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危険な関係(2012/中国)

 今年上半期、中国をはじめとした中華圏で大流行したのは、『猟奇的な彼女』のチョン・ジヒョンが久しぶりに主演した韓国ドラマ『星から来たあなた』だったという。また、台湾在住の弟によると、若者も聴くのはK-POPがほとんどとのことだとか。10年くらい前から台湾で韓国ドラマが人気になっているとも聞いていたし、あれからかなり年が経っても、思った以上に大韓娯楽は中華圏の若者に浸透しているようである。日本も今、アミューズが所属アーティストの中華圏ライヴを次々と開催したり、吉本が芸人を台湾や香港のTV局に送り込んでいるようだが、もう少し早く動いてもよかったんじゃないの?と思った次第。まあ、いろんな事情もわかってるんだけどね。

 そういえば、ペ様が日本に上陸して猛威を振るってから早くも10年。お好きな方には本当に申し訳ないのだけど、韓流ブームのあの大嵐のせいでそれ以外のアジアンエンタメが駆逐された感があり、これ以後どうも大韓娯楽についての印象が悪くなってしまったのである。でも、韓国映画はある程度好きだ。今でもポン・ジュノが新作を撮ったといえば観に行くし、香港より生々しいバイオレンスも薄目を開けながら観てしまう。まー、たまにそのくどさが食傷気味に感じることもあるけどね。
 まあ、そういう映画が目立つせいで、カンフー以外の香港映画がいつも韓国映画に間違え…げふんげふんげふん。

 気を取り直し、そんなワタシが初めて好きになった韓国映画は『8月のクリスマス』。その映画を作って脚光を浴びたホ・ジノ監督は、近作を大陸で撮っている。それをすっかり忘れていた。最初の作品『きみに微笑む雨』は韓国との合作扱いだったが、同郷のチャン・ドンゴンを招いて完全大陸資本で作った2作目が、この『危険な関係』。原作はラクロが書いた小説だが、これまでに何度も映画化されている。数えてみたら9回目だそうだ。ちなみにアジアでもすでに2回(最初は1978年製作の藤田敏八監督による同名の日活ロマンポルノで、その次がペ様主演の『スキャンダル』)映画化されている。詳細は公式サイトにあり。一番有名なのはロジェ・ヴァディム監督の最初の映画化作品(1959)と、スティーブン・フリアーズ監督、グレン・クローズ主演のイギリス映画(多分。1988)、ミロシュ・フォアマン監督のフランス映画『恋の掟』(1989)かなあ。



 1930年代、上海。謝易梵(シエ・イーファン/ドンゴン)は社交界でもよく知られた名うてのプレイボーイ。現在は大叔母の雪姑(リサ・ルー)の元に居候し、気ままに暮らしていた。ある日、ファンは大叔母を尋ねてやってきた未亡人の杜芬玉(トゥ・フェンユィ/ツーイー)と出会う。彼女のかつての夫は東北にあった大学教授であり、夫亡き後も学生や知識人を援助したり、子供へ教育を施そうとして社会活動に邁進していた。
 上海の社交界の花にして実業家の未亡人・莫婕妤(モウ・ジエユィ/セシリア)は、再婚を目論んでいた大富豪が女子学生の令嬢・貝貝と婚約したことに怒り狂い、ファンに貝貝を誘惑することを依頼するが、彼は断る。その代わり、パーティーに寄付の呼びかけのためにやってきたフェンユィを見て、生真面目で亡き夫への忠誠を誓った彼女を自分に夢中にさせることかどうかで、モウ夫人と賭けをする。賭けたのは自分の相続した土地。そしてフェンユィを落とせば、彼はモウ夫人を好きにできる権利を得られる。
 こうして始まった危険なゲームは、貝貝と彼女に思いを寄せる貧乏な美学生戴文舟(ショーン・ドウ)を巻き込み、意外な方向へと展開するのであった…。

 この記事を書くために、公式サイトと共に簡体字版Wikipediaも調べたのだが、これホント?最初、ホ・ジノさんはレスリーとマギーで撮りたかったの?つーことは、ドンゴンとセシの役どころを当てるつもりだったのか?うーん、レスリーのプレイボーイ役はこの時代だと『花の影』を思い浮かべちゃって、あまり新味がない。マギーは上手いからセシの演じた悪女も朝飯前な気もするが、やっぱり実現しなくてよかったんじゃないかなあ。

 希代のプレイボーイがゲームに乗り出し、標的と戯れているうちに恋に落ちてしまうという設定には特に新味はないので、ここはどのように見せるかという点でチェックしてしまう。
恋愛ものが上手いホ・ジノさんなので、そのへんは一工夫をしている。ファンとフェンユィの駆け引きや、ファンとモウ夫人の罠にかけられて恋に落ちてしまう貝貝とダイの揺れ動く感情を表すのには、クローズアップが多用されていた。正直、顔相撲…もといクローズアップが多いと、ちょっとくどさも感じないわけではないのだけど、王道な撮りをしているので、割とあっているのじゃないかと思う。

 これを観た時は、ちょうど金像奬を始めとした中華圏の主要映画賞の最優秀女優賞を一代宗師でツーイーが総なめした頃。ツーイーは基本あまり好きではないのだが、派手な悪女や跳ねっ返りばかりだけじゃない幅の広さを身につけてきたのはよくわかる。だから身持ちの堅い未亡人役も違和感なくしっとり演じられているなと感じた。うーむ、だけど、彼女の演じるモウ夫人も見てみたかったかもね。

 ドンゴンは、もしかして唯一の韓国人キャストか?中国語映画には『無極』で経験があるので、特に違和感がない。言葉も多分自分の声だよね?この人、やっぱどえらいハンサムだよなー、と改めて思ったよ。レスリーよりも適してるんじゃないかな。…ええ、もちろん、惚れないよ全くもって(笑)。
 ところでドンゴンといえば『無極』で見せてくれたあの豪快なドンゴン走り。これはジョーと共演した日韓合作『マイウェイ』でもそれを見せてくれていたので、ものっそい顔して猛烈に走るドンゴン走りがこの映画でも見られたらもっと嬉しいわーと思っていたのだが、うん、さすがにここではなかったね。あはははは。
 そしてセシ…。あの忌まわしい事件から歳月が経ち、女優復帰して久しくなったが…、うーん、うーん、もう『星願』の頃の、ユニークな声の愛らしい彼女はいないんだなと思って寂しくなる。妙に浮いて見えるマスカラがなんか似合ってないなあとか、号泣する時にあげる悲痛な叫びがなんか聞き苦しいとか、なんかもにょりたくなる要素も多かった。もうすっかり大人だから、こういう悪女役もこなせるんだろうけど、逆にフェンユィが演じられるってわけじゃないだろうしなあ。もったいないとは思うけど、それじゃ彼女に何が似合うのか?と問われてもまた悩む。
 後は貫禄のリサ・ルーさんとか、『サンザシの樹の下で』のショーンくん(大陸俳優で英語名持っている人って珍しいよな…って以前も書いてたわ。ははは)に手を振らせてもらった次第。まあ、そんな感じかな。

 最後に私的な話になるが、実は今現在、我が街で公開された新作中華圏映画は、これと3月に上映された『三姉妹・雲南の子(残念ながら予定が合わずに断念)』の2本しかない。この状況はあまりにも寂しいなあ。現在の日中関係が映画配給に影響してるとか言われたら、それはすごくもったいないなと思う。まあ、多分東京での入りとか何だらがあるんだろうなと思うのだけど、こんな状態でシネマートでたくさん上映されているような香港映画の地元配給を願うには、やっぱり厳しいのかしらね…(泣)。

 と、暗い話で締めてしまってごめんなさいでした。

原題&英題:危險關係(Dangerous Liaisons)
監督:ホ・ジノ 脚本:ゲリン・ヤン 原作:ピエール・コデルロス・ド・ラクロ
出演:チャン・ツーイー チャン・ドンゴン セシリア・チャン ショーン・ドウ リサ・ルー

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