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夢翔る人 色情男女(1996/香港)

あまりにも有名なMVだけど、まずはこれから始めるかな。


アップ元はロックレコード!これはありがたし。

 ベテランの哥哥ふぁんしーのお姉さま方には「何言ってんのよアンタ、ここは96-97演唱會の『紅』をUPすべきじゃないのよ」と言われそうだが、このMVだって十分に衝撃的だ。だってレスリーとカレンがガンガン絡んでくれるしさ。
 96年に本格的に歌手復帰したレスリーはかなり攻めの姿勢に入っていて、この年に発表したアルバム『紅』もかなり大胆なコンセプトのものであったっけ。この年のレスリーは、自分の夢に向かって助走をし始めたと考えていたのかもしれない、だからこんな官能的な作品をいくつも放っていたんじゃないかと思ってしまう。

 そんな時期に彼とイー・トンシン監督が初めてコンビを組んで製作したのが、『夢翔る人 色情男女』。ポルノ映画の撮影現場を描く作品ということで、本編自体も三級指定され、当時はかなり話題になった作品であるけど、男女問わずにおぱーいやびーちくが露出しても、決してお下品でお淫らな映画じゃありませんのことよ。おーほほほほほほ。

カレン&小春版主題歌を♪

  長年仕事に恵まれない中堅の映画監督シン(レスリー)の元にプロデューサーのチャン(羅家英)が持ってきたのはポルノ映画。スポンサー(チョン・プイ)から愛人のモニク(すーちー) を主演にと指定され、恋人の警官メイ(カレン)に鼓舞された彼は「色情男女」という脚本を書き上げる。
 ところがいざ現場に入るとゴタゴタ続き。モニクは全くやる気がないので、ベテラン男優ワー(徐錦江)との絡みにも不満を言う。チャンは話題作りを狙って尖沙咀での無許可ロケを敢行するが、通行人に囲まれて失敗する。参考のためにとシンはチャンとウケてるポルノ映画を観にいくが、同じ館で自作がブーイングされてたイー・トンシン監督(ラウチン)がその夜に中環のフェリーターミナルから入水自殺したことを後で知る。
 混乱する現場から一度は監督の降板を決意したシンだが、尊敬していたイー監督を思い出し、母親のふとした一言などがきっかけで、現場に復帰する。スタッフを気遣い、モニクとワーにアドバイスをして絡みの場面を撮影し始めると、彼女の演技が明らかに変わっていく。現場の士気は一気に高まり、たちまち撮影にのめり込んでいくシンだったが、それに反するようにメイとの仲がギクシャクしていく…。

 オープニング早々、荒ぶってセックスするシンとメイの姿が映し出されるが、これがもう荒ぶりすぎて色気もへったくれもない(笑)。シンはケツ出しセミヌード(まあ御下品な表現!)だというのに、これまた色気なんかないし。※意見には個人差があります。 
気がつけば自分たちの後ろでチャンや撮影クルーが自分のセックスを撮影している。しかも「カット!」の声がかかっているのにピストン運動がやめられない。はっと我に帰ったらそれは夢だったというオチであったのだが、ここでシンが妄想に浸りやすい相当なロマンチストであることが提示され、彼の妄想とシビアな現実が混然一体となった物語が始まる。

 1996年の香港映画界といえば、翌年の返還を控えてあまりいい話題がなかったような気が…。そんな状況を受けて本編は展開する。
 そうね、あの頃ねー…。当時はまだペーペーの電影迷だったし、本格的に香港行き出したのも返還直後だったので生意気なことは言えないんだけど、日本じゃ王家衛の『天使の涙』がそりゃもう大流行。それに便乗する形でようやく他の香港映画もぼちぼちと入り始めた頃だったが、実はごく一部のガチな香港電影迷の間で「王家衛人気うぜー」みたいなことになってた気がする。それ言ってたのって、今でいうとこの映画○宝系な方々かなあ。オサレ映画系の売れ方に反旗を翻すカウンターな人たちね。今でこそ王家衛も多様な香港映画の一翼を担う位置にはあるけど、実際この頃は香港でも決して売れ線の監督じゃなかったからね。そのあたりの事情はシンが初撮影のラッシュを関係者に見せたときに、あまりにも動きを重視した挙句ブレブレになったため、「王家衛じゃねーんだよ、王晶を目指せよ!」と批判されるくだりでうかがえる。実際、当時の下り坂の香港映画界においても、王晶(このころはまだ日本で「バリー・ウォン」と呼ばれていたねえ)は確実に監督&プロデュース作品で次々とヒットを放っていたわけだし、自らも王家衛を揶揄したキャラを作品中に登場させてさんざんコケにしていたからね。
 さらにはトンシンさんが自虐ネタと化す。ラウちん演じるがイー監督は名前を観ても明らかな通りご本人をモデルにしているし、この映画の前に作った『烈火戦車』が大コケしたのである。無名のラウちんとユン恋々を主演に立て、二人を大ブレイクさせた『つきせぬ想い』は当時たったの3年前のことだったのに!それだけ香港映画界の下り坂っぷりが明白だったというのがよくわかって、背筋が寒くなる。
(そうそう、実際の映画人も俳優として加わった、シンとその仲間がくっちゃべる場面にあった、「なんとかって映画の監督の「石川三郎」ってハーマンだろう!」「絶対ハーマンだ」というセリフは昔も今も笑えるなあ。あの場面のおしゃべりには実話をもとにしている
のも多そうだよね)

 だけど決してそんな現場を告発する映画じゃないのはご存じの通り。ギスギスした空気の中で混乱しながら始まる撮影は、いくつもの衝突と挫折を繰り返し、バラバラになろうとしながらシンが人との出会いやそこからの会話で突破口をつかみ、なんとか現場を結束させていこうとする姿が描かれるのはやっぱりグッとくる。こういう映画では常に悪役的な位置に立ちそうなプロデューサーのチャンも、常に都合のいいことしか言わないけど、いざというときには頼りになることを言ってくれる。また、シンの焦りを一番近くで見てきたカメラマンが、彼を家に誘って周防正行監督のポルノ映画を一緒に観るくだりは、映画人はここまでできるんだというシンの発見と、ポルノ映画は決して恥ずべきものではないという認識を彼を通じて観客にも示してくれる(まあ「変態家族・兄貴の嫁さん」はこの映画以前に日本では高く評価されているから、今さらいうなって言われそうだけど、香港人には衝撃だったんじゃないの?と思ったのよ)。
 シンが変わればスタッフもキャストも意識が変わる。最初は好奇心だけで映画に出てはわがまま言いたい放題だったモニクのドラマティックな変身には目を見張るものがある。台湾から苦労してやってきたというキャラ設定は、自身もデビュー作がいきなり脱ぎ要員だったすーちー本人にも大きくかぶるのだから、エロいとかなんとか言う暇もなく心をつかまれる。覚醒(!)したシンにケアしてもらい「今までで最高のオーガズムを思い出せ」と演出された後の彼女の眼つきもしぐさもガラリと変わったってのがまたすごいしね。そんなふうに言いながらも、だいぶ年を経て再見すると、「あー、すーちーのおはだきれーい。おぱーい…びーちく…」とか心の中の男のオレ(設定年齢は当然リアルに中年オヤジ?笑)がつぶやいてしまってたんだけどな!うう、ホーチョン作品の見すぎか?オレ(笑)

 そんなことをあれこれいいながらも、実は一番すごいのはシンの妄想癖の数々だったりする。あー、青臭いねー。などとと今は思えるんだけど、映画にのめりこんでメイの不信を買い、階上でいちゃつくカップルに露骨な嫉妬を向けた彼女を避けて外に出たシンが、屋上でベールに包まれた全裸のモニクを見つけ、おずおずと近づきながら彼女と戯れるエロい妄想は見事に彼の心理状態にマッチしていたからね。まーそういう妄想はファンサービスでもあるし、ちょっとナ○っぽいかな?なんて感じるんだけど。そしてクライマックスのレスリー自身が監督した『色情男女』本編も(こらこら)。あ、これでも一応誉めてますよ!ファンの皆さん怒らないで~。ワタシもレスリー好きだもーん。

 何のかの考えながらだらだら書いてきたけど、ここまで書いて頭に浮かんだのは、同じ「映画についての映画」についてのこと。すなわち、その手の映画をよく撮っているパンちゃんことホーチョンなんだけど、同じエロを主題にしながらも、やっぱり『AV』『低俗喜劇』とは全然違うんだもんねえ。それは監督の作風もあるんだけどね。
 いずれにしろ、電影迷にとって、「映画についての映画」ってかなりおもしろいんだよね、ということでここでは締めにしたい。

英題(仏題?):Viva Erotica
監督:イー・トンシン&ロー・チーリョン
出演:レスリー・チャン カレン・モク スー・チー チョイ・カムコン チョン・プイ リー・リクチー ヴィンセント・コック

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