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2012年11月

恋の紫煙2(2012/香港)

 TIFFアジアの風名物、パン・ホーチョンが2年ぶりに帰ってきた…と言いたかったものの、今年はもうきな臭いことばっかり起こっているので(説明するのは野暮だからしないけど)、ゲストとしては来なかった。しかーし、昨年も上映作品がないにもかかわらず来ていたんだから、今年もひょっとして来てたんじゃないの?なんかヒルズのどこかで見かけたような気がしたぞ、ホーチョンよ。

 まあ、それは置いといても、映画祭の要は映画である。《浮城》のように出品取り消しにならなかっただけホッとしたアルよ、『恋の紫煙2』。…しかし、喫煙が縁で出会って恋に落ち、一緒に禁煙したあの志明と春嬌のカップルの話、どう考えても続くってことはないんじゃない?と思ってたら、なんとまあホーチョン自らの監督作品としては初の続編が誕生していたのだった。あの姉さん上位バカップル(誉めてます)のその後、いったいどうなるんだか?

Loveinthebuff

 見事に禁煙を成功させ、同居してラブラブな春嬌(ミリアム)と志明(ショーン)だが、些細なことがきっかけで、なんと別れてしまう。志明は代理店の元上司に勧められて、北京に行くことになるが、行きの機上で知り合ったCAのヨウヨウ(ヤン・ミー)と恋仲になる。
 一方、春嬌の勤めている化粧品店が香港から撤退することになり、リストラが実施される。彼女は首を切られることはなかったものの、店長に昇格。しかし新たな勤務先はなんと北京!当然、春嬌と志明は顔合わせすることになる。それでもやっぱり気まずくなるのは言うまでもない。志明に新たな恋人ができたことを知った春嬌は、北京在住の従姉妹と一緒に婚活に励む。
 そしてある日、従姉妹と共にお見合いに出向いた春嬌は北京のホテルのトイレに閉じ込められ、助けを求めて使おうとした携帯までも便器に落とすという失態をしでかす。助けを求める彼女の叫びを聞いてドアを開放し、なんと携帯まで取り出してあげたのはマレー系華人ビジネスマンのサム(シュー・チェン)。これがきっかけで二人は親しくなるが、その一方で彼女も志明もお互いが再び気になってきて逢瀬を繰り返すようになるのだが…。

 腐れ縁の恋人たちは、どこにおいてもめぐり会っては同じことを繰り返す。香港でも北京でもブエノスアイレスでも(笑)。ああ、まったくねー。だからこそ面白い。
 そして、普段あまり恋愛ものに感情移入しない自分はなぜかうんうんと首を振ってしまい、ついでに春嬌に思いっきり感情移入してしまったのである。なんかねーわかるのよねー、その気持ちが。twitterで誰かが「パンちゃんはどうしてこんなに女性の気持ちがわかるんだろう?」というようなことを言ってた気がしたけど、それはホントに全面的同意。年下で会えばケンカばかりだけど一緒にいれば安心感のある志明とよりを戻したいと思いつつも、年上で安定した職業でしかも優しくてハンサムなサムにもひかれてしまう。いやー、さすがのワタシも惚れそうになったもんなー、あの王子さまに。まあ、光頭だけど(笑)。そんなこんなで最後まで「どうなるのー!?」って思っちゃったよ…とは言ってもどちらにしろよりを戻すんだろうというのは予想できたけどね。
 
 しかし、恋人たちはどこに行っても変わらない…というより、香港人は北京に行っても変わらんな(笑)。大陸人とは北京語を話すけど、悪口は広東語で言っちゃうってのはまさに「香港人あるある」だろうな。ホーチョン自身が北京で仕事場を持っていたので、多分事実も交じってるかも。これはご本人が来日してたら、是非とも聞きたかったという人は多いかもしれんな。、こんなことを思うと、香港の映画人は大陸に魂を売ってるわけじゃないのねー…ってそこまでいえば暴言になるかね。しかしそれでも大陸では大ヒットなんだから面白いもんだよ。自虐的なのか大陸の電影迷は?そのへん誰か教えてほしいわ。

 さて、前作はシモネタの応酬で三級指定くらったけど、今作はそれも控えめ。その代わりにアクセントとなっているのが、実在の芸能人ネタだったりなんだりのお遊び。ご本人ご登場もあるし、一番笑ったのが春嬌の従姉妹が彼女の代わりにお見合いした「黄暁明似の男性」を実際にシャオミンが演じてたこと。この前に春嬌が自称「梁朝偉似の男性」に会ったところ、全く似ていないっていうくだりを見せられたからなおさらおかしかったんだよね。
 そして、物語のキーとなるのがこの曲。

 

 あらほーである春嬌の青春の曲であるわけなのだが、さすがに初めて聴いたのであった(笑)。これを歌うリンダ・ウォンはなんとあのド兄パパ@武侠としても有名な王羽さんの娘さんだとのことで、そこでまず驚いたのであった。それは後で知ったことだけど、劇中でPVの一部が流されてからラスト近くのご本人登場で一度驚き、そしてクライマックスで志明が春嬌にささげたこれ(あえてリンクだけはる。比較版だけどね)を観てさらに衝撃…いや大爆笑したのであった。いやー、これは香港映画史上に残る愛の告白シーンであろう。ホーチョン以外には誰も考え付かんよ、こんなことは。

原題&英題:春嬌與志明(Love in the buff)
監督&脚本:パン・ホーチョン
出演:ミリアム・ヨン ショーン・ユー シュー・チェン ヤン・ミー ヴィンセント・コック ホアン・シャオミン リンダ・ウォン

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光にふれる(2012/台湾)

 台湾といえば青春映画、というのがもうすっかり定番になった。それであっても、まだまだ未公開作品は多い。香港映画の方がむしろよく公開されているのだからなおさらだ。今年初めに香港で歴代中国語映画の動員数新記録を作った『あの夏、君を追いかけた』も未だに公開される気配がない。
 プログラムディレクターの石坂さんによれば、青春映画ブームもすでに飽和気味という状態らしいけど、それでもやはり、いつみても台湾の青春映画はまぶしいに決まっているのである。

 そんななか、台湾で公開されたばかりで初登場第1位を獲得した映画がTIFFに登場。それが『光にふれる』。ようやく《一代宗師》を完成させた王家衛が率いる春光映畫レーベルが製作し、盲目のピアニスト黄裕翔の実話をもとに、本人が自ら主人公を演じるという意欲作。

Touchtothelight



 台中の花き農家に生まれた裕翔は、幼いころの病気がもとで失明する。しかしピアノに出会ったことから、その才能を開花させ、コンクールでも優勝をする。そんな彼は親元を離れ、台北の大学の芸術学部音楽学科に進学することになる。障害を持っていることで学科のクラスメイトとは壁ができてしまうのだが、体育学部のルームメイト阿清が強い味方になってくれ、二人は仲間たちとスーパーミュージッククラブ(SM部)を結成し、ジャンルを超えた音楽活動をするようになる。
 部活勧誘ガイダンスの時、裕翔は美しい声の女性と出会う。彼女は大学の近くのジューススタンドで働く小潔(サンドリーナ・ピンナ)。ダンサーを目指して進学を夢見ていたが、実家の経済状態が悪いため進学をあきらめ、大学でダンスを学ぶ彼氏とは別れてしまい、挫折しかかっていた。道路で途方に暮れる裕翔を助けたことから、二人は交流を深める。目が見えなくても前向きな性格の裕翔にひかれる彼女は、彼の弾くピアノに合わせて踊り、バイト先の店長の勧めもあってダンススクールの練習生となって、香港で行われる国際ダンスコンクールに挑戦する。幼いころの経験から、自分が評価されるのは盲目というハンデがあるからだと思いこみ、ついついコンクール参加に対して二の足を踏んでしまう裕翔は、朗らかな彼女の声とその存在に勇気づけられて、SM部のメンバーとコンクールに挑む…。

 黄裕翔について調べたら、昨年5月に来日してコンサートを行った動画と記事を発見。
1987年生まれとのことで、今年で25歳か。日本でいうところの辻井伸行さんのような人かと思えば、クラシック一辺倒ではないみたい。こっちの記事もリンク。

台湾新聞によるインタビュー。

これはかわいい展開だなーと思った動画。日本人ミュージシャンと組んでバンド活動もしているとか。

 台北の街は障害を持っている人間にとってはバリアフル過ぎて、移動が大変だろうと常々思っているのだが、サポートがしっかりしてそうな寮だとはいえ、そんな街で一人暮らそうとする裕翔の姿にハラハラさせられる導入から前半部。事情が事情なのでクラスメイトにも避けられてしまうというお約束の展開もあったりして、ハラハラはさらに重なる。
 しかし、目の見えない彼に平気でグラビア誌を差し出しちゃうくらいナチュラルに接する阿清の登場で、思わぬ方へと向かっていく。こういうフリーダムさは映画的にはとっても大切。(このへんは、昨年のTIFFグランプリ作品で現在大好評公開中の『最強のふたり』にも通じるなあ)
 そして、裕翔の姿と並行して描かれるジューススタンドの少女・小潔と彼が出会ったことで、ドラマは彼らの大きなはばたきをエモーショナルに描き出す。

 はたから見れば、裕翔と小潔の出会いとその交流は恋愛のようにも見えるかもしれない。もちろん、お互いをかけがえのない存在として意識はしているのだろうけど、出会う前の二人は芸術という共通の才能を持ちながら、あふれる才能をうまく発揮できずにいた。彼らが出会ったことは決してただの恋の始まりじゃない。二人が芸術家としての高い志を持ち、お互いがお互いを勇気づけ、さらなるステップへと背中を押す役割を果たしているソウルメイトとして描かれているのが非常によかった。これが大きな成功となっているのではないだろうか。恋愛ばかりが青春映画での人間関係を描く小道具ではない。それを証明してくれた映画だった。
 まあ、登場人物がいい人ばかりというのが欠点というのはわかるけど、その欠点も気にならないくらいステキな映画でしたよ、ホント。

 黄裕翔くんについては先に挙げた動画をもって感想と代えさせていただくとして(手抜きだなー)、澤東公司の秘蔵っ子である台仏ハーフのサンドリーナ(張蓉蓉)嬢の伸びやかさも印象深かった。《渺渺》と「ヤンヤン」を観ていないので、これがお初なんだよね。しかし時々セガール娘こと藤谷文子嬢に見えたのは多分自分だけだと思うからここだけの話だ(笑)。 
 脇役もいいですねー。裕翔を大事に育ててきたお母さんとかわいい妹ちゃん、先にも挙げた阿清、そして小潔の夢をかなえるためにあれこれ手をまわして「スポンサーになるからうちの店を宣伝しろよ」みたいなことを言っちゃう(はっきりは言ってなかったかな?)ジューススタンドの店長。両者とも美男じゃないお笑いキャラで味があるからまたいい。 

 なんかもう誉めてばっかりでもうすいません(笑)。これならアジア映画ファンにも楽しんで観てもらえるんじゃないかなあ。一般公開してもらえれば、裕翔にも来日してもらえそうだしね。どうでしょうか?ねえ。そうすれば澤東公司ももうちょっと儲かって、一代宗師がもしものことになってもいい…ってオチはそっちなのか!と怒られることを承知でこの項を締めたいと思います(苦笑)。

 

原題:逆光飛翔(Touch of the light)
製作総指揮:ウォン・カーウァイ 製作:ジャッキー・パン 監督:チャン・ロンジー 出演&音楽:ホアン・ユィシァン
出演:サンドリーナ・ピンナ リー・リエ シュー・ファンイー

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