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2014年4月

ドラッグ・ウォー 毒戦(2013/香港・中国)

 自分のフォローしている範囲だけなのだろうけど、やっぱりトーさんって人気がある。まあそうだろうなあ、王家衛みたいな寡作の作家じゃないし、 映画祭に出せるアートものも撮れれば、徹頭徹尾エンタメな作品も作れる。日本では俗に言うノワールものばかり上映されているが、恋愛ものもコメディも撮れる。
 最近は『名探偵ゴッド・アイ』がコメディ路線であったけど、日本での宣伝は、えーっと(後略)。

 そんなわけで、今年初めに主要都市で上映された『ドラッグ・ウォー』は、ノワールファンには安定の路線。ただ、いつものトーさんノワールと違うのは、舞台は中国であるということ。かつて『エレクション』二部作が大陸の上映を拒否されたということを覚えているのだが、やはり大陸で上映するなら、大陸向けの作品を作れってことなのかしら…などと思いながら、台湾からの帰りの機内上映で観たのであった。

ちょっと珍しい予告を発見したのでこれを貼る。
ロンドンで行われたChina International Film Festivalに出品されてたらしい。


 中国・津海。公安の麻薬捜査官ジャン(孫紅雷)が体内に麻薬を隠した運び屋を検挙している頃、香港人のテンミン(古天楽)という男が衝突事故を起こして病院に運び込まれる。テンミンは津海に工場を持ち、そこで麻薬を密造していたが、工場が爆発を起こして家族が巻き込まれ、死んでしまったのだ。
 中国では麻薬に関わる犯罪は間違いなく死刑となる。生き延びることを願う彼はジャンが今追っている、津海と近隣の粵江を仕切る黒社会の大物の検挙に協力することにするが…。

 冒頭、長距離バスに潜入してたジャンが運び屋を捕まえ、呑み込んでたヤクの包みを吐き出させるくだりがリアルでエグい。いやまあ、実際にヤクを運ぶ時もそうらしいから、決してオーバーではないんだろうけどね。最初のうちにリアルに状況を見せておくのって、『エレクション』二部作にもどっか通ずるかな。あ、エグさもね(笑)。
あ、エグいと言っても決して嫌な意味で言ってるわけじゃないよ。頼むから誤解しないでくれよ。こういう言葉だけ見て文句言われるのはこっちもイヤなもんでね。
 百戦錬磨の強者どもを次々に捕らえてきたジャンの元に突き出されたのが香港人ディーラーのテンミン。ヤクは持ち込んだりしただけでも当然重罪、最悪死刑。中国で日本人の死刑が執行されるのが、だいたいヤク絡みであることを思えば、それは納得かと。そんなこんなでいつ爆発してもおかしくない、ヤクをめぐる二人の共闘が始まる。

 従来の香港映画ではとかく大陸のヤクザ等が悪役や、主人公側を脅かす存在として描かれてきたが、今回は大陸が舞台なので、悪役に立つのは香港人である。まあ、トーさんはこれまでも反社会的な人間を主人公に据えてきているので、これに文句を言うことはないだろう。そうなるど、テンミンとジャンがどのように話を転がしていって、どんな結末を迎えるかという点に興味がわく。
 妻子を失っても自分の商売にこだわるテンミンと、巨大な売薬組織に立ち向かって自らも危険に晒されるジャン。社会情勢とかイデオロギーとかの現実問題は置いといて、非常に濃く骨太なノワールとなっている。大陸のインディペンデント映画人も自国の闇をバイオレントに描くことができるが(ジャンクーの新作『罪の手ざわり』(リンク先音が出ます)ってそういう路線だよね?未見だけど)、トーさんが今までの映画作りのなかで培ってきたエンターテイメント性も、このようにうまく大陸の映画作りに載せることが可能なのね、と感心した。まあ、今の大陸の検閲制度やら何やら考えたら、ラストはああでなきゃいけないだろうしね。
 そして待ってましたとばかりに登場するのが、香港から来た7人のヤクのディーラー(林雪、カートン、ミッシェル・イエ他)。ここまたメンツが豪華なので、もっと活躍してくれてもよかったのよ、などとも思えるけど、まあ、それはまた別の話なのかもね。

 しかし、古天楽と孫紅雷。これが初めての共演じゃないけど、どう見ても同い歳には見えないんだよねえ…と意味なくため息をついて、この感想は終わる。なんかシンプルですいません。

監督&製作:ジョニー・トー 製作&脚本:ワイ・カーファイ 脚本:ヤウ・ナイホイ
出演:ルイス・クー スン・ホンレイ クリスタル・ホアン ウォレス・チョン ラム・シュー ラム・カートン ミッシェル・イエ

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《大鬧天宮》(2014/香港)

 今年の秋、東京で星仔の監督最新作『西遊・降魔編』が公開されるとのこと。
星仔は昔、出演作の『チャイニーズ・オデッセイ』で西遊記を取り上げたので、再挑戦という形式にはなるんだろうけど、前者は監督専業で取り組んだんだよね、確か。といいつつ、実は両者とも縁がなくて観ておりません。すみません、こんな香港電影迷で。
昨年末から今年の始めにかけて上映された香港映画には面白い作品が多かったらしく、クリスマスから旧正月にかけて現地で作品を観られた方の感想をSNSで読んでは羨ましく思っていた。

 2月に台北に行くことになり、まず考えたのが、なにか香港の賀歳片が観られないかということ。一番観たかったのはデレク・クォック監督の《救火英雄》だったけど、これは公開からかなり日も経っていたので断念。  この時は《KANO》が公開前で、ごりごりの台湾ローカル映画《大稻埕》がヒットを飛ばしていたので、ほとんどの映画館でかかっていたのだが、その中で《西遊記之大鬧天宮》(台湾&大陸題)の上映本数がそこそこあったので、1日目の夜に観ることにした。そう、これもまた西遊記もの。監督はなんと意外にもソイ・チェンさん。こういうのはアンドリューさんやゴードン・チャンさんが手がけそうな印象があるんだけどねー。


 女媧によってあらゆる命あるものが生み出された世界の初めの頃。その世界を統べる者の座を争い、玉皇(ユンファ)と牛魔王(アーロン)が激しく戦っていた。その戦いは玉皇の勝利に終わり、牛魔王は地上へと追放される。女媧は最後に石の卵を抱く大きな山ー花果山を生み出して命を燃やし尽くし、その石の卵からは、猿が生まれた。その猿は地上に降りて成長し、仙人の菩提祖師の元で修業を重ね、孫悟空(ド兄さん)と名付けられる。一方、牛魔王は玉皇に復讐を誓い、悟空を自分のもとに引き入れようと企む―。

 職場で『西遊記』の原作について調べたことがあるのだが、完全版の翻訳で全10巻(岩波文庫)になるそうだ。ちなみに岩波少年文庫だと全3巻。バリエーションが多くなるのは当然だ。星仔の作品をまだ観てない電影迷失格者として思い浮かぶ西遊記は70年代後半に日テレとTBSで放映されてた2作品。前者は日本初の特撮&中国ロケ敢行の1時間ドラマ(だったよな?)、後者はドリフターズの各キャラを西遊記に当てはめた人形劇。まあこれは、多分アラフォー以上の記憶にだいたいあるんじゃないかなと思うんだけど、そうじゃなければすみません。

 この映画は、その長い『西遊記』の本当に最初の部分を現代的にアレンジ。VFXに『アバター』や『300』のハリウッドのスタッフを起用していることもあり、かなり上質のチャイニーズファンタジーに仕上がっている。3Dの効果もよく出ていて、いい具合の「つくりもの」っぷりが気持ちいい。
 各キャラの造形もなかなかいい味を出している。玉皇役のユンファは言うことなしだが、それ以上にアーロンの牛魔王が悪役なのにええオトコ。普通、牛魔王はミノタウロスっぽく描かれる(=牛頭の巨人ですな)ことが多い気がするのだが、長い蓬髪に黒く長い角が生えてて、ちゃんとアーロンの体型にもフィットして貫禄が出ている。『コールド・ウォー』の彼もすごかったけど、こういう役もこなすようになってきたのね、アーロン。ケリーの観音様は神々しく、ピーターの二郎もずる賢い感じがよかった。衣装にはウィリアムさんとチョンマンさんという香港二大デザイナーが起用されているのだが、来年の金像奨では当然ノミネート確実かな。

 で、主役のド兄さんなのだが…猿です、どこからどう見ても猿です。マチャアキや某グループの人以上に猿です。ものすごい猿です。ホントにド兄さんなのかと疑いたくなるくらい猿です。いや、アクションはすごいので間違いなく中の人はド兄さんに違いありません。固く信じてます(何訳わかんないこと言っているんだオレ)。

 ※追記・上記ではさんざん猿呼ばわりしておりますが、ド兄さんの悟空は原典でもモチーフではないかとされている(ただwikipediaでは異論があるとも述べられていますが)金絲猴をモデルにして作られた造形のようです。

 友達になる九尾の狐(白面の者ではない)は女の子なんだが、狐モードと人間モードが極端に違って人間モードがコスプレっぽく感じたから、こっちはもうちょっと特殊メイクバリバリでもよかったと思ったな。
 なお、この作品もかなり長い時間をかけて製作されているそうです。もちろん、谷垣さんや下村さんなど、日本のスタントスタッフも多数参加されていますよん。

 しかし、意外だったのは、暴れん坊として描かれる孫悟空を、玉皇と牛魔王の戦いに巻き込まれたフツーの猿(!)としてキャラ設定したこと。こういう読み取りでいいのかちょっと自信がないのだが、こういう描き方は新鮮だった。でも、もっと暴れてもよかったんじゃないかな、と個人的に思う。

 ネタバレになってしまうが、原作が有名なのであえて書くが、ラストは500年封印されて、玄奘三蔵によってそれが解かれることを暗示させるようになっている。これは続編を見越した終わり方なのは言うまでもないけど、はたして、いつ撮影開始になるんだか。これはのんきに待つしかないね。

 そうそう、台湾上映だから、もしかしたら國語版だろうかと思っていたら、ダイアログは広東語でした。これは嬉しかったなー。考えたら台湾の劇場で香港映画を観たのって、おそらくこれが初めてなんだよな。

英題:The Monkey King
監督:ソイ・チェン 原作:呉承恩 撮影:アーサー・ウォン 衣装:ウィリアム・チャン、ハイ・チョンマン 
出演:ドニー・イェン アーロン・クォック チョウ・ユンファ ピーター・ホー ケリー・チャン

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《天台》(2013/台湾)

 自分が忙しくなったこともあるのだが、どうも最近音楽方面にとんと疎くなってしまった。それは台湾ポップスだけでなく、洋楽でもJ-POPでもだ。
 ここ最近の台湾ポップスの動きとしては、五月天(Mayday)がアミューズに所属したこともあり、flumpoolとのコラボをしたり、来日ライヴも行っている。あと、連ドラの主題歌も決定してかなり勢いに載っている。この調子で日本での人気を定着させてね。大いに期待してるよん。
 また、盧廣仲(クラウド・ルー、通称おかっぱ)やSTAYCOOLも日本に進出し、J-WAVEなどを聴くとたまーにかかっている。そんなわけで台湾ポップスを日本で聴く機会は思ったより増えてきた。まあ、ウェザーガールズのように日本でも活動するアイドルグループもあるしね。ちゅーみ☆-(^ε^)←最近覚えた(笑)。

 で、本題。一応自分はジェイのファンということになってるらしいが、最近は新譜も買えてない。そういえばまだ観てないんだよ『ブラッド・ウェポン』。あと『パンダマン』も中断したまんまだ(アレは特撮ヒーローもののくせに、普通のドラマと同じ45分の尺で作ってるから、間延びした印象があるんだよなー>独り言)2月に何をトチ狂ったのかTVの地上波で『グリーン・ホーネット』が放映されて、まあ楽しくは観られたんだけど、SNSでは微妙な反応が多々見られた。まあねー、この人は俳優よりはやっぱり歌ってなんぼの人だからねーとは思ったけど、韓国人かと言われたのにはものすご~くがっかり。韓国系アメリカ人俳優でジョン・チョウという、ジェイに似た名前の人がいるから混同されやすいらしい。
 まあ、香港ポップスも最近低調だし、映画公開も地方では(強調)減っているからなあ…。

 そんなわけで去年ジェイファン方面でちょっと話題になったものの、その後あまり大きな広がりを見せず、日本公開も決まらなかったこの監督第2作《天台》には案の定注目しなかったのだが、なんとJALの機内上映に選ばれ、おまけに日本語字幕付きであったので、台北行きの便で観たのであった。

 時は古き良き時代、舞台は中華圏のどこかにある架空の都市・加利利(ジアリリ)市。高層ビルが立ち並ぶこの街では、ビルの屋上に下層市民のコミュニティがあり、その地区は「天台」と呼ばれていた。
 ポーさん(エリックとっつぁん)の漢方薬局で働くワックス(浪子膏/ジェイ)は、幼馴染のオデン(黒輪・柯有倫)、タマゴ(蛋花)、アランの4人の幼馴染といつも一緒につるんでいる。
天台と地上を行ったり来たりしてひっかき回してるワックスの心のアイドルは、天台に設置された大きなビルボードに「いる」大女優のシンアイ(李心艾)。彼にとっては手の届かない夢の恋人だが、ある日、地上で行われた撮影現場に紛れ込んでしまい、そこでシンアイと運命の出会いをしてしまう。彼女もまた、ワックスにひかれ、二人は急速に接近して、幸せな日々を送る。
 しかし、加利利の市民会長ライさん(シュエチー)のもとで仕事を得たオデンがしくじってしまい、ワックスは友情と恋愛のどちらかを選択しなければならなくなる…!



 監督第2作目はかなり難易度が高いと思われるミュージカル。
まあ、ジェイは音楽の申し子ですから(マジメに言ってます)、そんなに大変じゃなかったかもね。日本だと絶対失敗する、というか絶対無理ですもんねえ。ミュージカル嫌いも少なくないし。
 舞台設定はうまい。海港市とか光明市など、最近は架空の都市を設定して大陸でもうまく対応できるようになってる。実際ロケも台湾だけじゃなく、大陸でも行ったらしい。時代も具体的には設定してないようだけど、一目見て過去であるとわかる。それがいつなのかは人によってまちまちになるようにね。ワタシのイメージだと70年代。
 普通貧民街というと、町はずれやダウンタウンのビルの合間に設定されるが、ここではなんと屋上に設定されてるのも面白い。ビルの上の狭さがちょうど舞台のように見えて、ますますミュージカルには効果的。おもちゃ箱を詰め込んだようなデザインは、『アマルフィ』や『セデック・バレ』を手掛けた赤塚佳仁さん。最近は中華圏での活動が多いようです。
 そしてキャストも相変わらず豪華。仕事仲間や弟分たちからエリックとっつぁんに加え、今回はなんとあのシュエチーさんが大陸から登場。派手なシャツで胡散臭さ全開で、しかもしっかり馴染んでる。
 ヒロインのリー・シンアイ小姐は大抜擢、なのかな。たぶんこれで初めて名前を見たので。見る角度によってそれぞれ違ったいろんな女優さんの名が浮かぶのだが、誰にも似ていないってかんじかな。そして、柯有倫ってああそうか、アラン・コーか。…ドラマ観てないと、やっぱり覚えないなあ、台湾の若手は。

 とかなんとか長々と書いてきたけど、作品としてはまあ普通、かなあ。
明るく楽しいけど、特にこれ!という決めてがなかったので、日本公開は難しかったのかもね。ジェイの次回監督作は、はたしてどんなものをもってくるのだか。
 それで思い出したのだけど、香港国際映画祭の最中にtwitterでみかけたこの情報には大いに驚かされました。これ、どこまで本当なのかなあ。そして10年越しで続編撮るのか、イニDを…。

英題:The Rooftop
監督&脚本&出演:ジェイ・チョウ 製作:ウォン・ジーミン&ウィール・リュウ 撮影:リー・ピンビン 編集:ウェンダース・リー 美術:赤塚佳仁
出演:アラン・コー リー・シンアイ シュー・ファン ダントウ エリック・ツァン ワン・シュエチー デヴィッド・チャン

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