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2013年10月

激戦(2013/香港)

 では、いよいよTIFF鑑賞作品の感想です。
 今年から〈アジアの風〉とアジアと日本以外の映画を集めた〈ワールドシネマ〉が統合され、〈ワールドフォーカス〉として生まれ変わった。そのうち日本を含めたアジア映画の新人監督作品をコンペ化し、〈アジアの未来〉として独立。
 そんな感じで非コンペ映画の上映形態がかなり変わり、特集上映もこのカテゴリーに入ることになったので、だいぶ上映本数が減ってしまったと考えていいのだろうか。まあ、石坂さんのインタビューを読むと、今後は増えるのかなという気はするのですが。

Unbeatable

 さて、ワールド・フォーカス唯一の香港映画『激戦』
 3年前のフィルメックスで『密告・者』が上映され、近作が日本でも続けて上映されているベテラン、ダンテ・ラム監督の最新作がTIFF初登場。『証人』以来コンビを組んでいるニック・チョンと、台湾出身でこのところ『恋人のディスクール』太極二部作など香港映画にも進出しているエディ・ポンを迎え、クライムサスペンスではなくなんと総合格闘技MMAをテーマにした、香港では珍しいタイプの格闘技映画だ。


 20年以上前にボクシングのチャンピオンとして名声を挙げた程輝(ニック)は八百長試合に手を出したことから自滅して現役を引退し、借金取りに追われる香港を後にして、マカオで旧友が経営するジムで下働きをする。輝は君(メイ・ティン)と小丹(クリスタル・リー)親子の部屋を間借りして住むが、君は夫の浮気により情緒不安定になり、それがもとで息子を溺死させたという過去があった。
 北京の富豪の息子林思斎(エディ)は父の財産には手をつけなかったものの、30歳になるまで中国各地を旅して歩く悠々自適な生活を送ってきたが、父(高捷)が破産したことで人生が変わる。父はマカオのカジノで身を持ち崩し、思斎は工事現場で働きながら父の面倒を見ていた。カジノのバーで総合格闘技MMAのマッチ「ゴールデンランブル」の出場者募集告知を見かけ、賞金を獲得して父親のために使いたいと思った彼は、輝が働いているジムに通うようになる。輝が往年のチャンピオンであることを知った思斎は、彼に指導を仰ぐ。思斎の適性を見抜いた輝は、彼に適切な指導をつけていく。ゴールデンランブルに出場した思斎は大方の予想を覆して初戦を突破。新たなマッチマスターとして次なる戦いに臨んでいくが…。

 香港映画の格闘技ものと聞いて思い浮かぶのは、アーロンの『野獣の瞳』に、ダニエル・リー監督の『ファイターズ・ブルース』と『スター・ランナー』。後は何かあったかなあ…。
 格闘技ねえ…。一時期K-1やらPRIDEやらの総合格闘技が大流行し、大晦日の民放のTV番組が全て格闘技になってしまったことがあったけど、それってなんだかなーと思ったことがある。え、オマエはアクション好きじゃないのかって?なんで観てないのかって?いや別にいいでしょうが、つーか総合格闘技って動きが少なかったんだもの(苦笑)。
 そんなわけでよくわからない人間には、ただただ「うわーすげー、きゃー痛そう、あー延髄損傷したら動けなくなっちゃうじゃないのよー(>_<)」って状態で観てたのですが、いかがでしたか?格闘技に詳しい皆様的には。(丸投げかい!)

 とここで投げやりになってはあかんぞ自分。ちゃんと感想書け。

 これまで香港を舞台に壮絶なポリスバトルを展開してきたダンテさんだけど、モチーフの変化と共に舞台はマカオへ。MMAが賭けの対象になるから、香港よりは取り上げられやすいのかな?これまでもトーさんやパンちゃんの映画でお馴染みだが、先行作品とは全く違う場所を選んでいるのもよかった。これはロケ地巡りに行きたくなるねー。

 人生に挫折した男たちが、肉体を酷使して再生を図る筋書きは目新しいものではないけど、やはりグッと引きつけられてしまう。特にニックさんは40代半ばの元ボクシングチャンピオンという役どころのせいで、そのやさぐれっぷりが実にハマっていたよなー。そして9カ月の肉体改造の成果が出ていたボディにも当然驚いた。確かに痩せてるってイメージあったしねえ。北京のボンボンのエディは逆に清廉潔白っぽくてあまり魅かれなかったんだけど、ガタイがいいこともあってこっちもええカラダしてるじゃないかー。
 ニックさん演じる輝と、エディ演じる思斎(字幕では「スーチー」とあったけど、広東語読みの「シーチョイ」の方があってる気がする)がそれぞれマカオで経験する出来事もまた泣ける。父思いの思斎、君と小丹親子と輝とのふれあい。思斎たち同様、この親子も大陸出身なのかな。
 とりわけ、心を病んだ母を健気に支える小丹(クリスタルちゃんは『証人』等ダンテ作品の常連子役でマレーシア出身だとか)の存在にはホッとさせられた。生意気だけど君を守るのには精いっぱいで、だけど輝を嫌っているわけじゃなくてむしろ心強く思っているようでね。君には北京語、輝には広東語を使って会話するというスイッチの切り替えも興味深かった。今香港やマカオで育っている子供ってこんな感じでしゃべれる子が多いのだろうか?
 言葉といえば、北京語話者の思斎が輝に広東語で、広東語話者の輝が君親子にそれぞれ出会ったばかりの頃、片言の広東語や北京語で話しかけていたのも面白かった。しかし北京語と広東語の会話で、いったいどこまで意思が疎通できるかってのは、永遠の謎だなあ。
 中盤からクライマックスに至るまでの展開には驚かされ、さらに痛かったけど、格闘家として盛りを過ぎた輝がMMAのリングに立つくだりはええなあ。体力の衰えた中年がチャンピオンを相手に勝とうとするには、ああいう手段はホントに可能なの?と思ったけど、まあ、ああいう奇跡はあってほしいかなあ。(すいません、ネタばれを避けるためにわざと曖昧な書き方をしています)

 後は追記できたら何か書こうと思います。Q&Aはこちらが詳しいかな。
 ところで、「このところニック・チョンと組んでいますが、彼以外で撮ってみたい香港の俳優はいますか」という質問に、「次回作もニックと組む予定だが、実はトニーを使ってみたい。でもストーリーを考え付かないので実現できないんだ」とダンテさんは答えていたのに、それがなぜか「次回作はニックとトニー共演!」と伝わってたのはなんでだろう?さらにそれが先走ってSNSで「ダンテさんはドSだから、トニーがまたひどい目に逢うー」なんて心配まで目にしたんだが、いくらなんでもそれは杞憂で終わるのではないかねー?
 まあ、ワタシもダンテさんの撮るトニーの映画は観てみたい。でも、先行する作品のようにはならないんじゃないかね?って思ってるよ。
 ともかく、いつになってもいいから「トニー新作はダンテ・ラム監督作品!」という喜ばしい情報が出ることを期待したいもんだね。

原題:Unbeatable
監督&脚本:ダンテ・ラム   製作総指揮:ユー・ドン&ジェフリー・チャン 脚本:ジャック・ン&フォン・チーフォン 撮影:ケニー・ツェー    美術:チョン・シウホン    編集:アズラエル・チュン
出演:ニック・チョン エディ・ポン メイ・ティン    クリスタル・リー アンディ・オン ウィール・リュウ ジャック・カオ 

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明日からTIFF参戦。

 すでに中盤から後半に入っている東京国際映画祭ですが、ワタシは明日の夕方から参加します。
 ご覧になっている同好の士の皆様からは、ジュノ・マック初監督作品『リゴル・モルティス』(今年から新設のアジアの未来部門参加)の評判がよく、伝説の字幕等いろんな意味で話題を呼ぶ東京・中国映画週間での新作の字幕が比較的よかったと聞き、それぞれ気になるところ。でも今年の本祭は準備までが大変なことになってたのね…とこの記事を読んで思った次第。

 

先の記事にも書きましたが、明日夕方の『激戦』からの参戦です。ダブルタイフーンの行方も気になるところですが、皆さん六本木でお会いしましょう!
  …と、初めて愛版(iPad)のアプリから投稿してみる次第(^^;;

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TIFF、フィルメックス、そして冬の特集上映に思ふ。

 お久しぶりの更新です。気がついたら東京国際映画祭が近づいてきました。

 今年のTIFFは平日始まり平日終わりなので、週末に行ければとあれこれ悩んだ結果、案の定週末に何も引っかからなかったので、平日に休みを取って行くことにした次第。
 中華圏では以下3作品を観ます。

 『激戦』(香港・10/22)
 『総舗師-メインシェフへの道』(台湾・10/22)
 『失魂』(台湾・10/23)

 今年は3年前に続いて台湾映画が特集され、『失魂』上映時には上映作品の監督が集まったシンポジウムが行われるというので、これを楽しみにしているのでした。考えたら、台湾映画は香港映画以上に一般公開されないからね。
 今年の一番の楽しみは『総舗師―メインシェフへの道』。これは1990年代に監督デビューし、『熱帯魚』『ラブゴーゴー』という当時としては珍しい台湾コメディ映画を生み出して話題になったものの、その後長い間沈黙していた(と言ってもTVCF等は撮っていたらしい)チェン・ユーシュン(陳玉勲)が実に16年ぶりに撮った長編第3作。すでに台湾では上映され、観てきた方の評判もよいので、かなり期待しております。
 『激戦』はフィルメックスにも出品されたことがあるダンテ・ラムの新作。ニック・チョンと最近香港映画でめきめきと頭角を現している台湾のエディ・ポンが格闘技に挑む作品らしい。しかし最近の香港映画の傾向は、必ず「戦」がつく二字タイトルなのよねえ。
 『失魂』は“戦慄のお父ちゃん(いま思いついた)”こと王羽さんが台湾で出演したホラーテイストの映画。出来も…らしいし、最初は観なくてもいいかと思ったのだけど、複数の方に薦められてチケット取りました。

 TIFFの1か月後にはフィルメックスが控えておりますが、今年はなんと香港映画の出品ゼロ。考えたら去年もトーさんやソイ・チェンさん、ダンテさんのようなエンタメ系作品はなかったので、これは後述する香港映画の日本公開決定を受けての判断なのかなと思った次第。
 でも、興味深いのは、今年の三大映画祭に出品されたり、来月台湾で行われる金馬奨にノミネートされている中華圏作品が多いこと。オープニングはジャ・ジャンクーの《天注定》、特別招待に蔡明亮の《郊遊》と、それぞれカンヌとヴェネチアで高い評価を受けた作品。コンペには台湾のチャン・ツォーチした『夏休みの宿題』、ジャンクーがプロデュースした中国映画『見知らぬあなた』、そしてカンヌでカメラドールを受賞したシンガポール映画『ILO ILO』があり、これも観る価値はあるかなーと思っている。
 今の時点ではまだスケジュールが決まってないので、ジャンクーとミンリャンのどちらを中心にとるかは他の作品のスケジュール次第かな。中華圏以外でも興味のある作品があるので、そっちとの兼ね合いもあるしね。

 で、最近両映画祭で香港映画の上映が減った原因としては、ここしばらく小規模の特集上映として新作の一般公開が増えたからだと考えている。  これは多分去年の夏からシネマート系で始まった香港映画祭り(最近は香港・中国エンターテインメント祭りと名乗ることが多い)が貢献しているのだろうが、新宿武蔵野館系列でも相変わらず上映が続いている。
 しかし、これらの作品の地方公開は、大阪や名古屋や福岡の大都市圏に限られており、仙台までくればまだいい方だ(実はシネマート系公開の『大魔術師』『じじぃドラゴン』は仙台では上映されている。でも仙台には観に行けなかった)。場合によっては大阪でも上映されないという事態になっているようだ。つまり、例によって例の如く、「一部地域のみ上映→地方順次上映せずにソフト化」といういつものパターンである。裏返せば、ソフト化先行で単館上映は実績作りのため、と言ってしまうのはきついだろうか。(映画館上映どころか先にWOWOWで放映されて後で劇場公開が決まった『モーターウェイ』のような例も最近あったしね)
 特に最近はWOWOWでまとめて放映してくれるので(11月にもシネマート系特集上映の作品が複数放映されるという話を聞いた)、わざわざレンタル店でアジア映画カテゴリの棚が消えて縮小された洋画スペースで目を皿のようにしなくても、契約さえしていれば気軽に観られるようになっていいとは思うのだが、それで満足はしたくない。毎回くどいほど言ってるけど、やっぱり大きい画面で観たいし、新しいファンも開拓しなきゃいけないと思うんだよ。ましてや香港映画はアクションやサスペンスだけじゃないからね。  まあ、そんな思いでblogを10年近く続けているんですけどね。

 と、相変わらず同じことばかり言っておりますが、TIFF作品も感想は早めに書きますし、WOWOWで観てない作品をカバーしていきますので。まあ、継続は力なりということで、香港映画の全国上映が増えることを願って、こちらはできることをコツコツやっていきますよ。

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