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『アクション映画バカ一代』谷垣健治

 自分の好きなものはいっぱいある。その中で好きなもの同士がつながることは、喜びも楽しみも倍増するものである。日本映画『るろうに剣心』にて、前職時から支持している映画監督の大友啓史さんと、香港でスタントマンとして活躍してきたアクション監督の谷垣健治さんがコンビを組んだことはまさにその倍増の喜びの好例であり、おおいにハマりこんでしまってすいません(笑)。

 さて、『燃えよ!スタントマン』以来なんと15年ぶりとなる谷垣さんのエッセイ。
前作は…すみません、借りて読んだので手元にありません、重ねてすみません(苦笑)。

 まあ、読んでなくても無問題。1999年から映画秘宝に連載しているコラムをベースに、大幅改稿&加筆されたこの本は、成龍さんをヒーローとした谷垣さんがいかにして香港でスタントマンとして活動することになったのかという、ことの始まりからも改めて書かれているので、つい最近彼を知った人にも入りやすい構成となっている。うーん、親切親切。
 もう一つの親切は、ものすごく細かい注釈。この本を読む人はほとんどが香港映画ファンかアクション映画ファンであると思うのだけど、おそらくそれ以外の人(というとるろ剣からのファンが大多数になるのかな)に向けての、香港映画や俳優についての丁寧な注釈が入っている。一部作品にはオリジナルビジュアルも入っているのもいい。そして執筆当時の裏話等にも注がつけられるので、もうものすごいサービスである。

 高校卒業後日本で倉田保昭氏に師事し、大学卒業後に単身香港に渡り、かなり無茶をやりながら香港スタントマン協会所属の日本人俳優第1号となり、ドニー・イェンとの運命的な出会いを果たしたくだりは前著にもあるけど、えーと忘れていたのでかなり新鮮に読んだ。第1章ではこの部分に、彼が日本でスタントマンとして参加してきた作品についての記録と共に2000年ぐらいの頃を回顧している。
 本来は俳優であるド兄さんがアクション指導として裏方にも回り始めたのがこの頃なのだけど、あの星月も彼らがアクションを手掛けていたんだっけな。ワタシは諸事情によりあの映画が大嫌いなのだが(理由は聞かないでくれ。リンク先を読めばわかる)、あの映画のアクションシーンは確かによかったことだけは記憶している。15年くらい前は日本でもアクション以外の香港映画も多く入っていたし、ワタシ自身も当時はあまりアクションものを観なかった王家衛好きのスカした映画ファン(苦笑)だったので、スタントまでには目がいかなかったのも事実なんだよな。
 それもあってド兄さんが裏方に回り、米国に活動の拠点を移したころの作品はほとんど観ていない。釈由美子嬢の『修羅雪姫』も地元で上映されたけど、観に行くまでのモチベーションは持てなかったし…。『ブレイド2』も当然観てない。このへんの作品群も、いつかカバーできるといいかな。

Spl

↑SPLオリジナルポスター

 2000年からの作品が取り上げられる第2章になると、『ツインズ・エフェクト』 『SPL』 『新宿事件』とこのblogで取り上げた作品が登場するので、観た頃を思い出せるようになった。特にSPLはフィルメックスで紹介されていたのだが、確かにるろ剣で目指した「アクションとドラマの融合」を試みた好例として見ることができる。なるほどねー。
 香港電影迷的に嬉しいのは、香港アクション用語解説とアクション監督たちを紹介したコラム。俳優を横並びにすることを「英雄本色」と呼ぶとか、ブルース・ローさんは甘いものが大好きなど、現場にいるからこそのエピソードが楽しいよ。

Wuxia

武侠のティザーポスター。そういえば日本でも香港でもベースカラーが黄色なんだな。

 香港に数多いるアクションスターたちの中でも、今一番熱いアクション映画バカといえば当然ド兄さんであり、第3章では彼と谷垣さんが共に取り組んだ葉問二部作『捜査官X』・精武風雲の3作品についての話。それぞれ個性的な3作品だけど、やっぱり葉問と精武風雲がなぜプロパガンダっぽくなってしまったのかというのが興味深かったかな。現場も本意ではなかったということが少しわかったのでホッとした。まあ、中国大陸も視野に入れて作品を作ると、どうしても…ではあるんだけどね。ウィルソンさん・ピーターさん・アンドリューさんのそれぞれの現場で関わり方もまた興味深かった。そして未だに出来上がる気配がない《特殊身份》は…どうなるんだろう?昨年亡くなった司徒錦源さんも関わっていたというし…。ところでまだ『導火線』観ていません。うわーごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

Ruroken

るろ剣香港版ポスター。このポスターはGH旺角になかったのだよ…。

 監督作品『マスター・オフ・サンダー』、イーキンも出演した『カムイ外伝』(でも彼の出演の経緯は、谷垣さんも知らないという。あれ?)から、谷垣アクションが大爆発するるろ剣までの日本映画での挑戦を綴った第4章。
 カムイに関しては「あー、これってなんかもったいない!」と完成した作品を観て思ったのだが、それも撮影初期に起こった事故とヒロイン交代を思えば、それが非常に惜しかったし、事故さえ起らなければ、きっと超絶なアクションに興奮したかもしれないのだろうな。マツケンも清盛以上に入り込んだアクションができそうな印象もあったし。
 そしてるろ剣。これも何度も書いてきたけど、やっぱりあの大友さんの「日本のワンチャイを作りたい!」という思いを受け、その言葉をキーワードとして香港アクションを再現するのではなく、谷垣さんが香港での経験を踏まえて日本の新たなるアクション映画を切り開く大いなる試みがなされたのにグッと来てしまった。タケルの身体能力の高さなどの撮影秘話は、大友さんや谷垣さん自身の言葉でたびたび語られてきているけど、改めて読んでも「おお!」と言ってしまう。そういえば谷垣さん曰く、大友さんは「こっち側」の人間だということで、やっぱりそれを嬉しく思うんだけど、この本の発売を記念して2月22日に新宿ロフトプラスワンで開催されたトークイベントでゲストとして登場した大友さんの見事な香港電影迷っぷりに観ていてうれしくなったのでござるよ。

Tanigakievent

イベント当日の看板。なお、イベントの内容は口外できない内容が多かったのであれこれ説明できませんが、とにかく楽しかったです。案の定の酔いどれ監督であった大友さんも、その彼の次回作でアクションを担当する下村勇二さんもお話が楽しかったし。

 まあ、これは日本映画でマンガの実写化作品だし、ヒットはしたけどなかなか賞レースには絡めなかったし、ガチな香港電影迷や映画ファンから細かいダメ出しがあったのも知っている。完璧な作品ではないけど、そういう方がいいような気がする。これが到達点じゃなくて、今後に進む通過点なんだよね。

 とまあ、ざっくりと感想を書いていったけど、これはきっと今後も何度も繰り返して読むんだろうな。一度観た映画はもう一度観たくなるし(でも星月はアクションシーンを観るだけでいいや)、未見の作品もDVDレンタルしてじっくり観て、これを読みながら見直したくなるにちがいない。
 アクションというと大変な割にどこか軽んじられるものがあるのだけど、危険と隣り合わせであるから、決して気が抜けない。暴力的に見えても、それはあくまでも演出である。些細な場面でも創意工夫で超絶アクションが生まれ、その面白さを追求するスタッフは本編以上に作品に愛をこめている。その熱さを感じることができる本であった。
 ああ、読んでてホントに楽しかった!

 そして、るろ剣がきっかけで谷垣さんを知った方には、是非ともこの本で紹介された香港映画を観ていただきたい。日本映画がいいといえばそれでいいんだけど、あのアクションのルーツを知ることも、今後の日本のアクション映画のためになるもんね。そんなわけで、少しでも今どきの香港アクション映画の知名度が上がってほしいなあ。
 ええ、こういうところにも便乗して、香港映画をアピールさせていただきますよ。わはははは。

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