

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