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海洋天堂(2010/中国)

 長くて暑かった2011年の夏が終わろうとしている。
8月最後の週末、『海洋天堂』を観た。


 古い欧米風の建物が並ぶ海浜都市、青島。
その海辺にある水族館で設備技師をしている王心誠(リンチェイ)は妻に先立たれ、自閉症の息子大福(文章)を一人で育てていたが、ある日、大福と無理心中を図ろうとする。しかし、泳ぎの得意な大福は自分と父をつないだロープをほどいてしまい、それは失敗に終わる。彼らの向かいに住んで駄菓子屋を営んでいる柴さん(朱媛媛)はびしょぬれの二人を見て驚く。
 実は心誠は末期の肝臓ガンに冒されていた。彼は21歳になった大福を預かってくれる施設を必死に探しながら、大福に一人でも生きられる術を授けていく。感情の発露に乏しく、時々トラブルを起こしてしまう大福だが、心誠は根気強く教えていった。父と共に水族館に通う大福は、巡業サーカス団の一員でクラウンをしている鈴鈴(ルンメイ)と出会い、仲良くなるが、別れはある日突然にやってくる。 
 やがて、かつて大福が世話になっていた養護施設の元校長先生の紹介で、成人した障害者が共同生活を送っている民間施設が見つかり、心誠は彼を入所させるが、一人ぼっちになった大福は激しく暴れ出す。自分の死期を悟った心誠はアパートを引き払い、後々のことを柴さんと水族館の館長(董勇)に託し、残りの時間を大福と共に生きていく…。

 ストーリーはあまりにもシンプルだ。そして淡々としている。人によっては、あまりにもきれいごとすぎるという意見もあるだろう。だけど、この映画はリンチェイがノーギャラでも出演したいと切望したこと、そして中国の障害者福祉のことを思えば、十分意義のある作品だと思う。
 薛曉路監督自身が実際に自閉症支援施設でボランティアをしていたこともあって、劇中には様々な施設が登場する。おそらく、実在の施設でロケをしているとは思うのだが、子供の施設は多くても、大人の障害者を受け入れる施設が少ないこと、では大人向けは?と見ると精神病棟のようになってしまうと、中国の障害者施設の現状が垣間見られるような場面も見受けられる。大人を受け入れられないと、その家族が面倒を見なければいけない。(そういえば『こころの湯』でも、障害を持つ阿明は父親が面倒みていた)もし親が老齢になり、亡くなってしまったら?となると、その後の問題は大きい。パンフレットの監督インタビューを読むと、日本では多く存在する民間福祉団体も中国ではまだまだ少なく、劇中で施設の職員が饅頭を売って資金を稼いでいることはないとのことだけど、今後の中国の障害者福祉に対する問題提起もしているのかな、と思ったりして。
 じ、実は障害者福祉は専門外なので、ちょっと未確認なところや誤解しちゃっているところもあるかもです。何かあったらご指摘くださいませ<(_ _)>。

 リンチェイはアクションがなくても、エモーショナルな演技は得意なところ。エクスペンダブルズやってる人とは同一人物とは思えない…と書こうとして、件の映画を観ていないことに気づいた(笑)。
 大福役の文章くん。映画よりもドラマや演劇への出演が多い俳優さんなのね。かわいい顔の俳優さんなので、今後どんな路線に行くかが気になるところだけど、もっと作品を観てみたいね。ルンメイちゃんもかわいらしい。ちょっと悲しげな顔のクラウンのメイクもあうし。これまた初めて見た朱媛媛さん、久々の高圓圓ちゃん、そしてフォーフォーの親友コンビ再びの董勇さんと、他のキャストもいい。

 そして、スタッフもいいっすねー。これの後の仕事が日本で3Dホラーとポルノミュージカルで驚かされた(前置き長いって)ドイル兄さんの流麗なカメラ、ウィリアムさんの適切な編集、チョンマンさんのシンプルな美術、エンディングに流れるジェイの優しいバラード、そしてフレーズを聴いただけでうるっときちゃう久石譲さんの音楽。すごく恵まれて、祝福されるべき作品で、いろんな人に観てもらいたい作品。この映画が日本で公開されて、本当によかった。

英題:Oceanheaven
製作:ビル・コン 脚本&監督:シュエ・シャオルー 撮影:クリストファー・ドイル 音楽:久石 譲 美術:ハイ・チョンマン 編集:ウィリアム・チャン 主題歌:ジェイ・チョウ
出演:リー・リンチェイ(ジェット・リー) ウェン・ジャン グイ・ルンメイ ジュー・ユアンユアン トン・ヨン カオ・ユアンユアン

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