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愛に関するすべてのこと(2010/香港)

 昨年ついに『桃さんのしあわせ』が日本公開されたアン・ホイさん。
毎年コンスタントに作品を作ってはいるけど、質より量…ということも聞く。
まあ、確かに今までワタシが観てきたなかでも「極道追綜」とか「おばさんのポストモダン…」なんかは…あー、うー(^◇^;)。「生きていく日々」は好きだけど、「夜と霧」は…とも聞くし。

 まあ、それでも香港の映画監督が全て傑作を作るわけではないのはないし(結構失礼なことを言ってスマン)、今多くの支持を受けているトーさんだって、傑作連発でないわけだしね。傑作でも問題作でも、とにかく香港映画が観られたらそれでよいし、たとえ他人に支持されなくても、自分が好きならそれでいいのだ、という姿勢を常にとっている。
で、桃姐の前作に位置するこの作品、『愛に関するすべてのこと』を観た次第。2年前のTIFFで上映されている。


 独身者や望まぬ妊娠をした女性を対象に開かれる「母親の選択セミナー」で12年ぶりに再会した弁護士のメイシー(サンドラ)と中環で働くOLのアニタ(ヴィヴィアン)。実は二人ともバイセクシュアルであり、かつては恋人同士であった。アニタは出会い系サイトで出会った19歳の少年マイク(ウィリアム・チャン)との最初のセックスで、フェミニズムとDV問題を専門とするやり手の弁護士メイシーは、妻に暴力を働いて離婚しかかっているロバート(シウファイ)の相談に乗っているうち、ベッドを共にしてそれぞれ妊娠してしまったのだ。
この出会いをきっかけに、二人の愛が復活するが、それぞれが抱える子供をどうしようか、考えあぐねる。メイシーは子供を切望するレズビアンのカップル、エレノア(ジョーイ・マン)と惠惠(ジョー・コック)のために産むことを決意し、アニタの子供を自分たちで育てようとする。しかし、縁を切ったはずのマイクはアニタへの思いを断ち切れず、ロバートはメイシーに同性の恋人がいることに衝撃を受ける…。

 香港映画ではゲイのラブストーリーも多い印象があるが、レズビアンのそれもないわけではない。やはり同性愛を多く描く台湾映画では、高校生女子の物語が多いけど、そのメンタリティは日本の少女マンガに通じ、香港のそれはフェミニズム的な視点は入ってる印象がある。でも、香港映画のレズビアンって、登場人物的にはバイセクシュアルの方向に傾いている気がするんだよな。『ドリフト』では、ニコがお互いに酔った勢いで女子警官と寝たら、彼女はレズビアンでしかも妊娠させちまったってくだりがあったんだけど、これ、ガチなレズビアンの方は怒らなかったのかな?

 学生時代にお互いを意識し、かつては愛し合いながらも別れたメイシーとアニタ。お互いに40代の半ばを迎え、パートナーが欲しいと試行錯誤中の二人が再会したのだから、恋の炎は燃え上がる。ただ、二人の心配は自らが宿した新たな命。中絶を試みかける場面も描かれるけど、やっぱりそれはねえ…。そして、それぞれの生物的父親となった二人も、うまく断ち切れず未練たっぷり。
 さて、いったいどうなるの?と思ったら…、同時に二人が産気づき無事出産。そして子供たちはエレノアたちに養子に出さず、育児参加という形で4人で育てることに。それどころか、二人の男たちも育児に加わりハッピーエンド。えーっ、この結末でいいの?あまりにも理想重視的じゃないか?現実にはあり得ないんじゃないか?日本や他国ではこういう顛末はあり得ないと思うぞ。

 ただ、本編のクライマックスでは、恐らく実際に行われたっぽいシングルマザーの権利デモの模様が挿入される。香港はシングルマザーが少なくないということは、映画を観ていると何となく感じる。ワタシも社会の中での女性問題には疎いので、はっきり理解はできなかったところもあるんだけど、そういう現実を踏まえた上で、ストレートでもレズビアンでもバイでも、全ての女性たちには愛にあふれた、この映画の結末のような未来を与えてほしいという、アン・ホイさんの願いではないかなと思った次第。それがうまく伝わるかどうかは観た人の判断に委ねられているかな。まあ、ワタシもこんな未来がきてほしいとは思うけど、それを実践するのは日本はまだまだ厳しいよね。

 レズビアンやバイやコンサバなフェミニストの役が多いサンドラ。普段の毒舌たっぷりな芸風を嫌う人もいるけど、今回の役どころは結構よかった。それは多分、相方役が実に14年ぶりの映画出演となったヴィヴィアンだったからじゃないかな?堅物でギシギシした面はあまり感じられず、パンツスーツにハイヒールを合わせ、スカートだってはく。顔立ちは変わらないけど、いつもより少しフェミニンになってる。
 ヴィヴィアンは歌手としか意識してなかったし、気がついたら引退していたので、自分にはあまり馴染みがなかった。しかし、40歳を越えていても彼女はかわいかった…というか、色気に満ち溢れていた。特にメイシーと一夜を過ごした後に見せた金色のスリップドレスに包まれた肌の白さと張りのある胸にクッキリとした事業線!(この件は別の記事にて)同性のワタシも見とれてしまったよ。
 そんな彼女らに絡む、対照的な二人の男。切れ長な目元が涼しげなウィリアムくんは最近小品でよく見かける。まだ若いんだよね?主役格になるにはまだ力不足だろうし、地味な印象もあるけど、若手が男女ともに圧倒的に少ない香港映画界だからこそ、頑張ってほしい。
 意外だったのは、シウファイさんが情けない役回りのわりには非常に魅力的だったこと。カメレオン俳優っぽさがあるので、うっかり気を抜くと見逃してしまったりもするけど、こういう役どころはラブストーリーならではなんだろうな。

 まあ何のかのいいつつも、嫌いではない作品でした。サンドラとヴィヴィアンがタンゴを踊るラストもステキだったしね。

原題&英題:得閒炒飯 (All about love) 
監督:アン・ホイ  製作:ウォン・チン    撮影:チャーリー・ラム
出演:サンドラ・ン  ヴィヴィアン・チョウ  チョン・シウファイ  ウィリアム・チャン   ジョー・コック  ジョーイ・マン  フォン・ボーボー 

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