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『レッドゾーン』真山 仁

 昨年夏に読み、ここでも感想を書いた『ベイジン』に続いて、真山仁さんが中国をとりあげた長編小説…というより、彼の代表作にして、4年前にNHKで放映されたドラマが国内外で高く評価され、さらには2年前の初夏には映画化もされて話題になった(そしてワタシが現在進行形で猛烈にハマっている)『ハゲタカ』シリーズの第3弾。

 …おいちょっと待てもとはし、自分がそんだけハマっているのはわかるんだけど、すでに別blogでさんざんこのことについて語りまくっているくせに、なんでここにまで進出させて書くんだよ、とワタシの中の良心(白もとはし)が語りかけておりますが、ここで書くにはちゃんとした理由があります。マカオと香港が登場するからなんです!わーはははははは。




 せっかく凝ったデザインなのだから(これは単行本版も同じ)、横に並べて表示できればいいのにな。

 2007年晩秋、山口の世界的自動車メーカー、アカマ自動車にかかってきた1本の電話。上海の百華集団総経理の賀一華という男がかけてきたこの電話から、中国の投資ファンドによる国際的日本企業の買収という、前代未聞の大騒動の火ぶたが切られた。
 一方、日本最強の買収者と呼ばれる、投資ファンド「サムライ・キャピタル」社長鷲津政彦は、マカオで中国の国家ファンド(CIC)の幹部と名乗る王烈という男に誘われる。次々と企業買収を成功させ、ハゲタカまたはゴールデンイーグルと呼ばれてきた鷲津だが、依頼された出版社の買収に失敗し、裁判でも敗訴してしまう。未だに閉鎖的な日本経済と社会に絶望した彼の隙を突いた王は、三年前に起こった部下アラン・ウォードの事故死の真相と引き換えに、鷲津に共闘を迫るのだった。
 迫りくる賀の脅威に、アカマの社長古屋貴史と取締役社長室長大内成行は鷲津に相談を持ちかける。古屋と大内は会社を防衛するために奔走するが、賀の買収策が進むにつれ、アカマ自体が抱える問題が露呈するようになる。そして、鷲津自身にも王の揺さぶりがかけられる。そんな騒ぎの中、アカマの最高顧問である赤間周平が事故死し、周平の甥で副社長の位置にいた太一郎が賀と手を組んでしまう。激しさを増す買収と防衛の末、古屋と大内は鷲津にホワイトナイトを要請する。
 血で血を洗うようなこの買収合戦は、鷲津の好敵手である企業再生家の芝野健夫や、米国で学んだ企業弁護士で、上海のアカマの子会社が中国の自動車企業に訴えられた案件を担当していた謝慶齢をも巻き込んでいく。そして、鷲津がマカオで出会った香港の大富豪将英龍が思いがけない形でこの事件に関わってくるのだった…。

 2年前の映画で取り上げられたのは、中国ファンドによる大企業買収というアウトラインのみで、中身はかなりアレンジが入っている。賀一華が劉一華という名前に変更され(最初聞いた時は「アンディかよ!」とつっこんだ)、キャラクターもかなり変えられている。それと合わせて非正規労働者問題やリーマンショックも織り込まれていたのだが…、んー、これを読んじゃったら、やっぱ映画はスケールがしょぼかったな、と改めて思ってしまう(笑)。
 この大筋と合わせて、都銀マンから企業再生家に転身した芝野さんが、総合電機メーカーCROの職をなげうって大阪の中小企業マジテックの専務に就任するサイドストーリーと、米国から上海に戻った慶齢の奮闘も描かれる。ホントは全部書きたいけど、長くなるのは確実なので前者の脇筋はあえてスルー。ううう、芝野さん好きなのに…(泣)。

 実は意外にも中華圏(とあえて言おう)ネタが思ったより充実していた。単行本刊行時のインタビュー(fromあらたにす)で真山さんが香港にも取材に行ったと述べていたので、確実に香港はでてくるのねーと期待してたら、クライマックスがまさに香港!で大興奮。上巻中盤で登場した将英龍が思わぬ形で暗躍し、このクライマックスにがっつりとかんでくるんだが、彼と賀一華、そしてアランの死の鍵を握る通称「美麗」という女性との関係が明らかにされ、彼らをめぐる一族の中華人民共和国設立からここに至るまでの歴史があまりにもドラマティックで、ここだけでも映画にしていいやーん、なーんて思っちゃいましたよ。はい、実は一華よりも英龍の方がキャラとして好みです(笑)。一華はおぼっちゃま根性丸出しで打たれ弱いんだよなー。映画版の劉一華も苦労してきた割に打たれ弱くてかわいそうだったけど、当然そっちの方にも思い入れは少なかった(こらこら)。
 そして、上海でよりよい明日のために奮闘する慶齢も好きなキャラ。米国で学んだ法律学を中国ビジネスにも生かしていこうとするけど、「法の精神がない」と言い切られるほど遵法精神に乏しい大陸企業に苦しめられながら良心を大切にして働いていく。ともすれば「だから中国人は…」と紋切り型で語られるものだけど、ビジネスを守るために頑張る彼女のような中国人だって当然いるはずだ。エリートのお嬢さんであるけれど、庶民感覚も持ち合わせているところもポイント高し。来年早い時期に書かれるというシリーズ第4弾にも再登場してほしいな。

 そして、この小説の前日譚である『ハーディ』が現在講談社の文庫情報&文芸誌「IN★POCKET」に連載中。これはシリーズのメインキャラクターの一人でありながら、この物語には登場していない若きホテル支配人松平貴子を主人公に、彼女に託されたホテルの買収をめぐって、ホライズン・キャピタル(かつて鷲津さんが所属していた)日本代表のナオミ・トミナガと買収合戦を繰り広げるという「もうひとつのハゲタカ」的物語。ちょこちょこと立ち読みで読んでいるのだけど、これもまとまったらちゃんと読みたい。

 なんか他にもいろいろ書きたいんだが、そしたら絶対鷲津さんステキー的なことしか言えなくなるので(いや、これはマジで)、感想はこのへんで。ではラストに、『ベイジン』に続いて、中国人キャラクターの個人的イメージキャストを勝手にご紹介。
 「香港映画に出てきそうな美形」と紹介されている賀一華はニコ。ええ、ニコです。映画版の劉一華は玉山鉄二が演じていたわけだが、彼にそんなに思い入れがないので(タマテツ迷の人すいません)「あー、タマテツやるんだったらニコで見たかったなー。普通話もペラペラだし」なーんて考えて観ていたのだった。
 謝慶齢は周迅。スレンダーな身体に情熱をこめて演じてくれそう。スーツ姿も案外似合うんじゃないかな。王烈は王學圻さん。孫文で見せたような良心的な顔をしながら、腹黒そうに鷲津さんに迫ってほしい…(笑)。将英龍はりよんがいいなあ。もちろん谷原じゃない方のりよん。僧衣服(クリスチャン設定)からスーツ、長衫とワードローブも豪華だし。

 で、実は鷲津さんも脳内キャスティングしているんですよ、小説を読むときには。
映像版の大森南朋くんのハマりっぷりはあれはあれでものすごいし、大好きなんだけど、小説版と映像版では外見もキャラもことごとく真逆。だから、完全に別物として読んでいる次第。それでもどちらも面白いのだ。
 南朋くん演じる映像版の鷲津さんは、大柄でめったに笑わないキャラ。それに対して小説版は、小柄でなで肩、一見貧相でいつも笑っているという描写をされる。さらに女好き。ほら、全然違う(笑)。そんなところから、小説を読んで私の脳裏に現れた鷲津さんは、当然あの人だったのだけど…、ま、誰だかは言わないでおきますか。あははは。

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