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2013年11月

地元から台湾ツアー&エクストリーム香港ツアー

 えー、今週はフィルメックスツアーがありますが、これが終われば暦の上ではディセンバーでございます。だんだん1年があっという間に過ぎて行くようになりました。速いもんですなあ、香港聖誕節ツアーからもう1年ですよ。

 で、あの頃すでに香港のホテルの値段が以前に比べてかなり上がってきていたのだけど、イナ…じゃなかった大陸様の大量襲来&円安のダブルパンチ、それに加えて年末に仕事が入ったり、金銭的な余裕もないので、今年は香港へ行けません…。
その代わり、三たび弟が渡っているので、それじゃ年始早々に台湾へ行くか、とエアチケを調べてもらったら、これがなんと12万円ですよ、奥さん!
 今まで8万くらいの時に香港に行ったことはあるけど、台湾行くのに12万円も出せんわ!と思い、年始の旅行は泣く泣く断念。香港が高くなったこともあって台湾へ行く人も増えているけど、それが高くなった原因ってわけじゃないだろうしねえ。

 ワタシの仕事はウィークデイに長く休むことができないので、夏と年末年始、そして年度末に海外に行くしかない。だけど、来年は2月の下旬に少し仕事が落ち着く時があり、この時なら旧正月も終わりの方だからだいぶ安くなっているだろうし、わざわざ東京まで行かなくても仙台から行けるかな?と思い、調べてみた。さすがに直行のエバー航空は高かったけど、国内線で伊丹まで行き、関空経由で台北に行くと正月の半額で行けることがわかった。しかもJALで。
 ん?JALだと?JALの国内線なら、我が地元花巻空港からも飛んでいるじゃんか!
  そう思って花巻発で検索したら、仙台発と同額の運賃が出ましたよ、見事に!しかも花巻夕刻発の伊丹行きに乗って大阪で前泊し、朝イチの便で飛ぶことも可能だし、復路は夕方に花巻に着けるから、それほど遅くならずに帰盛できる!これなら2日休んで3泊4日の台湾ツアーも十分楽しめる。
 そんなわけでANA派のワタシも、現在JALのマイレージバンク申請中。来年はちょっと無理だけど、花巻から飛べれば大阪アジアン映画祭も福岡アジア映画祭も参加するには便利だしね。まあ、問題はカネと暇だが。

   調子に乗って花巻や仙台から香港も行けるかな?とさらに調べたのだが、逆にこっちは国内線の乗り換えがどうしても煩雑になってしまうので、新幹線に乗って東京から行くのとさほど変わらない運賃になる。これはLCCでも使うしかないもんかねー。
  そんな時、SNSで香港エクスプレスというLCCが深夜発着で羽田に乗り入れたということを聞き、以下のblogを見に行った。

Help Point:搭乗記:香港エクスプレス UO623便 東京羽田→香港
            香港エクスプレス UO622便 香港→東京羽田        

 ふーむ、以前ANAの深夜便を使って香港に行ったことがあるけど、あの時は復路でちょっと無理したせいか、帰国後に寝込んじゃったので当分こういう無茶はできないなーと思ってたのである。でもLCCは荷物預け賃が別にかかるとはいえ、深夜便でミールも出ないし、羽田を1:30に発つのでチェックインも11時頃からであり、盛岡発の最終の新幹線に乗ってちょっと寝て東京に着いても、ある程度余裕でチェックインできるのはいいなと思うのであるよ。
 香港に着くのは5:25。この時間ですでに公共交通機関は動いているようなので、バスでのんびり行き、九龍の外れのホテルに泊まって荷物を預け、朝飲茶に行ったり街市を散歩したり、映画館の早場でもあれば見て、チェックイン後に昼寝してもいいんだろうな。

 帰りはAELでインタウンチェックインして18:00頃までに搭乗口まで行き、19:00に発って羽田には0時過ぎに着く。とは言っても到着ゲートを出るのは0:30くらいだというので、この時間だと公共交通網は完全になくなってしまうという(正確にはこちらをみるとよくわかるかも)。そしたら空港泊?と思ったら、国内線の第1ターミナルにファーストキャビンという女性も使える簡易宿泊所があるという。ここに泊まって交通機関が動くまで一眠りし、始発の新幹線に乗れば、始業時間に少し遅れるものの出勤も出来るという計算になるのだ。なんというエクストリームな香港ツアー!
 しかし問題は、来年のいつ頃それを実行できる休みが取れるのだろうかということ。とりあえず第一候補は8月のお盆前かしら…ってそれなら普通に行ってもいいような気もするが(笑)。

 まあ、まずは2月の台湾行きを決めないとね。早く年度末のスケジュールが発表されないものか。

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片腕必殺剣/続片腕必殺剣(1967・1969/香港)

 『捜査官X』そして『失魂』と王羽さんの作品を観ることが増え、そういえば4年前に中国語で勉強していた金像奨特刊の中国語映画ベスト100で《獨臂刀》 がランクインしていたな、かつては『片腕ドラゴン』と間違えていたことがあったが(笑)と思ってたら、ちょうどWOWOWの夏の香港映画まつりで『片腕必殺剣』をやってくれていたので、観ることにした。

    金刀と呼ばれる刀を使う武術家・齋如風(田豊)は、敵対流派に襲われた時、身を呈して自分を守ってくれた使用人の忘れ形見・方剛(王羽さん)を引き取って武術を教え育てたが、方剛は自分をよく思わない兄弟子たちや何かというと突っかかってくる齋の娘珮(バイオレット・パン)との関係から、独り立ちしようと考えていた。
    ある雪の日、珮たちに呼び出された方剛は勝負を挑まれるが、相手にしなかったところ、逆上した珮に右腕を切り落とされてしまう。そんな彼を救い看病したのが農婦の小蠻(チャオ・チャオ)。武術家の父を殺された過去を持つ彼女は方剛の身を心配するが、彼は父親の残した武術指南書の一部を読んで、残された左手だけで戦えるように身を鍛えることにした。
     同じ街には、かつて齋の命を狙った武術家・長臂神魔(ヤン・ジーピン)が、再び彼の命を狙おうと画策し、金刀を封じる秘密兵器・金刀鎖を開発して、齋の弟子たちを次々と襲っては殺していた。齋の55歳の誕生日を総攻撃の日に定めた一派の目論見を知った方剛は、師を守ることを決意する…。

    武侠ものやそのテイストを持つ古装アクション映画を観続けると、片腕をもぎ取られてしまう場面に何度も出くわす。最初にそれを観たのは『風雲』。アーロン演じる雲が中盤の戦いで腕を斬られてしまったくだりをいきなり見せられた時はかなりビックリした。なんでそんなにスパーンと腕が飛ぶ!と呆気に取られたことを今でも覚えている。まあその後アーロンは医師に助けられ、彼の腕をつけてもらう(!!)というこれまた衝撃的な顛末で再び戦いの場に戻るのだが、これや武侠での例の場面を観て、あーそもそもの片腕ぶっ飛ばされのルーツってこの映画なのか、と再確認できて本当によかった(こらこら)。
    腕だけじゃない、この映画では血しぶきもバンバンと飛び散る。オマエら血ぃ噴きすぎ、とついついつっこみたくなるし、徐克さんのとはまた違う意味でのやりすぎ感がある。うまく説明できないが(逃げるのか)。ウーさんの師匠でもある張徹監督は、以前観た《刺馬》でも感じたが、とにかく激烈なバイオレンスを描くのが得意で、その始まりがこの映画らしい。男性の勇ましい姿と鮮血飛び散る壮絶な闘いを描く「陽剛」という系列を生み出したとか。これは確かに血湧き肉躍る!
    しかしそうであっても、60年代には生まれてないし、男でもない自分なので、血湧き肉躍る以前に「いきなりそこで脱いで出てくるかーっ!」とか「珮ってば卑怯過ぎ!でも男女差別しない姿勢はさすがだな」とか「アクションシーンは迫力あっていいんだけど、クライマックスなのに何でこんなに静かに闘うの?おかげで何度か意識を失ったぞ(すいませんこれはマジです。もちろんちゃんと見直しました。悪しからず)」とかいちいち突っ込んで観てしまった不真面目な自分ですみません。

  では次は続・片腕必殺剣。
こっちはさらなる男祭りである。
てらてら光る胸筋オンパレードよー(またそういうこと言うんだから)。



続編の予告。

  師匠を救い、武術を捨てて小蠻と結ばれ、農夫として穏やかに暮らす方剛の元に、黒白刀使という二人組がやってきて、覇王城に集った八大刀王に従えと迫られる。この二人は他の流派にも同じことを言い、断られたら当主を捕らえて人質にしていたのだ。そのうちの一つ、ルー家の一派は方剛に協力を要請するために、小蠻をさらってしまったので彼と対立するが、八大刀王の使者に襲われたことがきっかけで共闘して覇王城を目指すことになる…。

    八大刀王は、大刀王、通臂王、鉄輪王(武器は空飛ぶギロチンっぽい)、天遁王、地蔵王、毒龍王(読んで字の如し)、千手王(女性)、そして剣を人に見せない無相王。彼らが次々に方剛たちに襲いかかってくる。
    前作が方剛一人の戦いにスポットを当ててたので、ちょっとしたハードなリベンジものの様相を呈していたのだけど、これは彼だけでなく、他の流派も入り乱れてのバトルロイヤル的な面もあるので結構派手だし、こっちの方が好みかな、なんて思ってしまう。もちろん、前作以上に血は飛び散るわ、剣でグッサグッサ刺されるわ、敵に一突きされても簡単には絶命せず、必ず相手を斬り殺すくらいの余裕はある。それが香港映画の醍醐味なのさ、というか、この頃からもう独自のやりすぎ感は確立してたってことになるのね(笑)。あと、ワイヤーはこの頃にはもう使われていたんだなあ。

   王羽さんは初見の武侠からただならぬ雰囲気を漂わせていて、プライベートでも黒社会やら日本のヤクザやさんやらとのおつきあい云々があってなんてことをきいてしまうと、うわーこえーなー、香港のゲーノー界も聞いてはいたけどおっそろすーなー、などとついついオーバーに言いたくなるのだが、初めて見た若き日の彼も…えーん、眼つきがこえーよー(泣)。
     ヒロインの焦姣さんは『美少年の恋』での彦祖のお母さん役で名前を覚えていたけど、当時から往年のスターだということは聞いていた。そうか、この時代から活躍していたのね。そして2では狄龍さん&姜大衛さんの刺馬コンビも登場。王羽さんはこのえいがから数年後にショウブラとの契約を解除したらしいので、単なる娯楽だけじゃなくて、香港映画の歴史がよくわかるシリーズとして貴重な作品なのだなーと思った次第。

おまけ・香港映画好きの間ではよく話題になっているが、実はこれまだ観たことありません。すいません。王羽さんがショウブラから離脱したからこそできた映画なんだろうな。これはいつかちゃんと観たい。


原題&英題:獨臂刀(One Armed Swordsman)/獨臂刀王(Return of the One Armed Swordsman)
監督&脚本:チャン・チェー 脚本:ニー・クワン(1のみ) アクション指導:ラウ・カーリョン(2のみ)
出演:ジミー・ウォング チャオ・チャオ ティエン・フォン バイオレット・パン(1のみ) ティ・ロン(2のみ) デビッド・チャン(2のみ)

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失魂(2013/台湾)

 今年は3年前に引き続いての台湾映画特集(リンクはアジアンパラダイスより)のわけだが、実は3年前は香港映画を優先したり、オールナイトイベントに行っていたりしていたので、その時の上映作品は全く観ていない。当時すでに一般上映が決まっていた『モンガに散る』と台湾旅行時の機内上映で観た『台北カフェ・ストーリー』を後で観てフォローしたくらいか。
 3年前のTIFFに『4枚目の似顔絵』で参加した鐘孟宏が、今年の特集にも再び登場。長編第3作となる(第1作は張震主演の『停車』)この作品は、なんと主演にあの王羽さんを迎えたサイコサスペンスということで、評判も聞いて最初はパスしてもいいかなーと思っていたのだが、 やってくれるなら観ておいた方がいいと言われたので観ることにした。

Soul

 台北で日本料理店の板前をしていた阿川(ジョセフ・チャン)が突然昏倒した。中部の山間部で林業をして暮らしている父親(王羽さん)の元に送り返されてきたが、阿川は突然目を覚まし、自分は阿川ではない、別の人間だと言う。台北から弟の様子を見に帰ってきた姉(シアンチー)はその豹変を怪しむが、阿川は姉を殺してしまい、父は山奥の作業場に娘の遺体を隠して、阿川を眠らせて作業場の山小屋に閉じ込める。そして変わり果ててしまった息子と共に山に籠り、対決することになる…。


↑【閲覧注意】としておく。公式紹介ページの動画と見比べてみたのだが…どっちもグロくないか?(汗)

 いやあ、怖かったわ。ホラー仕立てと言われてたけど、死体がゴロゴロという点より、精神的に追い詰められる怖さがある。王羽さんが拳をふるって撲殺するわけじゃないのに怖い。黙ってそこにいるだけで怖い。とにかく怖い。まさに戦慄のお父ちゃん。父親役に王羽さんを配したのはファンだったからとモンホンさんはおっしゃっていたが、恐らくその怖さを念頭に入れて選んだのだろう…と思っているだけなのはワタシだけでいい。マジでそう思ってる。終始無表情(だと思った)で何事にも対応しているからこそ、クライマックスから結末の衝撃も大きかった。彼は本当に…だったのか?

 目の前で展開するのは、精神を病んだ息子とその状況を受け入れることに葛藤しつつ無言で向かい合う父と息子の見えない殴り合い。まるで『捜査官X』での壮絶な父子対決に匹敵するようだ。でも、身体の痛み以上に精神はダメージを受けるときつい。「肉体は魂の入れ物でしかない」という阿川の言葉は、父だけでなく、観ているワタシたちをも翻弄するようだ。

 印象深かったのは、霧深い山間部の風景と風や木のざわめき。それが自然を越えた不気味さを増長させている。録音はお馴染み杜篤之さんなので、さすがというしかない。ロケ地はクレジットから察するに、お茶で有名な梨山のよう。

 Q&Aではキャスティングや舞台の他、阿川のセリフに登場した「猟銃を持った三人」のことや中盤に登場する「伝言人」の存在、ラストで登場する往年の歌手文夏について、魚や虫、蛇などの自然描写について。詳しくはこちらを。

 いろいろ考えるところは多く、ずっしりと重かったが、観て本当によかった。
ここしばらくで公開された台湾映画のほとんどが青春ものだったので、たまには他のジャンルも観たいと思ってたし、2本とも全く違うジャンルであったから、バランスがとれてよかったと思う。台湾映画は香港映画以上に全国公開の機会がないので、やはり映画祭でしっかり観ていく必要があるのだろうな。

英題:Soul
監督:チョン・モンホン 製作:イエ・ルーフェン 撮影:中島長雄 録音:トゥー・ドゥーチー
出演:ジミー・ウォング ジョセフ・チャン ヴィンセント・リャン チェン・シアンチー レオン・ダイ トゥオ・チョンホア チェン・ユーシュン チン・シージエ

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総舗師-メインシェフへの道(2013/台湾)

 1990年中盤、突如台湾映画界に登場した陳玉勲は、それまで日本で知られていた侯孝賢や楊徳昌よりも一回り若く、90年代前半にデビューした李安や蔡明亮、そして林正盛に世代的にはいくらか近いとはいえ、彼らとは全くもって異なる独自の個性を武器に、『熱帯魚』と『ラブゴーゴー』という2本の爆笑コメディを作り上げ、日本でも大きな注目を集めた。しかし、その後彼は台湾映画界から一歩身を置き、TVCFディレクターとして活動することとなる。

 そんな彼は近年オムニバス短編を撮った後、ついに今年長編第3作を発表、実に16年ぶりに映画界に復帰した、というのを陳玉勲(以下ユーシュン)ファンの方から聞いて大いに驚き、そして喜んだ。この夏公開されたこの映画は日本から観に行ったファンからも好評と聞いた。それがTIFFに登場するのだから、これはやっぱり観ないとね。
というわけで喜んで観て、大いに楽しんだのだよ。『總舗師―メインシェフへの道』を。

 總舗師(台湾語で「ツォンポーサイ」と発音)とは、野外での宴会料理(辦桌)を手がけるために出張調理を行う料理人のこと。台南の伝説の總舗師・蒼蝿師(字幕ではハエ師・柯一正)の娘である詹小婉(キミ・シア)は 家業を継ぐのを嫌い、アイドルになるために台北へ行く。しかし全く売れずに挫折し、さらに恋人がこしらえた900万元の借金の肩代わりをされそうになったので、急いで荷造りして駅へ向かう。その間、通りすがりのホームレスに亡き父が残した秘伝のレシピノートを奪われてしまう。
 台南に戻った小婉は母のパフィー(林美秀)が一人暮らす実家に戻るが、母もまた夜逃げしており、街の片隅に越して小さな食堂を開き、自ら踊って(!)客寄せをしていた。事情を聞くと、蒼蝿師の死後、彼の弟子だった財が師匠の後を継ぐためにパフィーに宴会料理勝負を挑んだが、母は父のような料理が作れず、完敗して店を乗っ取られてしまったのだ。
    小婉はパフィーを手伝うことにする。さすが元アイドルだけあって店はそこそこ繁盛し、召喚獣と呼ばれる学生トリオが彼女のファンになる。ある日、昔蒼蝿師の世話になったという老カップルが店を訪ねてきて、自分たちの結婚式で、蒼蝿師伝来の料理を振舞ってほしいと依頼してくる。それに感動した小婉は依頼を引き受けるが、レシピノートもなくレパートリーも少ないのに何を作ればいいのか大いに悩む。そんな時、彼女たちの元に、どんなまずい料理もうまく仕上げられるという流しの料理医師、桃園出身の葉如海(トニー・ヤン)が現れ、彼女たちに手を貸す。蒼蝿師の師であった虎鼻師や地元有力者 の元を訪ねて、あれこれとアイディアを練っていくうちに、小婉は台湾宴会料理選手権に出場して、メインシェフを目指すことに…! 

Zoneprosite

 ポスターのコピーには「台湾首部史詩喜劇」とある。翻訳すれば「台湾初のエピックコメディ」か。オデッセイじゃオーバーだしね。(そもそもオデッセイは「オデュッセイア」のことを指すし)爆笑あり微笑ありの上映時間145分で語られるのは、かつて台湾中の宴会を彩った總舗師の栄光の歴史と、現代への帰還。それを細かなスケッチでつなぎ、大きなうねりへとまとめ上げている。
 總舗師は20年くらい前までは台湾中にあちこちいたらしいが、うん、90年代初頭あたりなら、そうだったかもしれない。ちょうどその頃台湾に留学していたのだが、街中でテントが張られていたのをよく見かけた。それはたいてい葬儀だったように覚えているが、中には婚礼などもあったんだろうな。…しかし、台湾人の祝宴に招かれなかったから、辦桌を経験したことがない。ああ、残念だわ。

ユーシュン作品の魅力はユニークな登場人物。それだけだったら香港映画では特に珍しくないけど、彼の映画の登場人物たちは、これまでの作品を振り返っても、だいたい大らかで人懐っこかったりして、台湾人らしい気質と人間に対する優しさを備えているように感じる。それはどシリアスな文芸映画が多かった90年代から、メガヒット青春映画を量産している2010年代まで全く普遍であり、その変わらなさが個性になっているので、観ていて安心するし、ユーシュン節健在でとても嬉しかった。
 中でもタイトルロール一番手を飾る、林美秀演じる小婉の母親パフィーはもう安心感たっぷりの強烈ふくよかキャラ(笑)。登場時の台湾のビヨンセ風ダンス(来日したらきっと渡辺直美嬢と共演するのだろうな。台湾つながりだし)からもう大笑いだし、小婉とのボケっぱなしの掛け合いも楽しい。というか母娘揃ってボケキャラなんだが、それでもツッコミはちゃんとしているところがミソというか、やっぱり母親だしねというか。
 その他のお約束キャラは、『熱帯魚』にも登場したような憎めない小悪党。ここでは小婉を追っかけて台南までやってくる取立て屋コンビがあてはまるのだが、パフィーにうまく丸め込まれて、いつのまにか「助っ人A」「助っ人B」などと呼ばれてるし。
 物語の要となる伝説の總舗師たちもクセ者揃い。小婉のパパでパフィーの夫である“神の總舗師”こと蒼蝿師には映画監督にしてルンルン(クー・ユールン)パパとして知られる柯一正。ノリノリの懐メロをしょって登場する“鬼の總舗師”鬼頭師の喜翔もかなり衝撃的なキャラだが、台北駅に住み着くホームレス、その正体は“人の總舗師”愚人師(字幕では道化師)がまたそれを上回るキャラで、しかも演じてるのがあの呉念眞先生なんだから、もうものすごい。
 あとは、久しぶりに見たらいい男になって帰ってきたトニー・ヤンとか、日本ドラマの天然キャラっぽい雰囲気を持つキミ小姐とか、彼女と一緒にセブンイレブンのCMにも出ちゃってる召喚獣トリオとか、どのキャストもいい味出しててええわ。

  そして何よりも、登場する料理がどれもおいしそうで、なおかつ面白い。しかも宴会料理だけでなく、家庭料理にも言及しているのが面白いんだよね。その中で如海が台湾中を歩き回って、各家庭の蕃茄炒蛋の味を比べているというのが興味深かった。これはワタシも好きでよく作っており、ここにもアップしたことがあるのだけど、あまりにも家庭料理なせいか、日本ではあまり知られていないという話も聞いたことがある。え、そうなの?シンプルすぎる料理だからかな。
 でも、この家庭料理も宮廷料理も同じまな板に上げられてしまい、どちらもその素晴らしさを平等に称えられる。それはどちらも美味しいからである。初映時のQ&Aでユーシュンが 「生きている限り、美味しいものを食べるのは大きな喜び」と述べているが、まさにその通りで、おいしいものに区別はないってことであるのね。

  行った時のQ&Aでは、物語のキーポイントとして使われる、總舗師の歴史を綴った壁画(台中にある、あるアーティストの描いた絵がヒントになっているとか)についてや、CMディレクターとしての経験、キャラクターがそれぞれテーマ曲を持っていること(鬼頭師のこの曲とか如海が歌うこれとか)にちなんでの質問があった。ユーシュンの他に、昨年の『光にふれる』にも出演していた女優の李烈さんと、後に記事をアップする『失魂』もプロデュースした葉如芬さんという、二人の女性プロデューサーも登場し、なごやかに進んで行きましたよ。

 台湾映画の一般公開も以前よりは増えてきてはいるが、まだまだ知名度は低い。旅行と絡めてのプロモが一番効果的なのかもしれないけど、この映画ならロケ地マップも作成してるし、思いっきりローカルではあるけど、食という親しみのある素材を使っているのだから、なんとか一般公開にこぎつけてもらいたいところですわ。どうかどうかお願いします。そしてこれが田舎まできてくれれば、さらにうれしきことかぎりなしですよ。

英題:Zone Pro Site
監督;チェン・ユーシュン  製作:リー・リエ&イエ・ルーフェン  音楽:マー・ニエンシェン
出演:リン・メイシウ  トニー・ヤン  キミ・シア   シー・シアン   クー・イーション  ウー・ニエンジェン

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