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2013年2月

《人間喜劇》(2010/香港)

 今年の金像奨は、パン・ホーチョン&チャッピーの《低俗喜劇》(大阪アジアン映画祭でも上映予定)が多数ノミネートされ、話題の的となっている。2年前は『ギャランツ』、去年は『桃さん』が作品賞を受賞しているわけだが、ここ数年来、香港映画界は大陸に目を向け、歴史大作が金像で大きな賞を受賞するたびに大陸のネットメディアが「香港電影結束(香港映画は終わった)」と騒ぎ立ててきたのだが、かえって香港では歴史大作がヒットしにくくなり、逆に自分の足元を見つめなおしたようなローカル作品が評価を得るようになってきたと考えるといいのだろうか。
 もともと香港映画も、ローカルネタのお笑いが満載していたが、香港以外でもそのローカルっぷりを愛する人は多いはずである。ワタシもその一人だけどね。映画やスターだけじゃなく、街も文化もまとめて愛しているからね。

 そんなわけで、一人アジアン映画祭のオープニングに選んだのが、チャッピーと新進俳優&歌手の王祖藍(ウォン・チョーラム)がコンビを組んだ《人間喜劇》。監督の一人は《戯王之王》の陳慶嘉(チャン・ヒンカイ)。彼の名前を見ただけでもうローカル映画だってことが丸わかり(笑)。

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 大陸からやってきた殺し屋(チャッピー)は、ミニバスで相方の夕陽(シウホン)と別れてしまい、慣れない街に戸惑ってしまう。依頼の待ち合わせに指定されたアパートの屋上になんとかたどりつくが、雷に驚いてアンテナに倒れこんで気絶。
 そのアパートの住人である売れない脚本家諸葛頭楸(以下チャウ/チョーラム)が彼を発見し、自分の部屋に引き入れて殺し屋を看病する。一命を取り留めたものの、身の安全を信じきれない彼は、自ら司徒春運と名乗り、チャウの部屋にあった膨大なDVDソフトからとっさに身の上話を作り上げて説明するが、隙さえあれば彼を殺して逃亡しようかと企んでいた。
 チャウには香港太空館でアテンダントをしている彼女(フィオナ)がいるが、せっかくプロポーズして付き合い始めたのに恋愛に多くのことを求めすぎている彼女がどうしても理解できない。一方、春運は臨月の若い妊婦マギー(カーマ・ロー)から、自分を妊娠させた男子校生の暗殺を依頼されたが、それは失敗し、今度は自分を殺せと言われて振り回される。思い余った春運はお腹の中の子の父親を自分だと思えと言って説得する。こんな日々を過ごしながら、チャウと友情を深め合う春運だが、再会した夕陽から「殺し屋は親友など作れない」と告げられ、本来の仕事に戻されることに…。

    大柄でふくよかなチャッピーと小柄で丸顔メガネのチョーラムの息のあった演技が楽しい。物語としてはありきたりだし、もちろん先は読めるんだけど、こういう映画は気楽に楽しめる。
チャッピーはシリアスもお笑いもできるキャラだけど、ここではシリアスなのに笑いを取る安定感。本人は至ってハードボイルドな殺し屋なので、チャウという不思議生命体(笑)に出会って翻弄されるくだりが笑える。でもシリアスな場面ではちゃんときめてくれるよ。
  チョーラムは『コネクテッド』で古天楽に絡むおかしな携帯電話販売員といえば、ああ、あの子か!とわかる人も多いでしょうね。香港男子的にたまに見られる妙なフェミニンさもあってこちらも楽しい。チャッピーと同じベッドに寝て彼の指を無意識にちゅーちゅー吸う場面がツボだった。
で、こんな動画をどうぞ。


  あとはチョーラムの役が脚本家なので、映画ネタが多かった。チャッピーが自分の生い立ちを偽装して彼に語る場面では様々な映画の香港題が引用され、これはぜひ翻訳したい!と思ったり、キャストを見ると映画監督の特別出演が実に多いこと。もう一度観てどこに誰が出ているか確かめた方がいいかなあ。

英題: Le  Comedie Humaine
監督&製作:チャン・ヒンカイ 監督:ジャネット・チュン 製作:エイミー・チン  撮影:ウォン・ウィンハン
出演:チャップマン・トー ウォン・チョーラム フィオナ・シッ ホイ・シウホン カーマ・ロー デレク・クォック チョイ・ティンヤウ   カール・ン    リー・リクチー   ロー・ウィンチュン   ソイ・チェン   デレク・クォック  ウォン・ヤウナン

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funkin’ for HONGKONG的十大電影2012

 農歴正月まっただ中、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
おかげさまで本blogも先月で10年目を迎え、よくもまあここまで続いたぞ、と自分で自分をほめたくなります。よく言えば継続は力なり、悪くいえば進歩がないってことでしょうか。
まあ今後もこのblogは続けますので、どうぞよろしくお願いいたしますですアルよ。

 では恒例の十大電影も行きます。これはあくまでも個人のためのランキングなので、あまりご参考になさらない方が賢明だと思いますが、くどくなるのでさっさといこう。

10 捜査官X

 宇宙最強ド兄さん×久々の金城くんにインクレディブル王羽さん、そして昨年から今年にかけて大活躍の谷垣さん、という素晴らしき面々が揃っているのにも関わらず、地元上映がなかったという悲劇のためにこの順位。るろ剣ヒットしたのに!地元映画祭に谷垣さん来たのに!どーして地元映画館(以下延々とグチるため強制終了)

星空

 ジミー原作映画ではもちろん最高峰だし、ミラクル7号のあの子がなんともしっとりした女の子に変身して帰ってきてくれたのが嬉しかったよ。日本公開がまだ決まらないのが残念だけど、どこかの子ども映画祭で上映してくれてもいいなあ。大人はもちろん、少年少女に観せてもいけそう。

あの頃、君を追いかけた

 昨年日本でも『桐島、部活やめるってよ』という本格派青春映画がヒットしたけど、前者がどことなくネガティヴさを、そしてこの映画がポジティヴさを漂わせている違いはあっても、根底には何かしらの共通点があるんじゃないかなと思った次第。しかし、とある事情で一般公開ができないとのことだけど、版権ものか?それとも、◯◯で◯◯◯◯するのがマズいってのか?

ビッグ・ブルー・レイク

 大阪アジアン映画祭での拾い物。そして一番のお気に入り。
街中でも失われるものが多くなっていく香港だけど、それ以上に記憶は失いたくない。そして、それが帰るところとしての故郷も、決して忌むべきものではない、というメッセージが響いた

台北カフェ・ストーリー

 昨年引越しをして、いろんなものを処分してはまたいろんなものをもらったけど、誰かにとってのいらないものが、他の誰かに必要とされる大切さを確認し、ものに執着しない心の軽やかさが欲しいと思うよ。まだまだ執着心いっぱいで申し訳ないのす。

大魔術師”X”のダブルトリック

 すいません、この新年に観た映画も入れちゃって。一応中華圏では昨年公開されたわけだしね。今年はいよいよ『グランドマスター (一代宗師)』が公開されるけど、ファンとしては実に4年ぶりのトニー主演作が日本で観られたのは本当に嬉しかった。これと《聽風者》と大陸仕様の作品が続いたけど、せっかくローカル香港映画が復調傾向にあるのだから、今後トニーには、ローバジェットでも面白いローカル映画に出て笑わせて欲しいなんて思うんだけど…おっとその前に『1905』だよね!これもうまく話が進みますように。

光にふれる

 これも観てよかった。オーソドックスなサクセスストーリー&ハンディを持つアスリートやアーティストが自分自身を演じる(これ、実は結構多い。例を挙げるとアーティストじゃないが、この春公開される日本映画『だいじょうぶ3組』も原作の乙武くんが自身を演じるとか)という泣かせ要素&ベタ感満載作品だけど、ひねらないからこそ素直に感動できるってのがいい。

恋の紫煙2

 …う、これは2年前の2位の続編(笑)。しかも二人とも禁煙しちゃってるから、題名がすでに意味がない。けど続編。続編になると普通作品の持つパワーって落ちるもんなんだが、これは全然落ちてなくて、1とはまた別角度で攻めているっていうのがすごいんだよな。しかも北京が舞台なのに、香港ローカル感たっぷり。どちらかといえば皮肉っぽく大陸を見ている作品なのに、それでも大ヒットする大陸様の気持ちがわからんよ…(笑)。

燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘

 …うう、これは2年前の1位(爆)。しかも現在も大絶賛上映中。
この邦題はホントに何とかならなかったのか、という気はまだあるけど、それでもいろんな人に観てもらえたのは嬉しい。この調子で全国ツアー上映にも出しちゃいましょうよ、ねえ!?

桃さんのしあわせ

 これもついこの間観た作品だけど、東京基準だと昨年の作品のになるのでね。
ああ、もうこれはダントツです、ホントに。現代日本にも共通するテーマでもあるけど、ここ数年のアン・ホイさん作品をTIFFで観た身としては、社会的な背景をテーマにした中で彼女が描いてきた人々の営みの愛おしさがこの作品に結集し、日本で観られたのが嬉しかったのよね。このヒットをいいきっかけに、天水圍二部作もぜひ日本公開してほしいものだなあ。

主演男優賞   アンディ・ラウ(桃さんのしあわせ)

 日頃アンディに厳しいワタクシですが、プロデューサーとしての彼は大いに買っております。昨年の金像で彼が最優秀主演男優賞に選ばれた時、ちょっとだけ驚いたのだけど、いざ映画を観たら大いに納得。ホント、文句ないです。でもまたどーでもいい映画に出てワタシにつっこまさせてねー(笑)。

主演女優賞 ディニー・イップ(桃さんのしあわせ)

 こちらももう文句なしです。お見事でした。しかし彼女もそうだけど、劇中ご本人役で出演の羅蘭さん、ギャランツのスーザン・シウさん、「生きていく日々」のパウ・ヘイチンさん、そしてネグリジェ大家の元秋さんと、ベテラン女優さんの皆さんは、おばちゃんやおばあちゃん役ではどんなにボケたり弱々になっても、受賞式やプロモやプレミアでは華やかで堂々とした姿をみせるのがすごいんだよね。ワタシもそんなふうに歳をとりたい。

助演男優賞  ジミー・ウォング(捜査官X、血滴子)、ホアン・シャオミン(恋の紫煙2)

 王羽さんはもうホントに怖くて怖くて、もう姿を見ただけで殺気がすごかった。ご本人もかつてヤバい方面にいたというのは有名だけど、でも、リンダ・ウォンさんのお父上か…。
シャオミンは『葉問2』の血気盛んな若者でいくらかいいイメージが出てきたけど、どうも全体的に「なんか企んでる」感が抜けなくてねえ。でも紫煙2の「シャオミン似の男性」という役どころは見事だった。本人もノリノリだったんじゃないかな。はやく怪我が治りますように…。

助演女優賞 ヤン・ミー(恋の紫煙2)

 ヤン(イェン)・ニーという人もいるので紛らわしいけど、ヤン・ミーさん。男性がいかにもコロッといっちゃいそうな小悪魔系女子がハマっておりました。もちろん今後の活躍にも期待。

新人賞  ホアン・ユィシアン(光にふれる)

 俳優というより、音楽家としての新人賞かな。今月来日ライヴをするんだよね。忙しい時期なので行くことができないのが残念だけど、自由自在にジャンルを横断するプレイは一度生で観てみたい気がする。

最優秀監督  アン・ホイ(桃さんのしあわせ)

 これももうダントツですし、尊敬もしております。近いうちに前作『愛に関するすべてのこと』も観ますしね。すでに大監督の風格も漂っておりますが、5年前に香港でご本人を見た時の、緑の可愛いスカート姿が未だに記憶に残っておりますよん。

 …こんなところかな。
去年はいろいろと不本意なところもあったから、ベスト5が結構反則気味なんだけど、まあそこは許してください。
 さて、来月地元でやっと『ドラゴンゲート』も上映されるし、これから春まで香港映画を観まくりたいし、今までサボっていた分を取り戻していかなきゃね。

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我恭喜你發財, 我恭喜你精彩!

Tonio2013

ついカッとなって作った。後悔はしていない(笑)。
ちなみにニナミカアプリを使用して作りました。

えー、本日は農歴初一です。恭喜發財、萬事如意!
そんなわけでお約束のこれだ!

某ちうぶで検索してみると、昨年のヴァージョンも発見。
今年のヴァージョンもいつか上がるかな?

今年の初一はうまく日本の連休にかぶったので、本気になれば行けたんだけど(笑)、12月に行ってきたばかりだし、仕事もちと忙しくなったので今回はパス。当初は3月の電影節にも行ければと思ったけど、これまた諸事情で断念。また夏休みになっちゃうかな?まあ、節約して(ちょっとそういう状況でもないんだけどね)、今年中にもう一度行きたいです。

去年は地元での香港映画上映が少なく、仕事が立て込んでソフトも観られないどころか、感想もことごとく遅れてしまったので、今年は原点に立ち返り、香港映画のために生き、その魅力を幅広く伝えていきたいと決意しております。なんてったって、今年は《一代宗師》こと『グランドマスター』が日本で上映されるのだもの!

また、去年は地元で観られなかった分、大阪で3月に開催された大阪アジアン映画祭でだいぶ鑑賞本数を稼いだのだけど、さすがに行くのが大変だったし、この春は仕事の重要な引き継ぎがあるので行くのを断念。だけどその分、これまで未見のVCD等をせっせと観ることにしましたよ。名付けて「モリーオひとりアジアン映画祭」

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上映作品(笑)は、次の12本。

《人間喜劇》
『愛に関するすべてのこと』
『ホット・サマー・デイズ』
《江山美人》
《刺陵》
《Laughing gor之変節》
《圍城》
《聽風者》
《低俗喜劇》
《為你鍾情》
『ブエノスアイレス』
《東邪西毒終極版》

全部観ちゃったら、まだ観ていないBDかDVDをレンタルしますわ。
今年は第1期(2月)をコメディ&ラブストーリー、2期(3月中旬まで)をシリアスもの、そして3期(3月中旬から4月まで)をレスリー関係作品、という形で観ようかと思ってます。そう、今年はね…。この特集上映も、もしかしたら行くかもしれないです。

さて、今回のオープニング作品はこれでーす!↓

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我らがチャッピーと新進コメディアンの王祖藍(ウォン・チョーラム)くんのW主演、《人間喜劇》。こういうベタなコメディは日本じゃ映画祭でも公開が難しいですからね。感想も近日アップします。

それにしても、購入作品にどうしてもラブストーリーやコメディが多くなってしまうのは、アクション&サスペンス作品はだいたい日本で上映してくれるからね。FREEMANさんのblogによると、今年は『グランドマスター』や成龍さんの『ライジング・ドラゴン』を始め、こんなラインナップ(その1) (その2)の日本(といっても東京)での上映が決定しているらしい…が、このうち地元に来るのは、先の2本くらいじゃないかなあ。…なんせ去年は“武侠の悲劇(こらこらオーバーな)”があったわけだし。
 まあ、地方で香港電影迷をやっていくのがますます辛くなっていく今日このごろだけど、それでも電影迷はやめたくないなあ。そんなわけで今後も突き進んでいくし、上京したら積極的に香港映画を観に行きたいなあ。この冬は『ブラッド・ウェポン』を見逃しちゃったし。

 そんなわけで、今後もよろしくお願い致します。と再び言ってみる。
なお、次の更新は、毎年恒例(と勝手に言っている)十大電影です。
昨年は鑑賞本数が少なかったので、今年初めに観た桃さんまでを範囲とします。

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桃さんのしあわせ(2011/香港)

アン・ホイ監督の作品が日本の一般のスクリーンにかかるのは、パンフで確認したところ、『スタントウーマン』以来、実に15年ぶりらしい。この作品は観ていないんだけど、むしろTIFFで上映された『おばさんのポストモダン生活』『生きていく日々』など最近も現役でバリバリお仕事しているイメージがあったので、昨年の毎日新聞の映画評で「一般公開は初めて」とか書かれて「違ーう!」と突っ込んだり、沢木耕太郎さんが朝日のエッセイで20年以上前の『客途秋恨』と比較して書かれていたのを読んだときは、「沢木さん…嬉しいけど、ちょっと古いです…(泣)」と思ったっけなあ。いかにここ十数年、彼女の映画はもちろん、香港の文芸映画が日本で上映されてこなかったかというのがよくわかったのであった。

 そんなわけで『桃さんのしあわせ』。一昨年のヴェネチア映画祭の快挙の報から待つこと1年以上、年を明けてやっと地元でも上映されたのは嬉しい(特に去年はあの映画が観られなかったからなおさらね…)。

 ロジャー・リョン(アンディ)は50代の映画プロデューサー。主として財政管理を担当し、資金調達のために香港と大陸を往復している。未だに独身である彼は、梁(リョン)家の4代に仕える広東省出身の桃姐こと鐘春桃(ディニー)という家政婦に面倒を見てもらっており、彼女の作る食事をかきこむと、大陸に出かけて徐克(本人)とサモハン(本人)と共謀して一芝居うち、出資者から追加予算を調達してもらうのに成功する。
 ところがロジャーが自宅へ戻ると、桃姐が倒れていた。彼女は脳卒中で完全回復は難しいと診断されてしまう。身寄りのない桃姐は梁家の家政婦を辞めて自費で老人ホームに入るというので、ロジャーも安価の介護付き施設を探すことにする。その過程で介護ビジネスを行っている友人のバッタ(秋生さん)と出会い、近所のホームを紹介してもらう。
 老人ホームと言ってもそこは雑居ビルの1階を簡単に改装しただけの代物で、個室も壁とドアだけしかないような部屋で薄汚れており、共用のトイレも臭い。そんな中でも彼女はホームの主任チョイさん(チン・ハイルー)や温和なガムさん、女好きのキンさん(チョン・プイ)などと親しくなっていく。ロジャーも仕事の合間にホームに顔を見せるが、入居者たちに桃姐との関係を聞かれ、とっさに「義理の息子」と答えてしまう。彼は桃姐を外に連れ出し、本当の親子のように触れ合う。容体がよくなった桃姐は梁家に戻って身辺整理をし、昔の思い出を彼に聞かせる。自分が逝った後、独りぼっちになってしまうロジャーのためにと後釜の家政婦を探すが、どうもいい人材がいない。
 ロジャーが製作した映画のプレミアに、彼は桃姐を招待する。ベテラン女優の羅蘭(本人)と出会って喜んだり、中国の寧浩監督(本人)にタバコを注意したり。華やかな会場を彼女は楽しみ、昔観た映画にロジャーの名前を見つけて喜んだ思い出を彼に語る。
 そんな生活の中でも、ホームで知り合った親しい人たちが一人また一人と去っていき、桃姐自身も身体がマヒしていくのだが、それでもロジャーは彼女が最期を迎えるまで献身的に面倒を見てあげるのであった…。

 ロジャーのモデルになったプロデューサーのロジャー・リーさんは、赤壁の財政管理を担当していたという方で、おそらくこの時期に桃姐を介護して、彼女を送ってあげたのではないかという話を聞いた。赤壁の製作には莫大な費用が掛かったわけだが、その資金調達に追われながら、桃姐との最後の日々を送っていたのだろうな。
 劇中でのロジャーは、同じ映画製作者でも徐克さんやサモハンのようなイケイケタイプでなくあまりにも地味。リュックをしょって地味なジャケットを着ているから、常に修理工やタクシー運転手に間違えられてしまうくらい地味。それでも財政管理には充分に能力を発揮するのだから、香港映画界をがっつり支える縁の下の力持ち的存在なのだろう。

 香港も日本と同じように高齢化が進んでいる。ここ数年、香港でも下町に足を運ぶと、雑居ビルの看板に老人ホームと中国語で書かれた看板をよく見るようになった。先ごろの旅行で宿泊していた観塘でも、こんな看板(下方中央)をよく見かけた。

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 さすがに中まではのぞかなかったけど、あの映画と同じような雰囲気なんだろうな、と。

 香港は日本ほど家族単位で守られていない印象があるせいか、おそらく独居老人は多いのだろうな、という印象がある。『生きていく日々』のおばあちゃんも、天水圍の団地で一人暮らししていたしね。劇中のホームでも、実にいろいろな境遇の人々が暮らしていた。でも、日本のホームより自由度を感じた気もしたが、そうでもないかな。実はワタシの祖父母も亡くなるまでホームに入っていたので、そのイメージでしか考えられないのだけどね。

 もちろん、この映画は老人介護や高齢化社会での人の生き(逝き)方というのがテーマではあるのだけど、血縁という窮屈なものに縛られることのない、香港ならではの「家族の絆」を、決してお涙ちょうだい的ではなく描かれているのが素晴らしい。
 
 それは、先にも書いたようにここ数年のアン・ホイさん作品を観ていればわかるように、社会的なトピックを、非常にシンプルな語り口で描くことを体得したからなので、過剰に肩入れすることなく、安心して観られるんだろうな、と個人的に思う。というか、ことさら「死」を過剰に描き、涙を搾り取らせることがいい映画と思っている一部邦画が苦手だから、うれしいだけなんだけどね。
 それ以上にうれしいのは、やっぱり香港映画人たちの特別出演。
しょっぱなから徐克さんとサモハンの共演は嬉しすぎ(笑)。しかしこの二人が一緒に仕事する映画って豪華そうだよなー。あとは出てくるだけですぐわかる秋生さんにチャッピーはわかったんだけど、ラム・カートンやangelababyがどこに出たかわからなかったよな。プレミアの場面だよ、とは教えてもらえたんだけど。『OVER SUMMER』でおばあちゃん役を好演し、金像奨を受賞した羅蘭さんは貫禄でしたよー。
 
 そして、実年齢よりずっと上の設定の桃姐を演じたディニーさんとアンディ。共に金像の主演俳優賞を獲ったのは非常に納得。アンディが歳をとるごとに演技に深みが加わってきたことは、ワタシがわざわざ言う必要はないよね?(笑)ま、天命を知る年齢であっても、まだまだバカ映画を作って演じてもらいたいんだけどね、個人的には。
 実は、ディニーさんはこれまでほとんど演技を見たことがなかったのよね。昔の作品も観てみたいのだけど、いま日本で観られる公開作品だと、何が一番いいのかな? 

 おまけ。この春さっそくソフト化されるのだけど、日本語吹き替えが実に豪華。
詳しくはリンクページを見ていただくとして、サモハンの当たり役である水島裕さんを始め、現在ベテランの域に達した往年の人気声優の皆さんが手がけている。字幕至上主義者のワタシでも、このメンバーならぜひ聞いてみたいって思ったなあ。

原題&英題:桃姐(A simple life)
製作&監督:アン・ホイ 製作&原作:ロジャー・リー 製作総指揮&出演:アンディ・ラウ 脚本:スーザン・チャン 撮影:ユー・リクウァイ 音楽:ロー・ウィンファイ 編集:コー・チーリョン 録音:トゥー・ドゥーチー
出演:ディニー・イップ チン・ハイルー チョン・プイ ワン・フーリー アンソニー・ウォン チャップマン・トー ツイ・ハーク サモ・ハン ロー・ラン ニン・ハオ ラム・カートン アンジェラベイビー レイモンド・チョウ ジョン・シャム

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《血滴子》(2012/香港・中国)

 ここ数年のピーター・チャンの旺盛な仕事っぷりは、『ウォーロード』『捜査官X』のような監督作だけじゃなく、『孫文の義士団』のようなプロデュース作からもよくわかる。 つまり中国史を背景にした、鮮烈なアクション大作が続いているわけである。90年代の『月夜の願い』や金枝玉葉二部作、そして『ラヴソング』のようなかわいらしい珠玉の恋愛ものを作っていた頃にはもう戻る気はないのだろうな、残念ながら。だけど、監督はせずとも、せめてプロデュース作だけでもそういう作品を手がけてくれたらいいんだけどなあ。

《一代宗師》公開時期の調整でなかなか上映が決まらなかったと聞いた《血滴子》。そもそも監督も当初は孫文に続いてのテディさんだったのが、いろいろあって降板し、孫文を演出面でもサポートしたアンドリューさんを起用して作られたとのこと。血滴子といえば空飛ぶギロチン(『大魔術師』冒頭にも登場し、彦祖が犠牲になる。笑)だし、最初から3D上映を目的に作られたというのだから、やっぱり3Dで観るべきよね?というわけで、3Dメガネを持って九龍湾のシネコンに観に行った。

冒頭の歌が、もうねぇ…(涙)。

血滴子とは、清朝の雍正帝の元で働く暗殺集団であり、彼らが飛ばして首を落とす武器ーいわゆる空飛ぶギロチンのことでもある。リーダーの冷(イーサン)は実は漢民族であり、康熙帝(文章)と朝廷に仕える海都(ショーン)と義兄弟として育った。
冷たちは反清復明を求める人々を追いかけ、ギロチンを駆って次々と首を落としていくが、最後のひとりとなったリーダーの天狼(シャオミン)と対峙した冷は彼の首を狩れず、取り逃がしてしまう。
雍正帝は彼らに天狼の追撃を命じ、冷たちは平原に出向くが、襲撃を受けてメンバーのひとりである穆森(クリス・リー)が人質にされてしまう。
冷は天狼と出会うが、自らの出自を指摘され、彼の思想を知って動揺する。そして自らの位置に疑問を抱き始めていたその時、海都が彼らを裏切り者として追い詰めていた。朝廷では鉄砲隊が結成され、血滴子は全時代の異物として葬られようとしていた…。

 観てからもう1ヶ月経っているので、あらすじはうろ覚えです。間違っていたらすみません。おじぎ
 血滴子といえば、多分年期の入った香港電影迷ならショウブラザーズの『空飛ぶギロチン』なんだろうな。これ、5年前の香港レジェンドシネマフェスティバルで上映されていたそうだけど、すみません観てません。 

 首をスパンスパンと落とす恐怖の武器ではあるけど、絵柄としては確かに面白いんだろうな。だから何度も映画に登場したわけだ。ショウブラの映画は《刺馬》の時にも書いたけど、血みどろであってもどこか朗らか。だから、うわー怖ーって感じは案外ないのかもしれないな。
 だけど、あの《刺馬》を、ヘヴィな鮮烈な男たちの物語に作り変えたピーターさんは、プロデュース作でもまた例によってヘヴィで厳しい物語にしちゃったわけのであった。…うーむ、アンドリューさんだからまた違うかもって考えてたが、それは甘かったか。もっとアクションバリバリでよかったんだけどなあ。
 これまでは時に帽子のような、またある時には宇宙人の円盤のような形で描かれてきたギロチンだけど、ここでは刀と一体化し、腕に巻いて携帯できるというなかなか近未来的なビジュアルでカッコいい。オープニングで血滴子メンバーがギロチンを開き、刀に載せて飛ばそうとする場面はまるでアニメのようだったし。
 でも、よかったのはそこと前半部だけかなあ。後半血滴子メンバーが捕らえられ、仲間のひとりが八つ裂きの刑に処されるくだりから辛くなってきた。作り物だとはわかっていても、見せられるとエグいなーと思ったし。こういう野蛮さがあって、その後にスマートな鉄砲集団を見せられると、うーむと悩みたくなったりして(こらこら)。

 実質的主人公は、イーサン演じる冷。これが初香港&中国映画になるのだろうか。恐れを知らない前半と、真実に翻弄される後半、頑張っていたと思う。まあでもまだまだ若造かな。これからだねー。
今回意外とよかったのが天狼を演じたシャオミン。彼はどうも何か企んでるようなルックスが引っかかってしまうんだけど、『恋の紫煙2』のあの役は面白かったし、香港でもやっていける俳優になりつつあるなー。今回は特に貫禄が必要な役どころだから、印象深かったのかも。ただ、他の人の感想でいくつか見かけた、キリストのような殉教者には見えなかったなあ。
ショーンの海都は体制側の人間で、冷と共に育っているということもあるので、天狼と共に冷を揺さぶる役どころ。冷酷な悪役として描ければよかったんだろうけど、どこか中途半端な印象だった。
あとは、康熙帝が『海洋天堂』のあの文章くんとか、王羽さんの頭領は気づいて手を振った。そして野郎ばかりの中での一応の紅一点、クリス・リーは相変わらず可愛くなかったなあ。

初めて香港で3Dを観てみたが、うーむ、雪や火の粉の舞う場面はなかなか効果的だったけど、あえて3Dにする必要はなかったような。先行上映が3Dだったからなのか、初日なのにお客さんが少なかったのにびっくりしたよ。
あと、陳光榮さんの音楽は、やっぱり佐藤直紀さんにどっか似てるなと思ったりして>もちろん陳光榮さんの方が耳馴染みなのだが、旅の間にるろけん観ちゃったのがそもそもの原因かもな。

英題:The Guillotines   
製作:ピーター・チャン 監督:アンドリュー・ラウ 音楽:チャン・クォンウィン
出演:ホアン・シャオミン イーサン・ルアン ショーン・ユー クリス・リー ジン・ポーラン ウェン・ジャン ジミー・ウォング

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