« 地元から台湾ツアー&エクストリーム香港ツアー | トップページ | ピクニック(2013/台湾) »

夏休みの宿題(2013/台湾)

 今年は映画祭で台湾映画を観ることが多い。香港映画の一般公開が増えたからというのもあるんだけど、以前からも言っているように台湾映画は香港映画以上に地方公開がないからである。ホウちゃんも『珈琲時光』『百年恋歌』がこっちに来てないし、ミンリャン作品も然り。だから、重要な作品をかなり見落としている。なんてこった。
 そんなこんなで今まで見落としていたのがチャン・ツォーチ(張作驥)監督作品。
61年に嘉義で生まれ(ピーターさんや是枝さんと同世代か)、ホウちゃんや徐克さんの助監督を経て監督デビューし、99年に作った第3作の『最愛の夏(ダークネス&ライト)』で東京国際映画祭サクラグランプリを受賞、翌年のカンヌの監督週間に出品。2001年の第4作『きらめきの季節/美麗時光』がヴェネチア映画祭のコンペに出品。
…でも両作品とも日本公開はされたのに、観てないのですよ本当にごめんなさい。

 そんな彼の監督第7作、『夏休みの宿題』今年の東京フィルメックスで上映。現在台湾でも一般上映が開始。
過去作品を予習として振り返る余裕は全くなかったが、まあいい、まっさらな気持ちで観るしかないわーと思い、チケットをゲットして臨んだ次第。

Quchi

 7月初旬、両親が離婚の危機にある小寶(パオ・楊亮兪)は、夏休みに新店の屈尺(チュイチー)地区にあるおじいちゃんの家に連れてこられた。あとから妹の蒟蒻もやってきて、二人は地区の小学校に転校する。小寶は台北の小学校から夏休みの宿題を持ってきていて、20日分の日記を屈尺で書くことになる。スマートフォンを使いこなし、タブレットでゲームをすることが好きな小寶は、屈尺の子供たちがあまりにもワイルドなのに最初は驚き、なかなか馴染むことができなかったが、小熊という女の子や同世代の名詮などと友達になり、両親のいない夏を大いに楽しんでいたのだが…。

 英題の「A Time in Quchi」は、この映画の舞台・屈尺からとられている。
現在は合併して新北市となった台北の近隣・新店にある風光明媚な地区。新店というと指南宮や木柵のイメージがあり、山間の街だとは思っていたが、これが台北から1時間ばかり離れたところにあると考えたら、確かに信じがたいだろうな、というほどの風景の美しさ。
 そこに台北生まれの現代っ子がやってきて…という筋書きは、ホウちゃんの初期作『冬冬の夏休み』を彷彿させる、という意見が、日本でも台湾でも多かったようだ。ツォーチ自身ホウちゃんの下で働いていたことがあったから、何か関連はあるのかな、と思ったが、まあきっと偶然なんだろうな。個人的には、この夏NHK広島局が制作して放映したドキュメンタリードラマ『基町アパート』も同じ設定だったので、よくあると言えばそれですむか(こらこら)。

 常にタブレットを手放せない小寶は、まさに21世紀の台北っ子。両親の離婚という事態に直面しながらどこか不安げにも見えるけど、基本的にはボーっとしていて生意気な妹に振り回されるマイペースな男の子ってのも今時の子。
 映画祭には小寶を演じた楊亮兪くん(英語名はウィルソンというらしい)が登場し、史上最年少ゲストとしてQ&Aに臨みました。ワタシを含めた観客はもう全員ほのぼのしてしまい、いつもは殺気立つこともある質問がえらくあったかいものばかりだったのでしたよ。牯嶺街でデビューしたころの張震にどこか似た面差しなので、小張震とも呼ばれているらしい。

 おっと、話がずれましたが、興味深かったのがこの小寶がちゃんと子供らしかったこと。決してオタクでもないし自己中心的でもなく、社交性もある男の子。そこに好感が持てた。宿題として持ってきた日記に、決してでたらめではないんだけど、どこかずれていることを書いていたのは、最初の馴染めなさと不安を巧みに表現していた印象。

 そんな彼は屈尺で様々な経験をする。自然に囲まれた地区ならではの野外活動あり、学校設立者を歓迎するための演劇参加あり。机に向かうだけではわからないことを、小寶はたくさん学んでいく。その中には離婚や死別といった別離もあったわけで…。
 物語のクライマックスから結末にかけて唐突に描かれる二つの死(ネタバレを避けるためにあえてぼかしてます)。もちろん、田舎の夏休みは決して幸福なだけでなく、こういう死や哀しみが描かれることも珍しくはない。しかし、例えば邦画ならこういう場面はひたすら「ほら哀しいよねー、泣くよねー、どやみんな泣け泣け」とばかりに盛り上げて感動を誘うような嫌な作りになるのだが、非常にあっけなく描かれる。その方がリアルだし、死は生の隣にあるということをだれも理解しやすいのではないだろうか。そこに共感が持てた。

 フィルメックスではちょうど同じテーマで作られた、カンヌ映画祭カメラドール受賞作のシンガポール映画『ILO ILO』も上映されていて、そちらを支持する人が多かったみたい(観客賞も受賞)。そんな偶然がマイナスになってしまうのかもしれないし、彼の過去作品と比較する声も多少は聞いたけど、ワタシは事情により『ILO ILO』が観られず、過去作品とも比べようがないのだが、これだけでもいい作品で、観てよかったと思う。まあ、『ILO ILO』は来年一般公開の予定があるらしいので、あれこれ言うのは観てからかな。

 最後に、facebookblogをのぞいてみると、この映画が子供たちの映画として真摯に撮られていて、観客も子供たち世代に向けられていることがわかり、こういうアピールって大切だなあと思った次第。映画好きの子供は国産片でも育てられるし、商業的であっても売らんかな主義ではない子供たちの映画って貴重なんだよね。

Wilsonyang

おまけその1・サインする未来の明星くん。

Yangliangyu

おまけその2・サインというよりテストの答案用紙に書いてるようでかわいい。

原題&英題:暑暇作業(A Time in Quchi)
脚本&監督:チャン・ツォーチ
出演:ヤン・リャンユー

|

« 地元から台湾ツアー&エクストリーム香港ツアー | トップページ | ピクニック(2013/台湾) »

台湾映画」カテゴリの記事

日本の映画祭」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/14197/58763218

この記事へのトラックバック一覧です: 夏休みの宿題(2013/台湾):

« 地元から台湾ツアー&エクストリーム香港ツアー | トップページ | ピクニック(2013/台湾) »