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2014年1月

2013funkin' for HONGKONG的十大電影

恭喜發財,萬事如意!

♪我恭喜你發財,我恭喜你精彩!…と○○の一つ覚えのように、今年もまたこれを貼るアルよ。


 というわけで、今回は旧正月に合わせての更新です。

 blog開設以来、この個人的な電影奨も10年欠かさず続けてこられました。と言っても最近は、どうしても地元の劇場公開が少ないので、年末年始に帰省した時に観た分まで入れないと成立しないし、一般公開での再見作品も入るようになってしまった。
 ここで、昨年の農歴初一から農歴晦日までに初めて観た映画を対象とする、としよう(笑)。
 さて、基準も確定したので、カウントダウン始めます。

10 恋はあせらず

 ちょうど20年前の作品で、今年劇場で観た作品としては一番古い(苦笑)。
 レスリーも家輝さんも今の自分より若くてかわいいのはもちろんのこと、香港映画黄金期の軽いコメディを久々に観られたのは嬉しかった。そして、返還を控えても明るくいようとする結末に、現在に至るまでのいろんな出来事を思い出して切なくなるのであった。

9 ピクニック

 現在の台湾映画全体の流れから見ると、ミンリャンの映画はあまりにも異端である。だけど彼も20年間全く変わらず、自分の個性と主張を全面的に出し、ぶれることなく10本の作品を輩出してきた。好きだ嫌いだとさんざん話題にしたが、この作品はやっぱり彼らしくあり、集大成への覚悟が見える。その潔しさを尊敬する。本当にお疲れ様でした。でもいつか復活してね。

8 太極二部作

 武侠+スチームパンク+ゲーム+バカ。これほど胸を躍らせる(個人的にはゲームであまり胸は躍らないが)要素がいっぱい詰まった作品なのに、大陸ではあまりヒットせず、日本でも地味に公開というのはあまりにもさびしすぎるんだが、これってどうよ。時間がかかってもいいから、3作目もいつか作ってほしいですよ、ステ監督よ。 

7 名探偵ゴッド・アイ

 どうやら一般的には、「ジョニー・トー=ノワール」とくくられているらしく、現在公開中の『ドラッグ・ウォー』は高評価な様子。でも、アンディとサミーという黄金カップルのクレイジーなラブコメもまたトーさん作品の醍醐味であるのよ。いや、ワイさんの醍醐味なのかもしれないが、久々なので多少のやりすぎ感には片目をつぶることにしましょうね。

6 モーターウェイ

 去年の初めからWOWOWに加入しているので、これは劇場よりも早く観ることができた。イニD再びというより、ショーンと秋生さんの師弟もの映画として観るとかなりハマる。ロケ地もいいチョイスで、観塘が出て嬉しかったわ。80年代っぽいが決してダサくは聴こえない音楽も印象的。でも、やっぱり最初は映画館で観たかったわ。

5 低俗喜劇

 映画をめぐる映画は面白いに決まってる、というのが我が持論(だから園子温の『地獄でなぜ悪い』も思いっきり楽しんだ)。日本ではなかなかわかりにくいプロデューサーの仕事にスポットを当てたこの作品は珍しいタイプなんだけど、なんといってもパンちゃんだから安定的にハチャメチャなのはお約束。これでスターダムに上ったダダ・チャンがどうかこれからもうまくお仕事できますように。

4 グランド・マスター

 …すみません、本当にすみません、別blogにアップした記事では洋画ベスト1にしているのですが、向こうはお行儀がよくて、こっちはそうでもないので、こんな位置です。だって言い訳したら長くなるけど、3位以上の作品があまりにも魅力的だったのだもの。ホントに許してくださいよー。てゆーか王家衛は今後短い期間で映画を作ることにもっと慣れさせた方がいいぞ。

3 激戦

 男くさい作品が多い香港映画において、格闘技ものはまさに究極の男くささ(※意見には個人差があります)。自分の身体一つで戦い、傷つきつつも立ち上がる男の姿は美しい。それを演じるのが、あまり格闘技イメージのない細身のニックさんだったらなおさらね。マカオロケも効果的だし、明日への活力にもなる映画だった。

2 総舗師―メインシェフへの道

 活力は食べることでも養われるのは当たり前。16年間長編劇映画を発表してこなかった陳玉勳の新作は「食」にスポットを当てた。しかも身近にあったのにいつの間にか埋もれてしまった食文化を。
 地方の隠れたお宝を掘り起こして楽しいエンターテインメントに仕上げたのは『あまちゃん』にも通ずるかなと思いつつ、笑いのツボは昔から変わってないのにホッとした。新作も近いうちによろしくねー。

1 コールド・ウォー

 一昨年の暮れの香港旅行ではうっかり見逃してしまい、金像奨の受賞でやっぱり観ておきたかったーと悔しく思ったが、意外と早く日本上陸してくれて嬉しかった(地方上映が少なかったのは残念だが )。映画界のキャリアは長い新人監督コンビと、香港市街地を有効に使ったロケとストーリーテリング、円熟の域に達したスターたちと期待の若手男優の共演、しかも社会派エンターテインメントと、香港映画の今後に大きな影響を及ぼす要素が多いこの映画を、やっぱり1位にしたい。続編ももちろんだけど、コンビの次回作も楽しみです。

主演男優賞  トニー・レオン『グランド・マスター』

 まーねー、賞レースでいくつ主演男優獲れるかとかは下衆な話だからしないけど、金像やAFAで獲れなくても、ワタシの心の中での最優秀主演男優賞ですから…って自分で言ってて超恥ずかしいぞおい(笑)。

主演女優賞   ダダ・チャン  『低俗喜劇』

 引退話やら行方不明やらいろいろあったけど、せっかく久々に香港から登場した若手女優さんなのだから、これからどう化けるのかを見守っていきたいよ。だからスキャンダルは横に置いときたい。今後の香港映画に大きくかかわる女優さんになってほしいしね。

助演男優賞   アンソニー・ウォン『モーターウェイ』

 師匠の秋生さんって結構好き。いぶし銀で思慮深いけど、昔は凄腕だった(やんちゃだった)ってイメージが漂ってくるもんね。

助演女優賞  クリスタル・リー 『激戦』

 ダンテさん作品に欠かせない子役ちゃん(マレーシア出身)だそうです。
子役ってどうも苦手なんだけど(特に邦画)、プロであってもこの子はよかったもんな。
やっぱりこれから本格的な女優さんを目指すのかな?

監督賞  チェン・ユーシュン 『総舗師』

 そりゃもう復活を祝して、賞状も商品も出さないけど。
早い時期での次回作も期待してますよー。

新人賞   リョン・ロクマン&サニー・ルク  『コールド・ウォー』

 先にも書いたけど、香港映画の未来を期待しての選出。将来、中国映画のローカル版という目で見られることが大きくなっても、香港で撮る香港映画の意義と価値を明確にするためにも、今後の活躍に期待したい。大陸で撮るのもありだけど、それでも香港映画ってどういうものかが示してもらえると嬉しい。

永年功労賞   ツァイ・ミンリャン  『ピクニック』

 作品的には好みで分かれるけど、やはりこの方が台湾で映画を作ってきたことの大きさを今頃しみじみとかみしめてる。未見も合わせて過去作品を見直したくなってるもんなあ。
そして台北に行ったら、蔡明亮珈琲走廊にも行かなきゃなあ。コーヒー飲めないけどさ。

 さて、長年勝手に実施してきたこの電影奨ですが…ええ、今後も続けますよ。
場末の個人blogの、全然権力も影響力もないアワードですけど、自分が何を評価するか明確に分かりますからね。
 でも今年はblog開設10年ということもあるので、これまでの電影奨を振り返って、ここ10年の香港映画の流れを自分なりにおさえつつ、香港映画への理解ももう少し高めたいなーという目的で、これをベースに久々にZINEを作って(もちろん以前作ったこのシリーズで)、地元ブックイベントに出そうかと計画しております。
 そんなわけで、この冬から春は、台北旅行をはさんでこれまでの振り返りを行います。
blog更新は再び不定期となりますが、何かありましたら記事を更新いたしますし、今後ともお付き合いいただければ幸いです。

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ゴールデン・スパイ(2012/中国・香港)

 思えば80年代から90年代にかけての、俗に言う香港映画黄金期には、映画史に残る名作や傑作と同じくらい、珍作や奇作が量産されていたと聞く。ユンファもアンディも出演作が全てスマッシュヒットを飛ばしたわけじゃなく、「どうしてこんな映画に出たんだ?」と言われたものも少なくないらしい。それはトニーやレスリーも然り。そういう映画は日本でもソフト化されないことが多く、観るには現地のソフトを当てにするしかないのだが、もうソフト化すらされずに闇へ葬り去られているってことが多いのかもな。
 あの頃から約20年が過ぎた香港映画界では、製作本数が大幅に減少し、大陸のスポンサーからの出資を受けた合作が多くなっている。その大陸でも、海外で観られる作品もあれば、これはどうも…的な作品なで何でもあるのだろうけど、はたしてこの『ゴールデン・スパイ』は誰のために作られた作品なのだろう。

Switch

 監督の名前は孫健君。聞いたことがない名前だなーと思ったら、この作品で監督デビューしたそうだ。
 ノリのいい主題歌《天機》は五月天(Mayday)の阿信と魔幻力量(Magic Power)のコラボによるものらしい。(表記は「MP魔幻力量feat.阿信×嚴爵。PVはこちら
 なお、大陸では3Dで公開されたとのこと。


 浙江博物館と台湾の故宮博物院にそれぞれ一幅ずつ収蔵されている黄公望の書画「富春山居図」が、台湾で一緒に展示されることになった。しかし、書画の片方が故宮から盗まれてしまうという非常事態が発生。この書画を狙うのはイギリス人実業家と、日本の若きヤクザ山本俊雄(ターウェイ)。特に山本は第二次大戦時の司令官だった祖父がこの絵を収集していたことから、自らの元に取り戻したいと目論んでいた。
 盗難の報を受けて、杭州ではもう一つの書画の警備が強化される。指揮を執るのは中国人壽保険集団の林雨嫣(ジンチュー)。さらに中国公安・台湾警察・香港警察の両岸三地の警察機構もこれを重視し、ミッション「天機一號」を発令。香港警察所属の特殊工作員・肖錦漢(アンディ)に台湾の書画奪還の命が下る。実は肖と雨嫣は夫婦であり、小寶という一人息子も設けているが、肖は雨嫣に自分の正体を明らかにしていなかった。
 書画は、盗品市場を仕切るマダム(スーチン・カオワー)の裁量によって山本の手に与えられた。その情報を知った肖は工作員として派遣されたという王雪晴(チーリン)と共に東京に向かうが、奪還に失敗し、愛し始めていた雪晴を失う。
 しかしそれは山本の張った罠だった。実は助かっていた雪晴の本当の名前はリサといい、山本の手下であった。さらに彼女は幼いころに火事で死んだ山本の母に瓜二つだったため、山本の寵愛を一身に受けていたのだ…。

 あらすじがもし間違ってたら申し訳ない。なんせ手元に資料がなく、大陸版wikipediaを参考に書いたので。まあ、筋はあってなしが如くというのが、正しいところかもしれない。
 3年前に二幅の富春山居図が台湾故宮の特別展で同時公開されたというトピックをネタに、中国版007をやりたかったんだろうというコンセプトはよーくわかる。それを演じるのにふさわしい俳優がアンディだと思ってオファーしたんだろうということもよーくわかる。製作側がノリノリで作ってたってこともよーくわかる。

 しかし、面白くない。そして、何もかもが破綻している。ひどい映画だった。

 まあ、普段「ひどい」という言葉は「最低」とイコールで使うことはないのだが(「泣ける」が「感動」とイコールにされるような強引さではなくてね)、これは本当にひどかった。香港での評判が散々だったとはうわさでは聞いていたし、SNSでは「この映画の狂いっぷりはすごい」というコメントが続出していたので、かなり覚悟して行ったのだが、想像の斜め上を行くひどさであった。よくこれが日本公開できたもんだよ。何かとセット販売だったの?(暴言失礼)
 もちろん、本気で金返せとかは思ってないし、こういう映画もあるんだといういい勉強にはなった。それであっても、何とかいいところを探して誉めるとかしてかばう気力も出ないほどだった。ごめんね、ここは自分のホームグラウンドだから正直に書くよ。

 主人公は中国をしょって立つヒーロー、敵は凶悪な変態日本人、勧善懲悪で最後は香港も台湾もまとめて中国萬歳という流れは、典型的な大陸製抗日エンターテインメントの形なのだろうし、かつて香港や台湾で抗日映画が大量に作られてきたという事実も知っている。ただ、最近はちゃんと時代考証をしたり、日本人をただの悪人に描かない作品もあるわけだから、それほど目くじら立てることはなくなってきたと思う。(ただ、第二次大戦中で敵が日本人設定だった『大冒険家』を観たときに、ラストで空襲直後(原爆投下後だったかもしれない)の焼け野原の日本で、けがを負って泣き叫んでる子供たちの記録映像らしきものが引用された時には観ててきつかったし、知らなくても知っててもこういう使い方は勘弁してほしいと思ったことが例外かな)
 でも、この映画の敵役である山本はかなりひどいキャラクターだったわー。部下はスポーツ万能でエロいお姉ちゃんたち(もちろんいろいろと残酷に大活躍)、アジトには胎児の絵があしらわれていて悪趣味全開、少年時代に家を出ようとした母を焼き殺し、極悪非道の限りをつくすサドで不能でマザコンのド変態。まあ、この程度のキャラはB級悪趣味映画には珍しくないのだろうし、日本人俳優ならこんな役なんともないとばかり演じてくれるひとはいそうなんだけど(と何人か考えたがここで名は挙げない)、いかんせんどっか古臭いし、突き抜け感も全くない。何よりあの佟大為にこういう役どころを振らせるってのが無謀。やってて楽しかったか大為よ?キミの持ち味は、全然イケメンじゃない上にその親しみやすい兄ちゃん的な魅力だと思うのだが、イメージ変えたかったのか?それにしてもねえ。
ひどいのは山本だけじゃない。途中でフェイドアウトするイギリス人実業家も、これいつの時代の悪役よって描写だったし(女体盛りみたいなこともしてたなあ。未だにあるのか)、ドバイもそれほど魅力的には映らなかった。
 ヒロインのチーリンも突き抜け感がなかったなあ。色気をふりふり頑張ってはいたけど、コスプレはもっと必要以上にやってもよかったし、行動も読みやすかったもんな。それなら一応固い役職のくせに冒頭の意味ないノースリエプロン家事姿のジンチューの方が役得だった(個人的意見です)。
 そしてアンディだが…、まあ、100本以上の作品に出ているとはいえ、昔はもっととんでもない作品に出ていたんだろうねえ。でもねえ、いまこういうとんでもない作品に出ちゃうってのはねえ…。謝って回ったとかいう記事をネットで見かけたけど、その気持ちはわかるよ、うん。

 個々のひどさを挙げてもこれ以上あるのだが、映画全体はもちろん、編集やらなんやらの細かいところでも「え?」と思わせられるところがあり、そういう雑さも輪をかけて気になった。とどめはこれが3D作品として作られたこともね。最新技術を駆使し、莫大な製作費をかけて作られたのに、出来上がったのは往年の抗日映画の雰囲気を漂わせつつもセンスが古い冒険活劇。B級好みな方々が擁護したがる気持ちはわかるし、この作品をよくぞ日本でかけた配給元の勇気も称えたいけど、いかんせんもうそういう時代じゃないでしょ、いくら日本も欧米も30年前に戻ったようなセンスの映画を作っているからとはいえ(これも特になんだかは言わない)とつっこんで、観終わった後はどーっと疲れてしまった。

 まあ、中国側の中華思想的な映画の作りかたとか、文化の違いとかについて、文句を言ってもなんもならない。これはしょうがないよねーと割り切りながら観るのが一番賢明かもしれないけど、香港映画初心者にはこれを勧めたくないし、自分でもこの手の作品に免疫がないってことが分かった。この映画を楽しんだ人には気分が悪くなるような感想を書いてしまって申し訳ないけど、これと比べてもっと面白い大陸×香港映画はまだあるもんな、という確認ができたということで、どうかこの記事での数々の暴言をお許しください。本当にすいません。大人気なくてすいません。なんせこちとら地方の場末のアマチュアブロガーですから。

 つーか二度と観ないよ、こんな映画。あはははははははは。以上。

原題&英題:天機 富春山居圖(Switch)
製作:ハン・サンピン 製作&監督&脚本:ソン・ジエンジュン
出演:アンディ・ラウ リン・チーリン トン・ターウェイ チャン・ジンチュー スーチン・カオワー

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コールド・ウォー 香港警察 二つの正義(2012/香港)

 映画鑑賞に大切なのは「観るチャンス」だと思ったのは、この『コールド・ウォー』を香港で見逃した時である。2年前の11月からの香港公開時に話題となってロングラン上映になったのは知っていたのに、クリスマス旅行では久々の香港で嬉しくなり、すっかり遊び呆けていたので、観に行くのを忘れていたのだった。去年の金像奨で最優秀作品賞を取った時は、ああ、なんで現地で観てこなかったのだろうってホントに後悔したもんなあ。

 日本での公開規模は案の定小さいのだが、監督コンビのインタビューが複数のウェブメディアで紹介されたり、沢木耕太郎さんの映画コラム(要会員登録)で取り上げられたので評価は高いってことはわかっていた。我が地元でもアート系作品上映希望アンケートのエントリーに入っていたので、もう大いに喜んで複数の票を投じた。…でも結局上映できないみたい。残念だ。
 それが早いうちにわかっていたので、休み中に無理してでも観に行かないともうチャンスがないかもしれない、と思い、年が明けてすぐ六本木に観に行ったのであった。

Coldwar

 ここしばらくの香港映画は『○戦』流行り。ニコとジェイは『逆戦(ブラッド・ウェポン)』、総合格闘技は『激戦』、中国で麻薬は『毒戦(ドラッグ・ウォー)』なので、原題で覚えるのも大変かもしれない?(笑)

 旺角の映画館で起こった爆発と、警邏中の5人の警官が拉致されるという2つの事件が同時に発生した12月の香港。2つの事件には何らかの関連性があるらしい。警察の最高責任者である長官が出張中のため、2人の副長官―現場出身で叩き上げの「行動班」のリー(51歳・梁家輝)と事務職出身の「管理班」のラウ(44歳・アーロン)のいずれかが指揮を執ることになる。その任を買って出たのはリーで、部下で警視正のアルバート(カートン)と共に動き、テロ事件とみなして非常事態を宣言する。
 しかし、香港警察には「親族の家族が関与した事件の指揮は執れない」という規則がある。実は拉致された警官の中には、リーの息子ジョー(エディ)がいたのだ。一緒に拉致された警官の一人が重体で発見されたこともあり、指揮権をめぐってリーとラウは激しく対立する。やがて長官からリー解任の一報が入り、ラウは臨時長官となる。部下の管理班警視正ヴィンセント(ガーロッ)と共にアルバートを副指揮官に任命し、両班で共同戦線を敷く。
犯人側から身代金の要求が入った。要求額は「5人の命の値段」。ラウたちは9320万元と見積もるが、正式な要求額は3333万元。残り約6000万元を輸送車で警察の金庫室に戻し、ラウは身代金を持って受け渡し現場に行く。その際犯人と激しい銃撃戦が始まり、ヴィンセントが犠牲となってしまう。さらに輸送車から金が強奪されるという事態も起こるが、ジョーたち4人の警官は解放され、救出された。
 事件はこれで解決されたかに見えたが、汚職捜査機関の「廉政公署(ICAC)」の調査主任ビリー(アーリフ・リー)が動き出す。ICACに匿名の密告が入り、ラウに収賄の容疑がかけられたのだ…。

 冒頭、香港警察のHPにアクセスするという設定で、行動班・管理班双方の主な登場人物がわかりやすく紹介されるのがありがたい。最近は日本の刑事ドラマも警察管内や警察庁との複雑な関係を描いた作品が多いし(踊る大捜査線や相棒ってそうだよね?)、国外の組織だからなおさら複雑に感じそうだしね。
 題名は劇中で使われる警官奪還の作戦名だけど、同時にラウとリーの、あるいはビリーたちICACと警察との戦いにもかけられているように思える。中盤で激しい銃撃戦などの、香港警察ものには欠かせないアクションが挿入されているのにもかかわらず、12月の風のようなクールさと静けさと緊張が映画の全編に漂っている。 だから、これまでのポリスアクションものとはどこか一線を画した出来になっているし、ノワールものでは決して終わらなかった10年前の『インファナル・アフェア』以来の傑作と言われたのもよくわかる。日本の警察ドラマではこの手のテーマが珍しくなくても、香港映画でこれをやってくれたら確かに新鮮だ。

 中心になるのが警察上層部及びICACなので、必然的に登場人物のスーツ率は高くなる。香港警察内のドレスコードはそれほど厳格じゃなさそうだけど(現にヴィンセントは警視正という高い身分だけどノーネクタイのカジュアルだし)、ほとんどがビシッとカッコよく着こなしてくれていたので、スーツ好きとしては観てて嬉しかったですねー(笑)。後は眼鏡着用率がもう少し高くてもよかった。※意見には個人差があります。
 理性的な役が多いカーファイとエネルギッシュで熱いイメージのアーロンが、お互い逆の役どころになっているのも新鮮で面白い。アーロン演じるラウが、事務職の内勤でキャリアを積んで出世し、警察改革に経費節減を盛り込もうとしているというのも意外だしね。カーファイが坊主頭+髭で武侠映画っぽいルックスなのだが、これは太極二部作で頭を丸めた後に撮影したからだろうか?
 90年代香港映画で活躍した二人が、警察管理職に就く役柄になった(保安局課長を演じた特別出演のアンディも然り)のに時代を感じてしみじみとなったけど、 若い世代だって登場させないとやっぱり意味がない。そんなわけで現時点での香港若手俳優から『李小龍』のアーリフと、台湾ドラマから香港映画に進出したエディ。
 アーリフはまだまだ青さが抜けず、(考えたら《歳月神偸》では高校生役だったわけだし)調査主任役をするには迫力が足りないと思ったけど、今後の活躍が期待できそうだ。エディはこれまでの作品でも癖のある役どころが多いせいか、ラストになんかやらかすだろうと実はちょっと思ってた(笑)。坊主頭だった理由は恐らく父親と以下同文。

 カーファイの下につくカートンと、SDTのアンディ・オン。アーロンの部下のガーロッと、IT担当のテレンス。安心安定の脇役もいい。
 メインキャラ唯一の女性が広報課主任役のチャーリーなのだが、ラウの元恋人という設定があったのはパンフ見るまでわからなかった。重要ポストに女性がいる率は日本以上に高そうだから、そういう設定はなくてもいいかも。

 元警察の人間の犯行とわかり、内部にも協力者がいることも匂わせて一旦幕は引かれたものの、今後作られる続編では、これがどう展開して行くのだろうか。大陸との合作で膨らむ香港映画界の潮流の中で、オール香港ロケ、2時間以内の上映時間、独創的なストーリーと演出という、香港映画で守られるべきフォーマットのようなこの作品を作ったのが、美術スタッフと助監督出身のキャリアが長い新人監督コンビというのも興味深い。この作品の登場が、今後の香港映画界にどう影響していくかも大いに楽しみである。

原題:寒戦
製作:ビル・コン アイビー・ホー 監督&脚本:リョン・ロクマン&サニー・ルク 音楽:ピーター・カム 編集:コー・チーリョン アクション指導&出演:チン・ガーロッ
出演:レオン・カーファイ アーロン・クォック チャーリー・ヤン エディ・ポン アーリフ・リー ラム・カートン アンディ・オン テレンス・イン トニー・ホー マイケル・ウォン アンディ・ラウ

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blog開設10年の御挨拶

 本日1月13日をもって、本blogは開設10周年となります。

HPのコンテンツのひとつとして、香港映画を中心としたアジアンエンターテイメントの感想や情報をまとめたいと思って始めたのですが、最初はここまで続けられるとは、自分でも思いもよりませんでした。こんな場末のblogまで訪問して、読んで下さる皆様に感謝します。

 開設当初から香港映画の上映事情はあまりよかったとはいえず、映画館で映画を観る派にはけっこう辛かったのですが…今はますます辛いです(苦笑)。そのへんは書き始めたら毎度ながらの愚痴になるので、書きませんけどねー。
 ここ10年間の中華圏エンタメも大きく変化しました。映画やドラマを観たり、旅をしたり、ライヴに行ったりもしたけど、結局現在は映画中心で時々旅のblogになってます。
まあ、これでいいんでしょうね。

 今考えているのは、香港映画のファン層がもっと広がってほしいこと、そして映画を観る若者たちにどうしたらその魅力を伝えることができるかということ。そりゃファンとしては日本で多くの作品が観られるのは嬉しいけど、『盲探』の時にも書いたように、トーさんの新作が日本でコンスタントに公開されるようになっても、決して全国レベルで名前が知られるようになったというわけじゃない。地方順次でいいのだから、大都市だけでなく地方でも劇場で上映してほしい。ワタシのように地方で香港映画ファンをやっている人間(しかもソフト鑑賞じゃなくて劇場鑑賞メイン)としては、やっぱり自分の街で香港映画が観られて、多くの人に観てもらって楽しんでもらえることは嬉しいことだもの。
 そのためにアマチュアブロガーの自分に何ができるのかを、今考えているところである。まあ、一生懸命というよりゆるゆると考えていますけどね。

 最近は更新頻度が少なくなりがちですが、この年末年始に観た映画の感想を書いていきますし、来月は台湾ツアーも控えています。未見のVCDもたくさんありますしね。
 今後とも、よろしくお願いいたします。m(_ _)m

Pict0050

おまけ。以前HPのトップにしていたトニーの画像。

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楊家将 烈士七兄弟の伝説(2013/中国・香港)

 本題に入る前に。
 皆さ〜ん、最近発売されたダ・ヴィンチ2月号はご覧になられましたか?


 ここ2,3年に女性誌等で台湾特集が増え、やれ屋台だやれ九份は千と千尋の舞台だ(違う!悲情城市のロケ地だ!と全力で上書き)やれ女子旅だと大騒ぎしているのを眺めていると、もうちょっと違った切り口もあっていいんじゃね?と思ってた。そんな時に台北の書店をフィーチャーした特集を出してくれたのは嬉しかった。まあよく考えたら、ダ・ヴィンチは角川グループ傘下だし(だよな?)、その角川は台湾現地法人の出版社も持っているから(だよな?)、こんな特集も朝飯前だったんだろうし。
 ただ、台湾ドラマ対談で取り上げられたのがことごとく古い作品でキツかった…。流星花園も山田太郎ものがたりも、とっくの昔にうちのHPでネタにしてたのに!日本マンガ原作のドラマも、今は主流じゃなくなっているのかな?もっと新しい俳優もいっぱい出てるじゃないのよ。なんかもったいない。

さて、流星花園といえばもうおわかりですね(前振り長い)。はい、仔仔です(笑)。
そして、日本のマンガ原作ドラマでは『東京ジュリエット』『花ざかりの君たちへ』に出演していたウーズン。もう元飛輪海という肩書きもいらなくなったね。昨年から放映の『金田一少年の事件簿』にも出演し、日本でも知名度は上がってきているのかな。
その二人と、イーキン(香港の人気コミックの映画化作品でスターになった、無理やり関連づけてみる。笑)が共演したのが、『楊家将』なのである。

 宋王朝の時代、七人の勇敢な息子を持つ楊業(アダム・チェン)は、皇帝からの絶大な信頼を受けていたが、敵国はもちろんのこと味方にも恨みを買われていた。
ある時、六男の延昭(ウーズン)と、楊業を逆恨みしている宰相潘仁美の息子・潘豹が郡主の娘を巡って腕比べをすることになったが、卑怯な手を使ってそれに勝とうとした潘豹の目論見を見抜いた七男・延嗣(付辛博)が乱入し、もみ合った末に滑り落ちた潘豹が頭を打って死んでしまう。
 この事件がきっかけで楊家と潘家は対立を深め、潘仁美は皇帝に楊家への処罰を申し出るが、その頃、かつて楊業が打ち破った遼の軍が宋に攻め入ろうとしているという知らせが入る。将軍は楊業に父親を殺されている耶律原。宋は潘仁美を司令官に、楊業を先鋒として軍を編成し、戦地に送り込むが、遼軍の激しい攻撃のさなか、なんと潘仁美は先鋒を見捨てて撤退してしまう。楊業も敵に毒矢を受けて絶体絶命に追い込まれる。
父を救うべく、長男の延平(イーキン)、三男で名射撃手の延安(仔仔)たち七兄弟が立ち上がる。夫と息子たちの身を案じた楊夫人・余賽花(徐帆)は山に登るが、そこで「七子行き、六子戻る」という信託を受ける。
 戦地に赴いた七兄弟は少数で敵陣を突破し、父親と合流するが、その途端に敵の猛攻に遭う。父を背負って関門を目指す兄弟たちだが、耶律原の執拗な攻撃に、一人また一人と倒れていく…。

Yangbros

 Wikipediaによると、楊家将演義は中国明代の古典文学で、日本では1997年にNHKBSで放映されたテレビドラマで初めて知られたとあるのだが、三国志と違って日本では本格的な翻訳書がないというのが不思議なところ。(北方謙三による同名小説は訳書ではなくオリジナルとのこと)
 京劇の演目としても人気が高く、四郎探母や楊門女将等が知られているとか。

 あらすじを見ると相当長い小説であるというのがわかるのだが、この映画は思い切って楊業と七兄弟の義に溢れたエピソードのみを抽出し、なんと1時間42分で収めているというのがなんともいい。このところ、歴史ものの映画はどうしても2時間30分くらいのものが多かった分、この潔さと「最初からクライマックスだぜ!(by仮面ライダー電王 )」な勢いで盛り上げていくのがなんともいい。監督が『夜半歌聲』『SPIRIT』の、そして『フレディVSジェイソン』『ケミカル51』を手がけたロニー・ユーなので、割と手堅く作っていて、観ていて安心する。アクション指導もリアルな合戦ものに力を発揮するトン・ワイさんなので、こちらもしっかりした安定感が嬉しい。

 楊家の七兄弟は、先にあげた他には、中国歴史ドラマの主演が多い于波が次男の延定、『戦場のレクイエム』の李晨が四男の延輝、『白蛇伝説』のレイモンド・ラムが五男の延徳を演じている。 当然みなさんええオトコ。でも半分が初めて見る俳優ということもあって、名前とお互いを呼び合うのをよく聞かないと誰が誰だかわからなくなる(笑)。
 イーキンはホントにお久しぶり。これが結婚後初の映画になるのかな?
頼もしいお兄さんっぷりは見ていて嬉しかったし、七兄弟の中で一番好き。髪型も髷を結わずにサイドパートをまとめて流しているので、よくわかってるスタイリングだよなーと感心。イーキンはやっぱり長髪が似合う。そして思ったより若々しかったなあ。
 仔仔は以前より甘さがずいぶん抜けている感じがしたのだけど、三男が寡黙な仕事人タイプなので、精悍なイメージが強調されたかな。
 そしてウーズンは、考えてみたらいろいろ大活躍だったなあ。最初っから脱いでたし、騒ぎの元でもあるし。でも彼を中心にしたという感じはあまりないんだよな。うむ。

 で、この物語に続く、楊夫人と七兄弟の妹や未亡人が息子や夫、兄を殺された復讐に出るのが『楊門女将』であり、これを元にした過去の映画化をリメイクしたのが、去年さんざん話題を振り向いた『女ドラゴンと怒りの未亡人軍団』になるのか…。うーむ、ソフトで観るべきかどうかちと悩ましくあるなあ。どーしよ?

原題&英題:忠烈楊家将(Saving General Yang)
製作&脚本&監督:ロニー・ユー   製作:レイモンド・ウォン   音楽:川井憲次   アクション監督:トン・ワイ
出演:イーキン・チェン  ヴィック・チョウ  ウーズン  ユー・ボー  リー・チェン  レイモンド・ラム  フー・ジンポー  シュー・ファン  アダム・チェン

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名探偵ゴッド・アイ(2013/香港)

 この作品の前に監督した『ドラッグ・ウォー』も今年に入って公開されるなど、新作がコンスタントに日本上映されるようになってきたトーさん。それでも、まだまだ認知度は低い気がする。どうかもうちょっとメジャーになってほしいんだよなあ、そうすれば全国でもちゃんと作品が上映できるんだよ。

Blindditec

 まあそれはともかく、この『名探偵ゴッド・アイ』は、アンディとサミーのトーさん作品におけるゴールデンコンビの復活であり、ワイ・カーファイさんも製作と脚本に加わっているので、これはかなりクレイジーな作品だろうなーと期待して観た。


 ジョンストン(アンディ)はかつて刑事だったが、4年前に失明し、今は未解決事件の情報提供による報奨金を得るために探偵をしていた。旺角で発生した連続洗剤ぶちまけ事件の犯人を匂いと音で確定したのだが、親友にして元同僚の司徒(グオ・タオ)に妨害される。
 彼の部下で航空警備隊から転身したホー(サミー)はジョンストンの手腕に惚れこみ、弟子入りして少女期に起こった幼馴染のシウマンの失踪事件の解明を依頼する。しかしグルメで癇癪持ちで気まぐれなジョンストンは未解決事件の解明のために彼女をこき使い、死体置き場での検視官殺しや連続女性失踪事件等の捜査に付き合わせるが…。

 とまあ、あらすじは簡単に説明できるのだが、なんせ脚本にワイさんが入っているせいか(ってそれはいつものことじゃないかというツッコミはなしで)、はたまた黄金コンビの復活のせいか、7年前の『マッド探偵』にならってなのか、非常にエキセントリックでクレイジーなプロットが炸裂する。だってホーが警官を目指すきっかけとなった、失踪したシウマンの家庭環境からして、もう尋常じゃない。母娘三代がことごとく恋愛に強く依存する体質からなのか、母親も祖母も自分を裏切った男をぶち殺すだけでなく、塩漬けにしたり素揚げにしたりするという猟奇的行為に走るのだから。(※以上はネタバレですが、エグいのがダメな人はある程度覚悟して観た方がいいと思ってあえて書きました。どうかお許しを)
   これ以降は猟奇事件があれやこれやと続出し、シウマン失踪事件の真相にたどり着くまでに迷走することもあるのだが、一見エグくてもそれが許せてしまうのは、この映画が基本的にジョンストンとホーの恋愛ものであるからである。しかもジョンストンは「心の目」で被害者と会話しながら想像力で推理を組み立てるタイプ、ホーは武闘派で脳筋タイプという、両者ともかなりエキセントリックなキャラクターだから、捜査をしながら恋愛を育てていく過程もどこか精神的にSMプレイ(笑)。そんなわけでなぜか笑える、というか、やっぱりこの二人だとコメディになっちゃうんだよね。

 ジョンストンについてもう少し言えば、盲目というハンデを背負いながらも、グルメで感情の起伏が激しいという点で悲壮感があまりなくて、かなり面白いキャラになってる。そして高級レストランのフレンチから朝食で簡単に作ったインスタントラーメンまでなんでもかんでも美味しそうに食べるのだから、観ていてこっちまでお腹が空いてしまうんだよね。そんな彼もホーには全く恋心を抱かず、失明前に手がけた捜査の時に出会ったダンス教師(高圓圓)に片思いをしているので、ただの名探偵ではない普通っぽさがまたいい。 

 そんなわけで恋愛ものという土台があるせいか、一歩間違えれば破綻しそうなプロットもなんとか踏みとどまって上手くまとまっているのは、トーさんの力技とアンディ&サミーのアンサンブルのなせる技だろう。林雪だってちゃんと登場するのだから、トーさんブランドとして非常にしっかりした作品になっていると思う。
 ただ、それでもこの作品がダメって感じる人はいるんじゃないかな。香港映画初心者には簡単に勧められないので、このトリオ(orカルテット?)の作品では、まずは『Needing You』からですよね。

    しかし、この映画を狂っていると言ってはいけない。それ以上にとんでもない映画を、この年末年始で観てしまってひどく頭を抱えてしまったのだから。
 その映画についてはいずれ後ほど日を改めて。

原題(英題):盲探(Blind Detective)
製作&監督:ジョニー・トー  製作&脚本:ワイ・カーファイ   脚本:ヤウ・ナイホイ  音楽:ハル・フォクストン・ベケット
出演:アンディ・ラウ  サミー・チェン  グオ・タオ  カオ・ユアンユアン  ラム・シュー

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