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台北の朝、僕は恋をする(2010/台湾)

 見慣れた景色でも、とらえ方によっては全く思いもよらない姿を見せる。映画やドラマで知っている街の全く違った姿を観ることはとても楽しい。そういう楽しみを持つことも大切だな、とつくづく思う。もちろん、それをうまく生かした物語も大切だけどね。

 これまでに何度かその兆しはあったのだけど、やっと台湾映画が新しい時代に突入し、面白くなってきた。その土台は《流星花園》を皮切りとした台湾青春ドラマであり、そこから誕生した多くのアイドルたちが映画にも出始めたというのもあるのだけど、ホウちゃん、ミンリャン、ヤンちゃんなどの重鎮の監督たちの後を継ぎながら、新たな感性を持つクリエーターたちが登場してきたからなのかな、などと思ってみる。
 この『台北の朝、僕は恋をする』を撮ったアーヴィン・チェン監督(現在32歳)はヤンちゃんこと楊徳昌監督に師事し、ベルリン映画祭に出品した短編映画で世界デビューしたまさにぴちぴち(死語?)の若手。台北に生まれ、米国で育って学んだという点ではヤンちゃんや李安さんに通じる。つまり外の眼から台湾を眺めるタイプの監督ということか。
 では、そんな彼が見た台北はどんな姿をしていたのか。

 台北で暮らし、両親の経営する麺屋を手伝うカイ(ジャック・ヤオ)の恋人、フェイがパリに留学してしまった。さみしいカイはパリに行くことを夢見、誠品書店の語学フロアで毎晩のようにフランス語のテキストを読んでいる。そのフロアを担当する書店員のスージー(アンバー)は彼が気になってしょうがない。
 ある日、カイのもとにかかってきたフェイからの別れの電話。いても立ってもいられない彼は、街の顔役である不動産屋のパオ(カオ・リンフェン)にパリ行きの航空券を買う金を借りに行くが、ある条件をつけられる。パリに旅立つ日に小包を受け取り、指定の場所に届けるというものだった。カイはファミリーマートでバイトしている親友のカオ(ポール・チャン)と夜市で食事をするついでにその小包を受け取ったのだが、なぜか彼らはパオのもとで働くチンピラのホン(ルンルン)とその仲間たちにつけ狙われる。さらに麻薬取引の情報を聞きつけた刑事チーヨン(ジョセフ・チャン)にも追われる始末。夜市でばったり出会ったスージーもその騒動に巻き込まれ、カオはホンの仲間たちにさらわれ、カイとスージーは夜の台北を疾走することになり…。

 非常にざっくりとこの映画を説明すると、「台北版恋する惑星」。いや、これを言ったらさすがに怒られるか(笑)。いくらワタシが王家衛&トニー好きだからといっても、件の映画は正直買っていないのでこういうふうに言いたくないのだが、あの映画を観た時と同じ疾走感と軽やかさを感じたので、そう思った次第。
 モダンな誠品書店と下町感あふれる夜市。モダンな刑事のマンションとローカル感たっぷりな寺廟。どれも台北ではおなじみなのに、とても新鮮に感じる。それは先に挙げたように、監督が外の視点からこの街をとらえているのもある。そして、台北のささやかだけどステキな側面をうまく切り取っている。
 誠品書店なんてまさにその代表格だ。最初にこの書店を訪れた時は、台湾のジュンク堂?なんて思ったものだけど、年明けに久々に台北を訪れたときに感じたように、独自の進化を遂げ、書店を越えてしまっている。まあ、この映画では書店でも語学フロアしか登場しないけど、床にお尻をついて本を読みふけっている人がいるという独自の風景を見せているのが楽しい(注:これは決して珍しくない。逆に日本の書店ではこういう景色はめったに見られないのでビックリするはず)。

 書店での出会いから、街での再会でカイとスージーの心が通じ合い、お互いを意識しだす。ここより他の場所を求めたカイにとって、台北はまさに「しあわせの青い鳥」であり、さしずめスージーは彼を導いた光の精というところか。兵役を控えた純朴な親友、恋の終わりに動揺するマッチョな刑事、凄味があるけど気のいい顔役、詰めの甘いヘナヘナなチンピラなど、いかにも台湾コメディ的な脇役陣を配しながら、今までに見たことのない台北を描こうとしている。スカしたところも気取りもなく、素直に作られている。こういう映画は大好きだ。

 美人とはいえないけど親しみやすい顔立ちのアンバーちゃん、誠実そうなジャックくんはまさにナイスなキャスティング。彼らをサポートする面々も豪華でビックリしたけど、どうしてもルンルンに目がいってしまう(笑)。『色、戒』でかなり久々に彼を見たときにはビックリしたけど、今回の役回りは完全にお笑いだったなあ。
 そして高捷さんとトニー・ヤンくんの名前を見かけたんだが…、高捷さんがカイのパパ、トニーくんがチーヨンの彼女の新しい彼氏役でいいのかな?>やや自信なし。

 最後に、製作総指揮がヴェンダースなんだけど、映画全体としてはあまりヴェンダースっぽさは感じなかったぞ。いや、ヴェンダースは嫌いじゃなくてむしろ好きなんだけど。まあ、製作総指揮のカラーに染まっちゃったら面白くないもんね(笑)。

原題(仏題):台北一頁(Au revoir Taipei)
監督&脚本:アーヴィン・チェン 製作総指揮:ヴィム・ヴェンダース&メイリーン・チュウ 撮影:マイケル・フィナモリ 録音:トゥー・ドゥーチー 音楽:シュ・ウェン
出演:ジャック・ヤオ アンバー・クォ ジョセフ・チャン クー・ユールン カオ・リンフォン トニー・ヤン カオ・ジエ

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コメント

拳銃&やくざ者との追っかけをラブコメで描いて台北新観光案内を散りばめたジェリービーンズ映画であったような。
台北にも久しぶりに行きたくなってしまいます。

投稿: 香港フリークOno | 2011.05.25 05:35

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