« 2013年2月 | トップページ | 2013年4月 »

2013年3月

愛に関するすべてのこと(2010/香港)

 昨年ついに『桃さんのしあわせ』が日本公開されたアン・ホイさん。
毎年コンスタントに作品を作ってはいるけど、質より量…ということも聞く。
まあ、確かに今までワタシが観てきたなかでも「極道追綜」とか「おばさんのポストモダン…」なんかは…あー、うー(^◇^;)。「生きていく日々」は好きだけど、「夜と霧」は…とも聞くし。

 まあ、それでも香港の映画監督が全て傑作を作るわけではないのはないし(結構失礼なことを言ってスマン)、今多くの支持を受けているトーさんだって、傑作連発でないわけだしね。傑作でも問題作でも、とにかく香港映画が観られたらそれでよいし、たとえ他人に支持されなくても、自分が好きならそれでいいのだ、という姿勢を常にとっている。
で、桃姐の前作に位置するこの作品、『愛に関するすべてのこと』を観た次第。2年前のTIFFで上映されている。


 独身者や望まぬ妊娠をした女性を対象に開かれる「母親の選択セミナー」で12年ぶりに再会した弁護士のメイシー(サンドラ)と中環で働くOLのアニタ(ヴィヴィアン)。実は二人ともバイセクシュアルであり、かつては恋人同士であった。アニタは出会い系サイトで出会った19歳の少年マイク(ウィリアム・チャン)との最初のセックスで、フェミニズムとDV問題を専門とするやり手の弁護士メイシーは、妻に暴力を働いて離婚しかかっているロバート(シウファイ)の相談に乗っているうち、ベッドを共にしてそれぞれ妊娠してしまったのだ。
この出会いをきっかけに、二人の愛が復活するが、それぞれが抱える子供をどうしようか、考えあぐねる。メイシーは子供を切望するレズビアンのカップル、エレノア(ジョーイ・マン)と惠惠(ジョー・コック)のために産むことを決意し、アニタの子供を自分たちで育てようとする。しかし、縁を切ったはずのマイクはアニタへの思いを断ち切れず、ロバートはメイシーに同性の恋人がいることに衝撃を受ける…。

 香港映画ではゲイのラブストーリーも多い印象があるが、レズビアンのそれもないわけではない。やはり同性愛を多く描く台湾映画では、高校生女子の物語が多いけど、そのメンタリティは日本の少女マンガに通じ、香港のそれはフェミニズム的な視点は入ってる印象がある。でも、香港映画のレズビアンって、登場人物的にはバイセクシュアルの方向に傾いている気がするんだよな。『ドリフト』では、ニコがお互いに酔った勢いで女子警官と寝たら、彼女はレズビアンでしかも妊娠させちまったってくだりがあったんだけど、これ、ガチなレズビアンの方は怒らなかったのかな?

 学生時代にお互いを意識し、かつては愛し合いながらも別れたメイシーとアニタ。お互いに40代の半ばを迎え、パートナーが欲しいと試行錯誤中の二人が再会したのだから、恋の炎は燃え上がる。ただ、二人の心配は自らが宿した新たな命。中絶を試みかける場面も描かれるけど、やっぱりそれはねえ…。そして、それぞれの生物的父親となった二人も、うまく断ち切れず未練たっぷり。
 さて、いったいどうなるの?と思ったら…、同時に二人が産気づき無事出産。そして子供たちはエレノアたちに養子に出さず、育児参加という形で4人で育てることに。それどころか、二人の男たちも育児に加わりハッピーエンド。えーっ、この結末でいいの?あまりにも理想重視的じゃないか?現実にはあり得ないんじゃないか?日本や他国ではこういう顛末はあり得ないと思うぞ。

 ただ、本編のクライマックスでは、恐らく実際に行われたっぽいシングルマザーの権利デモの模様が挿入される。香港はシングルマザーが少なくないということは、映画を観ていると何となく感じる。ワタシも社会の中での女性問題には疎いので、はっきり理解はできなかったところもあるんだけど、そういう現実を踏まえた上で、ストレートでもレズビアンでもバイでも、全ての女性たちには愛にあふれた、この映画の結末のような未来を与えてほしいという、アン・ホイさんの願いではないかなと思った次第。それがうまく伝わるかどうかは観た人の判断に委ねられているかな。まあ、ワタシもこんな未来がきてほしいとは思うけど、それを実践するのは日本はまだまだ厳しいよね。

 レズビアンやバイやコンサバなフェミニストの役が多いサンドラ。普段の毒舌たっぷりな芸風を嫌う人もいるけど、今回の役どころは結構よかった。それは多分、相方役が実に14年ぶりの映画出演となったヴィヴィアンだったからじゃないかな?堅物でギシギシした面はあまり感じられず、パンツスーツにハイヒールを合わせ、スカートだってはく。顔立ちは変わらないけど、いつもより少しフェミニンになってる。
 ヴィヴィアンは歌手としか意識してなかったし、気がついたら引退していたので、自分にはあまり馴染みがなかった。しかし、40歳を越えていても彼女はかわいかった…というか、色気に満ち溢れていた。特にメイシーと一夜を過ごした後に見せた金色のスリップドレスに包まれた肌の白さと張りのある胸にクッキリとした事業線!(この件は別の記事にて)同性のワタシも見とれてしまったよ。
 そんな彼女らに絡む、対照的な二人の男。切れ長な目元が涼しげなウィリアムくんは最近小品でよく見かける。まだ若いんだよね?主役格になるにはまだ力不足だろうし、地味な印象もあるけど、若手が男女ともに圧倒的に少ない香港映画界だからこそ、頑張ってほしい。
 意外だったのは、シウファイさんが情けない役回りのわりには非常に魅力的だったこと。カメレオン俳優っぽさがあるので、うっかり気を抜くと見逃してしまったりもするけど、こういう役どころはラブストーリーならではなんだろうな。

 まあ何のかのいいつつも、嫌いではない作品でした。サンドラとヴィヴィアンがタンゴを踊るラストもステキだったしね。

原題&英題:得閒炒飯 (All about love) 
監督:アン・ホイ  製作:ウォン・チン    撮影:チャーリー・ラム
出演:サンドラ・ン  ヴィヴィアン・チョウ  チョン・シウファイ  ウィリアム・チャン   ジョー・コック  ジョーイ・マン  フォン・ボーボー 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ドラゴンゲート(2012/中国・香港)

 なんか邦題のサブタイトルに「空飛ぶ剣と幻の秘宝」なんていう、某メガネの魔法使い君の映画みたいなのがついてるけど、そんなのはどーでもいい。ただ『ドラゴンゲート』だけでいいじゃないか!確かにその前に「タイガー」がつくと、ド兄さん&ニコが似てない兄弟を演じる別作品になってしまうがな!

 さて、未だに“香港のスピルバーグ”呼ばわりはどうよ?と思う徐克さん。先に書いた邦題のアレさも合わせて、どーして香港映画の宣伝センスって80年代どまりなんだよ、こういうのがとどまって、90年代オサレ香港ブームをけん引したあの…というと別の話になるのでこれ以上は言わないが、実に14年ぶりに彼とリンチェイがコンビを組み、偉大なる武侠電影のマエストロであるキン・フーに挑み、さらに3Dにも挑戦したのがこの作品である。

Dragongate

↑これは台湾旅行時にもらった卓上カレンダー。ポスターはこれでもよかったよ。

 明代の中国、宦官が権力を握り、弾圧や不正を働いていた。そんな朝廷に反旗を翻すのが、侠客の趙懷安(リンチェイ)。皇帝の子を宿した宮女・素慧容(メイヴィス・ファン)が身の危険を感じて宮廷から逃げ出し、諜報機関「西廠」の都督で宦官の雨化田(陳坤)が彼女を追うが、素は男装の女侠凌雁秋(周迅)に助けられる。実は凌は趙のかつての恋人であった。
 凌と素は砂漠の中にある龍門という地の宿屋に流れ着く。この地は60年に一度砂嵐に見舞われており、今まさにその時が近づいていた。この砂嵐により、300年前に埋もれた財宝都市が姿を現すという噂で、韃靼人の常小文(ルンメイ)が率いる遊牧民族の一団が投宿していた。そこに西廠の一団と、さらに財宝を狙う盗賊コンビの顧少棠(李宇春)と風裡刀(陳坤二役)もやって来て、宿屋は大混乱に陥る。遊牧民族たちと盗賊コンビは結託し、彼らに加勢した趙と、かつて宿屋の女主人だった凌も合流して、財宝を狙うことになる…。

 いやー、徐克さんお得意の「詰め込み過ぎにやりたい放題」は健在。
前作の『王朝の陰謀(観ているのだけど諸事情により感想書けてません。再見する機会があれば書きます)』もかなりやりたい放題で、実はそっちの方が好きなんだけど、こっちは3Dということもあってなおさらやりたい放題だったのかもしれん。それがいい具合に往年のワンチャイシリーズを彷彿させるし、かの『ドラゴン・イン』の続編的な位置にある作品であるから、なおさらなのかもね。
 ただ、3Dでよかったのかな?という思いがある。いや、使われ方としては適切であったけど、せっかくのリンチェイなのにアクションがなんだかもったいない感じ。砂嵐のCGなどで頑張っていたけど、もっとアクションを魅せる方向でいってもよかった気が…とモニョってしまってすまん。※意見には個人差があります。

 徐克さんは強い女性の描写がうまいのだが、それは健在。
周迅はいろんな人が指摘していたが、確かに最近永作博美化しているな。小柄であるが、声も低いので男装もよく似合う。かっけー。当然大魔術師に続いてツンツンモード。かわいー。
台湾映画ではオサレ&かわいい系が多いルンメイ、『密告・者』もそうだけど、香港に渡るとカッコいい役が多い。しかも彼女の演じる韃靼人の王女様は超肉食系。顔にタトゥーも入れる大胆さ!一目見て彼女とわかるけど、ふわふわ系と思われながら役どころをうまく使い分けるのは蒼井優ちゃんに通ずるところがあるかも。※意見には個人差があります。(ちなみに周迅が永作なら、ルンメイは波瑠に似ているという意見多数。これはワタシも同意)
相変わらずかわいくねーな、というか彼女は今後もこういう路線なんだなと思ったクリス・リー。今回はなんと死にません!恭喜!(ってそれネタばれだから!)
メイヴィスは最近女優で見ることが多いよな。当然のようにかわいいが、最後のどんでん返しにはもうびっくり!でもこういうひっ繰り返し方がまさに徐克さんらしい。
女子メンバーじゃないが、陳坤が二役で頑張っていたのが好感。ただの美形キャラじゃなくて、笑いがとれるのがいいねー。敵役では劉家輝しーふーと、人気のルイス・ファンがいい味出していた。ここしばらくの徐克さん映画では、『セブンソード』の敵側の女性とか、王朝の陰謀の白髪の役人などのエキセントリック(でもなかなか役者さん自身はブレイクしない気が…)なキャラが目立ってたけど、それを担ってたのがこの二人かな。しかしすいません、ルイス・ファンの顔はなかなか覚えられん…。

まあ、総じて楽しくはありましたよ。良くも悪くも徐克さんですね。だから好きなんだけどさ(笑)。
そして最後に告白。すいません、キン・フー作品についてはこれから観ます。不勉強かつ生意気なブロガーで申し訳ないー(泣)。

原題(英題):龍門飛甲(Flying swords of Dragon gate)
製作&脚本&監督:ツイ・ハーク 製作:ナンサン・シー アクション指導:ユエン・ブン 美術:ハイ・チョンマン
出演:リー・リンチェイ(ジェット・リー) ジョウ・シュン グイ・ルンメイ クリス・リー チェン・クン メイヴィス・ファン ルイス・ファン リュウ・チャーフィー(ゴードン・リュウ)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

我終於結束《香港電影類型論》的學習!

 大阪方面の皆さん、アジアン映画祭で盛り上がってますか〜?( ´ ▽ ` )ノ
昨年はワタシも参加しましたが、今年は年度末の仕事が結構キツイので、泣く泣く断念。トーさんの新作《毒戦》のワールドプレミアや、香港だけでなく大陸でも大ヒットしたホーチョンの《低俗喜劇》(そういえば彼の会心作『AV』『ビヨンド・アワ・ケン』がついに日本でソフト化!恭喜恭喜!)上映など、今年のラインナップには大いに魅かれたんだけどねー。まあ、来年はぜひともまた行きたいと思うし、出かけられない分、地元に来た『ドラゴンゲート』を観たり(感想は後ほど)、VCDを観たりして、一人アジアン映画祭を実施しておりますので。

Dragwar

↑これは地元の岩手日報に掲載されたアジアン映画祭の記事。
多分共同通信配信記事だと思う。


↑この価格は!買っちゃおうかしらん♪

 さて、ワタクシはこのほど、中国語の語学教室にて《香港電影類型論》の購読学習を無事終了いたしました!いやー、勉強のために評論書を読むのって、結構大変だったわー。以前香港で発行された、無間道三部作のノベライズをほとんど辞書を引かずに読めたことがあったけど、それとこれとは大違いだものね。

Leixinglun

↑右の本です。左は中華圏映画でのゲイ映画について論じた台湾の評論集。これも近日ご紹介。

 この論文集については、以前学んだ章ごとの抄訳をアップしていたけど、自分でもわけがわからん翻訳をしてしまった(ここをずっと見てもらえばわかってもらえるか?と恥をさらす)ので、後ほど各章ごとの簡単なご紹介と感想をアップしたいと思います。多分4月くらいになるかな?
 映画評論の翻訳などは腕試しでやってみたりしているけど、やっぱり長文の翻訳は大変だわ。一時期中国語翻訳を目指したことはあるけど、しんどかったもの。翻訳権もかんでくるので、軽い紹介くらいならしてもいいかな、と思ったのだ。(まあ、実際数多ある中国情報系サイトを回ってみると、結構ひどい日本語訳しているなーというものも多少見かけるけど、そのへんについてはなにもいわんでおくか。以上小声)

 思えば大学を卒業して中国語学習が終わるかと思えば、やめちゃもったいないなとと思って続けていたんだけど、香港映画や中華圏娯楽に興味を持ったことで、向こうの文献が読めたのだから、充分役に立ったということだよな。まあ、これで飯は食えないレベルですけどね(笑)。

 いつも通っている夜のクラスが完全プライベートになった5年前に、初めて映画評論を読んでまとめたのがこれ。それ以来中国語教室では自分の好きなことを精一杯できたんだけど、ちょうど今の先生もやめられることになり、切りもいいので、長年勉強してきた中国語学習に今年で区切りをつけることにした。ここでやめたらもったいないのかもしれないけど、自分がやりたいことはもう十分やったし、ちょっとした翻訳ならいつでもできるからね。そんなわけで、現在上海で教鞭を取られている王中忱先生を始め、盛岡で出会った中国語担当の先生たちには大いに感謝しております。

 そして、新年度からは新たなフェーズに向かいますよ。かなり久々に広東語を勉強します!昨年から語学教室で広東語がレギュラークラスになったのだけど、初心者向けで時間が合わなかったのでできなかったのよね。でも相談してみたら、プライベートで学習することができるというので、これはいいチャンスだと思って。
 今や香港映画も言語は普通話も少なくなく、大陸様進出のおかげで街中のお店で中国語で話しても没問題なんだけど、やっぱり広東語で話せた方がいいよなあ。これまでの語学能力がキープされているかどうかが不安なんだけど、まあ学習に入ったら、徐々に思い出すか。
 そんなわけで、真面目な方向でもこれからも頑張りますよ! 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『アクション映画バカ一代』谷垣健治

 自分の好きなものはいっぱいある。その中で好きなもの同士がつながることは、喜びも楽しみも倍増するものである。日本映画『るろうに剣心』にて、前職時から支持している映画監督の大友啓史さんと、香港でスタントマンとして活躍してきたアクション監督の谷垣健治さんがコンビを組んだことはまさにその倍増の喜びの好例であり、おおいにハマりこんでしまってすいません(笑)。

 さて、『燃えよ!スタントマン』以来なんと15年ぶりとなる谷垣さんのエッセイ。
前作は…すみません、借りて読んだので手元にありません、重ねてすみません(苦笑)。

 まあ、読んでなくても無問題。1999年から映画秘宝に連載しているコラムをベースに、大幅改稿&加筆されたこの本は、成龍さんをヒーローとした谷垣さんがいかにして香港でスタントマンとして活動することになったのかという、ことの始まりからも改めて書かれているので、つい最近彼を知った人にも入りやすい構成となっている。うーん、親切親切。
 もう一つの親切は、ものすごく細かい注釈。この本を読む人はほとんどが香港映画ファンかアクション映画ファンであると思うのだけど、おそらくそれ以外の人(というとるろ剣からのファンが大多数になるのかな)に向けての、香港映画や俳優についての丁寧な注釈が入っている。一部作品にはオリジナルビジュアルも入っているのもいい。そして執筆当時の裏話等にも注がつけられるので、もうものすごいサービスである。

 高校卒業後日本で倉田保昭氏に師事し、大学卒業後に単身香港に渡り、かなり無茶をやりながら香港スタントマン協会所属の日本人俳優第1号となり、ドニー・イェンとの運命的な出会いを果たしたくだりは前著にもあるけど、えーと忘れていたのでかなり新鮮に読んだ。第1章ではこの部分に、彼が日本でスタントマンとして参加してきた作品についての記録と共に2000年ぐらいの頃を回顧している。
 本来は俳優であるド兄さんがアクション指導として裏方にも回り始めたのがこの頃なのだけど、あの星月も彼らがアクションを手掛けていたんだっけな。ワタシは諸事情によりあの映画が大嫌いなのだが(理由は聞かないでくれ。リンク先を読めばわかる)、あの映画のアクションシーンは確かによかったことだけは記憶している。15年くらい前は日本でもアクション以外の香港映画も多く入っていたし、ワタシ自身も当時はあまりアクションものを観なかった王家衛好きのスカした映画ファン(苦笑)だったので、スタントまでには目がいかなかったのも事実なんだよな。
 それもあってド兄さんが裏方に回り、米国に活動の拠点を移したころの作品はほとんど観ていない。釈由美子嬢の『修羅雪姫』も地元で上映されたけど、観に行くまでのモチベーションは持てなかったし…。『ブレイド2』も当然観てない。このへんの作品群も、いつかカバーできるといいかな。

Spl

↑SPLオリジナルポスター

 2000年からの作品が取り上げられる第2章になると、『ツインズ・エフェクト』 『SPL』 『新宿事件』とこのblogで取り上げた作品が登場するので、観た頃を思い出せるようになった。特にSPLはフィルメックスで紹介されていたのだが、確かにるろ剣で目指した「アクションとドラマの融合」を試みた好例として見ることができる。なるほどねー。
 香港電影迷的に嬉しいのは、香港アクション用語解説とアクション監督たちを紹介したコラム。俳優を横並びにすることを「英雄本色」と呼ぶとか、ブルース・ローさんは甘いものが大好きなど、現場にいるからこそのエピソードが楽しいよ。

Wuxia

武侠のティザーポスター。そういえば日本でも香港でもベースカラーが黄色なんだな。

 香港に数多いるアクションスターたちの中でも、今一番熱いアクション映画バカといえば当然ド兄さんであり、第3章では彼と谷垣さんが共に取り組んだ葉問二部作『捜査官X』・精武風雲の3作品についての話。それぞれ個性的な3作品だけど、やっぱり葉問と精武風雲がなぜプロパガンダっぽくなってしまったのかというのが興味深かったかな。現場も本意ではなかったということが少しわかったのでホッとした。まあ、中国大陸も視野に入れて作品を作ると、どうしても…ではあるんだけどね。ウィルソンさん・ピーターさん・アンドリューさんのそれぞれの現場で関わり方もまた興味深かった。そして未だに出来上がる気配がない《特殊身份》は…どうなるんだろう?昨年亡くなった司徒錦源さんも関わっていたというし…。ところでまだ『導火線』観ていません。うわーごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

Ruroken

るろ剣香港版ポスター。このポスターはGH旺角になかったのだよ…。

 監督作品『マスター・オフ・サンダー』、イーキンも出演した『カムイ外伝』(でも彼の出演の経緯は、谷垣さんも知らないという。あれ?)から、谷垣アクションが大爆発するるろ剣までの日本映画での挑戦を綴った第4章。
 カムイに関しては「あー、これってなんかもったいない!」と完成した作品を観て思ったのだが、それも撮影初期に起こった事故とヒロイン交代を思えば、それが非常に惜しかったし、事故さえ起らなければ、きっと超絶なアクションに興奮したかもしれないのだろうな。マツケンも清盛以上に入り込んだアクションができそうな印象もあったし。
 そしてるろ剣。これも何度も書いてきたけど、やっぱりあの大友さんの「日本のワンチャイを作りたい!」という思いを受け、その言葉をキーワードとして香港アクションを再現するのではなく、谷垣さんが香港での経験を踏まえて日本の新たなるアクション映画を切り開く大いなる試みがなされたのにグッと来てしまった。タケルの身体能力の高さなどの撮影秘話は、大友さんや谷垣さん自身の言葉でたびたび語られてきているけど、改めて読んでも「おお!」と言ってしまう。そういえば谷垣さん曰く、大友さんは「こっち側」の人間だということで、やっぱりそれを嬉しく思うんだけど、この本の発売を記念して2月22日に新宿ロフトプラスワンで開催されたトークイベントでゲストとして登場した大友さんの見事な香港電影迷っぷりに観ていてうれしくなったのでござるよ。

Tanigakievent

イベント当日の看板。なお、イベントの内容は口外できない内容が多かったのであれこれ説明できませんが、とにかく楽しかったです。案の定の酔いどれ監督であった大友さんも、その彼の次回作でアクションを担当する下村勇二さんもお話が楽しかったし。

 まあ、これは日本映画でマンガの実写化作品だし、ヒットはしたけどなかなか賞レースには絡めなかったし、ガチな香港電影迷や映画ファンから細かいダメ出しがあったのも知っている。完璧な作品ではないけど、そういう方がいいような気がする。これが到達点じゃなくて、今後に進む通過点なんだよね。

 とまあ、ざっくりと感想を書いていったけど、これはきっと今後も何度も繰り返して読むんだろうな。一度観た映画はもう一度観たくなるし(でも星月はアクションシーンを観るだけでいいや)、未見の作品もDVDレンタルしてじっくり観て、これを読みながら見直したくなるにちがいない。
 アクションというと大変な割にどこか軽んじられるものがあるのだけど、危険と隣り合わせであるから、決して気が抜けない。暴力的に見えても、それはあくまでも演出である。些細な場面でも創意工夫で超絶アクションが生まれ、その面白さを追求するスタッフは本編以上に作品に愛をこめている。その熱さを感じることができる本であった。
 ああ、読んでてホントに楽しかった!

 そして、るろ剣がきっかけで谷垣さんを知った方には、是非ともこの本で紹介された香港映画を観ていただきたい。日本映画がいいといえばそれでいいんだけど、あのアクションのルーツを知ることも、今後の日本のアクション映画のためになるもんね。そんなわけで、少しでも今どきの香港アクション映画の知名度が上がってほしいなあ。
 ええ、こういうところにも便乗して、香港映画をアピールさせていただきますよ。わはははは。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2013年2月 | トップページ | 2013年4月 »